第16話 二人目の運命

SIDE ???


「凄い人数・・・。」


私は今、自分が受験する高校の校門に来ています。

県内でも有数の偏差値の学校で共学校と言っても毎年、男子はゼロなんですけどね。

私自身、男子は苦手なので、毎年ゼロと言うのは助かります。

それに、母の母校でもありますし選んだ事に後悔は無いんですが・・・。


「唯でさえ自信無いのにこれは・・・。」


少し落ち込んで悪足掻きに単語帳を見たりしながら、受付けを待っていました。


「あら・・・?何でしょう、騒がしくなったような・・・。」


何となしに顔を上げて前を見れば、明らかに身体付きがガッシリとして、背の高い男子の背中が見えました。


「え・・・、男子生徒・・・?」


そこには私が苦手とする男子の背中が見えました、折角、共学校でも母の母校でもあり男子が入らない所を選んだと言うのに・・・・。


「男子が居るんじゃ・・・折角、頑張ろうとしてるのに意味が・・・。」


ガヤガヤとうるさくなってる列の声に耳を傾ければ「ちょっ?!やばいやばいやばいっ!」、「綺麗すぎっ!直視出来ない・・・。」、「今年は男子居るの?!絶対受かってやるっ!」、「あれ?ねぇ・・マッテっ?」、「まさかあれ・・・YouMa様じゃ・・・。」等と沢山聞こえてきました、勿論キャーキャー騒いでる声もですが・・・。


「YouMa様って、確かクラスの子が話してた様な?でも所詮、男子何て皆同じですよ。その人だって女性受けする為の演技に決まってます。」


眺めていたら、騒ぎの彼は列から出て行くのが見えました。


「ほらやっぱり、並んで待つの何て男子に出来る訳無いんです。我が儘が通ると思ってるんでしょうね、所詮その程度です。」


「では、逆月さんこちらにどうぞ、このままでは混乱が大きくなるので・・・。」


「はい、直ぐに行きます。皆もごめんねっ。こんな事になるなんて考えてなかった並んでる皆には悪いけど先に受付けさせて貰うね。本当にごめんっ。」


は・・・?教師のと言うか学校側の判断だったんですか・・・・。

そして、私は申し訳なさそうな顔で真摯に謝ってきた彼に見惚れてしまった。

謝った後に笑顔と手を振った彼は教師に連れられてその場を後にしたのでした・・・・。


「何で・・・、何であの人はあんなに綺麗な笑顔が出来るんですか・・・。」


他の男子とは違う・・・?そんな考えが私の脳裏をよぎりました。

その後は良く覚えていません、気付いたら受付けを終わらせて自分が試験を受ける教室で座っていました。


「他の男子ならあのような大人の対応は出来ませんよね・・・、それどころか早く案内しろっとでも言うでしょうし・・・・。」


所詮は男子、外向けの顔と言うだけっと思いながらも私は胸の高鳴りをどうしても抑えらなくて・・・・。

何故か、あの人に関しては違うだろうって言う思いを捨てられないのです。


「駄目ですね・・・、笑顔が離れてくれません。これから試験なんだから集中しないと駄目なのに・・・。」


席を立ちお手洗いを済ませた後に教室まで戻ろうと歩いていると見知った背中を見付け私は声をかける事にしました。


「星川さんっ!・・・あっ?!」


私の声には気付かずに歩いて行く星川さんは私が校門で見かけた男子をぶつかり尻もちをついてしまったのです。


「ほ、星川さんっ!逃げっ・・・・。」


「え・・・?嘘・・・、助け起こした・・・?」


男子が女子を・・・?ぶつかった女子を手を差し伸べて助け起こした・・・?


