第二十一話 始まりの時
そこは、濃い霧の中だった。あの時と同じような場所。ここにくるのはあの時以来だろうか?
「え、二回目?また俺喰われるの?」
ただの疑問。もちろんソイツは答えてくれない。とりあえず移動してみる。足は着いておらず、滑らかに移動する。
そしてまた、俺は進むことができない場所まで来た..........あくまで感覚。
だが、そこには壁などなかった。俺はその先に進むことができた。
相変わらず道の先は見えない。
濃い霧が視界を一層悪くする。あの時経験しているからそれも今では慣れたものだが。
さらに進み続ける。進むにつれて霧が薄くなっていくことに気がつく。
まるで俺をそこへ誘っているかのように。
そして俺は、霧のないある場所に行き着いた。そこには、以前と同じように俺を睨み続ける巨大な金色の瞳と瞳孔があった。
だが、今回は、前回のように喰われることはなく、じっと俺のことを見つめるだけ。
俺はそれに対し、苦笑を浮かべた。
苦笑した後、その瞳は一瞬だけ驚いた、かに見えたが、そのあと穏やかな雰囲気になった。
そして、その瞳はゆっくり、ゆっくりと、まるで瞳を閉じるかのように、この空間から消えた。
え、えぇ?これでいいの?
俺、何となくで苦笑いしただけだよ?え、なにがしたかったの?ねぇ、ちょっと!
........................。
ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
目を開けた。
ふむ、どうやら俺は死んだようだ。
だって、今目の前に狼がいる。
俺の体のうえに体重を乗っけて、すやすやと寝ている。
俺、確か狼にであって死んだんだよな?
死んだあとも狼が付き添ってるって、そんな冗談ありかよ。業が深くないか?
人生って案外早く終わるもんだな。
ちょっと寂しい........かもな。
アイツらがこっちに来るまでこいつと二人か。
そう思いふけってると、狼が起きた。
そして、目がいている俺を見るなり、
「うわあぁぁぁぁあ!」
そう言ってどこかに消えた。
..........ん?天国か地獄か知らんが、ここでも狼が喋る異常な光景を目の当たりにするの?
というか、俺って本当に死んだ?
体が何かにグルグル巻きされてる感触があるんだが?
体に目を向けてみる。服のなかを見ると、俺の体は、包帯でぐるぐる巻きにされていた。
今度は左腕に目を向ける。
左腕の傷は塞がっており、血は出ていなかった。右も同じく。
頭もくらくらしないし、体の痛みも幾分かましになっていた。
そうか、俺、助かったんだ。そっか...........少し泣けてくるな。はぁー、良かった。
そして、今まで戦ってきたための疲労が押し寄せ、また俺は眠りについた。
「............うぅぅん?」
起きた。いつもより寝ていたためか、お目めはぱっちり。ってそういってる場合じゃない。
ここはどこなんだ?
俺が最後に見たあの村なのか?
それとも別の場所なのか?
わげがわからず戸惑っているところに、誰かが来た。
その誰かは、
「体の方は大丈夫そうかな?」
喋る狼だった。
あのさ、言わせて?ここ異世界だって、多分そうだって思っていても、これだけは言いたかった。
「狼がしゃべってるぅぅぅぅ!」
戦闘がないからこそ、叫ぶことができた。
このあまりにも現実とはかけ離れた現象を、狼が喋るという現象を。
「ふぅぅー。」
あぁー、スッキリした。どうしても言いたかったから、言えて良かった。
「落ち着いたかね?」
「えぇ、まぁ。」
「「.......................。」」
えぇぇ、どうしようこの空気。いたたまれないよ?俺この空気嫌だし、自由に動けたらトイレに一直線な状況だよ?
意味わかんねぇよ。どうしろと?
「あー、えっと─」
「君は何者だ?」
「─へ?」
喋りだそうとしたとき、その狼は被せるように言った。
「えーと、何者とは?あっ、僕は紛れもない人間ですよ。」
「............そうか、では、ここへはどうやって来たのだ?」
え、えぇ.........それ聞く?いや、聞くよなどう考えても。でもなぁ、それ聞かれるとなぁ、黙ってしまうよなぁ。仕方がないだろ?落っこちてきたなんて言っても信じるやつの方が少ないよ。
「............落ちてきたって言ったら、信じてもらえますか?」
ま、正直に、だな。俺の気持ちも、ここに来るまでの経緯も。
狼はどう思ったか、だんまりしていた。
だが、少しすると、
「分かった。信じよう。」
そう言ってくれた。
普通は疑うものだが、納得できるものがあった........のかな?
