第4話 悪魔と契約
教会から出ていき、父さんと一緒に来た道を戻る。気まずい雰囲気が流れ込む。お互い口を閉ざす。だが、そんな雰囲気を突破させたのは、父さんだった。
「まさか、『悪魔』だったとはな」
「……ごめんなさい。父さん」
俺は謝った。父さんは何も言わないまま、肩を並べて歩く。
青空の元を歩いているはずなのに、それに似つかわしくない重たい空気。
再び気まずい空気が流れる。
「………本当は、お前が『魔導師』になった時のために、専用の魔導書と魔石入りの指輪を上げるつもりだったんだがな」
弱々しい声で父さんは言った。惨いむごい。自分が惨くむごく感じてしまう。父さん達は、俺が『魔導師』になる事を願っていた。
なのに、俺は……。と、自分が情けなくなる。
「………ごめんなさい」
「………大丈夫だ。安心しろ。お前は魔法を使う事ができる。その為に使えばいいだろう。だから、家に帰った時は、それをお前にやる」
父さんは一旦立ち止まり、俺も釣られて立ち止まった。そのまま父さんは顔を振り向かせず、ゴツイ手で俺の頭に置いた。
目頭が熱く感じる。だが、泣かない様に俺は堪えた。
♢♢♢
家に着いた時、母さんは何も言わず黙ったままだった。今日中はこの重たい空気は流れ込んだままだと思う。
父さんから魔導書と魔石がはめ込まれている指輪を受け取る。
ルビーの様な赤色の宝石が組み込まれており、それを素直に人差し指にはめた。
魔導書を開いてみると、父さんが内容の説明を勝手に始める。
「それは全魔導書を書きまとめたものだ。攻撃魔法から防御魔法、治癒魔法も並んである。だが、意味なかったかもな……」
苦笑を浮かべながら、俺はそれを聞く。
だが、やり方さえ知れば、禁忌魔法にある種類だけでなんとか出来そうな気がする。
毒と薬は紙一重。
攻撃魔法に関しては、闇魔法、血魔法、死魔法が使えるはずだ。
防御魔法に関しては、闇魔法で黒霧を発生させて、盾にすることが出来るかも知れない。
「ううん、ありがとう」
「あぁ、頑張れよ」
♢♢♢
父さんからそう言われてから、3年後。
13歳となる。3年前から魔導書の内容を読み漁り、全部の魔法を覚え、それを禁忌魔法で扱える様にした。お陰で狩人としてやっていた能力と、魔法とではかなりの相性がいい。
俊敏さを手に入れた能力と、狩人としての勘。それらと魔法とではかなり狩りが優位に働く。
(もうすぐで学園に入れる。入学の時期は9月。今は8月。全然時間はある。『悪魔』だとしても、入学できるはずだ。“魔法”を扱えるからな)
魔法を扱える分、学園の試験では優位に働きそうだ。何故なら———。
———『悪魔』としても、入れると言うことが証明となる。
♢♢♢
8月の中旬。
俺は再び森に行く。狩人としての事もやり、獣や魔獣達を狩っていると、気がつくと奥へと行っていた。
今までの木よりも大きく、巨大樹が視界に広がる。
誘われているかの様に、体が勝手に巨大樹の方へと進んでいく。
近くへ行くと更に大きく感じ、巨大樹に手で触る。こんな大きさ見た事ない俺からしたら、目の前に広がる光景は圧倒されていた。
『ーーーー・ーーーー』
「………なんだ?」
巨大樹にもたれかかっていると、突如謎の声が聞こえる。周りを見ても誰か人がいる様には見えない。
『こっちへ来い』
次はそうはっきりと聞こえ、もう一度あたりを見渡す。やはり、誰もいない。誰が発しているのか。
『こっちだ、こっちへ来い』
次は禍々しい紫色の球がふよふよと浮いていた。
それを発見し、俺は紫色の球の後をついて行く。
『ここだ、ここへと来い』
徐々に声が大きくなり始め、近づいていっているのが分かる。紫色の球は止まり、壁へと浸透していく。
(ここに何かあるのか……?)
俺は石の壁に手を当てると、突然魔法陣が展開され、石の壁が無くなる。中は空洞となっており、明かり一つも付いていない。
紫色の球も無くなっており、何故か警戒心が解かれていた。本来ならば、こんな場所に足を踏み入れたりなどしない。
だが、俺はその中に入っていく。
♢♢♢
真っ暗で何も見えない。
壁に手を寄せ、それを頼りに進んでいく。
最深部へついたと言うことがわかった時、無かったはずの蝋燭が点々とつき始め、目の前に広がる光景。
ガーゴイルの様な銅像が出現し、再び声が発せられる。
『来たか。悪魔に魅入られた少年よ』
「……誰? もしかして、悪魔?」
『あぁ、そうだ。俺はガーゴイル。その名の通り悪魔だ。だが、本来なら姿を表すのだが、今は力が封印されている。その為、其方に姿を見せることが出来ない』
ガーゴイルと名乗るその銅像は、お喋り好きなのか、はたまた無意識なのか、長々と喋りだす。
『……其方は、悪魔に魅入られ、神に見捨てられた少年。そんな其方にこれをやろう』
渡された
禍々しさを出しているかの様なほど、威圧を感じ俺は受け取るのを躊躇った。
『さぁ、受け取れ。受け取る権利がある。何故なら、其方は『悪魔』の紋章を得た。貴様は悪魔を召喚させる事も可能な力を得た。それでどうだ? 自分を馬鹿にしたあいつらを見返すと言う事を……』
本当に悪魔の様だ。悪魔の様な囁きを言い、惑わせる。
「…………見返すと言うより、学園に入りたい。そうすれば、見返すことのできる一歩になる…。分かった」
俺はその指輪を受け取る。そして中指にはめた。すると、ガーゴイルの像が光、指輪から先程の声が聞こえる。
人差し指にはめている指輪とはオーラが違いすぎる。魔石がはめられている方が煌びやかだと、髑髏の方は禍々しいオーラが放っている様に思えた。
時間は過ぎ、その場から離れることにした。
♢♢♢
ガーゴイルの声が脳裏に響く様になってから、一週間が過ぎる。日々向上し、そして痛みが走ると言うのを繰り返す。
ガーゴイルが言うには、禁忌魔法を放ってから痛みが走るのは、“呪われているから”と大雑把過ぎる事を言っていたが、それがどうかは分からない。何故なら、それを言っているガーゴイルは、曖昧に答えているからだ。
それが本当かどうかなど分かるはずもないが、他に理由もありそうだ。
だが、学園に入学するのならば、この痛みが起きるのは、何とかしなければならない。
『その痛みを無くすことなどできぬ』
と、バッサリと言われた。
学園生活が不安になりつつ、俺は入学式がある9月まで待つことにした。8月25日には試験が実地され、その合格者たちが学園に入れるとのこと。
そして学園では五つのクラスに分けられていると言う、噂が存在していた。
王族が入ることが許されている、
【
貴族が入る事が許される、二番目に強いクラス。
【
実力主義のクラス。
【
地味な見た目であるが、強いクラス。
【
最後のクラス。一番最悪とも言えるクラス。退学目前の生徒、問題児のクラス。
【
と言うクラスが存在する。
どのクラスに入学するためには、実力が全て。だが、王族、貴族は別となる。
庶民である俺は、実力で庶民のクラスの中でも強い、【
そして、どのクラスにも専用の制服が存在しており、胸元にはそのクラスの動物、幻獣たちの絵が描かれているバッチが胸元についてある。
(一先ず、
流石に王族や貴族たちのクラスには入れない。『魔導師』の親がいるとはいえど、地位なんて持っていない。普通の庶民である我が家では、あくまでも大鷲狙い。
(……だが、魔法を使った後に起こる激痛は何とかしなきゃ…。だが、何とかって何をすればいい?)
考え策など見当たらない。
長ったらしく考えていたら、眠くなってしまいそうだ。思考が徐々に遅くなっていき、俺はそのまま机に寝落ちした。
机の冷たさが頬に伝わり、視界は真っ暗となる。
どうすればいいのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます