第40話 かつての街へ・・・
ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・。
あれから夏休みまでは特に何も無く日常を過ごしていたってのも語弊はあるか・・・。
先ず、校内はもう俺と有希那はカップル扱いになってる。
まぁ、あんな事やらかせば当然と言えば当然だしちょっかいをかけて来る奴も居ない。
と言うよりも俺よりも自分の方がイケてると勘違いしてる少しモテた事のある部活のエースとかの小さい自信家が有希那にちょっかいをかけようとしたが・・・「空気読め!」「勘違い乙!」「蓮夜くんよりも自分が上とか可哀想な頭・・・。」「陵さんは神代君が好きって言ってるのに理解出来ないとかナイワー。」等など・・・で女子からの評価も何もかもズタボロになってた。
「当然の結果と言えば当然の結果か・・・。」
「何がですか?先輩。」
「あぁ・・・有希那にちょっかいかけようとした奴らの末路がな・・・。」
「あぁ・・・。」っと司も当然の結果ですねって顔をしながら、司は俺の隣に座ってくる。
「あの、先輩・・・、大丈夫ですか?」
「ん-、そうだな。今の所は大丈夫かな。自分でも不思議なんだけど、心は落ち着いてるんだよな。」
「そうですかっ。それなら私も安心です。」
俺の顔をじーっと覗き込みながら司はそう応えた。
「あれ?そう言えば何ですけど、家は残ってるのは私も知ってますけど、電気、水道、ガス何かは止まってるのでは?」
「そこは心配ないよ、親父達が書類を渡してあるからおじさん達が繋いでくれてるからそのまま使えるよ。」
「成る程、それなら着いたら挨拶に行かないとですね。」
「あぁ、司も悪いけど付き合って貰えるか?」
「はいっ!勿論です!私だけで良いんですか?」
「あぁ。先ずは俺と司だけでいい。皆はその後にかな・・・。終わった後も離れないでくれたなら・・・だけどさ。」
「そんな心配はいらないと思います。もしもですが、それで離れるようなら今ここには居ませんよ。」
「そうだな・・・こんな考え自体が皆に対する侮辱だわな。」
俺を信じて着いてきてくれた皆を俺も信じないとだよな、じゃなきゃ俺達の関係は嘘だ。
「蓮夜くん、どうしたの?」
「有希那、ありがとな。」
「えっ?何が?」
「何でも無い。」
ただそれだけを言った俺に有希那は不思議そうな顔をしながらも「どういたしまして?」って疑問符を付けながら答えてくれて、そんな俺と有希那の姿を司は微笑ましそうに見ていたのだった。
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そして・・・数時間後、俺は約二年ぶりに故郷の地に立つ事になった。
「帰ってきた・・・。」
「はい、帰ってきました。おかえりなさい、先輩っ。」
「司もおかえりなさい。」
「あっ・・・はいっ!ただいまです!」
ぷっ・・・あはははははっと俺と司はお互いのやり取りがおかしくて駅前で人目も憚らずに声を出して笑ったけど、この場所に立ってこうやって笑えるのは、きっと・・・。
「うん?どうかしましたか?先輩。」
目元の涙を指で拭いながら俺を見てる司のお陰なんだろう・・・きっと。
「いんや、何でもない!暑いし早い所行こうか、皆も案内しないといけないしな。」
ぽんぽんっと司の頭を撫でながら皆に「いくよー。」っと声をかけて俺は歩き出す。
その両隣にそれぞれ司と有希那が付いてくれるのが俺を支えようとしてくれている様で嬉しいと思う。
「この街が蓮夜の生まれ育った街なんだな。」
信也の言葉に俺は自然と答えて彩音の事を少しずつ皆に話しながら自宅までの道を進む。
「そうだ、ここが俺や司が生まれ育った街・・・そして・・・。」
話そうとは思うけどやっぱり何処か・・・そんな俺の手を有希那が取ってくれて何も言わなくても大丈夫だよって言ってくれてる気がした。
それに、俺からの続きの言葉を待ってくれている、美織、雫の為にも少しずつ・・・。
「そして・・・彩音の・・・柊彩音の生まれ育った街だ。」
「柊・・・彩音さん・・・。」美織も、雫も名前を覚える様に小さく繰り返す。
「それが、あのリングのもう一人の持ち主なの?蓮。」
「あぁ、そうだ。俺と彩音は親同士が親友だった事もあって本当に生まれた頃からの付き合いなんだ。
どちらかの親の帰りが遅い時は、お互いの家に預けられたり、小さい頃からずっと・・・。
俺の親が忙しくなってからは俺は殆んど一人暮らしみたいな状態だったけど彩音はいつも俺の世話を焼いてくれていたんだ、おじさんもおばさんもそれは同じで夕飯は毎晩お世話になっていたっけ。」
俺の話を皆、静かに聞いてくれている、俺も有希那に話した所までは一先ずは話さないとっと決めて居たからな。
「それじゃ・・・普通のさっき見たいな駅前とか、こんな何でもない道でも全部に・・・。」
「そうだな、この街の隅から隅まで彩音との思い出が詰まってるってのは大げさかも知れないけど、そのレベルで何処を歩いても・・・あぁ、あそこは彩音と何をした、こっちはあれをやったなってそんな思い出が沢山詰まってるんだ。
だからこそ・・・帰ってくると俺には・・・。」
「蓮夜・・・。」「蓮夜くん・・・。」「蓮・・・。」「蓮夜君・・・。」
皆の声を聞きながら俺はゆっくりと歩いて行く・・・彩音との思い出を振り返るかの様に、隣に今も彩音が居るかの様に・・・。
そうやってゆっくりと歩いて話しながら俺は自宅へと皆を連れて歩くのだった。
