第41話 柊家と過去の罪を今ここに・・・

ピンポーンっ


「はい・・・って、蓮夜くん・・・?」


「はい、ご無沙汰しています。」


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってね!直ぐに行くから!」


その言葉の直ぐ後にドタドタと急いで玄関に向かってくる音が聞こえて、変わって無いなって思う。


ガチャっと扉の開く音が聞こえて直ぐに扉が開いておばさんが顔を出す。


「お久しぶりね、お帰りなさい。入って!入って!司ちゃんもね!」


「「おじゃまし「違うでしょ!」ただいま・・・。」」


「はいっ!お帰りなさい!」


おばさんは昔と変わらずそう言って俺達を迎えいれてくれた。


…………………………………………………………

チーンっ。


帰ってきたよ、これなくてごめんな。

決心はした、でもその結果、背負わせることになるんじゃ無いかって不安もある。

俺を好きだと一緒に居てくれるって言ってくれる奴らを信じて、ここまで戻ってきた、なぁ?これで良かったんだよな・・・?


「ふぅ・・・。」


仏壇に手を合わせて祈る、仏壇の中の写真に写る彩音の姿は変わらずに優しい笑顔を向けて来る。


「先輩・・・。」


「あぁ。」


俺はそれだけ言って仏壇の前から離れ、居間の方へと戻る。


「改めてお久しぶりです、おじさん、おばさん。」


「お久しぶりです。」


俺と司は挨拶をして二人の前に座る。


「2年ぶりといったところか?」


おじさんからそんな言葉が飛んでくる。


「そうですね、来れ無くてすいません。決心が付かなくて・・・。」


「こうやって来たと言う事は、整理は付いたんだね?」


「いえ、それは、どうなんでしょ?俺自身、実の所まだ答えは出てないんです。」


「そうか・・・それでも来たんだな?」


「はい、こんな俺を好きだと言ってくれる人が居る、仲間が居る。だからその信頼に応えたいと思って・・・例え嫌われたとしても・・・。」


「ここまで着いて来たんだそんな心配はいらないだろう。」


「だと良いんですけどね。」


「こら!着いて来てくれた子達に失礼でしょ!それに、蓮夜君を好きって言ってくれてる子にもね。」


「はい・・・。」


「よしっ!それじゃー・・・蓮夜君に告白した子はどんな子なの!!教えて!教えて!」


「おばさん・・・まぁ良いですけど・・・。」


俺と司はおばさんとおじさんに有希那の事を話す、どう言う子なのか、どんな告白をされたのか・・・そして、どんな問題があったのか・・・。


「蓮夜君、良いのかい?トラウマの刺激なんて言い方じゃ温いだろう・・・。」


「はい・・・自分を抑えるので必死でした。同じ過ちを繰り返さない為にも必死で押さえて・・・。」


「先輩の周りには沢山の友達が、仲間が居ますから!勿論、私もです!だから今回はこうやって上手く行ったんですよ!」


「あぁ、そうだな・・・司、ありがとう。」


「い、いえっ///」


「相変わらず可愛いっ。それは兎も角にして、隣に居るのよね?会える?」


「えっと、明日・・・明日は、明日に話そうと思ってるんです。その、あの場所で・・・。」


「そう・・・。それが終わったら、連れて来てね?ちゃんとおばさんもお話ししたいし、彩音の事も話してあげたいし、勿論・・・。」


「一緒に来ている友人達もな、ちゃんと連れて来るように。友人達には司ちゃんが話すんだろう?」


「はい、そのつもりですし、それが私の役目だと思って居ます。」


「司、頼むな。何も隠さなくて良いから全部、話してくれ。」


「分かってます、先輩も有希那先輩にちゃんと話さないと駄目ですよ。」


「分かってる、全部話すつもりだ。」


「うんうん、それじゃー明日は楽しみねぇ~!ご馳走でも用意しようかしら?」


「ご馳走って話じゃ無いだろう・・・。」


「何言ってるの!私達にとっては息子と変わらない蓮夜君の再出発の記念日でしょ!記念日はご馳走を用意してお祝いしないと駄目よ!」


あ~・・・おばさんらしいな、こういう人だったもんな。

それにやっぱり・・・彩音に似てる・・・。

俺はおばさんと彩音のやり取りが大好きだった・・・。


そんな事を考えて居たら俺の目からは自然と涙が溢れた・・・静かに泣いてる俺をおばさんは黙って抱きしめてくれる、うん・・・昔からこう言う人だった。


「ごめんね・・・私のせいだね。」


「ち、ちがっ。俺が・・・俺が・・・悪いんで・・・す・・・。俺が・・・俺が、おばさんとおじさんから・・・宝物を奪ったから・・・。」


「違うわ、蓮夜君は悪くない。それに、蓮夜君を責めたりしたら私達が彩音に怒られちゃうっ!だからそんな風に自分を責めたりしないで?」


俺はおばさんの胸の中で小さな子供みたいに泣き続けた、ここに来て張りつめていた物が切れてしまったと言うか破裂してしまったと言うか自分の感情を抑える事が出来なかった・・・。

そんな俺を見て司も静かに涙を流していた、そんな司の事もおばさんは一緒に抱きしめて・・・。


「全く・・・二人共まだまだ子供なんだから・・・。」


そんな事を言いながらもおばさんは俺達が泣き止むまで慰め続けてくれるのだった・・・。


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「落ち着いた?」


「「はい・・・。」」


「二人の子供な姿なんて久しぶりにみたなぁ~・・・。」


おじさんが本当に面白そうに笑いながらそんな事を言ってくる・・・。


「くぅ・・・忘れてくださいっ!!!」


「そうですっ!忘れてくださいっ!」


「無理だなぁ~・・・さっきの姿で暫く酒飲めるっ。」


「「ぐぬぬ・・・。」」


「はいはい、その辺でね?余り皆を待たせるのも悪いし明日を楽しみにしてるから、頑張りなさいよ。」


「そうだぞ、絶対に皆は受けいれてくれるから連れてきなさい。夕飯は一緒に食べよう、良いな?」


「はい、必ず。」


「絶対に皆さんを納得も理解もさせますから!連れて来るのを楽しみに待っていてくださいね!」


そして俺と司は柊家をお暇して一先ず自宅に戻る・・・、だけど・・・俺も司も明らかに泣いたって分かる状態だったので物凄く皆に心配されるって結果になってしまったのだった・・・。


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SIDE 有希那


お隣さんから帰ってきた蓮夜くんと司ちゃんの目は明らかに泣きましたってのが分かる位に思いっきり腫れていた。

皆が心配して何があったのか?怒られたのか?と聞いたけど、そんなんじゃ無いから大丈夫だとしか教えてくれなかった。

嘘をついてる様な感じではなかったから多分だけど本当に怒られたとかでは無いんだと思うけど、やっぱり気になってしまう。

そんな事を宛てがわれた部屋で考えていた。


「どったの?有希那?」


「あ・・・うん。蓮夜くんと司ちゃんはどうして泣いたのかな?って気になって・・・。」


「あぁ、確かにね〜。司はあれで泣き虫だしね、結構。」


うん、気が強そうに見えて司は泣き虫なのだ。


「蓮夜くんもってなると何かあったんじゃ無いかって気になるけど、流石に何かがあったなら教えてくれるだろうし大丈夫じゃないかな?それに、多分だけど二年ぶりに会って懐かしくてとかじゃない?」


「そっか。たった二年の間、会わなかっただけだとしてもお隣さんは家族ぐるみの付き合いだったんだろうし彩音さんのご両親だしね。」


「そうそう、そんな人達と彩音さんの事を話していたら〜ってところじゃ無いかな?」


その程度なら良いんだけど・・・考え過ぎかな・・・?


「うん、怖いな・・・お話聞くの・・・。」


「なら、辞める?私が変わろうか?その場合は蓮夜くんは私がだけどねぇ〜。」


「だめっ!美織も蓮夜くんを好きなのは知ってるけど・・・だめ・・・。」


「はいはいっ。それなら覚悟決めなさい!てか、あの告白に比べたら余裕でしょうに。」


「そ、そんな事ないよぉ〜。彩音さんが既に亡くなってるのは私も分かってるけど、どんな理由でなのかは全く見当もつかないし、それに蓮夜くんがどう関わっているのかも想像も出来ないもん。」


「まーねー・・・。蓮夜くんと司の様子を見ると本当に心から彩音さんの事を思っていたのは分かるし、本当に何があったんだろう?」


「全ては明日かぁ〜・・・。寝坊しない様にしないとね。」


「そだね、早めに寝ておこうっか。」


そうして私と美織は床についた。

明日のお話に不安を覚えながら・・・。


……………………………………………………………

俺もだけど皆も朝早くから起き出してそれぞれで準備を始めた。

朝食を食べ、出かける組と居残る組とで別れると言う話。

居残り組は司から話を聞くと言う事。

そして、俺と有希那は・・・。


「じゃー後は頼むよ?司。」


「はい、こっちは任せてください。蓮夜さんも頑張ってくださいねっ。」


「あぁ、ありがとう。」


「有希那先輩、覚悟を持って聞いてください、勿論ですが、無理なら無理で構いません、だけど・・・出来ることなら受け入れて欲しいです。」


「うん、正直に言うと少し怖いの。でも、知らないままはもっと嫌だから話を聞いて感じたままの答えを私は出すよ。」


「はい、それで構いません。有希那さん、蓮夜さんをよろしくお願いしますっ。」


「あ・・・はいっ!」


全く、有希那さんに、蓮夜さん・・・ね。

これが司の覚悟の証って事か、もしくは一つのケジメ・・・かな?


「それじゃ、有希那。」


「うんっ!」


先ずは俺が玄関を開ける、その直ぐ後ろを有希那が着いてくる。

二人揃って待っててくれる皆にこう言った。


「「行ってきます!!」」


「「「「行ってらっしゃい!!!!」」」」


皆の声を背に聞きながら俺達は目的地に向かったのだった。


……………………………………………………………

SIDE 司


遂にですね・・・願わくば、有希那さんが、蓮夜さんを受け入れて二人で進んでくれる事を・・・。


「さて、次はこっちかな?」


「そうですね、先ずはお茶でも淹れましょうか、長い、長い話になりますし・・・。」


「司・・・別に概要だけでも良いんだよ?そんなに辛そうな顔をするならさ。」


「いえ、蓮夜さんが全てを話してくれと言っていましたから私はそれに従います。それが、皆さんを任された私の責任です、そして・・・蓮夜さんへの愛だからっ。」


私の言葉に先輩達は息を飲んだ、私の覚悟が伝わったかのように。


「分かった、それならちゃんと聞かせて、一体、何があったのか、貴方達に、蓮夜に何があったのかを。」


「はい、全てを聞いてください。そして、出来ることなら蓮夜さんを受け入れてください。」


「天羽さん、いらない心配だ。」


「そうだよ!覚悟もなくここまで来ないっての!」


「そうそう、いらない心配しないの!取り敢えずお茶〜!」


美織先輩を先頭に私達はリビングに戻る、全員の前にお茶とお菓子を用意して話をする準備が整う。


良いんですよね?彩先輩?これで間違えて無いですよね?

私の心の疑問の背中を押すかのように私の背中に彩音先輩の手の温もりの様な感触がした気がした。


「それでは、お話します。先ずはこれを見て下さい。」


私は先輩達の前に写真を置いた・・・それはあの日、蓮夜さんの家に遊びに行った時に貰った写真、私と蓮夜さんと、彩音先輩が写ってる写真。


「これはあの時のやつだよね?」


「はい、間島先輩は見てますけど皆さんは初めてですし。」


「蓮夜も司も幼くて可愛いし、この綺麗な子がもしかして彩音さん?」


「凄い綺麗な人、中学生でこれってアイドルとか女優とか裸足で逃げ出すでしょ・・・。」


「はい、この人が柊彩音先輩です。私の大切な先輩で、姉と言ってもおかしくない仲の方です。そして・・・。」


この言葉を言うのは本当に辛い・・・でも・・・蓮夜さんから全てをと言われて以上は絶対に外せない言葉だ。

だから私は意を決して言葉を紡ぐ。


「そして・・・蓮夜さんが最愛の恋人です。」


私の言葉で先輩達はギョッとした顔をして私を見詰めてくる。

さぁ、真実を明らかにしましょう、私と蓮夜さんが抱えているものを皆さんに・・・。


私は目に力をいれて先輩達を確りと見つめ返す。

ここからです、頑張りますから・・・蓮夜さんも負けないでくださいっ!


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