別れ
「改めてだけど、二人とも...本当にごめんなさい!」
二人が座っていたベンチに腰を掛けるなり、彩夏が深々と頭を下げた。
普段、頭を下げる側という事もあってか人に謝罪されるのは不思議な感じだ。
「...私もごめん...!抜け駆けみたいな感じになちゃって...でもさ、わた...!
「織音...!ごめんね。私から言わせて」
彩夏は織音の呟き制止をし、穏やかな表情で口を開いた。
「光希、謝って許されることではないと思うけど、本当にごめんなさい」
「...」
これまで、薄い人生を送ってきたからか上手く返事が出来なかった。
そんな俺に構わず、彩夏は続ける。
「今まで散々、迷惑かけちゃったから信じられないかもだけどもう私二人の邪魔はしないように距離を置くことにするね」
「...本当にいいの?」
織音は少し半信半疑と言った様子で首を傾げた。
「うん。もう、大好きな二人に迷惑掛けたくないし...それに」
「それに?」
彩夏は少し顔を歪ませながら呟いた。
「もう、これ以上おかしくなりたくないんだよね...本当にそれが怖いの」
俺のような鬼畜なぼっちだったら、落ちる所まで落ちることが出来るが彩夏は根は真っ当な人間なのだ。
それは良心、或いはプライドが許さないのだろう。
「...いくら、自制しようと思ってもだんだん我を失っていって平気で人を傷つけられるようになっちゃう...そんな自分がとてつもなく怖いの」
彩夏の手はブルブルと少し震えている。
「でも、そんな状態が好きで強く求めてる私もいるというかさ...でも、そんな私も本当に怖い。それに今、こうやって同情をかってる自分も憎い。」
彩夏は自分の唇を噛みしめた。
「...どうせ、付き合ってたんだから一回してから別れればよかったって思ってる私も、織音なら譲ってくれるんじゃって思ってる私も本当に殺したいくらい憎いの...!」
「...そうだったんだね。気づいてあげられなくてごめんね...お姉ちゃん」
織音はただ黙って彩夏を抱きしめた。
「私、どうすればいいのかな?どうすれば、解決なのかな?織音?」
もちろん、これは何の解決にもなっていない。
彩夏はこれからも同じことで苦しみ続けるだろうし、織音も引きずり続けるだろう。
ならば、俺が今ここでできることは一つしかない。
「なあ、俺のお前に対する気持ちを正直に言ったらお前はスッキリできるのか?」」
俺は彩夏に少し強めの口調でそう問いかけた。
「うん...最後まで貧乏くじ引かせちゃってごめんね」
俺は彩夏を強くにらみ、軽蔑するよな笑みを浮かべながら呟いた。
「普通に考えれば、わかるだろ?大嫌いにきまってんだろ?ってか、別れたあの日からずっと変わんねーよ」
勿論、こんなのでまかせだ。
そんな人に対する憎悪の感情など、もうない。
「....ありがとね。それじゃあ、私先帰ってるね」
そういうと彩夏は作り笑いをしながら去っていった。
「...どうしたの?よるちゃん」
「な、何でもないよ」
リビングで光希くんを待っていると、母が隣に座ってきた。
「何でもないってことはないでしょ...?ほら、おいで」
私は母に強く抱きしめられた。
最愛の人を虐げる悪いヤツ...なんて最近は思っていたが、母の胸は暖かかった。
「大丈夫だからね。私が守るから。私さえ、いればあなたは大丈夫だからね」
~作者から
次回から新章開幕です!
親子の共依存関係や甘々な恋愛、兄妹関係、幼馴染etc...と色々描きますのでぜひ!
あと、更新途絶えてすみませんでした!
リアルが忙しかったくて執筆できませんでした(´;ω;`)
ですが、これからはかなり時間があるのでまた再開したいと思います1
追記→あとこれ新作です
主人公が人間関係や自分の夢に向かって一機奮闘する青春ラブコメディになっていると思うのでぜひ!
https://kakuyomu.jp/works/16817330651117231860/episodes/16817330651117320919
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