第一章 神が運命を決める儀式

第2話 儀式の重要さ

この世界では、学園に入学できる13歳になると、人生が定められている。

一種の未来予知の様な魔法が組み込まれている、魔法陣でその人物のレールが決められる。

教会で行われるその儀式。神聖な儀式と言われているが、確実に生まれる不公平差。

例えば、1人の少年Aが教会で儀式を行った時、単語が表示される。


『騎士』と書かれていると、将来は騎士になる為、騎士学園に入学することが可能となる。

『騎士』と書かれたその少年Aは、国から無料で騎士学園に入学が許可され、教科書類、防具や騎士用の剣も無料で貰える。

それぐらい、その儀式は大切なもので、影響を与える。


それとは反対に、もう1人の少年Bが儀式を行った時、別の単語が表示される。

『悪魔』が表示されると、その人生の間で厄災が降り注がれると言われていた。

『悪魔』と書かれた少年Bは、皆から酷い仕打ちを受けられ、学園に入ることは滅多に無い。

別の国の風習によっては、『悪魔』と書かれたその少年Bは、最悪の場合死刑になる程。


ものだ。


♢♢♢


俺の名前はロイス・ハウクソン。

ハウクソン家の長男として生まれ、魔導師の家系だ。生まれてこの方10年。10歳の俺は家の手伝いで畑仕事、狩人としても叩き込まれている。

弦を引き、矢を放ち、獲物を得る。

今日も弓矢を持ち、森で動物たちを射抜く。

獣たちが住まう森に再び行き、木を利用して、弦を引く。


———ヒュン!


矢が兎を射抜き、その場で兎は倒れる。

狩人としての腕を磨き上げ、木を渡っていく。

最近では木に一々登らなくとも、木から木へと飛んで行くことが可能となり、移動が楽になった。


「よっと!」


森を抜けて家へと着く。父さんが鍬を両手で持ち、畑を耕している姿が目に入る。

俺は一先ず、持っていた弓矢を家の中に置き、再び外に出る。

父さんの手伝いとして、鍬を取り、もう一つの畑を耕す。両手を大きく振り、畑を耕し、種を埋める。

それだけでもかなりの体力を持って行かれた。


「ロイス。もうすぐで、儀式が行われるだろ? 明日。王都にある教会へ行くぞ。準備しておけ」


畑仕事をしていた父さんが俺に向かってそう言う。

———儀式。

それは、今後の人生が左右されるほど大事なこと。そしてそれは、死を招いてしまう事がある可能性もあると言うこと。

それが“儀式”


その中で最悪とも言えるのが『悪魔』

厄災を降り注ぐと言われる人生レール


(とうとう、俺もその時期か…)


正直不安でしか無い。何が起こるかわからない、その儀式。

『悪魔』だけにはなりたく無い。それが本音だ。


長閑な景色を見ながら俺は、不安に心が蝕まれていた。少しずつ、黒の渦が回っているような。そんな感覚がしてしまう。


大空に包まれており、晴天な日なのに、俺の心は晴れない。


♢♢♢


翌日。王都にある教会へ行くまでに時間は有意にある。

俺はそれまでに再び森で狩りをしていると、魔獣に出くわしてしまった。


(“ポイズン・ラビット”か。厄介だから、倒しておくことに越したことは無いか)


兎の魔獣が姿を表し、普通の兎よりも確実にでかい。

そこら辺に生えている木と、同等の大きさ。


———ギャオオオ!!


(攻撃開始!)


熊の体型に近い巨体。ポイズン・ラビットはその名の通り毒を持っている。

毒の性質を体の中で作れる事ができ、あの鋭利な爪には毒蛇と同等の威力の毒があり、少しでも掠ったりしたら、一瞬で死に至る。

そんな危険な魔獣は放っておくと、後々大変な事となる。


「———『死刃』!!」


目の前にいるポイズン・ラビットの攻撃を避けたのち、一瞬の隙が生まれた。

それを利用し、俺は禁忌と呼ばれる闇魔法を放つ。


———ギャアアアアアア!!


巨体な兎はそのまま倒れ伏した。もしかしたら、昨日倒した兎の親だったかもしれない。

でかい図体の魔獣より、人間の方が素早く移動する事ができる。地形を利用する事だって可能だ。

それにここは森。最高の狩場だ。


(ふぅ、禁忌魔法……)


禁忌魔法にはいくつかの種類に分けられている。


闇魔法・血魔法・毒魔法・死魔法。


この禁忌しか扱えない俺は、正直最悪とも思っている。

禁忌魔法を放った後、必ずと言っていいほどの確率で、


「ぐぅっ!!」


心臓が張り裂けそうなほどの、激痛が走るのだ。死ぬことは無いが、玉響のひと時は、この激痛に体が蝕まれる。どんなに取り拭おうと思っても、それが出来ない。不可能に近い。

その場に倒れ伏し、必死に痛みが治るのをただ待つのみだった。

そして、今日は。儀式の日。皆は儀式の日セイクリッドと呼ぶ。主に“神聖”と言う意味になるが、それは選ばれしものだけ。選ばれなかった人物は、儀式の日テリブルと呼んでいる。

“最悪な日”あながち間違ってはいない。

何故なら、選ばれなかったものは、この先の人生。悲惨そのものだ。


そんな儀式に、俺は行く。

儀式の日セイクリッドか、儀式の日テリブルか。


それは、誰にも分からない。分かるとしたら———神様のみ。

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