第19話 母の想い

SIDE 葵


正直焦った。悠ちゃんの迎えに着いたら二人の女の子が居るのを見た時は冷や汗が流れた。

悠ちゃんが色々と精力的に動くようになったのは良いけど、女に対しての警戒度も怖く成る位、下がってると感じていた。

だから二人も側に居たことが本当に焦った。


「まぁでも私の質問の意図を理解して確りと答えて居たし、二人共理性的で礼儀も確りしてるみたいだから安心したけど・・・。」


「ん?母さん何か言った?」


「うん、あの二人が良い子で良かったなーって。」


「あぁうん、愛央と志保か。確かに良い子だったね。あの子達も合格してくれると良いんだけどなー。俺、あの子達好きだ。」


悠ちゃんの言葉に私は寂しく思いながらも頑張ろうとしてる息子を誇らしく思って複雑な気持ちになった。


「そうねぇ。あの二人が合格して悠ちゃんの側に付いてくれるようになれば安心かな・・・。」


「母さん、寂しい?」


「えっ!?」


「顔に息子が遠くに行きそうで寂しいって書いてるよ?」


「えええええ?!」


私の反応に「当たったみたいだね。」ってくすくすと悠ちゃんは心から楽しそうに笑ってる。

でも、直ぐに真面目な、真剣な顔になって真摯に伝えて来た。


「大丈夫だよ、何処まで行っても幾つになっても俺は母さんの息子のままだから、母さんありがとね。何時も心配してくれて、何時も気にしてくれて。俺の我が儘を許してくれて。本当に感謝してる。」


「悠ちゃん・・・・。」


悠ちゃんの言葉に見抜かれてた恥ずかしさ、成長してる息子の姿、他の男性と違って頼りがいのある男を感じながら心が暖かくなって、泣くのを必死に我慢するのに大変な帰り道だった。


…………………………………………………………

「ただいまー!」


「兄さんおかえりなさいー!ママも!」


「なによー?私はついでな訳〜?」


「ち、違うってばっ。意地悪しないでよっ。」


「ごめんね?菜月ちゃん、ただいまっ。」


「うんっ。おかえりなさいっ!それで試験はどうだったの?兄さん。」


リビングに歩きながら菜月はそんな事を聞いてきてっ。


「勿論ばっちり!余裕だったよ!」


「流石っ!兄さんならそうだと思ったー!」


キャッキャと菜月は俺の隣に座って楽しそうに嬉しそうにしてる。


「菜月ちゃん!ちょっと聞いてよっ!悠ちゃんったらねぇ〜?」


何その意味ありげな視線、ニヤニヤもしてるし何を言おうとしてるんだ?


「どうしたの?ママ。」


「早速ね?二人も可愛い子を捕まえてるのよ〜?どう思う〜?受験を受けに行ったはずなのにねぇ〜?」


その事か・・・確かにその通りだけど言い方よ・・・。


「は?なにそれ?ナニソレ?兄さん、ご説明を・・・。」


「え、いや、知り合うのとか別に良くないか?」


「ほ、ほら。悠ちゃんっ、ちゃんと・・・ぶふぅ・・・説明しないとね?・・・ぷっ、ふふ。」


口押さえて笑い声あげるの我慢してんじゃねーよ!?

完全にわざとじゃんかこれ!!


「兄さん・・・?私が分かるように話してくださいますよね?」


「は、はぃ・・・。」


俺は菜月の謎の迫力に負けて出会いから全部話すことになったのだった。何でこうなるかな・・・?


