第78話 動き
「さて、落ち着いた所で一つ朗報があります。」
俺が泣いている間に足立さんが紗季って女の治療をしていたらしく一応だが無事らしいが完全に俺に怯えているのは分かった。
「悠馬さん、少し耳を・・・っと言う訳です。」
「分かりました、一先ずはそれは黙っておいてください。」
「えぇ、先にですね?」
「さて、紗季とか言ったか?目的、志保の居場所、全部話せ。」
「うぅぅぅ・・・。」
「安心しろ、もう殺しはしない・・・殺しはな?」
俺はそれだけ言って冷めきった目で紗季を見ながら告げる。
「では、始めるぞ。目的はなんだ?志保の誘拐だけでは無かろう?だんまりでも構わないその場合、先ずは右手からだ。」
「ひぃ・・・話し・・・ます・・・。最終的な目的は、YouMaの殺害です。」
「はぁ?!悠馬を殺すって何言ってるか分かってんのあんた?!」
「愛央ちゃん・・・まだ我慢して、私も我慢するから。」
「理由は?」
「天音志保を手に入れてYouMaをいたぶって目の前で志保を犯して、その後にYouMaを殺すと・・・。」
ドゴンッ!っと俺は拳をテーブルに叩きつけて気分を押さえつけるが違う効果もあったらしくビクンッと身体を振るわせた後に紗季は更に震えだした。
「ふぅぅ・・・、要するにだ、過去に志保にフラれでもしたやつがこの雑誌を見て居場所を見つけ一緒に写ってる俺を殺す事で志保を壊してやろうって所だな?こちらの持つ情報と合わせれて考えれば4年前の事が理由か・・・。」
「くっ。何で今更・・・。」
「あの方はずっと志保を手に入れるとどんな事をしても手に入れると言っていて・・・。」
「場所は?」
「え?」
「そいつの名前はどうでも良い、志保は何処にいる?」
「そ、それは・・・、「何処だ?」・・・ここと、拉致した場所の中間くらいの所にある廃屋・・・。」
「合ってますよ、先ずはそこでって考えみたいですね、廃屋なら犯行もバレにくいでしょう。」
足立さんが答え合わせをしてくれて嘘を言ってない事は分かった。
「んじゃ、次だ。お前は何をしたのか最初から全部話せ。」
「えっと・・、私は・・・。」
「足立さんおーけー?」
「勿論しっかりと保存してます。」
「そうか。」っと一言だけ発して覚悟を決めた俺は一人で立ち上がり黙ってお店の外に出て行く。
「ちょ!?ちょ?!悠馬っ!何処行くの?!」
「志保の所。」
「悠馬くん?!これ以上は警察に!」
「そうよ!悠ちゃん!後は警察に任せた方が!」
「いや、そんな事すれば志保が怪我をするか取り返しのつかない事になりかねない、目的が俺なら俺が行くのが一番良い。」
「な、な、何言ってんの!!そんな事したらっ!」
「母さん、警察に連絡はしておいて、それと菜月が起きてたりしたら駆けつけると思うから抑えておいてくれ。足立さんはそこの犯罪者を逃がすな。有希華さん、志保は俺が助けます、信じて待っててください。」
俺は返事も聞かずに店の外に出て夜道を歩きだす絶対に助け出すと心に決めて・・・。
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SIDE 愛央
「あぁぁぁぁもうっ!悠馬はもうっ!清華先輩行きますよ!」
「え、えぇ!行くって?!」
「廃屋なら他の出入り口もあるでしょうしそっちから入って志保さんを助ければ悠馬が怪我をする可能性も減ります、タイミングは大事だけど・・・。大体にして悠馬を一人に何て出来ないです!」
「愛央ちゃん、本気?怪我じゃ済まないかもしれないのよ?」
「志保さんは親友です、だから助ける理由なんてそれだけで十分です。だから止められても行きます!」
「そうだね、行こっか!それに何より悠馬くんを一人には出来ないよ。」
私達二人を葵さんは見つめてくる、その目は・・・親の目?子供を心配する親の目に見えた、私のお母さんが私に向ける目と同じに見える、さっきの呼び捨ては驚いたけど・・・でも、うんっ!嬉しかった。ちゃんと見てくれている、娘だと思われてる様な気がした、私の勘違いでも別に構わない。でも今はっ!葵さんをしっかりと見つめ返していると諦めたかの様なため息をついて・・・。
「分かった。悠ちゃんをお願い。志保ちゃんを助けてあげて。」
「「はいっ!」」
それとこれを持っていってっと葵さんは悠馬を守るために常に持ち歩いているスタンガンと催涙スプレーを私達にそれぞれ手渡してくれてこう言った。
「絶対に無事に帰ってきなさい!四人揃って無事によ!」
私達はその言葉に力強く頷いて足立さんに場所を聞いた後ステイルから飛び出した。
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SIDE 葵
全く、あの子達はほんとにもうっ!!
