第65話 タイミングの悪い志保

志保との静かな時間が過ぎる。

外はザーサーっと雨が強くなって来てる。


「雨強くなってきたな・・・・。有希華さん大丈夫かな?」


「・・・・・。」


「志保・・・?どうした?」


「ぇ・・・?あぁ、ごめんなさい。」


「謝る事は無いけどもどうかしたか?」


俺の言葉に志保は数瞬時間を置いた後に覚悟を決めたかのような顔を俺に向けて来た。


「あのですね・・・、悠馬さん。」


「うん?どうかしたか?」


「・・・あの、悠馬・・さんは・・・っ///」


「俺がどうかしたか?」


「悠馬さんはわた・・・「うっひゃぁぁぁぁっ!びしょ濡れだぁぁぁ!」・・・はぁぁ・・・。」


志保が何かを言おうとした時にチリンチリン~♪っとお店の扉が開く音と人の声が店内に響き渡った。


「あら、大丈夫でした?今、タオルをお持ちしますね。」


「災難でしたねぇ~、強くなってきた時に当たったんですね・・・。」


「うんうん、強くなってきたって思ったらいきなりどしゃ降りなんだも・・・ん?」


「ひゅぅお?!お、おと、男の子ぉぉぉぉぉ?!」


わたわたと手を振りながら顔を真っ赤にして大混乱する女性は雨に濡れて上半身が下着まですっかり透けてしまってるのから目を逸らして何とか落ち着いて貰おうと話しかけた。


「落ち着いてください、別に取って食おうって訳じゃ無いですし、それと上半身透けてしまっています・・・。」


「ご、ごめんなさいっ///お見苦しいものをっ!///」っと耳まで真っ赤になりながらしゃがみこんでしまった。


「いえ、そんな事は・・・。」っとどうするかと思ってる所で志保が戻ってきてくれた。


「お待たせしました、こちら使ってください。それと一度、奥にどうぞ?軽くでも絞ってしまったほうが宜しいかと・・・。」


「すーーーはーーー、うんっ!ごめんなさい。こんなかっこいい男の子が居るなんて思ってなかったので・・・。」


「俺の事は良いので志保の言う通りに奥に行って絞るなりしてドライヤーでも使って軽くでも乾かしてください、風邪ひいてしまいますよ?」


「そ、そうね・・・それじゃ失礼して・・・。」


「私もお手伝いしてきますね、悠馬さんをお待たせするのは心苦しいのですが・・・。」


「気にしない気にしない。それよりも彼女に何か温まる物でも後で出してあげてくれ、俺のおごりって事でさ。」


「ふふっ。はいっ、分かりました。」そう言って志保は彼女を追って店の奥に消えて行った。


暫くして髪を乾かして服もある程度乾かした彼女は店内に戻ってきて「隣良いかしら?」っと俺の隣に来たから無言で椅子を引いて座らせた。


「どうぞ。悠馬さん、彼からのおごりです。」


「え?!そ、そんな・・・!素敵すぎるでしょ彼・・・。」


「ふふっ。悠馬さんですから、天然の女たらしなのでっ。」


「ちょぉ!・・・全く、志保も言う様になったなぁ~・・・。」


やれやれっとまぁそれだけ慣れてくれたって事なんだろうし、それくらいの方が俺も嬉しいし気楽だから良いんだけどね。


ちびちびと飲み物を飲みながら温まってた彼女が「ん?」っと何かに気付いたように俺の方を見た。


「どうかしましたか・・・?」


「お口にあいませんでした?」


「ん?・・・んんん?ねぇ、まって・・・?あ、コーヒーは美味しいです。」


「それは良かったです。それで・・・お客様どうかしたんですか?」


「も、もも、もも?!」


「すももも、ももも?」


「桃の内!・・じゃない!もしかしなくてもYouMaさん?」


「はいっ!そうですよっ!」


「うっそだぁぁ・・・・。」


その言葉を最後に彼女は意識を手放したのだった。


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「ぇぇぇ・・・意識手放したぞこの人・・・。」


俺の事に気付いた彼女は、座ったまま意識を手放してそんな彼女を放置する訳にも行かず、飲み物などは離れた位置にずらして前のめりにテーブルの上に倒した。


「はぁぁ・・・気持ちは分からない訳では無いですけど騒がしい人ですね・・・。」


「騒がしいって・・・辛辣な・・・。って分からない訳でも無いってどう言う事?」


「すいません、入ってきたタイミングがタイミングなので少しイラっとしてしまいまして、この方が悪いわけでは無いんですけどね。恐らくですが彼女は悠馬さんのファンなのでしょう、それで会えるなんて思ってなかったYouMaに会えた事で脳の処理能力を超えたのでは無いかと・・・。」


ぇぇぇ・・・そんなこと言われてもさ・・・・。


「取り合えずだ・・・目を覚ますの待つしかないよな?」


「そうですね、待つしかないですね。早めに目を覚ましてくれると良いんですけど・・・。」


その後、彼女が椅子から落ちない様にっと気を付けながら目が覚めるのを待っていると、志保がまた何かを言いたそうに俺を見ていた。


「どうした?」


「あのですね、さっきの・・・。」


「あぁ、何か言おうとしてたよな?」


「はい。あのですね・・・悠馬さんは・・・。」


「うん、俺は?」


「・・・っ。私のっ・・・。」 


そのタイミングで志保のお母さんが帰宅した。


「遅くなってごめんねー。あら?その人は?」


またしても何かを言おうとしたタイミングで今度は有希華さんが・・・。


「さぁ?何処の誰かって言うのもまだ聞けて無いので分からないよ、お母さん。」


「何でそんな人が寝てるのよ、というかなんか怒ってない?」


「怒ってませんっ!その人は、恐らくですけど悠馬さんのファンだと思う、悠馬さんに気付いたら意識飛んじゃったから・・・。」


「怒ってるじゃない・・・取り敢えずその人はそう言う事ね・・・。悠馬くんもごめんね~何か志保とお留守番させたみたいになっちゃって。」


「大丈夫ですよ、志保とゆっくりとした時間を過ごせたので。」


「それなら良いんだけど。志保っ!少しは進展した?!」


「ちょっとぉ!変な事言わないで!」


進展って・・・。あぁ、ある意味進展はあったかな?


「ありましたよ?進展。」


「えっ?!な、何を?!悠馬さんっ!」


「え?ええ?何々?!何があったの?!」


「いやまぁ、単純に何があっても志保の所に戻るって約束しただけですけどね。」


「なぁ~んだぁ・・・。エッチなの期待してたのにっ!」


「お、お母さんっ!だから悠馬さんに変な事言わないでくださいって何度も!」


「そんな事言ってるから進展しないんでしょうに・・・。」


ぎゃーぎゃーっと志保と有希華さんのやり取りを見ていたら煩かったのか女性が目を覚ましたのだった。


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