第28話 解決

その日の夜に俺と叔母が弁護士事務所で待っていると、約束の時間の15分前には家族揃って来ていた。

父親は真っ青な顔、母親は泣き顔、妹は怒りに顔を歪めた顔、当の本人はとんでもなくボッコボコの顔で訪れた。

話し合いはスムーズに進んで行って、有希那に言われた事が余程効いているのか終始素直に返答を返してきて素直に認めていた。

と言っても、返答に詰まる度に妹にビンタされていたのは笑ったけどな。

母親は兎に角、泣き声が煩かったので途中で弁護士に退出を求められて、事務所の人に連れられて出て行った。

弁護士からの説明と確認が終わったのを見届けた後に予定通り俺からどうするのかを聞き始めた。


「それでは、貴方方の置かれた状況はご理解しましたね?どうしますか?裁判にします?それとも示談にしますか?勿論示談ならそれ相応の慰謝料と条件を全部飲んで貰う事が条件ですがね。」


俺の言葉に続けるように麗華さんが続けて説明を始めた。


「裁判でも構いませんけど、慰謝料が多少安くなる程度でしか無いですし裁判履歴って残るんですよ、ですよね?先生。」


「はい、残りますね。ご本人に付くのでご家族にも場合に寄ってはこれからの人生で不利になりかねませんね。」


「神代さんからすれば裁判をしたいと考えているのは分かりますが、出来れば示談で済ませて貰えませんか?愚息は兎も角、妹の進路もありますし。」


「ふむ・・・。俺としてはどっちでも良いんですけどね?正直な話、貴方達家族がどうなろうと知ったこっちゃ無いのでね。」


俺の身も蓋も無い言葉に妹さんが椅子から降りて必死に土下座してきた。


「お願いします!示談にしてください!この兄は死んでくれて構わないですけど、コレのせいで私の人生まで巻き込まれるのは嫌です!お願いします!」


「・・・・先輩よー、妹からすら人徳無いんだな、流石に哀れになってきたわ。」


「こらこら、蓮ちゃん。本当の事言うのは可哀そうよ、この子の為にも示談で良いんじゃないの?」


「フォローになってねぇーよ。叔母さんこそ良いのか?雑誌に泥塗られたのと同じなんだぞ?」


「うん、今の所変な噂も起こって無いし蓮ちゃんの件でだけで良いんじゃないかな?と言ってもこの後があれば話は変わってくるけど・・・。」


遂には「お願いします、お願いします。」と泣き出してしまった妹をみながら「はぁぁ・・・。」っと大きく息を吐いて条件を伝え始めた。


「分かりました、慰謝料については弁護士の先生とこの後詰めてください。こちらからの条件は二度と俺を初め仲間の前に出てこない事、それを入院でも何でもさせて真人間に戻す事、学校からの自主退学・・・は、学校から処分下るでしょうが停学では温いので停学の場合は退学してください、今回の事で叔母の会社に迷惑と不利益になる事を噂は勿論愚痴の一つも流さない事、そして・・・街から消えてください。一つでも破った場合は家族全員真面な人間らしい生活を出来なくなるまで追い込みますので。」


妹ちゃんを宥めて、立たせ椅子に座らせながら淡々と条件を突きつけた。


「分かりました、多少お時間は掛かるとは思いますが全て飲ませていただきます。愚息が皆さんの前に姿を現さない様に確りと監視もします。神代さんも、菜月さんも本当に申し訳ありませんでした・・・・。そして陵さんには申し訳ありませんでしたとお伝えください。」


「あぁ、謝罪は結構です。何の価値も無いので。貴方方の自己満足にこちらを巻き込まないで下さい。きっちりと払うものを払って消えてくれればそれで良いので。」


俺の身も蓋もない言葉と冷めきった顔に誰も彼も唖然としてしまって居る中、「あの・・・陵さんに謝罪を・・・。」っとゴミが呟いた。


「・・・・・。ふんっ。」っと胸倉を掴んで顔のど真ん中に思いっきり拳を突き立て「ふぎゅっっっ。」っという声と共にぶっ飛んだゴミを見下ろした。


「蓮ちゃん!気持ちは分かるけど弁護士の先生の前でこれは不味いわよ。」


「ちっ・・・。別に慰謝料を少し減らすだけで良いだろ、未だに何も理解してない上に有希那に謝罪だと?有希那に言われた事もう忘れやがったか?!殴られて当然だ!碌でもねーこと言いやがったこいつが悪い。条件に檻付きの精神病院に死ぬまで閉じ込めるって追加するか?!それともこの失敗作を作り上げたお前らの手で切り刻んでミンチにして殺すって付け加えるか?!?!あぁん?!」