「悠ちゃんと居ると怖いもの知らずになるのかしら?」
「葵さん、良かったんですか?いくら何でも志保の為とはいえ、あきらかな犯罪者を相手に何て・・・。」
「逆に聞きますけど止められましたか?」
私が苦笑いをしながら有希華さんに言うと「あはは・・・無理ですね。」っと答えが帰ってくる。私も同じ意見だし反対して目を離した隙に居なくなる方が困る。
「仕方ないですよ、それに悠ちゃんをいざとなったら止められるのはあの子達ですもん。」
「それはまぁ、確かにそうかも知れないですけど・・・。」
「私達は私達で出来ることを悠ちゃんに頼まれたことをしっかりやりましょう!」
どうか皆で無事に戻ってきますように・・・私は渦巻く不安を胸の奥に押し込んで全員の無事を祈るのだった。
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夜道を一人で歩くなんてのは初めてかもな、それがこんな状況ってのはどうなんだかね?
あっちこっちから視線は感じるし多分YouMaだと気付かれてるとも思う。
これはまた騒ぎになるだろうなぁ。
でも、知ったことじゃない!志保を助けることが最優先だ!
足立さんに教えてもらってた建物が見えてきた、あそこに志保が居る、一気に行くか?それとも静かに行くか・・・どっちが正解だろうな・・・。
トントンっと控えめに肩を叩かれるの同時に「悠馬さん。」っと声をかけられた。
「狭山さん?まだ居たんですか?」
「えぇ、動きがないか監視をしていたので。それはともかく、何故貴方がここに?子供の出る幕では無い事くらい分かりませんか?」
「悠馬っ!」「悠馬くんっ!」
俺が狭山さんに答える前に愛央と清華先輩が俺に追い付いた。
「二人共何でここに・・・。」
「決まってるよ、志保さんを助けるため。悠馬が志保さんを助けるための手助けをするため!帰れって言われても帰らないからね!」
「そうだよ、一人で何とかしようとしないでって言ったでしょ!それに志保ちゃんを助けたいのは私も同じなんだからさ。」
「貴方達ねぇ〜、子供の出る幕じゃ無い事位わからないのですか?」
「大人が頼りにならないからこうしてるんですけど?」
「なっ?!それはどういう?」
「こんな事起きる時点でまともな子育ても教育も出来ないのは明白。世の中全部が男を甘やかしてるのが原因。それはつまり一切大人は役にたたない証拠ですよ。まっ、家の母とかは抜きますけどね。」
俺が馬鹿にするかのような煽るかのような言い方をすると、絶句しているが、俺からすればそうとしか思えない、鏑木の件なんてわかり易すぎる。
「もうっ。悠馬も煽らないの!そんな事してる場合じゃ無いでしょ!」
「そうだな、すいません。でも間違えた事を言ったとは思ってませんから。俺達に協力するか否かだけ、教えて下さい。」
「はぁ〜、悠馬さんは本当に子供ですか?取り敢えず今は良いです。何か考えがあるなら聞かせて下さい。協力するかはそれ次第です。」
狭山さんは俺をしっかりと見ながらそう言ったのを見届けて俺は考えを話し始めるのだった。
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