第77話 狂気と恐怖
SIDE 葵
悠ちゃんがキレた・・・しかも怒鳴りつけたりせず静かな言葉でキレた。
つまりそれだけキレて居ると言うこと。
しかも相手は女の子、にも関わらず問答無用でテーブルに顔面を叩きつけるっという今まで見たことも考えたことも無い暴挙とも言える行動。
「ガッ・・・!?このっ?!」
「志保は何処だ?」
ドゴンッと容赦無く叩きつける、余りの行動に誰も何も言えなくなってる。
目の前の存在を敵と、排除して殺すべき相手として見てるとしか思えない程の空気が悠ちゃんから出されてる。
怖い、私は初めて息子を見て怖いと思ってしまう。
「止めないと・・・。」
そうだ!呆けてる場合でも怖がってる場合でもない!!止めないと悠ちゃんが人を殺してしまう!!
「ぁ・・・ぅぁ・・・。」
「何処だ?」
「ぅぇぁ・・・。」
「答える気が無いなら・・・死ね。」
「だめぇぇぇ!!」
私の叫びも虚しく悠ちゃんは止まらない?!容赦無く顔から潰そうとするかのような勢いで叩きつけっ?!
バッシャーン!!
「落ち着きなさい!悠馬くん!そいつを殺しても意味ないでしょ?志保を悲しませるつもり!?」
ギリギリ、本当にギリギリで有希華さんが悠ちゃんにバケツで水をぶっかけた事で叩きつけるギリギリで止まった・・・?
「ぁ・・・俺・・・、今・・・。」
チリンチリン〜♪
「戻りましたーってどんな状況?!」
「ぁ・・・あお・・・?お、おれ・・・。」
「悠馬?!どうしたの?!真っ青だよ!!」
「悠馬くん?!」
愛央ちゃんが悠ちゃんを抱きしめてくれてる、悠ちゃんは自分のしたことに恐怖を感じているのかガタガタと震えてしまってる。
「はなれて・・・おれいま、そいつを・・・ころそうと、ころさないとって・・・。」
「大丈夫だよ。悠馬がそんな事を思うってことはそれだけの理由があるって事だって、私達を守るためにだって事、私は知ってる。だから私は怖くない、大好きな悠馬のままだよっ。だから頼まれても離れてなんてやらない!!」
愛央ちゃんが優しく悠ちゃんを、子供をあやすかの様に慰めてる。
私は何をしているんだ?息子が怖い何て思ってしまって反応が遅れた結果取り返しがつかなくなるところだったのに今も抱きしめるどころか慰める事すらしてない・・・母親じゃ無いのか?私は悠ちゃんの母親じゃないのか!?親が子供を信じなくてどうする?!間違えそうになったら止めるのが親じゃないのか!?
確かに悠ちゃんは変わっただけじゃなく物凄く大人になった、行動も考え方もだ。
だから私は無意識に悠ちゃんはもう大丈夫だと思いこんでしまった。
その結果が・・・!結果が!!正に狂気とも言える行動に何も出来なかった、私は母親失格だ・・・。
「言い訳ね・・・。馬鹿じゃないの私。」
恋人にだけ任せてる場合じゃない、慰めるのが恋人の仕事なら叱るのが私の仕事だ!たとえ、その結果、息子に嫌われたとしても・・・。
「愛央ちゃん、ごめんね、少し黙っててね。悠ちゃん、自分が何をしたか、何をしようとしたか分かってる?」
私の問いかけに愛央ちゃんはキツめの視線を、悠ちゃんは不安と悲しみ、恐怖の感情が混ざった視線を向けてくる。
「分かって・・・る、人を殺そうとした・・・。」
「葵さん!!今はまだ!!」
「黙ってなさい!愛央!」
「っ!」
「悠ちゃん、貴方は取り返しのつかない間違いを犯そうとした事は理解してるわね?」
私の問いに悠ちゃんは項垂れながらもコクリとだけ頷いた。
「貴方の行動の結果どうなるか、どんな結果になるか貴方は分かってるの?」
「皆を悲しませる事に・・・。」
「そうね、でも一番悲しむのは誰かしら?悲しむだけじゃない貴方が自分の為に人を殺したと知ったら?」
「あ、ぁぁぁ、志保・・・。ごめん。」
「志保ちゃんの未来も何もかも縛ることになったかも知れないのよ?志保ちゃんは自分のせいだと自分が!ってこれから先ずっと責め続ける事になったんじゃないの?!悠ちゃんの行動が!安易な行動がどんな結果をもたらすか!理解したの?!」
「ごめん、志保。ごめん、母さん・・・俺、俺!」
ぎゅっと息子を抱きしめる、止めどなく涙を流し続ける息子を私は抱きしめながら大きくなっても子供は子供だと昔に母が言った事の意味を私は今日初めて知ることになった。
「キツイこと言ってごめんね?幾らでも嫌いになって良いから。でも忘れないでね?悠ちゃんの手が汚れれば悲しむのも自分を責めるのも私や菜月ちゃんだけじゃない。愛央ちゃんも志保ちゃんも清華ちゃんもここに居ない皆も悲しむって事を忘れないで、それを忘れなければ悠ちゃんは大丈夫よ。」
うんっ!うんっ!っと頷きながら私の胸の中で泣き続ける息子をあやしながら私も間違わない、悠ちゃんを支え続けるのだと決意を新たにしたのだった。
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「母さん、ありがとう・・・。嫌いに何てならないよ、母さんが母さんで良かった。」
「愛央もごめん。俺・・・。」
「大丈夫。何があったか話してくれる?」
「うん、勿論。」
抱きついて来た愛央を俺も抱き締め返して何があったのかを説明したけど俺はその間ずっと頭の片隅で自分の中の狂気に恐れを抱いていた。
「悠馬くん、志保の為にごめんなさいね。」
「そ、そんな!有希華さんが止めてくれなかったら・・・俺・・・。」
一度離れた愛央が、側に居てくれた清華がそれぞれ俺の手を取ってくれてる、その温もりは自分の中の狂気も恐怖も消してくれるかのような温もりで・・・。
「うん、確かに怖かった。まさかあの悠馬くんがあそこまで怒るなんて思いもしなかったしそれだけ志保が思われてるのは私も嬉しい。でもね・・・?自分を犠牲にするような事は止めなさい。葵さんも言っていたけど貴方に何かがあれば悲しむのはここに居る人達だけじゃ無いって事は忘れないでね。もっと自分を大切にしなさい!」
「はい・・・。確かに俺は志保を救えるならって思ってました、だから自分でも止められなかったんだと思います・・・。」
「悠馬、一人で何とかしようとしないで私が居るよ。他にも沢山の人が悠馬の力になってくれるんだから・・・ね?」
「そうだよ!私だって居るんだから!確かに頼りないかも知れないけどさ・・・。私だって力になりたいって思ってるんだからね?」
「愛央も清華先輩もありがとう。それとごめんなさい。」
俺の言葉に愛央も清華先輩も笑顔でぎゅっと強めに手を握ってくれて自分が一人じゃ無いと教えてくれている気がしたんだ。
愛央達が居れば俺はもう大丈夫、間違わないって、そう思えた。
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