第32話 お礼
その後、俺と司は1on1をして確りと汗を流した後に良い時間になったからこのまま朝ご飯を食べに行く事にした。
「うー・・・。私、汗臭くないですか?先輩。」
「安心しろ、大丈夫だ。」
司に少し近づいて、クンクンと鼻を鳴らして嗅いでも特に変な匂いも無く女の子特有のいい匂いしかしないのを確認した。
「ちょっ?!恥ずかしいので嗅がないでください!」
「嗅がなきゃ分らんだろうに・・・・。」
傍から見ればいちゃついてるカップルにしか見えず、司の容姿もスタイルも良い事から、やっかみの視線が飛んできた。
「むぅ。先輩が格好いいから女性陣の視線が痛い・・・。」
「無いわ。司が可愛いから男連中の視線がいてぇーのはあっけどさ。」
二人でそうやって言い合いながらお店に向かって居たらあっちこっちで「「「チッ」」」っと舌打ちされた・・・。解せぬ・・・。
------------------------------------------------------------
「いらっしゃいませ~。お二人ですか?おタバコはお吸いになりますか~?」
「二人です、タバコは吸いません。」
「ですよね~。こちらにどうぞ~。」
店員の案内で俺と司は進められた席にそれぞれで着いて直ぐに注文をすることにした。
「まだ、朝食って間に合いますか?間に合うなら朝食のセットを2つお願いします。」
「大丈夫ですよ、お飲み物はいかがしますか?」
「俺はコーヒーをブラックで食後に。司はどうする?」
「私は・・・紅茶をストレートで、食後でお願いします。」
「かしこまりましたー。」っと店員さんが席から離れて行くのを尻目に、俺と司は特に駄弁る事も無く静かな時間を過ごしてた。
普通であれば気まずいところだが、俺と司の二人だとこういうゆったりとした雰囲気に成る事が案外多いし、以前、司に確認したところ何の問題も無いと言う事だった。
ってよりも、気まずくならない位これが普通って言えるほどの仲である事の査証だから好きだと言われてる。
「そいや、高校ではバスケやらないのか?さっきの感じだと暇を見つけてはやってる感じだろ?」
「はい、中学の時は必ず何処か入らないとだったので入ってただけですし、先輩とやるのは好きですけど部活に入ってまでやりたいとは思って無いですね。」
「そかそか、俺とかに合わせてとかじゃ無いなら別に良いんだ。」
「大丈夫ですよっ。先輩との時間は勿論大事ですけど、それはそれですもん。」
うんうんっと納得して頷いて居ると、「お待たせしましたー!」っと注文したものを持ってきてくれて、テーブルに美味しそうな料理が並んだ。
「うし、そんじゃ食うか!」
「「いただきます!」」っと二人して頼んだものを食べ始めた。
「うん、美味いな。ほれ司・・あーんっ。」
「んっ。美味しいですね、それじゃーこっちも・・・あーんっ。」
「んむっ。うん、美味いな。」
はたから見たらただの馬鹿っぷるって感じでお互いに食べさせ合ったりしながら食事を終えた。
「そう言えば・・・今日って何か予定ありますか?先輩。」
「いんや、特に決めて無いからゆっくりでもしとくかなーって程度だな。」
「それならデートしませんか?見たい映画あってですね。どうせなら先輩とみたいなっと・・・。」
「いいよ、そんじゃお礼がてら行こうか。」
「はいっ!よかったぁ・・・。」
「そこまで緊張する事でもないだろうに・・・。ん-っとこれからだと一回帰ってシャワー浴びてからの方が良いから・・12時半位に駅前って所か?」
「そうですね、それで大丈夫です。」
「はいよ、そんじゃそれで行こうか。今回のお礼だしデート代は全部出すよ。」
「別に気にしなくても良いんですけど・・・。」
「俺の気が済まん。」
「ですよね・・・、ん-ーーーーー、それじゃごちそうになります。」
「ふっ。それで良いんだ、んじゃ一回解散だな。」
そう言って伝票を持ってレジに向かった俺を司は「ちょ、待ってくださいー。」っと追いかけて来たのを待って一緒に「ありがとうございましたー。」って店員の声を背中に聞きながら二人そろって店を出た。
