第23話 1日目

ピコンッ。


「ん?誰からって・・・小野坂?・・・え?」


「どしたん?蓮。」


「あぁ、いや。有希那が泣いてるからちょっと来て欲しいって小野坂から来てさ。」


「は?!何で有希那が泣いてるのよ。何があったの?」


雫と信からの質問に首をかしげながら何があったんだろっと思いながら放っておけないのも事実だし見に行くことにした。


「良く分からないけど流石に放置は出来ないからちょっと行ってくる、もしかしたら戻れないかも知れないから先生に言っておいてくれ。」


「りょーかい。言っとくからいってきな、泣くとか余程の事だろうしさ。」


「必要なら私達も行くから呼んでね?蓮。」


二人からの声に片手を上げるだけにして隣のクラスまで足を延ばして有希那の様子を見に行くことにした。


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直ぐに有希那の教室に向かうとガヤガヤと有希那が泣いてるからか騒がしくなってる。


「ほら、そろそろ泣き止んで有希那。心配しなくても大丈夫だからね。私も皆も勿論神代君も離れたりしないからっ!」


教室をのぞくと小野坂が必死に有希那を泣き止まそうとしてるのが聞こえて来た。


「そうだぞ~、有希那が俺を嫌いにならない限り、周りに何言われても離れたりしないっての~。」


言いながら教室に入って泣いてる有希那の側まで近寄ったのと同時に「蓮夜君っ!!!」名前を呼ぶと同時に有希那が抱きついて来たのを受け止めて片手で背中をポンポンしながら頭を優しく撫でてあげた。


「ごめっ・・・ごめんなさ・・・・私のせいで・・・・っ。」


「大丈夫だ、有希那のせいじゃない。俺がちゃんと皆の事も有希那の事も守るから、だから泣き止んでくれ、安心しろ。」


胸の中で声を詰まらせて泣きながら謝罪してくる有希那を落ち着かせるようにゆっくり、ゆっくり撫でながら落ち着かせていく。


「ぐすっ・・・・。だって・・・だってぇ・・・うぅぅ・・・。」


大丈夫大丈夫と優しく声をかけていると有希那が静かになったのを確認すると、そのまま寝てしまってるようだった。


「ん、緊張ほぐれたんかな・・・。小野坂さ、ちょっと手伝ってくれないか?このままおぶって保健室まで連れて行って一回寝かせるからさ。」


「うん。ありゃま・・・泣き止んだと思ったら寝ちゃったか。神代君のお陰で落ち着いたんだろうけど、起きて今の事思い出したら違う意味で泣きそうよねこれ。」


「うん、まーそこは・・・。」


苦笑いしながら小野坂に手伝ってもらって有希那をおぶりながら、クラスの子達に先生に言っておいてくれーっと言いながら保健室まで歩き出した。


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「「失礼します。」 」


小野坂に扉を開けて貰って保健室に入ると直ぐに養護教諭が近づいて来た。


「あら?おぶってるのは陵さん・・・?どうしたの?取り合えず寝かせてあげて。」


「俺が寝かせるから説明頼むよ、小野坂。」


俺の言葉に何があったのかを説明してるのを聞きながらベッドの上に有希那を寝かせて布団をかけてやって、顔に残ってる涙を拭きとった辺りで養護教諭が様子を見に近寄ってきたから俺も説明の続きのつもりで予測を話し始めた。


「多分、昨日から心労がたまってんだと思います。今回みたいな事は経験も無いでしょうし、校長達と話してる時も俺が主導で話を進めて不安にならない様にしてたけど、帰りとか妙にテンション高かったりだったんですよ。今にして思えば不安に押しつぶされない様に無意識でも奮い立たせていたのかもしれません。」


