第0.5話 逆月 菜月
私には兄さんがいる。
私のクラスの中で家庭内に男性が居るのは私だけだと思う。
他の人も、もしかしたら居るかも知れないけど、聞いたことは無いし聞いても教えたりはしないだろう。
中には父親は居るって子とかは居るけど自分と姉や妹って話位しか聞かない。
そんな中で私の兄は他の人とは違うと思う。
見た目はとてもカッコいい、それに優しいし暴言も暴力も無い。
「まぁ、最近は昔みたいに名前で呼んでくれたり頭撫でてくれたりは無いんだけどね…。」
ママに私は嫌われることしちゃった?って聞いたらそういう年頃だから、仕方ないの、責めたりしちゃ駄目よ?って言われた。
でもそう言ったママの顔はとても寂しそうだった。勿論…私も…
ガチャンっと家の扉を開けて中に入るのと同時にただいまーっと声を出した。
「あ、兄さん…ただいまっ!」
「あぁ、うん。」
兄さんはそれだけ言ってこっちをチラッとだけ見て部屋に戻っていった。
「兄さん…寂しいよ…」
私は素直な気持ちが口から漏れてしまう。
「はっ?!ダメダメ!兄さんだってきっとどうして良いか分からなくてあの態度のはずっ!私が確りしないと!」
パンパンっと頬を叩いて気合いを入れ直した私は部屋に荷物を置きに行くのだった。
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部屋に戻った私は着替えを持って部活で汗をかいたのを流す為にお風呂に入りにいった、外は寒いししっかりと温まる為に湯船に浸かっていると昔の事を思い出した…
これはまだ私は保育園の頃の事、自分に兄さんが居るって事がどう言う事か知らなかった頃の事。
あの頃の私は、覚えてるだけでも何時も何時も「にーにっ。」「にーにっ。」言いながら後ろをついて歩いてたのを覚えてる。
「兄さんも兄さんでそんな私を邪険にしないで、いつも可愛がってくれたんだよね、なっちゃん!って呼びながら。」
幸せだったよね…勿論今も今で幸せだけど…やっぱり寂しいのは、寂しいよね…
「そういえば危ない時もあったっけ…私が口を滑らせそうになってしまってママに思いっきり怒られて、その瞬間に理解したんだよね、秘密にしないと駄目だって。」
保育園の時に私はお兄ちゃんが居るって言いかけた事があった、その時はママが迎えに来てくれた時で同じ保育園のお友達の親戚に男の子が居るって話から私は一緒に住んでるよ!って言いかけた。
「あの時、ママが今でも聞いた事が無い様な冷たい声で、菜月って一言だけ言ったんだよね。」
最初は何?!って感じだったけど直ぐに理由が分かった、その自慢したお友達は親戚のお兄ちゃんを連れてきなさいって保育園の先生達も目の色変えて怖かった。
「だから、それで理解してもしも自分が一緒に住んでるなんてバレたらどんな事になるか分かったものじゃないって…兄さんの事は秘密にしないといけないって…だって、その子はその次の日から来なくなって少ししてから聞いたら街からも居なくなったって話聞いちゃったし…」
もしもあの時漏らしてたら私達も…それに何よりママのあんな声と顔は聞きたくも見たくもないって子供ながらに思ったもんね。
「兄さん…また名前呼んで貰えるようになるのかなぁ~…頭撫でて貰えるのかな…?」
そんな事を考えながらすっかりと長湯をしてしまった私は逆上せてしまって這うようにお風呂から出て裸のまま洗面所で倒れ込んだ「菜月?!おい!菜月?!」っていう私を心配する兄さんの声を
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「んぅ…あれ…?自分の部屋…?」
私は気だるげなから身体を起こして何で寝てるんだろう?って記憶を掘り返した。
「そうだ…私、
ん?カサっと私が手を着いた所に紙があってそこに書いてあるのは兄さんからだった。
「えっと…「幾ら何でも
兄さん…ありがとう…ごめんね…
「うぅ…ふぅっ…ぐすっ…」
兄さんも苦しんでるんだ、何も変わってない優しい兄さんのままだ、ありがとう兄さん…大好き…
私は手紙を胸に抱きしめて泣きながら兄さん、兄さんって暫く溢れて来る想いを止める事が出来なかった。
そして…それからわずか一週間後に兄さんは頭を押さえて倒れて意識が戻らなくなった…
ママもだけど私も本当に辛くて悲しくて絶望的な時間を過ごす事になったのです。
そんな時間が、一週間も続きました、私もママも心身ともにぼろぼろになって毎日、目を覚ましてくれる事だけを祈る事しか出来ない時間が私達を襲ったのです…
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