第42話 傷痕
SIDE 有希那
ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・。
私と蓮夜くんを乗せて電車は進んで行く、蓮夜くんの生まれ育った街から電車に乗って数駅の所に向かうとは聞かされているけど、明確な場所は教えて貰えてない。
~~寺駅~~っとアナウンスが流れるのが聞こえて来た。
どうやらお寺がメインの街の駅みたい。
「有希那、降りるよ。」
「えっ?!あ、うんっ!」
私は、ずっと無言だった蓮夜くんが行き成り声を掛けて来てびっくりしたけど、私は荷物を持って蓮夜くんの後を追った。
「着いて来てくれ。」
私はコクリと頷いて静かに蓮夜くんの後ろを着いて行く。
そんな蓮夜くんが向かったのは、お寺に向かう前の階段の麓にあるお花屋さんだった。
「お花屋さん?」
「あぁ、待ってても良いよ?」
「一緒に行くよ。」
蓮夜くんはお店の中に入っていく、店員さんが驚いた顔をして蓮夜くんに話しかけてる。
「ちょっとっ!ちょっとっ!お久しぶり過ぎるでしょ?!これはまた・・・とんでもない良い男になってぇ~。」
「あはは・・・ありがとうございます。いつものお願いできますか?」
「任せて!直ぐに用意するからね!・・・えっと?その子は・・・?」
私に視線を向けた店員のおばさんが訝し気な顔で私は誰だと蓮夜くんに聞いてる。
「彼女は、陵 有希那って言います。」
蓮夜くんはそれだけを伝える・・・だけど、全てを理解したかの様な顔を店員さんはしていた。
「そっか・・・遂に進めるようになったのね、良かったわね?蓮夜くん。」
「分かりませんよまだ、でも・・・筋は通したいと思ってます。有希那には全てを話します。その上で・・・。」
「そっかぁ~・・・えっと、有希那ちゃん・・・?」
「あ、はいっ!」
「蓮夜君の話を聞いて、貴女が何を思うのかは私には分からない。でもね?」
「何ですか・・・?」
「どんな答えを出したとしても、蓮夜君から逃げるような事だけは絶対にしないでっ。」
睨みつけるかの様な視線で私にそんな事を言ってくる。
私はその視線をしっかりと受け止め、その上で・・・。
「当たり前です!舐めないでくださいっ!中途半端な気持ちでここまで来てません!」
そう、ハッキリと強く告げた。
「うん、ごめんね。それが聞ければ十分よ。」
どうやら、試されたみたい・・・蓮夜くんはこの店員さんとも仲が良いんだろう。
だからこそ、ここに人を連れて来たから試したんだと思った。
階段の上にはお寺があるのは分かってる・・・と言う事は、そこには彩音さんが眠る場所があるって事だろうしね。
「おばさん、その辺で。取り合えず行ってきます。」
「うん、蓮夜君もごめんね。気を付けて行って来てっ。」
「行ってきます・・・あ、そうだ。他の友達も街に来てましてもしかしたら、明日以降に連れて来るかもです。」
「うんっ!楽しみにしてるからお友達も紹介してね?」
「分かってます、それじゃっ。」
そう言って手を振りながら蓮夜くんはお店を後にするのに、私も着いていく。
「さっきの店員さんと仲良いんだね?」
「うん、名前も知らないけどね。二年前、毎日の様に来ていたから、通る俺を覚えてくれて話しかけて来たのが始まりだよ。」
「中学生が毎日、来るから気になったとか?」
「そう、正にそれだ。」
「まぁ、気になるよね。そっか、そっかー息子みたいなものって思われてるのかな?」
「そうかも知れない、親の事も話してるし彩音の事も話してるしな、心配してくれてる。」
そう言って蓮夜くんは私の手を取る。
そのまま長い長い階段をゆっくりと登りながら無言で歩く蓮夜くんを見詰めながら私も手を引かれて一緒に登る。
この先に・・・彩音さんが・・・。
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「着いたよ。もう、分かってるとは思うけど・・・ここが彩音の、柊 彩音の眠る場所だ。」
「ここに彩音さんが・・・。」
「あぁ、先ずは・・・掃除かな〜・・・。」
私達は二人で柊家のお墓の掃除をする、傷を付けたりしない様に丁寧に、水拭きをした後に乾いた雑巾で更に拭いて、花を取り替えて、線香をあげて彩音さんに、自己紹介がてら祈る。
「うしっ。これで一先ずかな〜?綺麗になっただろ。」
「そうだね、花も飾ったし良いね。」
「あぁ、それでなんだが・・・聞いて貰いたい事があるんだ。」
「うんっ。蓮夜くんの秘密、彩音さんに何があったのか、教えて欲しい。」
「あぁ、話すよ。この墓に眠るのは柊 彩音、俺の幼馴染であり、最愛の恋人。」
蓮夜くんは本当に愛おしそうに話し始めた。
「そして・・・そして、俺が殺した大切な人だ。」
「ぇ・・・?」
余りにも予想外の言葉に私の頭は真っ白になり言葉を紡いだかどうかも分からない様な小声で呟くしか出来なかった。
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SIDE 神代家での居残り組
「ふざけないで!!蓮夜が人を殺すわけ無い!ましてやそれが自分の恋人なら!!」
バンッとテーブルに手を叩きつけて雫は怒りを顕にする。
