第53話 好きを舐めるな!

「このまま諦めてたまるか!俺は諦めないからな!!!」


俺は直ぐにPCを立ち上げて配信ソフトを起動する。

少しの時間で準備は整い、直ぐにでも始められる状態になって、俺は間髪入れずに開始した。


「よっす!皆、聞こえるかな?いきなりの配信ごめんね。」


俺が配信を開始すると直ぐに沢山のコメントが流れて行くそこには「大丈夫ですか?」「涙の跡・・・?」「何が?!あったんですか?!」っと俺の異変に気付いた人達のコメントがどんどん流れて行く。


「あはは、やっぱり分かっちゃうか・・・ちょっとあって久しぶりに泣いちゃったんだよね。」


俺は頬を軽くかきながら恥ずかしいなってのを隠す事なく話した。


「えっとそれで何だけどこの配信は・・・。」


「どうしたんですか?」「止まった?」「YouMaさまー?」っと話が止まった俺を心配してコメントが流れていく。


「うん。目的は、とある一人に聞いて欲しい曲があって、それをまだ未完成だけど出来てる分をやるから皆に判定してほしいんだ。」


「とある一人のための曲?!」「え・・・なにそれ羨ましい・・・。」「私も作って欲しい〜〜!」


「まだ題名とかも決まってないんだけど、もし良かったら・・・。」


俺のその言葉にリスナーの人達は「送られる人は羨ましいけど私の意見が力になるなら!!」「妬ましいけど少しでも力になれるなら!」っと皆、協力してくれるみたいなのを確認して俺は鍵盤を叩き始めた。


室内に柔らかい音と俺の歌声が響く、あんな感じで開始はしたけど愛央は聞いてくれてるっと不思議な確信を持って俺は歌っていた。


あんな別れ方は納得なんてしないし出来ない。

ウザいって思われても構うものか!俺はそんな簡単な気持ちで告白したんじゃない!ちゃんと話を聞くまで諦めないぞ!っと気持ちを込めて出来てる分を歌いあげた。


「取り敢えずはここまで何だけどどうかな?」


一切コメントが流れて来なくて止まっちゃったかな?っと不安になりながらも話し始める。


「えっと〜・・・?聞こえなかったりコメントする価値も無いって思われたりしたかな?」


「違います!素敵すぎて画面が・・・っ。」「涙止まらないです!こんな素敵なぁぁぁ!」「学生時代を思い出して郷愁やら思い出やらが押し寄せて来てぇぇぇっ!」「この歌を送られる人って幸せ過ぎるでしょ・・・。」っと一気にぶわぁぁぁぁっとコメントが流れて来る。


「ほっ。シーンっとするからダメすぎたのかと思ったよ。まだ未完成なのに泣いてくれるほどって事はこのままいけるかな?」


俺のその問いかけに「いけない訳無いです!」「是非とも送った後に許可貰ってアップしてください!」「うんうん!この曲をずっと聞いて居たいです!」「ほんとにやばいマジで涙止まらないよぉぉ!」


うんうん、この感じならこれはこのまま完成させて良さそうだな・・・。

さって・・・ここからが本番だ・・・。

気合い入れろ俺!


すぅーーはぁーーっと大きく深呼吸して俺は愛央が聞いてると確信したまま思いのたけを叫ぶ!


「配慮はして名前は出さないけど、聞いてるだろ!これは!今のは!お前に向けて作ってる曲だ!どう思った?少しは伝わったか!あんな終わり方、最後何て俺は納得してないぞ!」


画面の中は「え?え?」「え・・・?えぇぇぇ?!」「何?何?!」っと大混乱である。


「しっかりと話を聞くまで諦めたりしてやるもんか!俺は何時だって手を差し伸べるし掴んでやる!一人で歩けないなら引っ張ってやる!」


そう、何があったのか何を考えていたのかそんな事関係ない、俺は俺の気持ちを素直に伝えるだけ、その為の配信と曲なんだ!


「俺の好きを舐めるなよっ!!!!」


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SIDE 愛央


「俺の好きを舐めるなよっ!!!!」


画面から悠馬君の声が飛んでくる、私の為に作ってるって言う曲も他の人達と同じく凄い心に響いたしさっきから涙が止まらない・・・・。

そして、配信なのに、あんな事を堂々と言っちゃうんだもん・・・。


釣り合わないとか特別が無いとかそう言う事すらぶっ飛ばしてしまうかのような悠馬君の心からの叫び、私は本当に何をしているんだろう・・・。

自分の劣等感で悠馬君を傷つけて逃げ出して・・・それなのに・・・私なんかにこんな・・・。


「どうするの?愛央ちゃん。」


「どうしますか?星川さん。」


「わ、わたし・・は・・っ。」


「これだけされても逃げますか?差し出された手を振り払いますか?貴女の言う特別が目の前にあるのに逃げますか?」


志保さんの厳しい言葉・・・だけどその顔は・・・心配もあるけど私なら絶対にこの手を離さないと信じてるって目が語ってる・・・。


「愛央ちゃんっ。男の子にここまでさせて何もしないの?」


清華先輩もきつめに言ってくるけどやっぱり目は私を信じてるって語ってくれてる・・・。


私だって・・・私だって・・・!うぅん・・違う・・・私はっ!!


ガタンっと立ち上がった椅子から大きな音が鳴るけどお構いなしに動き始める。


「志保さん、清華先輩ごめん!行ってくる!」


「「いってらっしゃい!頑張ってねっ!」くださいねっ!」」二人の声を背中に聞きながら私は荷物も持たずに店を飛び出した。


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あの後配信は大混乱、俺が「好きを舐めるな!」なんて言ったもんだから「YouMaさまの好きな人?!」「えぇぇぇ!?告白!?!?!」「ちょ?!何て勝ち組?!

?!?」「ずるい!ずるい!羨ましい!」「こんな情熱的な・・・。」「ドラマかよ・・・。」等など一気に大騒ぎになってしまった。

そんな中、俺は敢えて冷静に「これが今日の配信でやりたかった事と言いたかった事なんだ、皆も付き合ってくれてありがとう。」っと言って配信を終わらせた。


ガンガン通知がなってツブッターがえらい事になってるけどそっちはスルーするって決めて俺は愛央にフリッペを一言だけ送る。


「公園で待ってるから。」


ただそう送って俺は部屋を後にする、その後、母さんと菜月に声をかけて暗くなり始めてる外に飛びだした。


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