第44話 死

SIDE 蓮夜(過去)


「ぇ・・・?あ・・やね・・・?」


「・・・っごめんね・・・やっちゃった・・・。」


俺に向かって倒れ込んで来る彩音を俺は抱きとめる・・・その身体からは真っ赤な血が溢れてて、俺の服にも抱き留めた腕にもべったりと付いて・・・。


「彩音ぇぇぇぇぇ!何で?!どうして?!」


俺は彩音を抱き締めながら心の底からの絶叫を上げる、こんなのは嘘だと、現実じゃ無いと思いたいのに、彩音の温もりと白くなっていく顔色が全て現実だと知らせて来る。


「うそ・・・嘘ですよね?!彩先輩!!!やだぁ!嫌ですっ!!こんなの駄目ですよーーーー!!!」


「ご・・めん・・・ね?やく・・・そく・・・守れ・・・なさ・・・そう・・・。」


「もう良いから!話すな!大丈夫だから!だからっ!」


「えへへ・・・れん・・・や・・・泣い・・・てくれ・・・るん・・・だ・・・。」


「当たり前だろ!泣かない何て無理に決まってるだろう!!!もう!しゃべらなくて良いから!」


「や・・・だ・・・せっか・・・く・・・おめかし・・・した・・・のに・・・なぁ・・・。」


「買いに!一緒に買いに行きましょうよ!何処にだってお付き合いしますからぁ!だから!」


ぼろぼろと司も俺も大粒の涙を零しながら彩音と話すけど、どんどんとその身体が冷たくなって行って・・・。


「ごめ・・ん・・・ねむく・・・つか・・さ?一緒に・・・おかい・・・もの・・・いこ・・・う・・・ね?」


「はいっ!はぃっ!何時だって!何処にだって!一緒に!行きますから!」


「れ・・・ん・・・や・・・?・・・い・・・る・・・?」


「居るよ!ずっと一緒に!彩音とこれからもずっと!ずっと!」


「うれし・・・い・・・な・・・わた・・・し・・・のせ・・い・・・で・・・めい・・・わ・・・く・・・。」


「思ってない!彩音の事で迷惑な事なんて!今までもこれからも!絶対に無いから!ずっと!好きだから!彩音を愛してるから!いらない心配だから!」


「う・・・ん・・・。わ・・たし・・・も・・・あいし・・・て・・・。」


ストンっと俺の頬に触れていた彩音の手が力無く地面に落ちる。


「おい!彩音!彩音?!起きろって!まだ逝くな!まだはえーーって!!!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


「やだよぉ・・・あや・・・せんぱぃ・・・こんなの・・・こんなのぉぉぉぉぉ!!!」


「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」


「おまえぇぇぇぇ!殺す!お前もお前を育てた家族も親戚も何もかも殺しつくしてやる!お前の目の前で!痛めつけて何度も何度も殺してやる!絶望を植え付けて最後にお前を!!生きたままミキサーにいれて飲ませながら殺してやる!!!!」


