第38話 有希那に彩音の事を・・・

「すいません、お邪魔してしまって。」


俺が代表で挨拶すると、有希那のご両親も気にせずに沢山食べてくれとおばさんも直ぐにお茶を淹れてくれて俺等、親が見に来てない組の信也、雫、俺、美織はご相伴に預かる事になった。

それと・・・。


「それで神代君、有希那とはどうなんだい?」


さっきの事の説明である・・・。


「どうなんだ?っと言われましても・・・、返答に困ると言いますか・・・。」


「娘にあんな事させておいてまさか・・・?」


「いえ、あの場で言った通りですよ。聞こえていたでしょう?自分に今出来る最大限の答えがあれです。」


「それなら直ぐにでも隠していることを話すべきでは無いか?あの場では流石に無関係な人間も多いからと言うのは分かるが・・・。」


「そうですね、ですがそれはこの場でも同じ事。友人達なら兎も角、有希那を除いた陵家には無関係です。」


俺の言葉に有希那のお父さんの視線が厳しくなって睨みつけているだけのものに重圧が加わったが実際この人達には無関係なのだ。


「無意味に重圧かけるの止めてくれません?事実として無関係だから無関係だと言っただけの事。それともなんですか?何でもかんでも人の事を暴く趣味でもあるので?だとしたら大層、素晴らしいご趣味な事で?」


「君な・・・。無関係と言うが私は父としてっ。」


「「パパさいてー。」」


「がっはぁぁぁっ。」


「はいっ!蓮夜君の勝ち!って事でご飯にしましょ!」


娘二人からのサイテーにより勝負はついておばさんの一声によって俺達もご飯にありつける事になった。


「はい、蓮夜君。」


「ありがと、有希那。」


有希那が甲斐甲斐しく色々と渡してくれるのを素直に受け取って陵家のご飯を楽しんだ。


「蓮は兎も角、俺等も良いんですか?流石にご迷惑では・・・?」


「そうだよね・・・。流石に気が引けると言うか・・・。」


「おばさんが良いって言ってるから良いの良いの。素直に諦めてご馳走になったほうが良いよ?」


「美織は慣れてるかもしれないけど・・・。」


「皆も気にしないで食べてね、私達だけじゃ食べきれないからさ。」


有希那の言葉に信也も雫も遠慮するのを止めて食べ始めたのだった。


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「そう言えばですね、夏休みなんですけど有希那と泊りがけで出掛けても良いですか?」


「駄目に決まってるだろう。」


「勿論、信も雫も美織も司も一緒にですよ。」


「私達も?」


「俺の実家に皆を招待したい、親は海外だけど家は残ってるんだ。そこに皆を招待したいと思ってて。」


「蓮夜の実家って言うか地元か。」


「そう、いくつか行きたいところが在って有希那には特に一緒に行ってほしい。」


「ふむ・・・。それは・・・。」


「えぇ、関係あります。有希那に話すのにはそこに行かないとなんです。」


「蓮夜君・・・。ねぇ、パパ・・・。」


「はぁぁ・・・分かった。但し!他の子達と一緒に行く事!必ず毎日連絡する事!そして、必ず有希那に話す事、無事に帰ってくる事が条件だ。」


「はい、必ず。」


「パパ!ありがとう!」


その後、一応和気あいあい?と食事は進み柚香ちゃんが有希那を揶揄って姉妹喧嘩が始まって俺が止めてっと何でもない普通の時間を過ごして午後の部になった。


その後、午後の部も滞りなく進んで行き特に問題も起こる事無く全ての工程が終了したのだった。


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「皆、お疲れー!神代も神薙も間島も大活躍だったお陰でAグループの勝利になった!気を付けて帰れよー!・・・解散!」


焼肉!焼肉!おごりの焼肉!っとスキップでもしそうな勢いで俺達の担任は教室を後にしたのを見届けて俺達も帰る事に・・・


「何かムカつく・・・。」


「「わかるっ。」」


「れ、蓮夜君っ!帰ろっ?」


雫と信と馬鹿な事を言ってるといつの間にか来たのか有希那が教室の入り口の所から声をかけて来たけどその顔は・・・真っ赤になってる。


「お、おうっ!帰るか!」


「陵さんの顔真っ赤っ!可愛すぎてやばい!」


「さっきの今だし仕方ないでしょっ。」


「あんなに堂々とだしねぇ~・・・。」


クラスの女子がニヤニヤとしながら有希那のやらかしを揶揄って恋バナ大好き乙女全開って感じになってる。


「今日は二人で帰りなよ、蓮。色々と話す事もあるだろうしね。」


「そうね、流石に今日は遠慮してあげるから。」


「信も雫もありがとな。司とかの方頼む。」


「おうっ。」「うんっ。」っと二人の返事を聞いて俺は有希那を連れ立って教室を後にして二人で一緒に校舎を出て暫く歩いた所で有希那が「はぁぁぁぁぁぁ。」っと大きくため息をついた。


「すっごい見られてる・・・ごめんね。蓮夜君。」


「別に良いさ、遅かれ早かれって感じだっただろうしな。少し寄り道しても良いか?」


「え?うん、勿論だよ。」


そう答えてくれた、有希那の手を取って歩き出す。

さて、流石に夏休みまでは少しあるし、それまで秘密って訳にもいかないよな・・・。


なぁ?彩音・・・先に進んでも良いんだよな?有希那に応えても良いんだよな?