「そんな状態なのに今朝の話で一気に爆発しちゃったって感じ?」


小野坂の話に「んっ。」っと首を縦に振って同意を示しただけにした。


「取り合えず一回離れましょうか、余り頭の上で話して有希那が起きるのもなんですし。」


そう言って離れようとしたら有希那の手が制服の袖を掴んで離そうとしなかった。


「あれま・・・・頼られてるねー神代君。」


「二人で様子見ててあげて、先生達には伝えておくから。」


クスクスと笑いながら保健室の養護教諭は部屋を出て行った。


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SIDE 美織


それにしても驚いたな~、有希那がガチで泣き始めたのは勿論だけど、呼んだら来てくれた神代君に周りの目も気にせずに抱きついて安心から寝てしまったのまで本当に驚いた。

有希那はこの容姿と性格だから確かにモテるけど今まで男子には一歩距離を置いていたのをずっと私は見て来た。

そんな有希那がいくら助けられてその人の落とし物を拾ったからって自分からコンタクトを取って自分から仲良くなりに行った事も本当に驚いたのだ。

まぁ、その相手が神代君で、有希那とセットで私も仲良くなれたのはラッキーだったけど。


「やれやれ、安心しましたって顔で寝てくれて・・・・。」


「うん、まぁ良いんじゃないか?さしずめ演技で悲しんでのを表現しようとして本当に不安になったのもあったんだろうしさ。」


「多分それが正解だろうね。それで神代君を見て勢いで抱きついてーって。」


「くっ。俺は約得だった訳だな〜。」


そう言って笑いを噛み殺しながら神代君は凄い優しそうな顔で有希那を見詰めていたのを私は複雑な思いで見ていた。


「なぁ、小野坂「美織」・・・ん?」


「美織で良いよ、皆の事名前で呼んでるんだし私だけ名字だと距離感じて嫌だからさ、これからは美織って呼んで?私も蓮夜君って呼ぶからさ。」


私がドキドキしながら名前で呼び合おうって提案したら蓮夜君はポカ~ンっとした顔で私を見詰めてた。


「どしたの?そんな変な事言ったかな?私。」


「あぁ、いや。その通りだと思ってさ、これからは美織って呼ばせて貰うよ。」


「うんっ!!」私は無意識に全開の笑顔で答えた。


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「ところでさ、昨日の帰りにテンション高かったって言ってたじゃん?どんなだったの?」


「あぁ、それがな~・・・・。何て言うか語彙がバグってたって言うかね。兎に角~~すごい!蓮夜君凄い!!!って必ず語尾に付いてさ・・・。」


「なにそれ?」


「ほら、校長とか教頭とかに話通しに言ったろ?その時に主導権一切渡さないで脅し込みでこっちの要望全部通したのよ。反論なんかさせずにね。それが有希那からすれば凄かったらしくて、もう帰り道の会話の語尾に凄い!がついてってわけ。」


「まぁ、今にして思えばそこで既におかしかったんだろうけどさ・・・。これは少し予定を早めるべきかもしれんな・・・・。」


そんなことを考えていたら「うぅぅ・・ん。あれ・・・私・・・。」っと有希那が目を覚ました。


「起きたか?」「目が覚めたの?」


俺達の言葉に有希那がぼーっとした顔のまま見詰めて来てボンッ!!っと音が鳴るんじゃないかって位顔を一気に真っ赤にした。


「えっとっ!私?!抱きついて!蓮夜君!教室!眠っちゃって!泣いて?!」


「ぷっっくくくくっ。あーーーはははははははっっ。混乱しすぎだから、落ち着いてくれ有希那。」


「うぅぅぅ・・・・/////」っと更に顔を真っ赤にして完全に俯いてしまった有希那の頭を一度爆笑したのを我慢しながら撫でて落ち着かせる。


「混乱しすぎ。ほんと落ち着きなさいよ有希那。」


「取り合えず有希那も起きたみたいだしこのまま休んでおきな、俺は戻るからさ。有希那と美織の教室によって目を覚ましたって伝えてから戻るから二人共ここで一限終わるまで過ごしときな。」


そう言いながら保健室から出て行く時に「蓮夜君ありがとねー。」「お礼はいらないよ、美織。」そう言いながら扉を閉めたが、有希那の「蓮夜君?!美織?!」って驚きの声は確りと聞こえていた。


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「さてと・・・・。司からの情報だとクラスに一人顔色が変わったのが居たらしいしそいつが主犯って事は無さそうだが一味の一人ってのは間違いなさそうだ、司が上手い事やってくれれば期間内に何かしらのコンタクトはあるかもしれないな・・・。