そんなことはどうでもいい。
今は信じてもらえたことを素直に喜ぼう。
そして、狼は問う。
「君の名前は?」
個人情報さらせってか。プライバシーの侵害ですよ!........でも、名前ぐらいなら、
「おr.....僕の名前は、時亜 迅です。」
「ふむ、トア ジンか..........どのような字を書くのだ?」
「えっと、漢字で、時間の『時』、かっこいい方って言ってもわかんないか。えっと、亜種の『亜』に、迅速の『迅』です。」
「ん?カンジ?それは何だ?」
え、ここに漢字ってもんないの?
いや、無いのは当然か。ここ異世界だし。
「えっと、こんなのです。」
そう言って、俺は時の文字を空中に書いた。
鉛筆ほしい。でも流石にわかんないかな?
「あぁ、それか。龍刻文字の名前か............だが、その文字を名前に使う人間は、見たことも聞いたこともなかったな。」
ん?りゅ、リュウコクモジ?なにそれ、美味しいの?
「えっと、そのリュウコクモジって?」
「知らないのか?いや、君はカンジと言っていたから知らないのだろう。龍刻文字とは、君が言うカンジと同じものだという解釈をしてもらえればいい。」
な、なるほど。だが、偶々かもしれない。
俺は、今度は頭という漢字を書く。
「これは?」
「頭、であろう?」
ふーむ、確かにここで言うリュウコクモジというのは漢字と同じかもしれない。
では?と別の疑問が浮かんでくる。
「えっと、じゃあこれは?」
そう言って俺は、「い」と書く。
「それは中立文字の『い』だな。」
へぇー、この世界では、平仮名のことをチュウリツモジと言うらしい。
名前は違うが、地球と同じ文字を使う世界なんだな。
「では、最後にこれは?」
そして、俺はDと書く。
「それは英語の『D』だな。」
おいー!そこは違え!?てか英語あんの?この世界............ますます不思議な世界だな。
とか思っていると、ふと気づく。
俺名乗ったけど相手の名前知らないじゃん。
不公平じゃね?でも人間と狼の間に公平も不公平もあるのか?
まぁ、そんなことはどうでもいい。
「えっと、今さらですが、あなたの名前は?」
意を決して聞いてみた。
するとその狼は少し驚いた様子を見せ、そして笑った。
「フハハハハ、すまない。名乗らせておきながらこっちからは名乗っていなかったな。」
そして、その狼は、俺に向かって微笑み?表情は全く分からないが、多分微笑んだんだろう。
そして、こう言った。
「私の名前は、鎌風だ。鎌は君の持っていた大鎌の鎌、風はそこらでよく吹く風だ。よろしく頼むよ、時亜 迅君。」
俺は、この世界ではじめてまともな人?いや、モンスターに出会った。
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皆様、お久しぶりです。
はじめての方は、はじめまして。
間隔空いてないけどあとがきを書く、自由気ままな時亜 迅です。
いやぁ、ようやく本編に入れます。
え?今までのは一体なんだって?
プロローグですよこんちくしょう。
話数19にしてようやくスタートですよ。
ゴブリン戦が予定より大幅に文字数が多くなったのが原因です。
あのゴブリン叩っ切ってやろうかな?
うぉっほん、お見苦しいものを見せてしまいました。
まぁ、今回は、こんな感じの愚痴を聞いてもらいたく、いや違った、見てもらいたくあとがきを書かせてもらいました。
第一章 牙狼の刃はまだ続きます。
て言うか、終わるのかな?これ。
ジョブチェンジも更新しなきゃなのに。
皆様もう少しお待ちください。
この作品を見てくださりありがとうございます。
良ければフォローしていってください。
星や応援コメントを送っていただけると、時亜 迅君がとても喜びます。
時亜 迅があなたにフォロー、星、応援コメントを求めている。
あなたはどうする?
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▪送ってあげる。
▪フォローしてあげる。
実際の選択はあなた次第です。
最近スマホで文字を打つとどうしても変換ミスするのは何故?
by 時亜 迅
過去の俺よ。俺よ、俺よ、俺よ............。
俺だ、俺だ、俺だ、俺だ、俺だ............。
2024 3月の俺だ。
エコー編集めんどいのでやめます。
いやー、本編ですよ、上で語っている通り。前回から二話ほと増えましたね。
ジョブチェンジに既ヤンに、こんなに読まれるとは思ってなかったですからね。
皆様本当にありがとうございます。
これからも頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします。
良かったら、ふおろーやおうえんなどしていってくださると全裸で喜びます。
実際はそんなことしませんけど。
えっと、これ書いたらカクヨムさんに引っ掛かるとかないよね?
by 新 時亜 迅
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