第六話 我立ツハ樹海ノ森ナリ

............

............

............

「............う............ ん............?」

なんだ?ここ。


うーん、なにがおこったんだったっけ?

いまいちおもいだせない。

からだをおこしてみる。

まわりがきだらけ。

そう、きだらけ。

........................?


「って木!?」


視界に入った木に驚いて意識が急激に覚醒し始める。


あいてててて。本当に何が起こったんだ?

確か、剣引っこ抜いて、そして...........


「そういや落ちたんじゃねぇか!」


そう、俺は落ちたんだ。何百、いや何万キロも上から。

そのはずなんだが、


「体に一切の怪我は、いてっ、あるっちゃあるけど打撲や擦り傷ぐらいだし、骨折や内出血みたいなのがない。どうなってんだ?」


普通あんな高さから落っこちたら生きてはいられない。だが生きているし、軽症ですんでいる。


いったい何があった?



まぁ、いいか!

もう考えんの辛いんだわ!

気楽にいたいんだわ!(白目)


そんなこんなで現実に目を向け始める。


「つってもここどこなんだ?また迷子だよ。

勘弁してくれよ。何回目的地見失ってんだよ。てか、なにすればいいんだよ!教えろよあんのパソコンヤロー!」


ヤロー!


ヤロー!.......


ヤロー!............



声がこだましている。


「現実逃避がてら確認してみたが、やっぱここ、森だよな?」


最初にも言った通り、周りには木、木、木。

三段活用して森、ってのは強引かもしれないが、十中八九森だな。


建造物は見当たらないし、これといって変な場所自体はない。


だが気になることはある。


「何で落ちてきたのにまた地面があるんだ?もしかして今までいた場所って空の上だったりする?」


上を見上げてみたが、それといったものがない。空は驚くほどの快晴だった。


「............人をゴミにする某浮き島はなし。だとすると、本格的にわかんねぇぞ?」


俺はどこに飛ばされたのか。

何であんな初回特典があったんだ?

普通ここは神様と直接話し合ってくれるもんじゃないの?


ていうか、


「あの剣どこ行った?」


この手で引っこ抜いたあの剣がない。

落ちてくる間に落としたのだろうか?


「あーぁ、ムネアツ展開だったのにな。まぁ、俺が振るえるわけがないけどな!」


例えあんな豪華な特典があったとしてもそれを振るう技能も、ましてや筋肉もない。伊達に高校生美術部やってんだ、なめないでもらいたいね!


あんなの使ったって、逆にこっちの腕がお亡くなりしまう。





そういやさ、あの場所にさ、虫いたじゃん。

つうことはさ、いるよね、モンスター。


うん、........................勝てる気がしねぇ!


なんにも装備ない。ステータスなんてそんなんあったとしても今会ったら即死もんだよ!


「とにかく、進まなければ。」


一ヶ所にとどまれば、その分エンカウント率が上がる。


ならば行動するほか安全な道はない。


待ってても時間と餓死までのカウントダウンが経過するだけだ。とりあえず今やれることだけはやっておこう。


それで死ぬならそれまでさ。


あんのパソコンヤローだけは道ずれにしたいけどな!


「よしっ、探索を始めるか!」


そして俺は、この地を探索することにした。






この世界の人間が立ち入ることのない、未開拓、未探索のこの森を。




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「........................戻ったか。」

「はい、ただいま。」

「さて、今回の成果を言ってもらおうか。」

「はい。今回は、二つの知らせを持って参りました。」

「その二つとは?」

「吉報と、訃報です。」

「吉報は?」

「この森に数十個ほどの林檎が実りました。」

「おぉ!それは素晴らしいことではないか!後で作物の係の者たちを祝福せねばいけぬな。............ して、訃報は?」

「実は............」

「何だ?」

「............この森に、一人の人間が入ってきました。」

「それは本当か!?」

「はい。気配からして間違いなく。」

「結界は作動していないのか?」

「いえ、今も正常に作動しております。」

「ならば、あの結界をも打ち破る強者か。

これは丁寧にもてなさねば─」

「お待ちください!」

「─ぬ、何だ?」

「それにしてはおかしいのです。」

「なにがだ?」

「敵意や悪意が全くないのです。」

「何?」

「当の本人も何が起こったのか、ここはどこなのかわかっておらず。」

「............ということは、迷ってきたのか?」

「............信じがたいですが。」

「............とりあえず、そやつの監視を始めよ。対処の方は、それからだ。」

「はっ!」


........................この森に迷いこんだ人間か。

はてさて、善か脅威か。


見定めなければな。

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