第43話 罪

多分、始まりはファンクラブなんてものが出来た事だと思う、あの時・・・強固にでも拒否して潰しておけば、あんな事には成らなかったんじゃないか?と今でも思う。


「中学に入学して半年もしない内にかな?俺と彩音にそれぞれファンクラブが出来た、俺の方はまだ良かったんだ。俺に迷惑をかけない、彩音に嫌がらせをしない、困らせないみたいな感じで纏まって居たからさ。」


「二人にファンクラブって・・・。」


「問題は彩音の方だった、見た目も性格も全てが相まって彩音のファンクラブのリーダーは狂信者になった、それこそ彩音が死ねと言えば本当に死ぬかの様な・・・。」


「えぇぇ・・・何それ・・・気持ち悪すぎるよ。」


「あぁ、彩音も正直言って気持ち悪いと言って居たよ。誰にでも優しかった彩音がだ。」


「そりゃそうだって・・・こうやって少し聞いただけの私だって気持ち悪いと思うもん。」


「あぁ、そして俺と彩音が付き合ってる、恋人になったと広まっていくと俺に対する嫌がらせが激化していった。」


「激化・・・。」


「陰湿な虐めの様なやり方、物を隠すのから壊す、盗む、すれ違いざまに殴ってくる。」


「はぁぁ?!何それ?!明らかに異常じゃん!」


「あぁ、勿論異常だよ。だから俺達よりも回りがキレまくっていたな。」


「そんなの当たり前じゃん!ただの犯罪者集団って事でしょ?!」


「彩音も激怒、俺の周りも激怒、教職員、そいつらの親も巻き込んでの話し合い・・・色々な事があった。それでも収まらない・・・。」


「結局どうなったの・・・?」


「全員、犯罪者になった。言って分からないならと、法的手段を取ったんだ。」


「そ、それじゃ・・・。」


「あぁ、かなりの人数が街から消えた。勿論だけど俺達は広めなかったけど、他のがな・・・。結果、回りから責められ街にも居られなくなり消えていきファンクラブも自動的に無くなった。」


「それなのに・・・何で・・・?」


「追い詰められたからなのか・・・狂信者の考える事は俺には分からないけどね。そこから暫くは俺も彩音も回りの友人も静かに過ごす事が出来たんだ。でも・・・。」


俺は意識が過去に飛ぶ、もっとも忌々しい記憶へと・・・。


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SIDE 司


「それでどうなったの・・・?」


有希那先輩の時の様な事をやって徹底的に処理した後、ファンクラブも潰して一応平和になった事を聞いた先輩達が、続きを促して来る。


「一応ではありますが、平和になりました。先輩達も色々と大変ではありましたけど、表向きは落ち着いて二人の時間を過ごしたり私の事も込みで過ごしたり・・・。」


昔を懐かしむ様に私は話す、本当に楽しくて幸せで先輩達の楽しそうな顔、幸せそうな顔を見て嬉しそうにしてる私を思い出す・・・本当に幸せでした・・・。


「事態が動いたのは、クリスマスでした・・・。」


「クリスマス・・・。」


「蓮夜さんも彩先輩もクリスマスは二人の時間を取った後に私や他の友人達も込みでパーティーをしようって話をしていたんです、勿論、最初は断ったんですけど、変な遠慮しないの!って彩先輩に怒られましたっけ・・・。」


「何でもない日常か・・・、蓮夜を見てて分かったけど・・・本当に大切で尊いものなんだって理解したよ俺。」


「そうですね、私も同じです。彩先輩の事があってから何気ない日常って本当に大切で尊いもの何だって理解しました。」


私と間島先輩の言葉に雫先輩も美織先輩も確かにその通りだと言う様に頷いてる。


「あの日、クリスマス当日の日・・・私は拉致されました。」


「「「拉致?!?!?!」」」


まー驚きますよねー・・・された本人も驚きましたしね。


「あの日、色々と買い物をして、準備を進めて居たんです、家で持って行くものなんかの準備をしていたらインターホンがなり、家には私しか居なかったので、対応の為に出たんです。」


「そ、そしたら・・・?」


「そこに立っていたのは彩先輩を崇拝するあの男でした。」


「何で誰なのかを先に確認しなかったの?!」


「ですね・・・当時の私はそれくらい浮かれていたんです。その結果・・・。」


「拉致されたと?」


「はい、何かの薬品なのか、物理だったのかは分かりませんけど次に目を覚ましたのは廃工場でした。そして、最初に現れたのは彩先輩だったんです。」


「蓮夜は?遅れてきたの?」


「はい、まー、理由はあるんですけどね、彩先輩が気を引いてる内に私を助け出すって流れだったみたいです。でも・・・。」


あの時の事を話すのは辛い、心が悲鳴をあげてる、私の罪を話さないと・・・。


……………………………………………………………

SIDE 神代家(過去)


「司のやつ遅いな?」


ガチャッ!バタンッ!!


