第51話 愛央の劣等感
「ごめん・・なさい・・・。ごめん・・・ごめんね・・・悠馬君っ。」
ぐすっ、ぐすっと嗚咽をもらしながら私はトボトボと歩いてた。
片手には悠馬君に選んで貰った服の入った袋、そこから覗く悠馬君がUFOキャッチャーで取ってくれたぬいぐるみ。
今日のデートの記念と思い出が私を責め立てる、今日一日凄い楽しくて幸せで最高の一日だった。
でも、私は最後の最後で悠馬君を傷つけた・・・。
そう傷つけたのだ、悠馬君が勇気を出して一歩を踏み出してくれてしっかりと告白してくれたのに私はそれを断った。
「あは、あはは・・・何してるんだろう・・・私・・・。」
逆月悠馬くん、YouMaって名前で活動してて投稿してる歌も演奏も凄くて人気も凄いあって、学校でも勿論、文武両道ってああいう人の事を言うのだろう、モテモテで自信に満ち溢れていてとっても凄い特別な人・・・。
そんな凄い人が私みたいな何にも特別が無い女の子を好きだって恋人になりたいって言ってくれた。
それなのに私は・・・、私はっ!
「・・っ!・・・うぅぅ・・・っ、ぐすっ・・・。」
最後に見た悲しそうな悠馬君の顔が頭から離れない・・・こんな逃げ出すかのように居なくなった私なんてもう・・・。
二度と悠馬君と話せないかもしれない・・・そう考えただけで心が張り裂けそうになって余りの苦しさに私は胸を抑えたまま蹲って・・・・。
「あぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!やだよ!嫌だよーーー!二度と話せないとか会えないとかそんなの絶対にやだよぉぉぉぉぉぉ!」
人目も憚らずに大泣きしながら自分がとんでもない大馬鹿だと理解した・・・。
…………………………………………………………
「あれ・・・?私、何で・・・。」
家に帰ろうと歩いていたはずの私は気付けば志保さんの家、行き付けの喫茶店ステイルの扉の前に来てた。
「あはは・・・、ダメダメだな~私・・・。」
言いながらもガチャっと何時ものように扉を開いて店内に入ると落ち着くBGMと志保さんの声・・・。
「いらっしゃいま・・・星川・・さん・・?」
「あれ?愛央ちゃん?どうしたの?」
「あはは・・・、志保さん、清華先輩・・・こんにちわ。」
「う、うん。こんにちわ、じゃないよ!何してるの?!何で一人でこんなところに居るの?!・・・あ、ごめん!こんなところは言い方悪いね・・・。」
「ほんとですよっ!・・・ってそれは兎も角、何をしているのですか?デートでは無かったんですか?」
「それは・・・してきたよ・・・、でも・・・。」
「何があったんですか?ちゃんと話してください。」
私は清華先輩が居ることに躊躇いながらも何れは話さないといけないことだよねっと覚悟を決めて過去の事、今日、何があったのかをゆっくりと話し始めた。
私の過去を聞いていく内に清華先輩は最初は怒って最後には泣きながらこう言ってくれた。
「愛央ちゃん・・・そんな事あったんだ・・・良く頑張ってきたねっ。凄いよ・・・。」
「志保さんとか、他の友だちも居たから何とかですけど・・・ね。」
「それでもだよ、折れないで前を向いてって凄いと私は思う。」
そうなのかな?私一人の力じゃ無いよ・・・、悠馬君ならきっと一人で・・・。
「それで何故今、ここに、居るんですか?」
「えっと、それは・・・先ずはスムーズに合流して喫茶店で話をして・・・それからモールで・・・。」
っと私は一連の流れを話してこれって惚気になってない?っと思いながらも何とか言葉を紡ぐ。
「それで・・・それでっ。」
「前半の惚気は兎も角、その後はどうしたんですか?」
「公園で話しをしてたんだけど、悠馬君から・・・その、告白されて、一人の女の子として好きだって、恋人になりたいって・・・。」
「おぉぉ!良かったじゃない!愛央ちゃんっ!悠馬くんから告白して貰えたなんて!・・・ってそれなのに何でそんなに悲しそうな顔してるの?」
「それは、そ、れは・・・。」
私は自分が何をしたのか、話そうとして言葉に詰まる・・・、心にも無い事だったけど口から出てしまった、逃げ出してしまった、私の考えも気持ちも話せずに逃げ出したんだ、それなのに・・・それなのに、私の心は、想いは、まだ悠馬君を求めてる、もう諦めないと駄目なのに・・・。
「ごめんなさいって・・・、そのまま悠馬君の顔見ていられなくて、何も話さずに・・・逃げた・・・。」
パーンッ!!っと、綺麗な音と私の頬が叩かれる感触、叩かれたと認識したと同時に熱さと痛みが走ってこれが現実だと認識させられる。
「・・・ッ!何すんの?!志保さんっ!」
「ちょっ!志保ちゃん!何してんの?!」
「何をしたか分かってるんですか?」
その言葉と共に志保さんに睨まれる。
「分かってるよ!!悠馬君を傷付けたこと位!!」
「そうですね!ですが!ただ傷付けるよりも酷いことをしたと言う意識はありますか?!」
「ちょっ!ちょっと志保ちゃん!」
「清華先輩は少し黙っててください!!星川さん!貴女は悠馬さんの事が好きなのでは無いのですか?!」
「好きだよ!大好きだよ!他の人なんて考えられないくらい悠馬君が好きだよ!そんな事言わなくても知ってるでしょ?!」
「えぇっ!知ってますよ!それなのに!それなのに貴女は!向き合わずに逃げたんですか?!悠馬さんが嫌いならそれも良いでしょう!ですがっ!!それだけ強い思いがあって向き合うこともせず話し合うこともせずに逃げたと言うのですか?!」
・・・ッ!志保さんの言葉が容赦なく刺さる。
そうだ、逃げたんだ、私は悠馬君から逃げた・・・だって、だって・・・あんなに特別な人の隣に立つのは私みたいな普通じゃ釣り合わないからっ!だから私はっ!!
私は、キッ!っと志保さんを睨みつけながら考えるよりも先に言葉が出てきた。
「志保さんにも!清華先輩にも分からないよ!」
「分かりませんね!私は天音志保であって星川愛央じゃない!星川さんの考えなんて分かりませんよ!」
「そうだよ!分かるわけ無いんだよ!二人は自信を持てる特別を持ってて悠馬君みたいな特別な人の隣に立っても釣り合うんだもん!私みたいな何も特別が無い普通の人の気持ちなんてわからないよ!!」
はぁはぁはぁっと私は悩んでいたことを二人に只々ぶつけてしまう。
こんな事言いたかった訳じゃ無いのに・・・悔しくて惨めで私の目からは止めどなく涙が溢れ出してくる。
そんな私を見て二人は何を言ってるんだ?こいつはって顔を向けてきた。
「はぁぁ、何言ってるの?愛央ちゃん。私からしたら愛央ちゃんの方が特別だよ。」
「そうですね、正直に何言ってるんだ?って言葉しか出てきませんが、私から見ても貴女は誰にも負けない特別を持っているでは無いですか。」
え?なにそれ・・・どういう事・・・?
「二人共何を・・・?だって、志保さんはお化粧しなくてもとても綺麗で料理も上手で他の家事だって完璧で非の打ち所の無いし、清華先輩も羨ましいって思う位綺麗で悠馬君と一緒に演奏できるくらいピアノも凄くて・・・それに比べて私は、私には何も・・・。」
そう、私には二人みたいに自慢出来る何かが無いのだ・・・。
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書いてて・・・辛い・・・。
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