「私もやる・・・。どんな手段を使ってもお前の全てを殺してやる・・・。」


俺と司は心が死んだと感じた、今の状態ならどんな残酷な事でも無表情、無感情で出来ると確信していた。


「アヒャ、アヒャひゃひゃアヒャっ。姫ぇぇぇがぁぁぁぁ!・・・今、参りますっ。」


その言葉と同時に自分で首にナイフを突き刺し切り裂いて自殺したのを俺と司は見続けた、とんでもない量の血が噴き出して人形の様に倒れる・・・。

俺は直ぐに、彩音を抱き上げてあいつの血が間違っても彩音にかからない様に離れた。


「お前は・・・彩音と同じ場所には行けねーよ・・・。行かせたりしない。」


「一人で永遠に彷徨え!」


俺と司はそいつの死骸をそのままに工場跡を後にした・・・。


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SIDE 有希那


「そ、そんな・・・こんなの酷すぎる。」


「その後は、駆けつけた警察や親、おじさんやおばさんが彩音を見て泣き崩れて、俺も守れなかった事で、どんな顔をして良いのか分からなくて・・・。」


そんなのは当たり前だ、こんな状況で冷静に動ける訳がない・・・ましてや中学生で自分を庇って最愛の人が死んだのだから・・・。


「俺は彩音を守れなかったどころか、俺があの男をもっと容赦なく潰して居たら、彩音が俺を庇う事も無かったし俺の代わりに死ぬことも無かった・・・だから、彩音は俺が殺したんだ・・・。」


「違う!彩音さんは蓮夜くんにそんな風に思ってなんて欲しくないよ!彩音さんだってそんな風に縛るために犠牲になったんじゃないよ!そんな考え方は間違えてるよ!悪いのはその狂信者であって蓮夜くんじゃ無いじゃん!!」


「分かってるよ・・・そんなの俺だって分かってる・・・。でも、そうでも思わないと自分を保てなかった・・・。」


「私には、その気持ちが分かるなんて言えない、でもね・・・蓮夜くんを思う気持ちは彩音さんにだって負けないよ!私だってきっと、彩音さんと同じになったら同じ行動するって言い切れるもん。」


蓮夜くんが私のファンクラブに対して、あの先輩に対してあそこまで強固に抵抗して徹底的に潰した理由も分かった、そして・・・私は自然とそうするのが当たり前で在るかのように蓮夜くんを正面から抱きしめた。


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SIDE 司


全員がぼろぼろと涙を流してる、間島先輩ですら、完全に泣いて居た。


「ひっくっ・・ひぐっ・・・。わ、わたし・・・まもれ・・・なくて・・・足ばっかり・・・ひっぱ・・・って・・・。だから・・・居ない方がって・・・ぐすっ。」


「もう、それだけは絶対に違う。蓮夜も彩音さんも司が居てくれて嬉しかったし幸せだった、何度だって言ってあげるっ。だってね・・・私達だって、司が来てくれてもっともっと楽しくなったんだからだから間違い無いよっ。」


そう言って雫先輩は私を抱き締めてくれる、泣いてる子供をあやす様に優しく私を抱き締めて、頭を撫でながら・・・。


「そうだよ、私だって司には感謝してるんだからね?有希那の時の事もそうだし、蓮夜くんに、間島くん、雫って友達も増えて、毎日楽しくて最高だったんだから。」


美織先輩も雫先輩と同じように私を抱き締めながら落ち着くように宥めて来る・・・。

間島先輩だって何も言わないけど、凄く優しい顔で私達を見てくれてる、俺達は仲間だって言ってくれてると感じる。


「それで、その後どうなったの・・・?二人も目の前で死ぬところを見て司は大丈夫だったの?」


何とか落ち着いた私は話を再開するけど・・・何か恥ずかしい・・・。


「彩先輩の事でそれどころでは無くて・・・今ならきっと吐くでしょうね・・・。その後は本当に酷かったです・・・蓮夜さんは生きたまま死んでいるとでも言えば良いでしょうか・・・?何をするのも無気力で、目にも光も無くて・・・感情が無くなってしまったかの様で・・・。辛かったです・・・。」