「なるほど、それで二人と仲良くなった訳ですね?好きなんですか?」


「丁寧語やめろ・・・。まだ好きとか嫌いとかの判断は出来ないけど現状で言えば好きな部類の二人だよ。」


「分かりました、辞めますよ。ん〜、悪い人では無いのは分かるけど・・・ん?星川・・・?」


「気づいたか?菜月。」


「やっぱりそうなの?悠ちゃん。」


「確認はしてないってか、聞くの忘れてたから確実にとは言えないけど多分そうだと思う。」


「柚希さんの妹か〜!それなら安心だねっ!」


「10歳下の妹が居るって言ってたから間違いないと思うよ。」


「そっか!そっかぁ!兄さんがお世話になった看護師さんの妹と知り合うなんて運命感じるねー!」


「確かに言われてみれば偶然にしては出来すぎてる気はするわね。悠ちゃんはどう思う?」


「し、知らないしっ!そんな事聞かれても困るっての!部屋戻ってるからね!」


母さんと菜月のタッグを早々に切り上げて俺は照れた顔を見られないようにリビングを後にするのだった。

後ろから、我慢しながらも漏れてる笑い声を聞きながら、絶対にバレてるやつだこれ・・・。くそぉ〜。


…………………………………………………………

SIDE 愛央&志保


悠馬君が帰ったのを見届けて私達も帰ることにしたんだけど案の定と言うか何と言うか・・・。


「ねねっ!私と友達になろうよー、ついでにさっきの男の子も紹介してよっ。」


「お断りします。」「同じく。」


すーぐ寄ってきたよ・・・・。


「は?何いってんの?」


「下心ありすぎ、自分で出来なかったからって寄ってこないで。」


「ですね。自分から話しかけられなかったのなら諦めるべきです。」


「何あんたら?たまたま声かけて貰えて知り合えただけじゃん。それを自分でやったかのようにさー、あんたらだって同じじゃん。」


「そうだね。けど実際に知り合えて連絡先の交換出来たのは私達だし、大体にしてそんなに知り合いたかったなら話しかけてくれば良かっただけでしょ。」


「えぇ。その通りですね、その程度の行動すらしなかったのにあやかろうって時点で彼にも相手にしてもらえませんよ、絶対に。」


私と志保さんの言葉に顔を真っ赤にした彼女は何も言えなくなってぷるぷると震えてた。


「んじゃ、私達は行くからーじゃーね?」


「追いかけてこないほうが良いですよ?先生に見られてますし、これ以上は結果に響くと思います。」


悔しそうにしてる彼女を置いて私達は歩き出した。

それにしても・・・私・・・。


「星川さん、ずいぶん強気に出てましたね?」


「うん、自分でも驚いてる・・・。特に考えたりしなかったけど言葉がそのまま出て来たんだよね・・・。」


「良い事だと思いますよ、間違えた事は言って無いですし、私達が合格して側に付くようになればこれからもっと増えると思いますし。はっきりと強く言えるかは大きいと思います。」


だよね、絶対にそうなるのは目に見えてるし・・・、もう昔とは違うんだ私はっ。

悠馬君の側に居るなら負けない自分で居ないと・・・っ。


「寄って行きますか?星川さん。」


「え?あっ・・・うんっ。おばさんにも報告しないとねっ。」


考え事をしながら歩いていたらいつの間にか志保さんの家の喫茶店ステイルに着いてた。

ここは私が志保さんと友達になってからずっと通ってる常連のお店でもあって志保さんのお母さんとも仲良くさせて貰ったりしてる。


チリン~チリン~♪


「いらっしゃ・・・って志保か・・・。おかえりなさい。」


「あからさまにがっかりしないでください自分の娘に、ただいまです。星川さんも一緒ですよ。」


「おじゃましまーすっ。」


「愛央ちゃん、いらっしゃいーっ。いつもので良い?」


コクンって頷いて指定席になっちゃってるカウンター席に私は座っておばさんのカフェオレを待ってる間、悠馬君の事を思い出して一人ニヤニヤしちゃってた。


「はい、お待たせ。ニヤニヤしてどうしたの?良い事でもあった?」


「ありがとうございますっ。良い事があったんですよー、ねぇー?志保さんっ。」


荷物を置いてエプロンを付けて隣に座っている志保さんに同意を求める様に話を振った。


「なになに?試験の出来が良かっただけじゃこうはならないわよね?」


「そうですね・・・、素敵な出会いがあったんですよ。」


「素敵な出会い・・・?ってどう言う事?芸能人でも試験会場に居たの?」


「ん-!芸能人では無いけどある意味有名人ですね!YouMaさんが試験受けてて・・・なんとー!私達は連絡先を交換しましたーーーー!」


「え・・・?YouMaって・・あの?」


「ですよ。居たんです、試験を受けていたんです。先に星川さんが知り合って私もその後に・・・。」


「え?だって・・・男の子だよね?志保、あんた・・・。」


「言いたい事は分かります、でも違うって感じたんです。悠馬さんなら、多分・・・私も・・・っ。」


「そう・・・。これから仲良くなれたらいいわねっ、頑張りなさい。」


そう言っておばさんはとても優しい目で志保さんを見詰めて居ました、それは娘の成長を見守る親の目、幸せになってほしいと言う気持ちが籠った目だと思いました。


逆月悠馬・・・この人との出会いが私達の高校生活を物凄く楽しく、一生に渡って色あせる事の無い3年間になるなんて今の、私も志保さんも知らなかったのです。


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