序章
第0話 逆月 葵
おぎゃぁおぎゃぁっ!
私が産み落とした子供が産声を上げた、無事に出産できて本当に良かったぁ〜。
私は愛しの我が子の顔を見ようと分娩台に横になったまま顔を看護師に抱かれてる子に向けると看護師は驚いた顔をしたまま、固まっている。
え?何か障害でもあったの…?動いてくれない看護師に不安になりながらも私は声をかける。
「あ、あの…?」
「…子の子です。」
「え?何て?」
「ですからっ!男の子なんです!!」
「ほ、本当…に?」
「はいっ!おめでとうございます!!本当に本物の男の子です!!」
「…っぅぅっ!!」
まさかの男の子、余りの嬉しさに言葉も出ない…。
「男の子の出産に立ち会えるなんて、看護師冥利に付きます!本当にありがとうございます!そして、おめでとうございますっ!!」
「ぁ…あぁ…、産まれてきてくれてありがとう…。貴方の名前は…悠馬、もしも男の子だったら付けようと思ってきた名前。」
「意味は考えていたんですか?」
看護師の言葉に私はゆっくりと答え始める。
「清く清々しい心で思いやりもあって優しくてそれでも馬の様などこか力強く感じる、そんな子に育って欲しいからです…。」
「素敵ですね。そんな男の子になってくれたら立ち会えた私も嬉しく思います。」
看護師さんの声を聞きながら私は貴方のお母さんですよ〜、これから宜しくね?って心の中で思いながら疲れに任せるように眠りに落ちるのだった。
次に目覚めたのは病室だった、側には母が居てくれて…。
「良く頑張ったね。これからが大変だけど、親になったんだから頑張らないと駄目よ?」
「うん、ありがとう、お母さん。こんなにうれしいんだね、親になるのって。」
「私もあんたの時に同じ事思ったよ、立派に育ってくれて誇らしいってついこの間思ったのに、もう人の親になるんだから…。」
「何よー、ついこの間なの〜?それは酷くない?」
「ごめんごめんっ。でもね?親にとって子供なんて大人になっても子供なのよ。何て、私も私の母からそう聞かされたんだけど、やっと意味が分かったわ。」
もうっ!いつも調子良いんだから、でも…ありがとう。
「ねぇ〜、お母さん。」
「どうしたの?」
「ありがとう。何がって事じゃ無いけど私のお母さんで居てくれてありがとう。」
心からそう思えた、母に感謝を伝えたいと本当に思えたのだ。
沢山、喧嘩もしたし怒られもした、勿論、褒められもしたし、愛されて育てられたって自信を持って言える。
だから・・・私も間違わないで悠馬を育て上げる事が出来ると不思議と思えたのだった。
「ちょっ?!いきなり何?!真顔でそんな事言われると恥ずかしいわよっ!」
「良いじゃない、私だって普段なら恥ずかしいけどこう言う時位。」
「別に良いけど…。」
そう言って顔を背けた母は背ける前に見えた顔は照れくさそうな嬉しそうな顔をしてるのを私は見逃さなかった。
「あ、でも〜。これからはお婆ちゃんって呼ばないとねぇ〜?」
ニヤニヤしながら私が言うと…ピシィっと固まってから、とても良い笑顔で私に振り返ってきたけど、目が笑って無かった!!
「孫に言われるなら兎も角…あんたに言われる筋合いは無いーーーー!」
ギリギリっと一瞬の早業で、私の頭を掴んで締め上げてきたっ?!
「ちょっ?!痛っ痛いっ!!ギブギブーー!!」
「調子にのる頭はこれかぁーーー!」
「割れる!割れる!割れるからーーーー!ごめんってばーー!!」
個室の病室に私の叫び声が響き渡るのだった。
そこまで怒らなくても良いじゃん…。
この馬鹿力めぇ〜。
その後退院した後はもう大忙し!
母が受け継いだ会社を大きくする!って決め、学生時代からの友人に声をかけたり、後輩に声をかけたりして、人を集めて一新して、優秀な人達のお陰で会社の業績はどんどんうなぎ登りになり大企業に分類されるレベルにまで成長した。
悠ちゃんに兄弟も作らないと!っと途中で思い立った私は自分でもびっくりするほどの速さで第二子を妊娠、出産、この子は菜月と名付けた、春の花、暖かくなってきて咲く花、回りを暖かく包めるような優しさを持った子に、そして夜でも照らしてくれる月の優しい光の様な子にそんな意味で菜月と名付けた。
悠ちゃんが産まれて何もかもが上手くいくようになって菜月も産まれて兄弟仲良くて、母が引退するからと、私が会社を受け継いで。
将来は菜月が継いでくれると嬉しいけど無理矢理はさせるつもりはない。
他にやりたいことがあるならそっちを優先してもらいたい。
そして、何より…最愛の子どもたちが私が居なくなっても困らないように残せるものは残したい。母がそうしてくれた様に…。
「はぁ〜、と言っても最近は悠ちゃんとまともに会話も出来てないけど、反抗期ってやつなのかな〜…。」
全く、会話が無いとかでは無くて必要最低限の会話だけ、暴言を吐くとか暴力を振るうとかは無いからいい方ではあるんだろうけど…。
「でも、寂しいのは寂しいのよね、それに何か思い悩んでる様な?って、そろそろ起きてもらわないとね、起こしに行きましょ。」
そして…この日を境に何の前触れも無く私の地獄の一週間が始まるのだった。
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