「蓮夜の事は少し想像付くかな・・・出会ったばかりの時のあいつの目は死んでいた。」


「うん、それでどうしても気になって絡む様にして引っ張りまわして何とか光は戻ったけど、それでもたまに遠くを見つめてぼーっとしてる事とかあって気になってた。」


「それにあのリングもな。絶対に何を言われても離したりしなかったもんな。」


「それも今の話で分かったけど・・・、彩音さんに渡していた物?渡そうとしていた物?だったんだね。」


「あれは、彩先輩の誕生日に蓮夜さんがプレゼントした指輪ですね。二人の絆の証として常に右手の薬指につけていました。」


「左手じゃないの?」


「はい、右手ですね、ペアのリングなので男除けの意味も込めてとかだった筈です。」


「それなら確かに大事な物だね。そりゃ、ムキになって外したりもしないはずだわ。」


「うん、それで・・・その後は・・・?自殺した男の家族とかさ・・・。」


「えっと・・・それは・・・。」


「それは・・・?まさか蓮夜くんに報復とか?!」


「いえ・・・そう言うのは無かったんですけど、何と言いますか胸糞悪い終わりと言いますか・・・。」


「ぁ・・・もしかして・・・?ニュースになったあれか・・・?」


間島先輩の言葉に私はコクリと頷く。


「ニュースになったあれって?なんかあったっけ?」


「あぁ、一家惨殺、母親が夫と妹を殺害して自分も首を吊って自殺してってやつ。世間の評判とかを気にする人だったから長男が人を殺して自殺して逃げたって叩かれて耐えられなくなってって事件あったろ?」


「あぁ!確かにあった・・・酷い事件だって思ってたけど・・・そっか・・・。」


「まぁ・・・自業自得ですしザマァって思ったんですけどね、私は。」


「言い方は兎も角、確かにそうね。そんな狂人を育てたんだから当然の結末よね。」


「はい、回りも皆が皆、同じ答えでした。寧ろそんな狂人を育てた家族が死んでくれて安心して居た位です。」


「まぁ・・・そうなるだろうな・・・。」


私の言葉に誰もが当然だと言う顔をしてる、酷いかも知れないが当たり前だと思う。


「それからですね、先輩が見た目を悪くし続けたのは、だからこそ先輩たちには感謝しています。先輩がまた、立ち上がれる力を与えてくれて。」


「そんな大袈裟なものじゃないさ、どんな見た目だったとしても蓮夜は蓮夜だし親友なのは変わらない。」


「そうよ!それに、何だかんだで色々と手助けしたりしてたから蓮夜に感謝してる人が多くて馬鹿にする人なんて居なかったしね!まぁでも、実は見た目が良いってのを知ってるのが私と間島くんだけだったのが変わっちゃったのは残念かな〜っ。」


「雫ってば・・・私は仲良くなったのは、今の見た目からだけど、そう言う人が居るって言うのは知ってたし、こうやって仲良くなれて良かったって思う。雫に司、間島くんとも友達になれたしね!」


「皆さん、ありがとうございます。私が話せるのはここまでです。もう分かっては居ますが敢えて聞かせてください。」


私の真剣な顔に皆さんも顔を真面目にしたのを見て私は最後の質問を聞く。


「この話を聞いてこれからも蓮夜さんと、私と仲良くしてくれますか?友達でいてくれますか?」


「「「当たり前でしょ!!!」」」


間髪入れずに先輩達はそう、応えてくださり私は自然と笑顔になったのです。

……………………………………………………………

SIDE 有希那


私は泣きながら蓮夜くんを抱き締めている。

話を聞いてこんな素敵な人が何でこんな目に合わないと行けないのか?と言う怒り。

私の時に同じ過ちを繰り返さないための奮闘への喜び、愛しさ。


「有希那・・・これで分かったろ?俺と居ると危険かも知れない、死ぬかも知れない・・・だから、はなれっ「いやっ!!」・・・っ?!」


「私は!蓮夜くんが好き!彩音さんの事を知って、起こったことを知っても変わらない!私は彩音さんには成れないけど、蓮夜くんと一緒に歩いて行く事は出来るから!だからっ!」


私は思いの丈を叫びながら、この人の手を離さない!諦めたりしない!私が蓮夜くんと歩くんだ!と彩音さんにも聞こえるように・・・。


「これからは、私が側に居る。絶対に一人にしないから!一緒に歩いて行こう?ずっと一緒にっ!蓮夜くん!貴方が大好きです!」


私は改めて自分の覚悟と想いを確りと蓮夜くんの目を見ながら伝えたのだ。


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