第八話 白くて硬くてでっかくて中世とかに良くあったものってなーんだ?

俺は呆然としていた。

なんでこんな始まりかだって?

俺も驚いてるよ............ 俺はね、あれから散々.......それはもう散々歩いてきたんだよ。

もう探しても何も見つからないと覚悟していたよ。


でもそれが現実にはならなかった。


そうならなくてよかったと心の底からそう思ってる。思ってるのだが......


「こんな豪華なお出迎えは求めてねぇ。」


そこには、この森にあっていいの?と思うほど場違いなデカさの神殿があった。


「え?本物?マジだ、遂に幻覚まで見えるようになったのかあはは............ 本当笑えねぇよこんなの!」


なに?俺ってそんなに神殿系にすかれる要素でもあるの?

もしかして試練的なやつの意味で?

ははは、勘弁してくださいお願いしますもう限界なんです疲れてるんです。

........................意志を持たない神殿は当然何も言ってこない。


「..........................入れってんだろ?どーせ。わかったよやってやんよ!かかってきやがれこんちくしょー!」


わかってる、分かってるんだよ、こんなこと言ったってなんの解決にもならないなんて。


こんなことなら異世界転移モンのマンガやゲームしてくればよかったなぁと、無意味な現実逃避をしながら、俺は中が暗くて何も見えないこの神殿に入っていくのであった。


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タタン、タタン、タタン


私は、彼がいた場所へ駆け走る。


村長も監視をするという意見に合意してくれた。


これでむやみやたらに彼を攻撃するものはいないであろう。


ただ、私は心配だった。


彼はこんなところには来てはいけない存在であると、私の勘がそう言っている。


どう見ても、気配からしても、彼は弱い。

この森に一人でいては必ず死んでしまう。


そんなことは、私が許さない。


そう思いながら駆けていると、私はあるものを見つけた。


「これは............剣か?」


少し離れた場所に、剣が深々と突き刺さっていた。誰のものかはわからない。


彼のもの............という線も薄そうだ。

いや、今はそんなことを考えている場合ではない。急がなければならない。


意識を切り替えて私は再び駆け始めた。


「頼む。無事でいてくれ。」


私はそう願いながら、この森を駆け抜けた。



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ピチョン


ピチョン


「湿っぽいな。あんまここに長居したらいけないかもな。」


神殿の中はやはり暗く、そして湿っぽかった。


外見からして少し古そうな感じはしたが、これは少しまずいかもしれない。


これだけ湿っていると言う事は中が相当やられているということ。倒壊する可能性がある。しかも中に流れてる水が、


「こんな透き通っているって、本格的に危ないぞこの神殿。」


あの湖の水がこの神殿に流れているかもしれない。あちこちにある壁のヒビや隙間から漏れてきている。


中はコンクリートなのか、それとも石なのかは分からないが、どれだけもてるか。


「あんま慎重に行く時間はないのかもな。」


モンスターとのエンカウントがとてつもなく怖い。今の俺が勝てる要素などないからだ。

こんな時に出会ったら間違いなく殺される。


湿度からか、はたまたエンカウントへの恐怖からか、俺は汗を流す。


入口から入ってから比較的狭い空間をまっすぐ進み続ける。


狭いと言ってもこの神殿の大きさにしてはということで、人が横に五人並んでも通れそうなほど広い。


高さは二、三メートル程だろうか?


そんなことを確認しつつ進んでいると、大きな壁に突き当たった。


「へ?これ進めないじゃん............ いや、これはテンプレ展開の予感。どこかに隠し扉でもあるのか?」


進んだ先が行き止まりっていうパターンは、普通の迷宮やらなんやらではテンプレだ。

ただ、この馬鹿でかい神殿に限ってここに行き止まりはおかしい。


もしかしてあんなデカかったのってハリボテだったのか?


ここまできて終わりって、とんだ無駄足になってしまった。


どれほどの時間歩いたか分からないが、今回のタイムロスはデカい。内心ため息を吐きつつ目の前の壁に目を向ける。


そこには、古代人が書いたような絵や文字がびっしりと刻まれていた。


「こういうのわかんねぇけど、これはすごいな。」


壁にあまり余白がない。これを作った人々は一体何を伝えようとしていたのだろうか。

そして俺は壁に触れた。


文字は、壁に深く、深く刻まれていた。

少しぼこぼこした感触が手から伝わる。


瞬間





「っ!?なんだぁ?」


壁に触れていると、刻まれていた文字が光り出した。


文字だけでなく、絵からも光が放たれ始め、最終的に壁全体を包んだ。


「うっ。」


あまりの光に俺は目を腕で隠した。何が起こったかわからない。


ただ、目を閉じていても光り続けていることだけがわかる。


そして、暫くした後、いきなり光が消えた。

ゆっくりと俺は目を開ける。


光が眩しすぎたので、目を開けてもまだチカチカする。あー、世界が青緑色だー。


次第に光の影響が薄れて周りの景色が見えるようになる。


そして、俺は、


「なんだぁ?」


見慣れない巨大な部屋のど真ん中にいた。



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数刻前



深々と突き刺さる鋼の剣は主を求めていた。


かつて共に歩んだ主を、かつて紡いだ戦いの記憶を。


剣は何があっても忘れることはないだろう。


そして、その刀身に刻まれた無数の細かな傷と青い刻印が、淡く輝き始める。


主を求めては消え、求めては消え、何千もの時を越え、現れた者。


疑う必要などない、躊躇う必要などない。


何時であろうと、何処であろうと、この刀身を抜くことが出きるのは、あなたしかいないのだから。




剣は淡く輝き続け、やがて光の粒となり消えた。


それは風に乗り、或いは風に逆らい進んで行く。


ただひたすらに、己を解放した者のもとへ。 


そしてそれは、誰にも知られることなく、やがてたどり着く。

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