「蓮夜!!!」


「彩音?そんなに焦ってどうした?」


「司が!司が!!!」


そう言いながら彩音は俺に一枚の紙を見せて来た、それを受け取って内容を確かめると拉致した事、俺と彩音の二人で廃工場まで来いと言う事が書いてあった。


「どうやって司を?とかどうやって運んだ?とか疑問はあるけど、時間を過ぎても司が来てない事を考えると無視は出来ないな・・・。それに恐らくあいつだろう・・・。」


「ど、どうしよう・・・、司に何かあったら・・・。」


「俺と彩音の二人で・・・ね・・・。見捨てるって選択肢は無いし行こう。」


「う、うんっ!急ごう!」


俺と彩音の二人は書置きを残す、司が拉致された事、犯人は狂信者である事、俺と彩音で廃工場に向かう事、この書き込みを見次第、警察と救急に連絡する事を書いて俺達は急いで現場に向かった。


それから1時間かけて俺と彩音の二人は拉致された現場に着く、俺が別の入り口から入って彩音は真っ直ぐに向かうと提案されたけど、流石に危険すぎるからと俺は断るが、彩音の強い決意と視線に俺は折れるしか無かった。

そして・・・。


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SIDE 司


「それでどうなったの?」


「あいつの前に現れた彩先輩を見て、あいつは狂喜乱舞でした、蓮夜さんが居ない理由も先に自分だけが来たから遅れていると言う嘘を信じて、姫はあの男に騙されているのです!汚された心も身体も私が癒して差し上げます!さぁ!今すぐに私の胸の中に!そうすれば天羽 司は無事に帰しましょう!っと・・・。」


「狂ってやがる・・・。」


本当です、どうしたらあそこ迄狂えるのか・・・本当に不思議です。


「兎に角、彩先輩はそれで時間を稼いで居たんです、そしてその隙に蓮夜さんは私の所までたどり着きました。でも・・・。」


「でも?助けられたんじゃないの?」


「私が・・・私が・・・蓮夜さんの姿を見て気が緩んでしまって・・・声を出してしまったんです・・・。」


「え?それじゃ・・・。」


「はい、結果バレてしまいまして、あいつは私に向けてナイフを投げて来て・・・蓮夜さんが私を胸に抱き抱えて助けようとして・・・。」


「もしかして・・・蓮夜のおでこの切り傷ってその時の?」


「はい、雫先輩は見た事あるんですね。あの傷は私を庇ってその時に付いた傷です。幸いにもノーコンだったからか、掠る程度で済んだんですけど切った場所が場所だけに出血は酷くて・・・。」


「あー目から上って切ると小さい傷でも出血酷くなるもんな。」


「その出血を見て私も更に混乱してしまって・・・。」


「それは仕方ないでしょ・・・、自分のせいで怪我させてしまったって分かったらさ。それが、司の言う罪?」


「私の罪は、馬鹿正直に対応して拉致された事、私を庇う事で蓮夜さんに怪我を負わせた事・・・。それと・・・私のせいで・・・。」


「司のせいで・・・?」


「私のせいで・・・蓮夜さんがまともに戦えなかった事、彩先輩が死んでしまう事です。」


そう・・・私が居なければ蓮夜さんが怪我をする事も、彩先輩が死ぬ事も無かったはずなんだ・・・。


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SIDE 蓮夜(過去)


「チッ・・・狂人がっ!」


「蓮夜!逃げて!」


そんな事出来る訳無いだろう!このままあいつを潰す!