「しかも、自分から謝るなんて・・・、私は幻覚でも見ているのでしょうか・・・。」


あの彼は、私の知る男子とは違う?傲慢で我が儘で、肥満で、不潔で、3歳児みたいな癇癪を起こす男子とは違うと確信しました。


だって・・・誰も人の居ない状況です、怒鳴るなり殴るなりしても星川さんに口止めしてしまえばいい、それどころか。ぶつかったせいで怪我をしたとでも言えば済んでしまいます。


「助け起こして、自分から謝って、あの心配そうな顔はどうしても作られた物には見えませんね・・・。星川さんったら仲良さげに一緒に歩いて行くなんて・・・ずるいですよ・・・。」


ずるい・・・?私は自分が無意識につぶやいた言葉に自問自答すると直ぐに答えに到達しました。


「あぁ・・・そうか。そう言う事ですよねこれ。」


彼の事を見ると胸がどきどきします、彼の笑顔が頭から離れてくれません、彼が他の女子に優しくしてるのをずるいと思ってしまいます、私にも優しくしてほしい、話しかけて欲しい、笑顔を向けて欲しい、星川さんみたいに一緒に歩きたい・・・。


「よしっ!絶対に合格します!」


私は自分の中に芽生えた気持ちを自覚して彼と同じ学校に通うんだと気持ちを新たに受験に臨む事にしたのです。


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SIDE 愛央


えへへ、逆月 悠馬君かぁ~・・・。

かっこよかったなぁ~、笑顔も素敵だったし、愛央って呼んでもらえる事になったし、これは絶対に合格しないとね。


私はさっき、ぶつかってしまって助け起こしてくれた彼の事を考えて顔がにやけるのを抑えられなかった。


「駄目駄目。受験に集中しないとね。彼は点数に関係なく確定で合格だろうし私も受からないとね。」


ところで何で試験受けるの?って聞いたら「男子ってだけで合格は決まってるんだけど、俺だけ試験も無しにそれって卑怯じゃんか、それならせめて皆と同じに試験を受けたいって学校側にお願いしたんだよ俺。」って返答だもんな~。


「それに、自分の実力も知っておきたいからかぁ~・・・。そういう風に考えられるの凄いな~。」


男子だからってそれに甘えないで確りとした考え、私みたいに何も特別が無い女の子とは違って、眩しい位の人、それが私の感想だった。


「それに、彼の事考えるとドキドキが凄い・・・。あんな風に優しくされたり、綺麗な笑顔向けられたり、確りとしたところ見せられたら好きになっちゃうよ・・・悠馬君。」


あっ!フリッペ交換すれば良かった・・・。っと後悔して居たら目の前でバンっ!っと机を両手で叩かれて私はビクンっと身体が反応して見上げるとそこには、真剣な顔をした友人の天音あまね 志保しほが立っていた。


「えっと・・・・志保さん?真剣な顔をしてどうしたの?」


「さっきの彼は誰ですか?何て名前ですか?!」


えぇぇ・・・、この人誰?私の知ってる志保さんは男子何てろくでなしのクズしか居ないって考えの人だったはず、(男子)っとすべて一纏めにする事はあっても(彼)何て個別で認識する何て事は有り得ない人なのに・・・・。


「どうしたんですか?答えてください。さっき助け起こされて仲良さげに話しながら一緒に歩いてた彼は何て言う人なんですか?!」


「えっと・・・悠馬君の事?」


「悠馬さん・・名字は聞いてますか?」


「うん、逆月だよ。逆月 悠馬君。」


「逆月 悠馬さん・・・。素敵なお名前です・・・。」


いやいや!本当にこの人誰ですか?!名前を教えてからの志保さんは恋する乙女なんですけど?!


「え・・・?恋する乙女・・・?志保さんが・・・?」


「えっ!///そんな恋する乙女何て・・・///」


「はっ・・・?貴女誰・・・?」


私は思ったことがそのまま口から出てしまった。


「むっ。私が天音 志保以外の誰に見えるって言うんですか?星川さん。」


「いやだって!志保さんが特定の男子を彼って呼称するとか、フルネーム聞いて素敵な名前って褒めるとか、誰?!ってなるよ!」


「やばい!隣の教室にとんでもないイケメン居る!」、「見た見た!校門で見た!」「すっごい綺麗な顔で笑顔が素敵な彼だよね!」、「YouMa様だってあっちこっちで言われてるけど私もチラッと見れた感じだとそうだと思った!」、「嘘!?YouMa様なの?!」、「絶対合格しないと・・・・。」


教室中から聞こえてくる声に、私と志保さんはお互いに顔を見合わせて、頷きあった後どちらからともなく・・・ガシッっと手を握り合った。


「「先ずは試験に全力、そして合格。」」


「「そして、悠馬君、(さん)と仲良くなる!」」


私と志保さんはライバルの多さに協力体制を取る事がこの瞬間に決定した。


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