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SIDE 有希那
電車に乗る前から蓮夜くんはいつもと違う雰囲気になってるのは気付いていた。
約2年ぶり?に街に帰る、私達を連れて。
蓮夜くんからすれば酷く辛い時間だと思う、何気ない態度と顔で話して歩いて居るけど、私には何処か泣きそうな顔に見えて仕方ない。
そしてそれは・・・私だけじゃ無く、美織も雫も間島君も・・・司ちゃんも気付いて居る。
多分、蓮夜くんも分かってると思うけど泣く事も無く普通に話してる風なのが私の心に沢山の痛みが走ってる・・・。
今すぐにでも蓮夜くんを抱き締めたいけど、決意をして皆に話すって決めた蓮夜くんの邪魔何て私には絶対に出来ない。
私は自然と拳を握りながら耐えて、一度聞いた話とは言え聞き逃す事の無い様に確りと蓮夜くんの話を聞き続けた。
貴方の隣には私が居る、一人にはさせない、ずっと一緒に歩きますと、心の中で考えながら・・・。
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SIDE 司
蓮夜先輩が辛そうにしてる、顔には出てないけど皆さんでも分かるくらいに泣きそうになってますね。
それでも、先輩は・・・。
私ですらあっちこっちに彩音先輩との思い出が詰まってるあの時は何をした、あそこで笑いあった・・・そんな何でも無い極々当たり前の日常の思い出・・・掛替えの無い何者にも変えられない大切な思い出が沢山、沢山。
「私も、覚悟を決めないとっ。」
蓮夜先輩は有希那先輩にあの場所に行って話すだろうしその間に皆さんに話すのは私の役目だ。
思い出すのも辛いけどそれでも、言われた訳では無いけど託された以上は遣り遂げよう。
それが私の覚悟と先輩への恩返し・・・そして、愛だから。
私はそんな事を考えながら先輩を支えるように歩き続けた。
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皆を引き連れて駅前から話しながら歩いてきた俺の目の前には見慣れた1軒の家が現れた、その隣の家も見慣れた一軒家。
「ここが・・・。」
誰がっと言うわけでも無く俺の自宅を見ながら呟く声が聞こえてきた。
「着いた、ここが俺の生まれ育った家だ。暑いし中に入って取り敢えずは換気してかな?」
「掃除もしないとですしね。」
「それもあったな・・・皆を招くの一日ずらせば良かった。」
「私等もお世話になるんだから気にしないの!てか、手伝うしっ。」
雫の言葉に皆が頷いてくれて嬉しくなる。
「サンキュな雫も皆も。」
よーしっ!やっちゃおー!っと美織の掛け声と共に俺は鍵を開けて皆を招き入れた。
ただいま・・・っと呟きながら。
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SIDE 信也
「それじゃちょっと司と隣に行ってくる。」
蓮の自宅に入った俺達は家中の窓も扉も開けて空気を入れ替える。
その後、それぞれが泊まる部屋に案内されて荷物を置いて全員で手分けしながら一気に掃除を終わらせた。
陵さんと小野坂さん、神薙と天羽さんの組み合わせでそれぞれ一部屋ずつ。
俺に一部屋って割り振りになった。
俺だけ一人で一部屋使えるのは悪い気がするけど蓮を抜けば男は俺だけだから仕方ないと割り切った。(皆も納得してたしね。)
その後、買い出し組と残ってる掃除を終わらせる組と分けた後、蓮のさっきのセリフって訳だ。
「隣って?」
当然の疑問として陵さんが蓮夜に聞いた。
「柊家。」
「あ・・・私達も行った方が良い?」
「今日は俺と司だけで良いよ。話し終わった後にそれでもってなったらその時に。」
それは分からなくも無いけど俺達を舐めすぎて無いか?っと俺が考えたら神薙が先に不満を顕にした。
「ちょっと!それは流石に私達を舐めすぎてない?そんな簡単な気持ちならここまで来てないわよ!!」
「いや、そんなんじゃない。行き成り大勢で押し掛けてもおじさん達の迷惑になるし話もあるからさ。
それに、話してからじゃ無いと駄目なんだ。」
「雫先輩。皆さんも気持ちは分かりますけどここは理解してください。」
天羽さんの言葉に仕方ないっとでも言いたげな顔で神薙は頷いて小野坂さんも陵さんも合わせるように頷いた。
「こっちは任せて行ってきな、何も無いとは思うけど俺も残っておくから。」
「あぁ、任せたよ。」
連夜は俺に向かって拳を突き出して来たのに俺も突き出してお互いに軽くコツンっと当てあった後、連夜は天羽さんを連れて家を出ていった。
「さって!俺等は俺等でやることやろうぜ!」
「「だねっ!」」
「陵さん?どうしたの?」
動き始めた皆とは別に陵さんは二人が出て行った玄関に視線を視線を向けたままになってる。
「え・・・あぁ、ごめんねっ。まだ追いつけないかって思っただけだから。」
「直ぐに追いつけるさ。蓮夜も覚悟は決めてるみたいだし陵さんの事は真剣に考えてるみたいだしさ。」
「うん・・・ありがとうねっ。間島くんっ。」
皆を手伝わないとねーっと玄関から離れた陵さんはリビングの方に戻って行った。
「蓮夜、待ってるぞ。」
俺も玄関に一声かけて怒られる前に皆の元に戻ったのだった。
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