第十六話 エンカウント ゴブリン②

緑色の体、しかもデキモノか、肌がそういう風になっているのかぼこぼこしている。身長は120ちょい上、髪の毛はなく、体は痩せ細っている(様に見える)。鼻や、耳は人より長く、目には瞳らしきものがない。


このような特徴は、人間には見られない。

すなわち、今目の前にいる生物は、人間ではない。


ボロボロの布を衣服?として見にまとっているソイツと俺は、互いに睨みあっていた。


一歩でも動けば襲われる、そう俺の直感がいっていた。もちろん気のせいだと思う。



そう、思いたい。



向こうもそうなのだろうか?なかなか動こうとしない。


辺りからは風の音が聞こえる。

空は少し薄暗くなっており、視界は少し悪い。日没は近いな。



俺は、ゴブリンと思わしき生物に遭遇してしまった。



マンガや小説などで書かれていたものに酷似している。でも今、目の前にいる奴は、息をしている。動いている。こちらを見ている。

うっ、コイツ体を洗っていないのか酷い匂いがする。匂いがするってことは、コイツ腐ってるのか、それとも汗をかくのか?


俺は非常事態だが、先程のこともあってか冷静にコイツを観察していた。


手にはナイフのようなものを持っている。

武器持ちか........絶対勝てないな。


今の俺に戦う手段は、ましてや武器なんざない。この状況を打破する策もない。


だから、俺は動けなかった。


例えるなら、熊と遭遇してしまったときの状

態に近い。互いに睨み会うが、攻撃をしようとも、逃げようともしない。



静寂が、逆に緊張を高める。



いつ動くか、いつ殺されるかわからない。

そんな中、先に反応を見せたのは、ゴブリンらしき生物だった。


奴は、俺をじっと見ていた。


距離は三メートル弱。互いを視認するには十分な距離だ。........そして、奴は俺がなにも武器を持っていないことを確認すると、


「Gyagya!」


そう言って笑った。笑ったのだろう。

とてつもなく気味の悪い笑みだった。口であろう部位が引き裂けそうなほど、深い、深い笑みだった。


俺を弱者と見たのだろう。


すると、奴は行きなり俺に向かって走り出した。そして、俺との距離が一メートル程まで近づいたあと、手に持っていたナイフを俺に向かって振りかざしてきた。


俺は、それに反応することができず、右腕に一発食らってしまった。深くも、浅くもない一撃。


え、あれ?俺切られたのか?

腕を見てみれば、俺の右腕から血が流れていた。そして、それを見て理解した俺の脳が痛みと言う信号を検知した。


「うあぁぁぁぁぁぁ!?」


その声を聞いて奴はまた笑った。


に、逃げ、とにかく、こ、ここここから離れなきゃ!


怖い、死ぬ。

死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ。


こんなところで死にたくない!


立ち上がって逃げようとする。

立ち上がることはできた。けど、あまりの出来事に、俺は、足が震えて後ろに進むことができなかった。


その隙を見逃さず、奴は俺に向かって再びナイフを振りかす。


「っ!?ぐぅぅ!」


俺は、間一髪のところでそれをよける。

そして、振りかぶった反動でヤツに隙ができたうちに、俺は、半ばこけるような体制でうしろに向かって走り出した。


体力なんて関係ない。止まったら間違いなく死ぬ。


嫌だ、嫌だ、嫌だ!こんなとこで死ぬのはごめんだ!たった一日で、こんなことが起こるなんて、思ってなかった。


もう、もう嫌だ。誰か、誰か助けて!


必死に走る。足場が悪くてこけそうになる。

後ろを振り向いて見ると、奴は、俺のことをしっかりと追ってきていた。


「Gyugydagyagya!」

何を言っているか分からない。だが、息遣いが荒く、その声の大きさからして、怒っていることが分かる。


俺、何もしてないのに、こんなのって。


「うあっ!?」


そして俺は、遂に転んでしまった。恐怖でまともに立ち上がれない。


後ろを振り返ると、奴はもう一メートル程まで近づいていた。

う......嘘だ、そんなの。


俺は、後ずさる。手と足を必死に動かして距離をとろうとする。すると、ヤツは走るのを止め歩きだした。勿論俺よりヤツのほうが速い。


あっという間に距離は近づいた。


そして、俺も、背後を木によってふさがれ、追い詰められてしまった。


死ぬ。


死にたくない!


奴は、笑っていた。俺を見て、はっきりと。

そして、奴は俺に向かって切りかかる。


嫌だ、死にたくない!


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


俺はとっさに腕を前に出して防御の体制を取った。


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勝った。


ゴブリンは、そう確信した。


出会ったのはたまたまだった。

腹か減り、ようやく見つけた飯を取ろうとしたとき、隣にいた。最初は、殺されるかと思った。だが、そいつは動こうとしなかった。


そいつを見てみる。


そいつは、武器なんか持っていなかった。

コイツはボーケンシャではないのかもしれないと感じた。そして、今、ゴブリンの手には武器があった。


ゴブリンは思ったのだ。


勝てるのではないか............ と。

つい、笑ってしまった。


そいつに向かって走り出し、切りかかった。

すると、そいつは叫んだ。見てみると、そいつからは血が流れていた。


勝てる!


そして、仕留めにかかったが、避けられてしまう。


何故よける。弱者は強者に殺られるのが当然だろう?


せっかく殺せると思っていたのに、そいつが避けて当たらなかった。


ゴブリンは、怒った。


すると、そいつが逃げた。


いかせるか!殺してやる!


そんな明確な殺意を持って、ゴブリンは追いかけ出す。


そして、追いかけていた途中、そいつは転んだ。あっという間に距離は縮まった。


勝てる。


そいつはゴブリンを見ながら後ずさる。


勝てる、勝てる、勝てる!


笑いが止まらない。

殺したあとどうしようか。そう想像すると楽しくてしょうがない。


そう考えていると、そいつは止まった。

見れば、後ろには木があった。


勝った!


そう確信した。

そして、ゴブリンは、そいつに向かってナイフを振るった。


さぁ、どうしてやろうか?









        ザシュッ

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