第7話 学園内での王女様は落ちこぼれクラス
(ハァ…、まさか黒狼とは……)
肩を落とす。キューは俺を慰めようとしてくれている。
まぁ、だめだったと言う事はしょうがないか。
そのまま受け入れることにし、肩を並べて廊下を歩いているレーアという女生徒と、一緒に黒狼のクラスに行く。
「名前を知らなかったわね。貴方、名前は?」
「ロイス。ロイス・ハウクソンだ。そっちは?」
「ロイス……。そう、よろしくね。なら、私も自己紹介しないとね」
レーアは俺の真正面に立ち、向き合った。
「私はレーア=アードラー。アードラー王の一人娘」
「え、じゃあ………」
「えぇ、私は天空の国。ゼータ天空国の姫君よ」
安易に答えるレーア。
いや、レーアさん。つまりは王女。王女だと分かると、見え方は変わった。
先程まではただの女生徒の筈だったが、王女だと分かると無意識に気品さを感じる。
少しドヤ顔で言っている彼女。そんな人物が何故。俺と同じ黒狼なのか? それが気がかりだった。
「ふふっ、今考えている事を当ててあげましょうか? 何故王女が黒狼なの…でしょ?」
その言葉に俺はドキッとした。何故それを知っているのか。
更に驚いてしまう。心でも読めるのか、とつい声に漏らしてしまいそうだった。
「ふふっ、驚いた?」
悪戯のような笑みを浮かべ、俺はほんの少しだけ警戒した。理由は分からない。咄嗟にだ。
「………まぁ、これには色々と理由はあるのだけれどね」
そう呟くレーアさんの横顔は、寂しげな顔をしていた。
何か理由があるようだ。訳あり状態。
寂しげな顔から咄嗟に明るくなる。コロコロと変わるその顔がちょっとだけおもろ。
「さ! 早く行くわよ」
「あ、ハイ」
なんかもう考える事を放棄した。
そしてなんか。不穏な空気が流れている気がする。
———バリン!!
「「………………………………え?」」
突然廊下にある窓が割れ、そこから蜂が飛んでくる。
大きすぎる蜂達は俺たちの周りを飛び回り、嫌悪感を感じさせる音が鳴る。
「おい、どうした!?」
教師達が騒動を聞きつけ、廊下に現れる。
何故今日はこんなに巻きこまえれるのだろうか?
『やっぱ、お前。運悪いんじゃないのか?』
(うるさいな………)
ぶーんぶーん
と、耳が嫌な音が飛び回る。
あー! 最悪!! やめろ!飛び回るな!!
何度も振り払おうと思っても、全く効果なし。
「ここじゃ無理だ! 一旦外へ出たほうがいい!」
「君たちは……!」
「もちろん行くわ。ね? ロイス」
「え、あ、はい」
拒否権なしの問答無用さ。
許すまじ。
割れた窓の方から勢いを増して飛び出し、戦うことに決めた。
炎魔法を出す事はできないが、闇魔法で黒色の炎を出す事はできる。
激痛には耐えなきゃいけないが…。
「『炎斬』!!」
教師の1人は腰につけていた剣を取り出し、それで炎を纏った剣で切り刻む。
魔物の数は多くはないが、早くこの場から立ち去りたい。そう。それが本音だ。
「『雷斬』!!」
近接戦で戦う教師の1人。
クラスにいる人たちに気づかれないように戦い、魔物の数を減らす。
♢♢♢
何とかして戦うロイス達。
最悪とも言えるこの状況。ロイスは虫が大嫌い。特に蜂、蜘蛛、Gは心の底から嫌っている。
嫌悪感を抱いているこの状況。いやぁ〜と思いながら、鳥肌を立てながら戦う。
教師達が殆ど魔物達を倒し、それを援助として戦っているのが、レーアとロイス。
なんとも言えないこの状況。ロイスからしたら絶望。そしてレーアに対してみれば、なんとも思わない。
強い女性だ。
そして数十分後。やっとの思いで魔物達を倒し終わり、地獄という名の空間が終わる。
(…………俺、何もできんかった)
「おい! 大丈夫か!? お前ら!」
「あ、はい」
「私も大丈夫です」
何もできなかった自分を悔やみつつ、アデルは2人に無事を確認する。怪我ないか? とか、よくやったぞ! とか。
レーアは満面の笑みを浮かべ、ロイスは苦笑を浮かべる。なんとも言えない心情がライスを襲った。
学園の廊下に息ができるよう、窓ガラスが割られ、そこから風が流れ込む。
入り口からと、窓から侵入できるようになってしまい、教師達は急ぎで割られていた窓ガラスの破片を、元に戻すように魔法をかける。
「そういえば、ロイス。後ろで見ていただけなの?」
「え、あ、いや、えーと……。実は『悪魔』なんだよねー」
「あら、そうなの? へぇー、初めて見た。けど、普通の少年ね」
レーアはロイスに対して、ただそう言っただけだった。不安がロイスを襲ったが、なんの心配もいらないぐらい、あっさりと答えたレーアに、ロイスは驚く。
———どうしてそうあっさりと答えるのか?
———何も思わないのか?
と、そんな言葉がロイスの心に埋め尽くされた。
疑問に思うロイスは、レーアにしか聞こえない声で小さく言う。
どうしてそこまであっさりと
目を見開いたと思ったら、すぐさま普通の顔に戻り、レーアはロイスに向かって微笑む。
そしてまたもや驚かさせるような事を、言われる。
「それはー……特に理由はないから。かしら?」
「………………は?」
咄嗟にそんな声が出てしまい、目を見開く。
何故そんなことが言えるのか?
何故そう思えるのか?
その『職業』が大事じゃないのか?
と。
「何故そう思えるのだ? アードラー。『悪魔』だぞ? もしかして、一目惚れとかか?」
煽るような笑みを浮かべるカーポの問いに、レーアは答える。それはもう、自信満々な顔で。
「そうね、簡単に言うのなら。———理由にならないかしら?」
その問いに答えたレーアは、ロイスの手を取る。
そしてそのまま廊下の方へ戻り、クラスの方へ再び行く。それを聞いたカーポは、舌打ちをした。
その場にいる誰にも聞こえるような大きな舌打ち。
「チッ、生意気なガキめ」
王女相手であろうと、影では言うカーポ。
これがもし、彼女の耳に入った場合、彼がどうなるのか。誰にも分からない。
♢♢♢
黒狼クラスへ着いた2人は、教室の扉を開ける。
黒狼の級友達は、一斉に2人を見た。
黒狼のクラスには、それぞれ特徴的な人物達がいた。ヤンキーのような人物、気弱そうな人物、手に包帯をつけ、傷が数え切れないほどある少女、読書をしている男子1人。一見シーンとしているが、クラスの中に活発そうな女の子も視界に入る。
席の方へ行き、椅子に座る。
目の前に教壇と黒板があり、2人の席は教壇よりもやや離れており、後ろの席。
座ると早速レーアから話しかけてきた。打ち解けている2人の空気は、楽しそうに見えるが、レーアが楽しそうにロイスに話しかけているだけ。
ロイスはというと、先程の状況で意気消沈していた。
口から魂が抜けているかのような顔となり、変な言葉も発していた。
「ウィーーーーーーーーー(棒)」
壊れたのか。と、レーアは思う。
頭でも打ったのか。と。クラスの人たちからしたら、何があったんだ。と。
近づかないようにしよう。と、思う人物達もいた。
「………ロイス?」
「ヴァーーーーーーー(棒)」
ダメだ。もう壊れているようだ。
こうなってしまえば、治るのに時間がかかるようだ。
よし、このまま無視しよう。
と、思う人物がいた———。
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