第三話 姫君を喰う話(4)
やってきたその日にわたくしは施設の地下に作られた小部屋へキンスキーに連れていかれました。
「ああやっと手に入れた、手に入れたぞ」
キンスキーは嬉々として声を上げました。
そして、わたくしは目隠しをさせられました。
「口を大きくお開け。美味しいものをあげよう」
またお菓子をくれるのかな。わたくしはそう考えていました。でも、そこに差し出されたのは。
何が舌先に臭い、しょっぱい味がするものが突き付けられました。わたくしは何か分かりませんでした。
でも、あえぐキンスキーがわたくしの衿口から肌へ手を入れたとき、ゾッとして目隠しを取り、身を引き離しました。
はじめ、わたくしはキンスキーがそんなことをするとは信じたくなかった。
でも、下半身をさらして、鼻息荒く迫ってくるキンスキーを見て、これは本当に起こっていることなんだと思うしかありませんでした。
キンスキーはわたしを押さえつけ、身を乗り出してきました。服を脱がされ、骨張った手でどこを撫で回されているのか分からないほど何度も何度も触られて、鳥肌が立ちました。
痛みが走って、こらえるのに必死でした。
「じきに気持ちよくなるぞ!」
そう叫んでキンスキーは何度も何度ものしかかってきましたが、わたくしは皺だらけのキンスキーの興奮した顔が迫ってくるばかりで、ひたすら怖くて泣き叫ぶのを抑えられませんでした。
何度も抗っていると、とうとうキンスキーも疲れ果てたようで、わたくしから身を離しました。
「ふん。お前の他にも娘はいるんだからな。今度は姉のロザリンドで試してみるか。お前よりは劣るが不細工の方がそそる」
キンスキーに唾を吐かれたのが分かりました。でも、わたくしは恐怖から逃れられた安心で、ほっと一息ついたのです。
翌日にはロザリンドが地下室に連れていかれました。
わたくしは牢獄のような、病棟のような何もない部屋の中に閉じ込められて、何日も出られないままに暮らしていましたから、そこで何が行われたのかはすぐには分かりませんでした。
でも、憔悴しきったロザリンドが部屋に入ってきたことで、同じことが行われたと理解できたのです。
隅の方に俯き、三角座りをして身を震わせているロザリンドの姿に、わたくしは正直ざまあ見ろというか、溜飲が下がるものを覚えました。
やや気持ちが落ち着いてきたわたくしは、ロザリンドに近づきました。
「離れて!」
ロザリンドは顔を隠しながら退けようとしました。
わたくしはいい気味に思って、
「意地悪ばっかりしてるからそんな目に遭うんだよ」
と言ってしまいました。今でもこの言葉を後悔しています。
わたくしは自分が嫌な惨めな思いをしたのに、同じ目に遭った気に食わない姉を嘲笑ってしまった。
心の安らぎを得ようとしてしまった。
キンスキーはそこにつけ込みました。ロザリンドには酷く痛めつける日と、優しくする日を別に作ったのです。優しくする日にわたくしがロザリンドの不幸を望んでいるのだと囁きました。
それは事実でした。でも、ロザリンドが責め苛まれるのは、すべてわたくしの指図だと言うことになっているのでした。
しかし、当時のわたくしはそのようなことは知るすべがありませんでした。ただ、ロザリンドが深い憎しみの目でわたくしを睨んでくるのが分かりました。
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