「ヒャッハァァァ!姫に群がる害虫がぁぁぁ!しねぇぇぇぇ!」


ブンブンっともう一つのナイフを振り回しながら襲ってくるのを躱しながら隙を見て何度も殴り飛ばしてるのに、一切効果が無い様に見える。


「兎に角、このまま司を開放して彩音と逃げてくれれば・・・。」


「オラオラ!しね!しね!しねぇぇぇ!お前が死ねば姫は私のものだぁぁぁぁ!」


「シッ!おらぁっ!」


隙をついて顔面を思いっきり蹴り飛ばして距離を取っても直ぐに立ち上がって同じように襲い掛かってくる。


「何で何ともねーんだよ!意識飛ぶだろ?!普通!」


「愛の力だぁ!姫からの愛の力が私を!私に力をくれるのだぁぁぁ!!!」


馬鹿か、そんなもんお前には向いてねーよ!彩音の愛は俺にだけ向いてるんだっつーの!


「彩音!早く司を連れて逃げろ!俺は大丈夫だから!」


「で、でも!蓮夜を置いてなんて!!!」


「先輩っ!」


「姫の名を気やすく呼ぶなぁぁぁぁ!不敬だぞぉぉぉぉ!!!しねぇぇぇぇ!」


「うるせぇぇぇ!同じ事しか言えねーのか!!!」


ドゴンッと思いっきり顔の中心を殴り飛ばす。


「ぐへぇ!・・・ふへ・・へへ・・・効かないぞぉぉ?あひゃぁぁぁぁぁ。」


くっそ、どうすれば良いこのまま時間を稼ぐにしても限度があるぞ!

どうすれば止められる?わざと刺されるか・・・?手を犠牲にすれば捕まえる事は出来るだろうけど・・・。

あーーもうっ!迷ってる暇は無いか!!


「あぁぁぁ~そうだぁぁ~・・・殺そう・・・もう天羽 司はいらない、殺さずに性奴隷にするつもりだったけどもう良いや~。」


「ひっ・・・。」


その言葉の直ぐ後に俺に背を向けて一気に走り出し、司と彩音の場所まで向かいやがったのを俺は反射的に追いかける。

そこまでの距離が離れていた訳では無いから直ぐに追いつくが・・・。


「ふひぃ!かかったなぁぁ!!!」


「なっ!?」


俺に向かい直り手に持つナイフを向けてそのまま俺に。突進してきたのを、追いかけて居たのもあって避ける事が出来ず刺されるのを覚悟して身構えるけど、俺の前に・・・。


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SIDE 司


「一瞬でした・・・、蓮夜さんに向き直って刺し殺しに行ったあいつと蓮夜さんの間に彩先輩が滑り込んだんです・・・。」


「「「ぇ・・・?」」」


私の言葉に混乱してるのか、茫然としていますね・・・。


「この辺は流石の彩先輩と言いますか・・・何故あのタイミングで間に合ったのか・・・。蓮夜さんが刺される事は無く・・・代わりに・・・。」


「そんな・・・。」


あの瞬間は今でも思い出してしまいますね・・・。


「あいつも彩先輩を差したと気付いて直ぐにナイフを抜いてしまいまして出血が酷い事になったんです。そして、彩先輩が、蓮夜さんに振り向いて・・・崩れ落ちました。私が居なければきっとこんな結末には成らなかったと、今でも思うんです、これが私の罪です。」


そう・・・きっと私が居なければ・・・居ても先輩達と仲が良くなって居なければ今もきっと変わらずに・・・私の存在が足を引っ張って居たのは間違いないんです。


パーンッ!っと雫先輩が私の頬を引っ叩いてそのまま胸倉を掴んで来る。


「ふざけんな!司が居なければ?!あんたは何も悪くないじゃん!蓮夜と彩音さんにとって司の存在がどれだけ大きかったか!それが分からない司じゃないでしょ!!!」


「そうだよ!何も悪くないじゃん!居た事が罪だなんて絶対にそんな事無い!司がそんな事言ってたら、彩音さんも!蓮夜君も!悲しむでしょ!!!」


「あぁ、二人の言う通りだ!天羽さんに再会した時の蓮夜は本当にうれしそうな顔してたぞ?天羽さんの存在があいつにとってどれだけ助けになったか、あいつが俺達に話そうって思ってくれる様に前を向いたのも天羽さんが追いかけて来てくれたからだろ!それなのに!居なければ良かった?!俺の親友を侮辱するんじゃねぇ!」


ぽたぽたと、雫先輩の目から涙が零れて来る・・・私も後悔と罪悪感と・・・先輩達の思いが暖かくて話しながら我慢していたのに・・・ぼろぼろと止め処なく大粒の涙が零れ落ちるのを止められなかった。


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