これからの事を考えながら歩いている内に有希那達のクラスに着いたのに気付いてコンコンっとノックした後に扉を開けて「失礼します。」っと声をかけた。


「うん?あぁ、神代か。話は聞いてるが、どうした?」


「ゆk・・・陵さんの目が覚めたので一応の報告をと思いまして。調子は大丈夫そうでしたが念の為保健室で休ませてます。一人だと心細いでしょうから小野坂に残って見て貰う事にしましたってのを報告に。」


「そうか、大丈夫ならよかった。話は分かったから神代も教室に戻りなさい。」


「はい。それではお邪魔しました。」


そう言って扉を閉めそのまま自分の教室に戻った。


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教室に戻って普通に授業を受け1限が終わって少ししたら有希那と美織も戻ってきたみたいで、隣の心配そうな声が聞こえて来たが取り合えずでそのままスルーすることにした。(有希那も恥ずかしいだろうしな。昼くらいまでには落ち着くだろう。)


その後、特に何かも無く昼休憩になって信と雫と揃って教室を出て学食に向かった。


「さて、有希那も美織も司も来たしこれで揃ったな。」


「「「美織?!」」」


「あぁ、有希那が起きるのを待ってる間にな、一人だけ名字で呼ばれてるのは距離を感じて嫌だから名前で呼んでくれって言われて、確かにそうだなっと思って呼び方を変えた。ってそれはどうでも良いんだよ、姫川の話では確りと完成したらしいから貼り付けたらこっち来るって言ってたぞ。」


「成る程、ちゃんと納期が守れるなら優秀な人ですね、と言っても殆んど先輩の指示通りに作ってるので間に合わないとか許されないんですけどね。」


「司が厳しい・・・・、ところで、今朝は結局何だったの?有希那が泣いちゃったんでしょ?」


司の微妙に黒い気配に雫は少しビビりながら今朝の事に話をずらした。


「えっとぉ・・・。最初はそんなつもりなかったんだけどね・・・。色々考えちゃってそしたら本当に悲しくなって、それでって感じかな・・・。」


「なるほどねぇ~。今回の件の不安もあった感じ?」


「うん、こんな事初めてだしで、一気に爆発しちゃってかな。」


有希那の言葉に全員が沈痛な顔を浮かべて空気が重たくなってしまったのを変える為にもここは俺がかな・・・?「教室でも言ったけど」って言葉で話し始めた。


「有希那が俺を嫌いにならない限り周りが何を言っても俺は離れないよ。そしてこれは勿論俺だけじゃない、美織は勿論、雫も司も信も今こうやって有希那の周りに居る奴らは有希那が拒否しない限り離れたりしない、そうだろ?皆。」


有希那の目を確りと見ながら、はっきりと伝えて俺の言葉に全員が「勿論、仲間を見捨てるなんてありえないから!!」っと力強く言ってくれた。


「蓮夜君・・・皆・・・・。うんっ!うんっ!ありがとうっ。」


有希那の言葉に全員が笑顔になって空気が戻った所に「ごめん!おまたせ~!」っと姫川が到着した。


「お疲れ、姫川。首尾は?」「ばっちり!任せて!」


「おっし、取り合えず飯だ飯ー。腹減ったわ。」


俺の言葉に全員でいただきますをして色々話しながら昼を楽しく過ごした。


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午後も滞りなく時間が過ぎて放課後になったが・・・・。


「やはり、来ないか。」


ぼそっと独り言を言いながら学食から戻る道すがら張り出されてる新聞の前の人だかりの感じを思い出しながら思考を巡らせていた。


「まぁ、初日だし話が広まる段階だからこんなもんか。おーーい、雫、信ー有希那達を拾ってかえっろうぜー。」


俺の声に二人共荷物を持って近づいて来た。


「皆でどこか寄ってから帰る?有希那の気分転換に甘いものでも食べてからにしよっか?」


「んや、俺はやる事あるから有希那も帰るなら送ってそのまま帰るけど有希那が遊びたいって言ったら連れて行ってやってくれ。」


そんな事を話しながら有希那と美織の二人を拾うために隣のクラスまでいって声をかけて合流した後、会談の所で司とも合流して皆で固まって下駄箱まで移動を始めた。


「ん?・・・くっ。予想通り過ぎて笑えて来るわ。」


「蓮?何かしたんか?」


「あぁ、これだよこれ。」


そう言って俺の動きに疑問を持った信に指で手紙を挟んで見せつけた。


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