フレンドシップ 3

 無謀なる銀行トンネル作戦が始動して、3日。幸運に幸運が重なり、トンネルはほぼ完成。明日、日曜日に仕上げて、金庫から金を盗み出す算段。

「やっとここまで来たな」

 黄色いヘルメットに作業着の3人。汗を拭う。とにかく暑い。

「ホットコーヒー。タンブラーで持ってきた」

「キイチ。だからなんでホットなの」

「僕も水飴をジップロックで持ってきた」

「馬鹿しかいねえのか」

「ギャンブルをするやつはみんな馬鹿だよ」

「そんなことはねえよ。お前、博打を知らねえからそんなことが言えるんだ」

「ハア」

「さて、じゃあ明日。ここに集合だ」

 そうしてやってきた翌日。彼らはもちろん快眠。目覚めも快調。

 事務所に集合。

「バナナはおやつに入る?」

「遠足じゃねえぞ、カネ」

「ブルーシート持ってきた」

「置いてけ、キイチ。お前は一生不味くて熱いコーヒー飲んでろ」

「ひどいなあ、ヒデ」

「もう行くぞ」

 事務所の地下へ下りる3人。そこで見たのは衝撃の光景。

「あれ、トンネルは?」

「なくなってる。というか」

「崩れているな。そうか、支えてなかったから崩れたんだ」

「おいおい、どうするんだ」

「失敗じゃないか」

「もう強行突破で行こう」

「は?」

「正面から強盗する」

「なんの計画もないのか」

「じゃあ行こう」

「即断即決だけだよ。ヒデの長所は。浅いよ、思慮が」

「もうこれしかない」

「またトンネルを」

「それは面倒」

 ヒデとカネのシンクロ率100パーセント。

「やれやれ」

 無駄な呟きだ。どうせキイチも彼らに流される。


「強盗だ!」

 日曜、のはずが、曜日を間違っていた。平日の銀行。馬鹿3人が侵入。

「あ」

 行員、すぐさま警報機を鳴らす。

「あ」

 警察、すぐさま駆けつける。状況を瞬時に理解。

「あ」

 3人、抵抗する間もなく、手錠を掛けられる。現行犯。

「あーあ」

 全てがスムーズだった。3人は結局釈放された。もちろん罰金を払った。

「馬鹿だ。馬鹿だよ」

「馬鹿だなあ。トンネルさえ完成していたらなあ」

「宝くじ買った方が利口だよ」

 キイチは足元に落ちていた宝くじを拾いながら、言う。

「馬鹿。宝くじなんて当たらねえよ。くだらないギャンブルさ」

 キイチから宝くじを奪い取るヒデ。くじを引き裂く。

「何するんだよ」

「こんなちゃちなことせずに、もっと派手なことをした方が稼げる」

「そうかもねえ」

「もういいよ、俺、探偵に戻る」

「馬鹿。次の計画こそ」

 3人は知らない。その宝くじが当たっていたことを。それも5億円。

 馬鹿3人は夕暮れに消えてった。

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フレンドシップ 春雷 @syunrai3333

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