俺の言葉に父親も妹も顔を真っ青にして自分の作り上げた失敗作がどうしようもない位手遅れだと認識していた。


「んんっ。後はこちらで纏めますので神代さんは席を外してください。」


「ほら、蓮ちゃん。落ち着いてね?退出してコーヒーでも飲みましょ。」


------------------------------------------------------------


SIDE 麗華


今にも殺してしまいそうな雰囲気を出している蓮ちゃんを部屋から連れ出して秘書さんが淹れてくれたコーヒーを二人で飲みながら甥っ子が落ち着くのを待ってる。


「麗華さん、ごめん。我慢できなかったわ。」


少しして溜飲を少しだけ下げた蓮ちゃんが謝ってきた。


「ん。私も気持ちは分かるからとやかくは言わないけど、流石にやり過ぎ、ってより場所がわるいわ。」


「分かってるよ。だが我慢出来なかった。」


はぁぁ~・・・。全く他の事や自分の事なら幾らでも冷静になれるのに仲間や恋人の事になるとこっちが恐ろしいと思う位残虐に成れるのが悪いところよね。

それにしても・・・、彩音ちゃんの時と同じようなと言うよりそれを超える位に成ってるのはこちらとしても疑問ではある。


「あのねぇ、蓮ちゃん。自分はどうなっても構わないって行動は止めなさいって言ってるでしょ?何かがあれば私だけじゃない、貴方の仲間は皆悲しむのよ?それに、有希那ちゃんは?自分のせいだと悲しむだけじゃなく自分を追い込んじゃうんじゃないの?」


私の言葉に蓮ちゃんは言葉につまりながら考えこんでる。

有希那ちゃんは蓮ちゃんが好きだと言っていたし蓮ちゃんに何かあってそれが自分が原因だとしたら追い込むだけで済むとは思えなかった、だってあの子は・・・・。


「っっ。分かってるよ、んな事。有希那は彩音に似てるからって言いたいんだろ。そんな事は今までの付き合いで理解してるさ。」


「分かってるなら少しは考えて行動しなさい、大事なんでしょ?有希那ちゃんの事。」


私の言葉に蓮ちゃんはポカンっとした顔して私を見つめて来た。


「・・・え?何を言ってる?仲間なんだから大事なのは当たり前だろう?じゃ無きゃここまで徹底的にやらないってのよ。」


「そう言う事じゃ無いんだけどな~・・・・。全くこの子は・・・・。」


先は長そうだし有希那ちゃんもっと頑張れ!寧ろ既成事実でも作ってしまえもう!っとしみじみと思った私は悪くないと思う・・・・。


------------------------------------------------------------


「ん?終わったみたいだな。」


俺らが退出した部屋からゴミとその家族が出て来てこっちに向かってきた。


「神代さん、菜月さん、この度は誠に申し訳ありませんでした。」


「「申し訳ありませんでした。」」


父親の謝罪に続いて、妹と落ち着いた母親が揃って頭を下げて来た。


「いえ、謝罪はもう十分ですので息子さんの監視と示談の条件を早く満たしてくださればそれで構いません。ほら、蓮ちゃん・・・・。」


「さっきも言ったが謝罪は不要だ、あんたらの自己満足にこっちを巻き込むな。麗華さんの言った通り示談の条件を早く満たす事だな。そうすりゃ俺は文句はない。気持ち的には全く満たされないがね。」


無表情で一切許す気は無いって事を暗に伝えるだけにした。


「はい。それは必ず・・・・それでは先に失礼します。」


父親の言葉に母親と妹も頭だけを下げてゴミを引っ張って出て行った。


「はぁ・・・。胸糞悪い、法律なんて無ければ苦しめるだけ苦しめて処分するんだがな・・・。」


「お気持ちは分からなくも無いですがそれでは無法国家になってしまいますから・・・。ある程度の落としどころは必要ですよ。」


「分かってますよ、先生もお疲れさまでした。お手数をおかけししました。」


「いえいえ、それが私の仕事ですからね。」そう言って弁護士の先生は麗華さんに内容の確認をさせ捺印をさせて今回の一件は一先ずの収束を迎えた。


------------------------------------------------------------


「蓮ちゃんはこの後どうするの、疲れただろうし夜も遅いし真っすぐ帰る?」


事務所を出て麗華さんの車に乗ったところでそんな事を聞いて来たから(有希那に報告に行かないとだな一応。)っと思いついてそれを伝える事にした。


「いや、一度、陵家に行って話はしないとなっと思ってるからこのまま向かおうと思ってる。近くまで頼んでもいいか?」


「それなら、私も一緒に行って話すわ。原因の一旦は私だもの。」


「んじゃ、有希那にメッセージはいれておくから向かおうか。ケーキ位買って行った方が良いよな?やっぱ。」


「そうねぇ~。流石に手ぶらは不味いわよね。近くにケーキ屋さんあるかな~?」って言う麗華さんの言葉を聞きながら有希那に(これから麗華さんと一緒に家に顛末を報告に行くよ、もしご両親居るなら遅い時間で申し訳ないけど少し時間下さいって伝えて欲しい)っとメッセージをいれて、仲間のグループにも話終わって妹さんの事を考えて示談って事で終わらせたっと報告をいれて直ぐに皆から(お疲れ様ー!)っと返答が来て少し笑顔になるのと同時に気持ちが軽くなったのを自覚した・・・・。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る