------------------------------------------------------------
その後、司と別れた俺は真っすぐと家に戻りシャワーを浴びてさっぱりとして出て来た所でスマホに着信がある事に気付いた。
「ん。もしもし?」
電話に出てスピーカーにして話し始めたら相手は雫だった。
「おはよー蓮。今日って暇?」
「雫おはよん。いんやこれから出掛けるところだよ。」
「あら?色々終わった後だから家でぐったりしてると思ったのにー。」
「そのつもりだったんだけどな、司と映画行ってくるよ。」
俺のその言葉に電話の向こうが一気に静かになった。
「へぇ~・・・司とデートな訳だ~。」
「おうって・・・・どうした?」
「別にー。デートじゃ仕方ないかー、今日は諦めるわよ。楽しんできてね。」
「おぉ?おう・・・。何かすまんな。また今度誘ってくれ。」
っと電話を切って何だったんだ?最後の雫の様子がおかしかったようなと頭を捻りながら髪を乾かして着替え始めた。
------------------------------------------------------------
「っと・・・司はっとー・・・。まだ来てないか。」
待ち合わせ場所に付いて司の姿を探したけどまだ来てないみたいだからスマホを取り出して弄りながら待つことにした。
そのまま待つこと数十分、待ち人来たるって感じで確りとおめかしした司が現れた。
「すいません先輩、お待たせしました。」
「ん。大丈夫だ。司を待つのは苦じゃないし確りとおめかししてくれて嬉しいよ。良く似合ってる。」
俺の言葉に司は照れくさそうにしながらも嬉しそうにして笑顔で側に寄ってきた。
「ありがとうございます。先輩!早くいきましょ!」
俺の手を取って司は嬉しそうにしながら俺を引っ張って歩き始めたのだった・・・・。
------------------------------------------------------------
SIDE 司
うん・・・やばい・・・。
やばいやばいやばいやばいっ!
めっちゃドキドキする!手汗大丈夫かな・・・?って気になる位にヤバい!
午前中に改めて先輩に気持ちを伝えたからなのか、何時もみたいに出来ない!
物凄い心臓がうるさい・・・・。
うぅぅ・・・・先輩とデートって思って一番お気に入りの服装も選んで軽くだけど化粧もして、何時もの私より可愛いって自覚はある!
でも・・・・それ以上に先輩を意識しすぎてもう何時もの私じゃ居られないのです・・・・。
先輩・・・どうですか?私は何時もより可愛いですか?
先輩の隣に立っても可笑しくないですか・・・?
------------------------------------------------------------
「そんで、司が見たかったのってこれ?」
「ですです。早く行きましょ!」
「そこまで急がなくてもまだ時間あるってー。まぁでも・・・ぱぱっと入ってしまうか~。司が可愛すぎて女連れの奴もガン見して連れに睨まれてるし。」
「ぁぅ。ありがとうございます・・・・。」
俺の言葉に照れながらぐいぐいと引っ張って映画館の中に入っていって真ん中位の位置に陣取って隣同士で座った。
「あの・・今日の私は可愛いですか・・・?」
「おう。何時も司は可愛いと思ってるけど今日は一段と?可愛く見えるね。見慣れてるって言い方も可笑しいけどそんな俺でも魅力的な女の子に見えてる位だから他の男どもの反応も分からんでもない。」
「はぅ・・・///」
真っ赤になって下を向いてしまった司の頭をポンポンしてやりながら映画の開始までの時間を潰したのだった。
「それにしてもっと・・・・。」
今の俺は暗い映画館の中で普段よりも可愛いくて魅力的な司と一緒に映画を見てる、それで思うんだが・・・(こいつってこんなに可愛くて女の子女の子してたっけ?)って事だ。