そんな俺の心の問いに答えるかの様に・・・柑橘系の香りがした・・・。


…………………………………………………………

暫くの間、手を繋ぎながら無言で歩き続けた。

有希那も特に何かを話す事も無く黙って着いて来てくれてる。


「なんか飲みたいな、有希那は何にする?」


「あ、それじゃー・・・これかな。」


「はいよっ。」っと、自分の分と有希那の分の飲み物を買って公園のベンチに二人で座る、そのまま少し時間を置いて俺は話し始めた。


「まだ、全部は話せないけど少しだけ聞いて貰える?」


「良いの?気にはなるけど、待つよ?」


有希那は俺を心配そうな顔で見つめてる。


「少しだけだけど、何処から話すべきかな・・・。」


俺の言葉に有希那はじっとこっちを見てるだけで特に何かを言うことは無かった。


「先ずは名前から、名前は柊 彩音。俺の幼馴染で、有希那が拾ってくれたリングの持ち主だ。」


「A・H・・・柊彩音さん・・・。」 


「うん、俺と彩音はさ、親同士が友達で産まれた時からの付き合いだった。おじさんもおばさんももう一人の親って感じでね、どちらかの親が留守とか帰りが遅いとかって時はお互いにどちらかの家に預けられたりでさ。」


「何か、そんな関係の相手が居るのって羨ましいな。」


「良く言われたよそれ、と言ってもどんどん可愛くなっていく彩音を俺が独り占めしてる事へのやっかみ半分だったけどね。」


有希那は「アハハ・・・。」っと苦笑いしてた。


「それと、お互いの家を行き来してたってか隣同士だったのもあって、夜とか朝とかベランダ超えて俺の部屋に侵入してたりもあったな〜、起こされたりで助かってたのも事実だけどあんまりプライベート無かったかもな?今、考えたら。」


「ベランダ超えてって・・・怖くないの?それ。」


「慣れたって言ってたわ。そういや、カーテンを開けたら彩音の着替えを覗いてしまった事あったな〜、スケベ!って怒られたけど、今考えても理不尽だよな?カーテン閉めてなかったのは彩音なのにさ。」


「そ、それは・・・理不尽だとは思うけど、覗いた蓮夜君が悪いですっ。」


「むぅ・・・兎に角、そんな何でも無い日常や彩音の親にも俺になら任せられるって言われたり俺の親にも彩音がお嫁さんに来てくれたら老後の心配無くていいわ〜って良く言われてた。」


そんな何でも無い日常の事何かを話した。


「そして、そんな俺達の日常はあの日から変わる。」


「どう変わったの?」


「切っ掛けは、彩音が告白されてるのを俺が見たことだった、ずっと一緒にいてこれからもそうだって勝手に思ってた・・・でも、告白されてるのを見て気付いた、これからも一緒になんてのは有り得ないんだって、子供の頃と違って恋をして、誰かを愛して、その人と歩いていくんだって。

そしたら、彩音が俺じゃない誰かと歩いて行く?ってのを考えた時に苦しかった。

それで気付いた、俺は彩音が好きなんだって、誰にも渡したくないんだって事に。」


「うん・・・。」


「だから、デートに誘って、彩音に幼馴染を辞めようって、彩音が好きだって伝えたんだ。」


「頑張ったんだね。」


「まーな、そしたら彩音も同じだったみたいで、彩音も俺が告白されてるのを何度か見てて彩音も焦ってたみたい、女の子として見て貰えて無いのかな?って悩んだり、お互いに気持ちを伝えあって俺達は付き合うことになった。」


「幼馴染から恋人に変わったんだ・・・。」


「それからは、特に何かが劇的に変わるとかは無くて今までも付き合ってるだろ?って感じに見られてたから、まだ付き合って無かったの?って言われたりが多かったな。

恋人になった事でそれなりにそう言う事もしたりする様になった程度って感じ。

そして、初めてのクリスマスに俺は麗華さんに手伝って貰いながら、このリングを作り上げたんだ。何度も何度も失敗してやっと納得の行くものを作ってそれを彩音にプレゼントしたって訳。

だから、このリングはお金に変えられないし無くしたからって諦められる物でも無くて、有希那が拾ってくれて本当に助かったよ。」


「どういたしましてっ。彩音さんは、蓮夜君に本当に愛されてるんだね・・・。」


「そうだな、取り繕っても仕方ないからハッキリ言うけど、俺は今でも彩音を愛してる。この事は生涯変わらない。有希那の気持ちは本当に嬉しいけど俺の一番の席は彩音で埋まってるんだ。」 


「うん、それは分かるよ。何が有ったのか、何で今は別れてるのかなんて私には分からないけど、私は蓮夜君が好き、一番に成れなくても同じ位置に、立ちたい。

そんな簡単に諦める事なんて出来ないから、だから・・・覚悟しておいてね?私は絶対に彩音さんと同じ場所に立つから!蓮夜君にとって掛け替えのない人になってみせるから!」


泣き笑いって顔で有希那は俺にそう宣言した、全てでは無いけどここまで話せば諦めるんじゃないかと正直何処かで思ってたけど、思い違いだったみたいだな。

それなら・・・俺も・・・。


「ありがとう、ここから先はあっちに行ったら話すよ。何ていうか、有希那は本当に彩音に似てる、心の強さというか何と言うかね。

でも、勘違いはしないで欲しい、重ねてるとかでは無いから、彩音は彩音、有希那は有希那ってちゃんと見てるし、これからはもっと確りと有希那の事を見るから。」


「うんっ。今はそれで良いよ。絶対に蓮夜君の一番に並んで見せるからっ!」


そう言った有希那の顔は夕焼けに照らされたのもあって真っ赤になりながらも満足気な顔と綺麗な笑顔だった。


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