第5章 天音 志保編

第64話 志保との約束

愛央と恋人になって一か月が経過、配信であんな事して広がらない訳が無い訳で・・・他校の人間とか俺のファンって人が色々と現れた、ここまでは別に良い、普通にあり得ると思うし自分の住んでる近くに有名人が居れば会って見たくなったり見て見たくなったりするのは俺も分かるからな。


でも、俺が恋人作るなんておかしい!って言われる筋合いは無い。

俺と愛央の事に文句を言ってきたファンを名乗るのも勿論居て、そいつにはしっかりと「俺は芸能人じゃない、ただの高校生だ。自分の好きになった人とお付き合いしたいって思って何が悪い?告白して恋人を作って何が悪い?あんたに文句を言われる筋合いは無いわ。大体、ファンだって言うなら静かに応援してファンの人の幸せを願っておけよ。」っとはっきりと言ってやった。


結果、場所が校門だったって事もあって周りからの冷たい視線に耐えられずにそいつは逃げて行ってそれ以来は特に何も無く過ごしてる。


「いかがですか?自分としては美味しく淹れる事が出来たと思うのですが・・・。」


「うん、とても美味しいし有希華さんが淹れてくれるのと比べても遜色無いと思うし、何より・・・。」


「はい・・・?」


「俺の好みのブレンドにしてくれてるのが分かる・・・。」


「分かっていただけましたかっ///」


「流石にね。ステイルのコーヒーとは違うなって気付いたからさ。」


俺の言葉に志保は嬉しそうにカウンターの中から笑顔を浮かべてくれた。


「それにしても、私と悠馬さんの二人きりと言うのは初めてですね・・・。」


そう、今日は俺と志保の二人きりなのだ、志保のお母さんの天音あまね 有希華ゆきかさんは買い出しやらで出てるし、清華先輩はピアノ教室と家の用事で一日中拘束、愛央も他県の親戚の所で法事って事で朝から居ないのだ。


「そうだね、何だかんだで初めてだね。うん、美味しい・・・俺だとこんなに上手く淹れられないし志保のコーヒーが一番好きだな俺。」


「ありがとうございます///今までもお手伝い程度でやってはいましたけど、本腰いれてやり始めたのは悠馬さんと知り合って、悠馬さんがコーヒーを好んでるのを知ってからですね。」


「それで俺の好みのブレンドまで作れてこの味だから本当に凄い。お世辞抜きで有希華さんが普段淹れてくれるステイルのコーヒーと比べても遜色ないどころか俺はこっちが好きだわ。」


「悠馬さんの喜んだ顔を見たくて喜んで欲しいと思いましてっ///その結果が家の為になるならそれはそれで良い事だと思います。」


「確かに、無駄にはならないね。」


くすくすと俺と志保は静かな店内でゆったりとした時間を過ごしながら笑いあっていた。


「星川さんと清華先輩が居ないのは勿論ですけど、結構、雨が強いからかお客さんもいらっしゃりませんし母も出てますし、本当に二人きりで独り占め出来て嬉しいですっ///」


「雨様様ってやつだなっ。俺も志保を独り占めしてこの優しい時間を送れてるの嬉しいよ。」


「ま、またそう言う事をサラっとっ///」


「先に言ってきたのは志保だろうに・・・。っと真面目な話するよ?」


「やり返されるとは思ってなかったので・・・、真面目な話ですか?」


俺の言葉にきょとんっとした疑問顔をして何のことでしょう?って感じで俺を見詰めて来てる。


「言うのが遅くなったけど、あの日はありがとうな。」


「あの日・・・ですか?」


「俺が愛央に告白した日の事。志保が愛央に気合い、いれてくれたんだろ?」


「あぁ・・・気合いって訳でも無いですが聞いてるとは思いますが引っ叩いてしまいましたし・・・。」


「愛央も感謝してたから別に問題無いだろ?俺だってそう言うのが必要な時があるって事くらいは分かってるし志保が無意味に暴力を振るうなんて思ってない。」


「はい・・・。」


「愛央の目を覚まさせてくれてありがとう、それともう一つ。」


「もう一つですか・・・?」


「いつも側に居てくれて、いつも俺を守れるような立ち位置に居てくれてありがとうな。」


「気付いてたんですね・・・。」


「割と早めにな。志保は何て言うか大和撫子って言えば良いのかな?こっちを立ててくれるのが分かるし近くや後ろに志保が居るって分かってるから俺も無茶出来るってのもある。まぁ・・・守られるのは情けないと思うけど女性に暴力を振るう訳にはいかないしな・・・。状況次第ではあるけど・・・。」


「悠馬さんは本当に珍しい方です。普通と言うか他の男性なら躊躇う事も無いと言うのに・・・。」


躊躇ためらわないのは俺も変わらないよ。母さんと菜月、愛央、志保、清華先輩、そして他の友人達を傷つけるって言うなら暴力だって振るうし血で汚すのも躊躇ためらわない。」


人を殺す事すら躊躇ためらわないと言ったのと同じって事に気付いた俺は居た堪れなくなってしまい下を向きながらコーヒーを口に運ぶ。

でも実際にそうなったら俺はきっと躊躇わないと思う・・・。


「悠馬さん、顔を上げてください。」


「あぁ、すまん。・・・ってなんだよその見た事無い優しい顔っ。」


「そ、そんな顔してましたかっ///何と言いますか、悠馬さんらしいなっと思いまして。」


「俺らしい?」


「はいっ。大切な何かや、大切な人を守る為なら自分が汚れても構わない・・・悲しいとは思いますが悠馬さんらしいなっと思いました。ですから・・・そう言う事になってしまった時は私が貴方を止めます。貴方の手を血で汚すなんて事にはさせません。」


「志保・・・。分かった、それなら俺も約束する。たとえどんな事になっても志保たちを守る。そして必ず戻ってくるって約束する。」


そう言って俺は小指を志保の前に出す。


「はいっ。」


その言葉と共に志保は嬉しそうに俺の小指に自分の小指を絡め指切りげんまんをして俺達は約束を交わしたのだった。


「って・・・なんつー話してるんだ?これから戦地に向かう訳でも何かと戦う訳でも無いってのにさっ。」


「確かにそうですねっ。何でこんな話になったんでしたっけ?」


あはははっと二人で笑い合いながら変な空気をお互いに吹き飛ばすのだった。


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