第九話 其ハ何ヲ求メ彷徨ウカ①
「.........ここ、どうやって来たんだ?俺ただ目を瞑ってただけなのに。」
目の前には、とてつもなく広い空間が広がっていた。なんだろう、ヤッホーと言って山彦が返ってくるか楽しんでもありな気がする。
どう考えても外じゃね?こんなん神殿じゃなくね?
あれか、いわゆる転移系魔法か。
だとしたらさ.........俺さ、
「帰れなくね?」
またまた目的地を見失い、挙句の果てに戻れなくなってしまった俺、時亜 迅は、深くため息をついた。
それにしても、
「やっぱあれはハリボテじゃなかったっぽいな。でもこんなにでかくする必要はなかったんじゃないですかね?」
笑ってしまう。
ここが日本、ましてや地球ではない事は既にわかっている............ 実際はまだ分かんないけども。
そんなこたぁ置いといて、これだけ広い空間を作り出す意図がわからない。もしもこの世界が異世界なのなら、ここの世界の人間って馬鹿なんじゃね?
いや、人類ってわけでもないのか?異世界テンプレキャラのゴブリンとかっていう可能性もあるのか。
何にせよ、もし建造物が作れるほどの知能をもつモンスターが付近にいるなら、ここも決して安全とは言えない。
「やっぱハードモードじゃね?」
ほんっとにやめてほしい。戦いの経験もない中肉中背の俺に何ができるというんだ?
てか、俺結構デブな自信があるぞ?
まともな戦いになるはずがない。
..................どうしよ?
「.......とにかく進むかっていう前に、さすがに休憩。」
何時間も歩いて足はかなり限界に近づいている。
ここでエンカウントしてしまったらジエンドだが、そこは運に任せよう。
それよりも、さすがに、ね、む..........
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜~
少年が門に触れる直前
タタン、タタン、タタン
「頼む、怪我などしていないでくれ!」
私は一直線に彼の元に向かう。
彼は最初にいた場所からかなり離れた場所に移動したようだ。
私は、気配察知をフルに使用して彼を追う。
「あの場所はただの行き止まりであるから、彼と会う事はできるだろう。切りかかって来る事はないだろうが....警戒はされるだろうな。」
彼が冒険者....なのだとすれば、もちろん警戒されるであろうし、そうでなくても、未知の生命体であろう私を見て驚く事は間違いない。
見たところ20年より短い年月しか生きていないのではないだろうか。
若すぎる。人間は、18で大人だとほざいているが、それでも体はまだ子供。
出来上がってすらいない。
それなのにどうしてそう1日でも早く大人になろうとするのか。
冒険者に憧れる子供は少なからずいるだろう。
我らの子供も、将来我らと共に狩りをしたがっている。
だが、どれだけ知識があろうと、憧れていようと、体や精神が出来上がるまでは子供であることに変わりはない。
彼もその一人だろうか?
どんな理由だったにせよこの森は危険すぎる。種族は違えど見捨てることなど、私にはできない。
「何事もなければいいが......」
タタン、タタン、タタン、タタン
私は駆ける。彼の元へ、一刻も早く。
そして、私は彼の気配を完全に捉えた。
「よし、これで........!?」
先のない神殿へと、彼は私の予想通りその中に入っていた。
この先は行き止まり。なら、彼は必ずここから出て来るだろう。
しかし、そのような結果は訪れなかった。
私が入り口に差し掛かったところで、そこから眩い光が放たれた。
「なんだ!?ライトアップか?彼は一体何をした?敵と遭遇したのか?............気配察知には、彼以外のものを捉えていない。かなりのやり手か?」
だが、そんなことを考えていた私は更なる問題に気付く。
「彼の気配が、消えた?彼は、彼はどこに行ったんだ!?」
光に気を取られすぎて少しだけ気配察知を解いてしまっていた。
そして、その一瞬のうちに彼の気配は消えてしまっていた。
「........っ、魔法妨害の術式か.....」
気配を捉えられなくなってしまったからには、自身の目で確認するしか、安否の確認の方法がない。
私は、敵がいるかどうかもわからないこの神殿の入り口に入って行った。
十分警戒しつつ私は中を進む。
中の湿った空気と視界の悪さによる緊張の高まりにより一筋の汗をかく。
視界が悪い。妨害によって行動が制限されているのがいたい。そんなことよりも彼の安否確認が先なのだが.....
「やはりか。」
その先の行き止まりに到着しても、彼の姿を見る事は出来なかった。
「一体、彼はどこに行ったんだ?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「一体、俺はどこに来たんだ?」
気絶するように眠ってから何時間経っただろうか。記憶が曖昧だ。
ただ、ばかでかい場所に移動したことだけは、覚えている。
起きた俺は硬い石の地面の上に立っていた。
上を見れば馬鹿高いが屋根が存在していることがわかる。
やはりここは、
「外で見たあの神殿の行き止まりの先っていう解釈をしてもいいのか?」
どう説明されても理解はできないそんな状況を無理やり納得できるようにしたつもりだったが、案外的をいているかもしれない。
だが......
「どうすっかなー。」
完全に入り口も、出口もわからなくなってしまった。
今俺がいる場所も、光が眩しくて目を瞑っていた間に転送された?あの場所とは限らない。
初っ端からこれは....
「詰んだー!」
笑うしかない。
もう出られないし、帰ることもできない。
あの湖に戻ることもできなければ、食糧を手に入れられる自信も毛頭ない。
だからといって何もしないのは無駄に時間を消費するだけだ。
でも...ちょっとだけさ........ね?
「現実逃避、させてくれ。」
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