第52話 特別であること

店内に沈黙が流れてる。

私は自分が感じている劣等感を二人にぶつけてしまった。

そう、ただの劣等感、子供のわがままと言われたら反論なんか出来ない。


「あのね、愛央ちゃん。」


顔を上げられない、清華先輩が優しく声をかけてくれたけど、私は余りにも惨めで情けなくて顔をあげる事が出来ない。


「私からしたら愛央ちゃんの方が特別だよ。だって私を誘ってくれたじゃないっ!私が愛央ちゃんの立場なら多分・・・うぅん、絶対に誘えない。だってライバルは一人でも少ないほうが良いもの。」


「だって!それは!・・・ッ!」


駄目だ、上手く言葉が出てこない・・・。


「打算も計算も無く誘ってくれたのは分かってる、だからこそ私も愛央ちゃんと志保ちゃんと協力しようって思った。愛央ちゃんは、何も自慢できることが無いって言うけどそれは違うよ。」


「ぇ・・・?」


「1つ目!打算も下心も無く人を誘える優しさ。2つ目!人の中心に立って頑張れる素質。3つ目!壁があってもどんなに大変でも辛くても前を向いて歩ける強さ。4つ目!私達のことを綺麗って言うけど、愛央ちゃんこそ、とても可愛くて綺麗だよ。」


清華先輩が褒めてくれてる、認めてくれてる、でも・・・。



「まだ付き合いの浅い私ですらこんなに愛央ちゃんの凄いところを出せるよ?これは愛央ちゃんがだからなんじゃないの?」


そうなのかな・・・?たまたま私が今の立ち位置に立てただけだからそう感じるんじゃないの?


「星川さん、思い出してください。中学時代の事、あいつらからの嫌がらせを受ける貴女を周りはどうしましたか?あの日々を乗り越え前を向いて折れずにいられたのは何故ですか?」


「それは、志保さんが・・・。」


「いえ、私だけでは無いでしょう?私だけだったら無理だった筈です。クラスメイトは?先生は?他の貴女の周りに居た人達は?」


確かにあの頃は皆が私を・・・。


「分かりましたか?普通なら巻き込まれるのを怖がって手助け何てしないはず、それなのに貴女の周りはどうですか?」


「皆が助けてくれた・・・。」


「そうです。それは貴女が星川愛央であったから星川さんは皆の中心になれるから、そしてそれを誰もおかしいと思わなかったから。貴女は貴女が思う以上に凄いんです。そしてそれこそが貴女の言うなのでは無いですか?」


「うん、そうだね。私、志保ちゃん、愛央ちゃん・・・そして悠馬くん。この四人なら中心は誰が見ても悠馬くんだって認めるけど悠馬くんを抜いた私達だけなら間違いなく中心は愛央ちゃんだよ。そして、それは私には出来ないこと。」


「私にも無理ですね。人の中心に立って引っ張るなんて私には無理です。」


二人の言葉が私の心を溶かしていく。

確かにあの頃は辛かったし逃げたいと何度も思った。

でも、志保さんが、他のクラスメイトが周りの皆が味方してくれたから超えられた。

良い思い出は余り無いけどそれでも一人ぼっちだった訳じゃ無いのだけは間違いない。


私が顔を上げると志保さんが清華先輩が微笑んでくれている。

一人じゃ無いんだって分かる。

まだ自信を持つまでは行かないけどそれでも・・・。


二人の気持ちを思いをじっくりと心に染み込ませていたら私達3人のスマホから通知が鳴った。


「お?悠馬くんが配信するみたいだね。」


「みたいですね、ちょっと待っててください。ノート持ってきます。」


志保さんがカウンターから離れて家の方に歩いていくのを見ながら私は今日の事を思い出していた。

合流して私のせいで騒ぎになりかけても怒らないで直ぐに移動して、喫茶店でおしゃべりして、あーんってされて・・・///

恥ずかしかったけど、嬉しかった。

移動してカラオケ行って沢山歌った後に一緒に歌ってってやって、軽くまたご飯食べてモールに行って、一緒に沢山のゲームして、悠馬君の負けず嫌いなところを知って・・・。

私が昔から集めてるって言ったからってぬいぐるみ取ってくれて・・・思い出すだけで笑顔になっちゃうし好きが溢れてくる。

最後の一枚に撮ったプリクラは人には見せられないけど後ろから抱きしめてくれて・・・凄いドキドキして、嬉しくて幸せで・・・///


そして、あいつらに絡まれたのを一切迷うことなく助けてくれた。

自分だって危ないかもしれないのにそんな事知ったことか!って感じで、ほんとにもうっ。

カッコ良かったし頼りになる背中ってあんな感じ何だろうな〜・・・。

繋いだ手からも「大丈夫だ、心配するな、任せろっ。」って口にしなくても言ってくれてるのが分かった位だし・・・。


「お待たせしました。始まったところみたいですね。」


私が今日の事を考えている内に志保さんが戻ってきて悠馬君の配信に繋げてくれた。


「愛央ちゃん、これだけは忘れないで悠馬くんに選ばれたのは貴女だって事。」


「そうですね、私も同じ日に知り合って、少し遅れる形で知り合った清華先輩の私達3人の中で星川さんだけが誘われて告白された。つまり選ばれたのは貴女なんです、私達からしたら・・・いえ、他の人達からしても、貴女は間違いなくですよ。」


志保さんのその言葉に私はまた泣きそうになりながらも画面を見るとそこには、さっきまで一緒に居た彼が写ってる、その姿は・・・。


「泣いたみたいだね、隠しきれてないや。」


そう、確実に泣いた後だと分かる悠馬君が居た。


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