まぁ、確かに今まで妹的にしか見てなかったから女としては見てなかったってのもあるんだろうけども・・・、それを抜きにしてもだよな~。
チラッと横目で司を眺めると、映画に集中しながら目元に涙を貯めたまま確りと見続けてるのが見えた。
暗い館内でスクリーンからの光で何時もよりも確かに綺麗に見えるのも間違いないし、服装も大人っぽさと子供っぽさの合わさった丁度いい可愛さって感じで自分に似合うのは勿論の事、俺の好みもいれてくれてるの分かる。
「司をちゃんと見てあげて・・・か・・・・。」
夢で彩音に言われた事が自然と口から出て・・・それを拾った司が「??」って顔でこっちを見てる。
「何でもない、映画確り見とけ。」
そう言いながら司の涙を少し拭いてあげて納得のしてない顔をしながらも視線をスクリーンに戻して続きを見始めた司を横目で眺めながら俺も映画の続きを楽しむことにしたのだった。
------------------------------------------------------------
俺達は映画館から出て近くにある喫茶店で司の目の腫れが引くのを待ってる、だってな?泣きすぎて真っ赤に腫れあがってるのよ。
こんな状態で歩いてたら俺が苛めてるっと思われてしまうって訳だ。
「んぅーーー!っと結構面白かったな。色々意味深ではあったが・・・。」
「ですねぇ、私達には思いっきり刺さりましたねこの作品・・・。」
え?これは俺等の事?俺の事?って内容の話だったのだ。
その結果、司は途中から涙が止まらずに泣きながら俺の手を握ってずっと目も話さずにスクリーンにくぎ付けだった。
「って事は司も事前情報は仕入れなかったんだな?」
「はい、折角なので何も知らずに先輩と見てみたいと思ったので。まぁ、でも事前に少しでも知ってたら見れなかったかも・・・です。」
「そうだな。今回は事前情報仕入れなくて正解だったかもしれないな。
俺も一緒になって見れたって自信無いわ。」
「それに・・・・。」
「それに?どうしたんですか?先輩。」
「あぁ、いや・・・。何て言うか、主人公には成れないな
って~・・・・。」
「そんな事無いですよ。だって先輩は、ふさぎ込んでたままで終わらなかったじゃないですか。自分が死ぬほど辛いのにそれでも、私を助けてくれたじゃないですか、ちゃんと歩ける力があるじゃないですか!」
「司・・・。でもそれは・・・。」
「先輩は凄い人なんです!私は蓮夜先輩も彩音先輩もどっちも凄いと思ってます!彩音先輩よりも蓮夜先輩はもっともっと凄い人って知っています!分かってます!だからっ!だからっっ!」
司が今度は違う意味で涙を貯めながら俺に必死に伝えて来た。
「・・・・あぁ。そうだな。前を向くって約束したばかりだもんな。色々と映画に感化されたみたいだ・・・すまん。」
「あっ・・・いえ・・・その、私もすいません・・・。つい、ムキに・・・・。」
「なーに、司は悪くない。あーもうっ!今日は駄目だー俺。)」
「駄目じゃないですよ、確かに弱ってるとは思いますけどそれはそれで・・。そんな先輩を見れるのは今は私だけって思いますし・・・///」
「何照れてるんだよ。今日の司もいつも以上に可愛い姿だな~。」
「仕方ないじゃ無いですか・・・言ってて私だって恥ずかしいし、可愛いって褒めてくれるし、好きな人に言われて嬉しくない訳ないじゃないですかぁ。」
「それもそうか・・・そうだな・・・///」っと少し照れて(お前が居てくれて良かった、追いかけ来てくれてありがとうな、司。)っと聞こえない位の声で呟いた。
「ん~?今何か言いませんでした?」
「さてな?俺は知らん。」
っと顔に(???)っと浮かべてる司を見ながら注文した物を片付けて、お互いに映画の事とか色々話しながら夕方まで一緒に過ごしたのだった・・・・。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます