第3話 教会で悪魔の知らせ

痛みは収まり、家に帰る。既に父さんが準備をしていた為、俺は急いで父さんの方へと走っていった。

心臓がドキドキする。それぐらい、今日は俺にとって大切な日。

13歳までなら、いつ行っても構わないが、出来るだけ速く行くことを勧めているようだった。だが、王都に行くまでの労働。資金、それは全ては自給。もちろん、ただの村人なら馬車など高価なものは持っていない。

歩きだ。歩きで王都の方まで行き、教会で儀式を行い、そしてまた歩く。それが村人の在り方だ。


「……安心しろ。お前は大丈夫だ。『悪魔』などにならん」

「うん、そうだね」


こればっかしは、父さんも弱気になる。父さんだけじゃ無い。俺も、母さんも。

母さんに至っては、亡くなった兄に。俺にとっては伯父の人に拝んでいた。

父さんも母さんも『魔導師』

偶々通っていた学園で、17歳の時に出会い、そして結婚に至ったと話していた。

と言うことは、俺がもし。『魔導師』と書いてあれば、俺は学園に入れる。父さんたちの母校に。

魔法だって放つ事ができる。魔力だって体内に存在している。


魔法を放つことができる子は、大体が『魔導師』だ。稀に魔法が放てても、『魔導師』以外の単語が表示されるが、それは稀の類だ。

何も心配することは無い。俺は魔法を放つことができる。『魔導師』の資格がある。


王都へ行ける一本道を歩き、王都が存在する場所まで歩き続ける。

心なしか手を繋いでいた父さんの手が、強くなっている気がする。相当不安だ。

大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせるしか無い。


そして、いよいよ。王都が存在する場所に辿り着くことができた。

村とは違い、王都は色んな店が構えてある。村よりもでかい建物が並んであり、何もかもが違って見える。

王宮が存在する一歩手前に教会は存在する。鐘があり、ゴォーンと言う音が鳴る。

儀式の開始の合図だ。誰かが教会の中で儀式を行なっている。


俺たちも急足で教会の方へと歩いていった。


♢♢♢


「やった! やったよ! 僕『錬金術師』だった!」

「よかったな! 今日はお祝いだ!」


教会には長蛇の列が並んだあり、その一番前にいた男の子が嬉々としながら、父親らしき人物と話している姿が目に入る。


「では、次の方」


男女に分かれており、神官の人が男子を。シスターが女子を担当しているといった感じだ。

俺も男子の方に並び、順番が来るのを待つ。


「やったぁ! 俺『竜騎士ドラグナー』だって!」

「おぉ! すごいぞ! 将来安泰だな!」


「私、『治癒魔術師』よ!」

「良かったわね! 帰ったら赤飯ね!」


殆どの子供達が安泰の職業がついていた。

それを見ると、期待の心が混じってくる。

“俺も何かすごいものだったりして?”とか期待しまくる。

そして、時間は流れ、いよいよ俺の出番。


魔法陣の上へと立ち、神官が唱える。


「『其方の人生、運命。それは神からの啓示。今ここに、新たな運命が開かれる時』」


神官の声と共に、魔法陣は大きく共鳴し、体が穏やかに包まれる。

体に浮遊感を感じ、少しだけだが浮いているのが感覚として分かる。


「出た。神が君の人生を見たのだ。さて、どんな職業が…」


大きな銅像の近くで、紙が出現する。

ヒラヒラと舞い、それを神官の人が受け取った。紙に書かれているのは、職業。

神官がその紙を開いたとき、顔が顰めるのを微かに見とらえた。


「文字じゃなく、マーク……。職業ではなく、忌まわしき悪魔のマーク……。坊や名前は?」

「…………ロイス、です」

「なら、ロイス。君は、禁忌魔法を扱えるかね?」

「は、はい」


そう言うと、神官の顔はみるみるのうちに、穢れているものを見るような目つきに変わった。


「そうか……。ここは教会。神がいる場所さ。分かるよね?」

「……は、はい」

「君みたいな子が入ったら、皆に穢れが移る。出ていきなさい!」


今度は怒鳴り声で荒々しく言い放った。

父さんは止める行為もせず、すんなりと神官の言う通りに俺を追い出す。

他の人が俺を見る目線。それは、忌まわしき“悪魔”を見るような、そんな目だった。

そしてヒソヒソ声も聞こえてくる。


「あの子、悪魔だって」

「しっ! 悪魔に呪いをかけられたりでもしたらどうするの?」

「嫌だわぁ、悪魔ですって!」

「災いを降り注がなければ良いけれど」


そして数人の男子と1人の女子が俺のところへやってくる。


「お前、悪魔なんだって?」

「まじかよ〜! 可哀想に。因みに俺は『司書』だ!」

「ふん! 俺なんか『賢者』だぞ!」

「えー! すごい! 因みに私は『聖女』!」

「おー! それなら悪魔を取り払えるんじゃね!?」


確実に俺に聞こえるように言ってくるそいつらは、ニマニマとしながら、俺を悪としてみなす。どうやらあの“夢”で忘れていたと言うことは、


「ほら、さっさと出てけよ」

「どうせおっさんも大した職業じゃ無いんだろ?」

「………父さんは『魔導師』だ」

「うっそ!? じゃあお母さんは? お母さんが大した職業じゃ無いんでしょ?」

「………母さんも『魔導師』だ」

「じゃあなんで『魔導師』の家系に『悪魔』が、生まれちゃったのかね? あ、本当は全く違う血だとか?」


ムカつく。だけど、抑えないと父さん達がまた何か言われる。それは勘弁したい。

俺はこいつらの言葉に耳を傾けず、教会から急足で出ていく。

『悪魔』となってしまった以上、俺はもう。子供じゃ無いのかな。


これから先、どうなるのか。検討もつかなかった。

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