幕間
第59話 清華 腹筋 死ぬ
チリンチリン〜っ。
「いらっしゃいませ!清華先輩っ!」
「こんにちわ、志保ちゃん。」
「はいっ、こんにちわっ。今日はもうフリーなんですか?」
「だよ〜。愛央ちゃんもデートだし、志保ちゃんとお家デートしに来たよー!」
「ふふっ。確かにお家デートになるかも知れませんねっ。」
私はいつものカウンター席について、いつの間にかここが私の指定席みたいになったなぁ〜としみじみ思った。
「今日はどうします?いつものにしますか?」
志保ちゃんからもいつもので通じる程になってる事に更に苦笑い。
「そうだな〜、今日は少し暑めだからアイスコーヒーかな!ミルク1のガムシロ2ね!」
「はいっ!少しお待ちくださいね。」
そう言って志保ちゃんは奥に消えていった。
それにしてもっと、昨日の愛央ちゃんの慌てっぷりったら・・・あの後、あーでもないこーでもないっと大騒ぎしたんだろうなぁ〜。
男の子からしたらそういうのも可愛いのかな?
女側から見ても自分とのデートの為に頑張ってくれるのは嬉しいし同じなのかな〜?っと考えてる間に志保ちゃんが戻ってきて私の前にコトンっとアイスコーヒーとマフィンを置いてくれた。
「これはサービスです。個人的に作ったやつなので良ければっ。」
「うんっ。ありがとぉ〜!」
私達は取り留めの無い話をしながら静かな時間を過ごしてた。
そこでふっと気づいたことで私は無意識に「ふふっ」っと笑いを零してしまう。
「どうしました?」
「あぁ、いやね?お店に来て何気なくコーヒー頼んだけど、苦手な筈だったのになぁ〜ってね?」
「ふふっ。そう言えば言ってましたね?」
「うんっ。悠馬くんがブラックを好んで飲んでるのを見て私も好きな人の飲物を〜って程度で飲み始めた筈なのに気付いたら好きになって、何も考えなくても頼むようになってるってのが、何か可笑しくてっ。」
「分かります。私も悠馬さんで同じ様なのありますし、悠馬さんが好きだから私ももっと美味しく淹れられるようにっと練習は欠かしませんしね。」
「何気ない小さな変化や影響だけど与えられて無意識に刷り込まれちゃってるんだもん、罪な人だよね?本当っ。」
「ですねっ。」
私達はそう言ってお互いの好きな人のことを話しながら沢山笑い合うのだった。
その後、私は少し疑問に思っていたことを志保ちゃんに聞くことにした。
「そう言えばなんだけど・・・。」
「はい?どうしましたか?」
「愛央ちゃんってさ、何であんなに自信無いの?」
「あ〜・・・それは・・・。」
そう言って志保ちゃんは黙り込んだ。
「本人から聞くべきなんだろうけど何ていうか地雷を踏みそうでさ・・・。」
「地雷・・・そうですね。そう云う部分はあるかもしれません。なんと言いますか、お姉さんと10歳離れてるんですけど、その人が凄い美人でスタイルも良くて看護師をしていて優秀なのもあって、コンプレックスもあるみたいなんです。それと、中学時代の事でしょうね・・・。」
コンプレックスかぁ〜・・・愛央ちゃんは私から見てもとても可愛いし綺麗だしスタイルも良い。
それに知り合ったばかりの私を仲間にいれてくれる位、社交性もあって、優しくて、悠馬くんは私達の中心だけど、悠馬くんを抜けば私達の中心は間違いなく愛央ちゃんだ。
私には、そして志保ちゃんにも人の中心に立って引っ張るなんて出来ないだろう、愛央ちゃんはそれを無意識でやってのける。
同じ事をやれと言われても私には絶対に出来ない、だから私には愛央ちゃんが何故あんなにも自信が無いのかが分からない。
「コンプレックスはまぁ〜分からなくも無いけど、中学時代っていうのは?」
また志保ちゃんは黙り込んだ、話すべきかを悩んでるって感じかな?
まぁ、私も無理に聞きたいわけじゃ無いし本人から聞かないのはフェアじゃ無いとは思うし・・・。
「無理に・・・。」
チリンチリン〜っ。
私が無理にはっと言おうとしたら扉の開く音がして、そこにはデートに行ってるはずの愛央ちゃんが居た。
…………………………………………………………
「いらっしゃいま・・・星川・・さん・・?」
「あれ?愛央ちゃん?どうしたの?」
「あはは・・・、志保さん、清華先輩・・・こんにちわ。」
「う、うん。こんにちわ、じゃないよ!何してるの?!何で一人でこんなところに居るの?!・・・あ、ごめん!こんなところは言い方悪いね・・・。」
「ほんとですよっ!・・・ってそれは兎も角、何をしているのですか?デートでは無かったんですか?」
「それは・・・してきたよ・・・、でも・・・。」
「何があったんですか?ちゃんと話してください。」
そこからの愛央ちゃんの話は私が聞きたかった事も含まれていて、とてもつらかった・・・。
最初はどうしても怒りが抑えられなくて、こんな良い子になんて事をって!でも最後の方はそんな状態でも折れない愛央ちゃんの強さと壁があっても立ち向かえる強さと人を引き付けて引っ張れる凄さと色々な感情が綯い交ぜになってしまい泣いてしまった。
その後は今ここに居る理由を聞いた志保ちゃんが愛央ちゃんを引っ叩いて怒って・・・。
「そうだよ!分かるわけ無いんだよ!二人は自信を持てる特別を持ってて悠馬君みたいな特別な人の隣に立っても釣り合うんだもん!私みたいな何も特別が無い普通の人の気持ちなんてわからないよ!!」
愛央ちゃんのこの言葉に私も志保ちゃんも「何を言ってるんだ?」っと感情が顔に出てしまった。
だから私達は悠馬くんに選ばれたのは貴女なのだから自信を持って欲しいと間違いなく特別なんだと伝え、始まった悠馬くんの配信を聞き始め、終わりの頃に悠馬くんの言葉で愛央ちゃんは覚悟が決まったかの様に私達に謝ってお店から飛び出していった。
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「全く・・・世話が焼けますね・・・。」
「とか言いながら志保ちゃんの顔、満足そうだよ?」
「それはまぁ・・・、これで少しは自信を持ってくれると嬉しいのですけど・・・。」
志保ちゃんは愛央ちゃんが置いて行った荷物を集めてお店の奥の方に仕舞いにいった。
「俺の好きを舐めるな!っか・・・。」
良いなぁ~・・・本当に愛央ちゃんが羨ましいよ。
あんな事言っちゃうんだもん・・・あんな事されたら誰だって落ちる・・・。
私は何となくスマホを開いてツブッターを確認すると面白い事になってる事に気付いた。
「ぷっ・・なにこれぇ・・・。志保ちゃん!見て見て!」
「どうしたんです?ツブッターがどうかしました?・・・は・・・?」
「凄いよねこれっ。ついさっきの事なのにっ。」
私と志保ちゃんが見るツブッターのトレンドはさっきの悠馬くんの配信の事で一杯だった。
「えっと、YouMa配信、YouMa好きな人、YouMa新曲が神曲っと・・・俺の好きを舐めるな!ですか・・・。」
「こんなのもあるよ?女子が言われたい言葉ランキング急上昇、俺の好きを舐めるな!だって・・・って志保ちゃん・・・?何か空気が・・・。」
「いえ、何か腹立ってきました・・・。こんな凄い人にあんな事までさせた星川さんに・・・。」
ぇぇぇぇ・・・志保ちゃんが黒くなってる・・・?
「全く、星川さんにも困ったものです。つまらない上に無意味な劣等感なんてくそくらえです!そんなもん犬にでも食わせてしまえば良いんです!」
・・・・えぇぇ・・・?志保ちゃんから?・・・くそくらえ・・・?
「ぷふぅ、ぶっ・・・ふふ・・ふふふっ・・・。」
「清華先輩もそう思いません?ってどうしました・・・?」
「あーーはははははははははっ。ひぃぃ、ひぃぃ、あははははははははっ。だめっお腹痛い・・・許してぇ・・あははははははっ!」
志保ちゃんから!志保ちゃんから!くそくらえっっっ!無理っ!志保ちゃんからそんな言葉出るとか無理っ!
「くくくくくっ、ぶふぅぅっぅっ、ふひぃ・・・あはははははははは。」
ばんばんっとテーブルを叩きながら私は笑い転げる、だって、だって!大和撫子って感じの志保ちゃんよ?お淑やかで汚い言葉も下品な事も言わなそうな志保ちゃんからよ?こんなの無理だってっ。
「あひゃひゃひゃひゃははははははっ、無理ほんと無理ゆるしてぇぇ。」
「な、何を笑ってるんですか?!」
「だってっ!志保ちゃんから!あははははっ!くそ・・ぶふぅ・・くらえ・・・ぐふぅ・・とか・・・あーひゃひゃひゃひゃひゃっ!」
「そ、それは・・・つい出てしまっただけじゃ無いですか!って言うか笑い過ぎです!!」
「あーはははははははははははっ!焦ってるのも可愛いっ、ふひぃ・・おもしろ・・・だめ・・あはははははっ!」
「も、もう!知りません!」
「あーーはははははははははっ!」
っと暫くの間私の大笑いする声がステイルの中で響き渡り志保ちゃんが涙目になりはじめたのを見て流石にっと我慢し、一言謝り、その日は解散になったのだった・・・。
まぁ・・・帰り道や、家に帰ってからも思い出して一人で笑うと言う状態でしたけど・・・。
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そして次の日・・・私は今、ソファーの上でお腹を押さえながら痛みに耐えている・・・。
「あんたねぇ・・・。」
お母さんが冷ややかな目で見て来るけど仕方ないじゃない!なったものはさ!
「はぁぁ・・・女の子の日でも無く、筋トレした訳でも無く・・・怪我したわけでも無いのに、筋肉痛でお腹痛いって初めて聞いたわ・・・・。」
そう、昨日、余りにも笑いすぎて腹筋を酷使した私は物の見事に筋肉痛になった。
「うぅぅ・・・私だって・・いたっ・・・初めての経験だよ・・・っぅ・・。」
確実に笑い過ぎたのが原因ではあるけど、家に帰って来てからも思い出して笑ってしまって酷使し続けた結果がこれである・・・・。
「ぐふぅ・・いったーーーっ!志保ちゃんのせいだ・・・。」
「人のせいにしない!自業自得でしょ!」
分かってますよ・・・でも言いたくなったんだもん!
ちなみに・・・志保ちゃんに言ったら・・・「天罰ですっ!」って返ってきました・・・。
「はぁぁ・・・、今日は寝てなさい。それじゃ動けないでしょあんた・・・。」
「はーいっ。そうする・・・。」
私はその日は結局何も出来ずに、寝てても痛い、立っても痛い、力が入るだけで痛い、何か当たるだけで痛い、動くだけで痛いっと言う地獄の様な一日を過ごす事になったのでした・・・・。志保ちゃんごめんっ。でも面白すぎるのも悪いと思うの・・・、あれは無いの・・・。イタタタ・・・。
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清華ごめん、反省はしてるけど後悔はしてない、思いついてしまったんだ、マジゴメン
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