「そうだよ、言って良い冗談と悪い冗談位、分かるでしょ?司。」
この状況で嘘だと分かる嘘を付く司に非難の目を向ける、美織。
「殺した・・・ねぇ〜・・・。」
話を知っている信也もこの言い方には文句があるのか、目付きが鋭くなっている。
たった一つの言葉で部屋の空気が最悪まで落ちた、でもそれは・・・それだけ蓮夜が皆にとって大切な存在だと言う事の詐称である。
「おかしいと思いませんでした?あの男への対応。明らかに過剰な対応ですよね?脅迫と言う犯罪を犯しては居ましたけど高校生の子供相手にする対応としては、過剰ですよね?」
「確かに、悪いのはあっちだし、犯罪は犯罪だけどここまでする?っとは少し思った。」
「あの男の家庭は完全に崩壊していますけど、それは自業自得なので可哀想だとは思いますが当然の結果ですね。」
「うん、でもそれが何の関係があるの?」
「彩先輩が死んだのはあの手の奴等が原因何です。」
「どう言う事?」
「蓮夜が殺したんじゃないの?」
「手は下していません。ですが、蓮夜さんが理由で彩先輩は亡くなったんです。」
「んん?良く分からなくなってきたんだけどそれなら蓮夜は何も悪く無くない?」
「二人とも問題はそこじゃないんだよ、どんな理由があれ蓮夜が彩音さんを殺したと思ってる事が最大の原因なのさ。」
「正解です、間島先輩。」
「詳しく話して・・・。」
「はい、始まりはお二人が恋人になった事から始まりました。」
そうして司の口から過去の話が話される、それは・・・。
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SIDE 有希那
「殺したってどう言う事・・・?」
「そのままの意味だよ、彩音は俺が殺したんだ。」
「待ってよ・・・絶対に嘘だし信じられる訳無いじゃん!!!蓮夜くんが人を殺したなんて!それも恋人を!」
私は齎された情報がどうしても信じられず、声を荒げる。
だって、こんなにも苦しんでる蓮夜くんが、幼馴染で最愛の恋人を殺すなんて何をどう聞いても信じられなかった。
「あの日、俺の胸の中で冷たくなっていく彩音に俺は何も出来なかったんだ。冷静に対処出来ていれば、死なずに済んだかも知れないのに、俺は現実をどうしても受け入れられずに・・・。」
「どういう事なの?詳しく話してよ。」
「そうだな・・・、始まりはいつなんだろう?俺と彩音が恋人になった時かな?それとも中学に進学した時かな?」
そうして、蓮夜くんの口から話が紡がれる。
その内容に私は気付けば涙を流しながら聞いていて、自然と蓮夜くんを抱き締めていた。
そうするのが当然の様に・・・そして思ったのだ、この人は私が支え続けないといけないと、絶対に繋いだ手を離してはいけないと・・・私が本当に覚悟をしたのはこの時だと思う。
貴方は独りじゃない、繋いだこの手は絶対に離さない、私が側に居るから、ずっと一緒に歩いていこう!ずっと、一緒にっ!
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SIDE 司
「お二人は本当に仲睦まじくて、見てる側からしても幸せを分けて貰ってるかのようでした。」
私の話に皆さんは真剣に耳を傾けてくれている。
「その写真を見ても分かる様にお互いに本当に想い合っていました。」
皆さんの視線が写真に向いて蓮夜さんと彩音先輩をそれぞれ見ていた。
「学校にもお二人にそれぞれのファンクラブもありまして、蓮夜さんのファンクラブは蓮夜さんを最優先、迷惑はかけない、彩音先輩に嫌がらせをしない、蓮夜さんの友達は皆の友達って感じで凄く纏まってました、ですが・・・彩音先輩のファンクラブは・・・。」
「あの先輩みたいなのしか居なかった?」
「はい、あれでもまだまともなほうです。狂信者、異常者がトップでした。」
「げぇ・・・。」
誰がというわけでも無く、有りえないわって感じの顔をしています。
「お二人が幼馴染で仲が良いこともいつも一緒な事も気に入らない、我等が天使、姫の側を独占する蛮族って見方をしていましたね。だからこそ、校内でも白い目で見られていましたし、誰もが警戒して居ました。」
「そいつらが何か関係あるって事か?」
「はい、だから蓮夜さんは有希那先輩の時に過剰とも言える反応をしたんです。」
「そっか、蓮夜にしては、やけにごり押すなとは思ってたけどこれで繋がった。前に話は聞いていたけど何処か納得出来なかったんだ。それが今の存在の話で納得したよ。」
「そっか、稲穂くんは話を聞いてるんだったね。」
「まーね。取り敢えず話の腰を折って悪かった、続けてくれ。」
「はい、お二人がまだ幼馴染の間は良くは無いですけど、良かったんですが・・・恋人になった事で奴等は激化したんです。」
「激化・・・?」
「今となっては真相は分かりませんが、彩音先輩のファンクラブのリーダーの指示だったのか、その人の意思だったのか分かりません、問題はお二人が付き合っている事が広まっていき、激化した事です。」
さぁ、全てを明らかにしましょう、その上で蓮夜さんの罪を、傷痕を、私の罪を皆さんに知って貰いましょう。
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