第33話 2回目の入学式~代表挨拶~

呼びに来た教師を先頭に俺達は入学式が行われる体育館へと足を運んで用意されていたパイプ椅子に座って、校長先生の挨拶から始まりとどこおりなく進行していく、そして遂に俺の出番が来た。


「それでは、新入生代表挨拶に移りたいと思います。・・・新入生代表。逆月 悠馬君宜しくお願いします。」


「はい!」


遂に来たと思いながら緊張を表に出さない様に気を付けて、壇上に向かってゆっくりと歩き始める・・・。


「新入生の皆様、在校生の皆様、保護者の皆様、逆月悠馬君が我が校初の男子生徒であるから、挨拶をするとお考えになって居ると思います。確かにその理由もありますが、逆月君は、入試の試験を今までの最高点数を大きく更新する結果を収めました。後日、学校のHPに更新された最高点数を掲載しますが、今回、新入生代表挨拶は男子生徒だからと言う理由だけでは無く主席合格であるからです。ですので、勘違いなさらぬようお願いいたします。」


司会、進行の教員の話を聞きながら俺は壇上まで歩いて行って確りと前を向くと、全校生徒、全教師、そして保護者の視線が俺に一気に向いた。

自分に向けられる好奇の視線、純粋な尊敬の視線、自身のアピールをしてるかの様な視線、生前の俺であればこんな大舞台に立ったら緊張で言葉なんて出て来ないだろう、この世界に来て自分に自信を持ててる事が関係しているのか逆にリラックスしてる。


「自分に自信を持つって本当に大事な事なんだな・・・。」


ボソっと呟きながら壇上から新入生、在校生の順番で視線を動かすとその中に、愛央、志保、清華先輩の姿を確認、保護者の席から母さんと菜月を見つけて見てくれてると嬉しく思いながら・・・ふっと柔らかく笑顔を浮かべながら母さんに恥をかかせない様にっと思いながら確りと言葉を紡ぎはじめた。


「暖かな春の訪れと共に私達、新入生は本日付けで清蘭高等学校に入学いたします。本日は私達新入生の為にこのような素敵な式を行って頂きまして新入生を代表しまして感謝とお礼を申し上げます。」


俺の言葉に会場にいる全員が静かに聞いてくれている。


「高校生活の3年間は長いようで短い時間でしか無くあっという間に過ぎて行く事と想います。1日1日を悔いの無いように大切に過ごしていきたいと思っております。

私個人は数少ない男子の一人ですが皆さんと同様に勉強に励むのは勿論の事、日々の生活を頑張りたいと思っております。」


俺の言葉にあっちこっちから声が上がり始めたのを聞きながら言葉を紡いでいく。


「男子で勉強って・・・あ、でも主席合格だっけ、彼。」


「部活とかはしないのかな~・・・?マネージャーして欲しい・・・。」


「そして、在学中にかけがえのない友を作り色あせる事の無い思い出を作る事が出来ればと心より思っております。・・・ですのでっ!男だから等、気にせずに、変な遠慮などせずに接して戴ければ幸いです。」


「確かに、聞きましたっっっ。」「頑張らないと・・・・!」「貴方の為ならどんな事でもっ。」「絶対に仲良くなるんだっ!」


「そして、教師陣の方々、来賓の保護者の方々、今日この時も持ちまして厳しくも優しくご指導ご鞭撻下されば嬉しく思います。我々は未だ未成年、子供であります、故に時には思い悩む事もあるでしょう、その時は優しく手を、道を差し伸べて下さい、時には道を間違う事もあると思います、その時は厳しく手を貸していただければ嬉しいです。」


「うぅぅ・・・・ぐすっ・・・。」「教師で良かったぁ・・・。」「初めて言われて分かりました・・・どうし様も無く嬉しいものですね・・・・。」


「以上を持ちまして代表挨拶を終わらせて戴きます、新入生代表 逆月悠馬。」


その言葉を最後に、俺は深々とお辞儀をして挨拶を締めくくったのだが、とても長い間会場内は拍手の音が鳴り響いた。


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SIDE 葵


「うん、悠ちゃん良く頑張りました。」


私は今、挨拶を終えて壇上から確りと歩いて降りて行く息子を眺めている。

とても立派な挨拶をこなして会場を感動で満たした。


「兄さん・・・カッコいいです・・・・。」


「そうねっ。自慢の息子よっ。」


一緒に来ていた菜月も悠ちゃんの挨拶を聞いて周りの人達と同じように感動しながら悠ちゃんに向けてキラキラとした目を向けてる。


「それにしても・・・この挨拶で在校生も新入生も教師も虜にしたわね・・・悠ちゃん・・・。」


確かに自慢の息子だし、最愛の息子ではあるんだけど・・・、あの人たらし感はどうなのかな~?っと・・・嫌われるよりは良いんだけど心配もね・・・。

そんな事を考えながら入学式の続きを私は見続けるのだった。


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SIDE 愛央


「はぁ~・・クラス別かぁ~・・・。」


「仕方ないですよ、星川さん。私も残念ですけど・・・。」


私達は今、悠馬君と別れて自分のクラスに入り席に着いて入学式が始まるまでの待機時間を過ごしていた。

そんな私達の話題は勿論、悠馬君と違うクラスになった事なんだけど私達が悠馬君について話して居るとそりゃー、人が寄ってくる訳で・・・・・。


「あのさっ!お話し中にごめんね、私は、長谷川はせがわ みどりって言うの、宜しくね。それで・・・えっと・・・二人ってYouMa様とどう言う関係なのかな・・・?」


「長谷川さんですね、天音 志保です、宜しくお願いします。悠馬さんとの関係ですか?」


「私は星川 愛央宜しくね。悠馬君との関係かぁ~・・・。」


んーーーっと唸りながら何て答えようかと迷って居ると志保さんが先に話し始めた。


「それに応える前に先ず先に言っておきますけどYouMa様とは何の関係もありません。」


「え?でも・・・仲良さそうに一緒に歩いてたよね?星川さんと。」


「いえ?私と星川さんが歩いていたのは、隣のクラスの逆月 悠馬さんであって長谷川さんの言うYouMa様では無いですね。」


あぁ・・・成る程っと志保さんの言い分に私は直ぐに理解を示して同じように返すのと考えを改めさせることにした。


「そうだね、私達は確かに悠馬君と仲いいよ。でもそれは長谷川さんの言うYouMa様じゃない。あくまでも私達が仲の良いのは逆月 悠馬君で在って決してYouMa様じゃない。だから長谷川さんがYouMa様を紹介しろって意味で近づいて来たのなら諦めて。」


「え・・・?ちがっ!ちがくも無いけどそれだけじゃ無いよ!確かに仲が良いなら紹介して貰えるかな?って下心はあったよ、でも純粋に二人共仲良くなりたいって思って・・・、って今、言っても言い訳だよね。ごめん・・・・。」


「はぁ・・・。良いですよ、同じクラスですし仲良くするのに異論は無いです。でもYouMa様と仲良くなりたいと思うならそっちは自分で頑張ってください。」


「そうだね、紹介とかはする気は無いし長谷川さんが私の立場なら紹介なんてしないでしょ?それとね、YouMa様としか見ないなら悠馬君とは仲良くなるの無理だよ。そこは考え変えたほうがいい、これだけは言っておくね。勿論長谷川さんだけじゃ無く皆にも言える事だけど!」


私の言葉にクラスで聞き耳を立てていた子達皆が、気まずそうな顔をしてたけど直ぐに私の、私達の言ってる意味を理解したみたいであっちこっちから「確かにそうだよね・・・・。」「自分がそうだったら嫌だし・・・。」「私達はまだ目が覚めたからラッキーだし、まだ間に合うよね・・・・。」っとあっちこっちで話してるのが聞こえて来た。


「えっと・・・二人共ごめんなさい。それで改めてなんだけど・・・・。」


「「こちらこそ宜しくね。(お願いします。)」」


そうして、入学式までの時間どうして仲良くなれたのか等を話しながら過ごして皆と打ち解けられたと思う。


ちなみにだけど・・・・新入生代表挨拶はびっくりしました、主席って何・・・・?

最高点数大幅更新ってどう言う事・・・・?

悠馬君凄すぎない・・・?


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