追憶編3
あれから帰路についた俺は『違和感』が何であるかについてずっと考えていた。
まあ、思えば俺の人生など『違和感』しかないのだが。
逆に鬼畜なぼっちに違和感を感じないやつは確実にドMだ。
女王様にわからせられるのも悪くはないが残念ながら俺にはもう決めた人がいる。
エレンたん...
俺は純愛を貫くならねぇ゛ぇ゛ぇ゛
とにもかくにも相変わらずな両親、よると共に夕食を取り終えた俺は早くベットに入る事にした。
ゆっくりと瞳を閉じる。
こうして俺は最近流行りのローファイヒップホップを聴きながら眠りについたのだった。
夢を見ていた。
でも不思議と意識はある。
これはローファイヒップホップを聴きながら寝て睡眠の質が下がってしまった事が原因だろう。
まあ、そもそも安心して眠りについたことがないのであんまり変わらないんだけどね。
ふと辺りを見回すと水野やよるとよく遊んでいた公園で一人小学生の時の俺がブランコを漕いでいた。
よく見ると目には涙を浮かべている。
...そうだ。
確かこの頃の俺も同じような違和感を抱いていた。
もう一度目を瞑ると場面は変わりいつもお馴染み我が家のリビングにいた。
小学生の俺と父、義母、よるがダイニングテーブルで微笑みあっている。
「新しいお母さんと妹だぞ~。ほら、ご挨拶しなさい」
父は満面の笑みで俺の頭を撫でてきた。
「光希くんよろしくね!」
義母も屈託のない笑みをこちらへ浮かべてくる。
だが、その笑顔は明らかに息子へ向ける類いの物ではなくどこか艶かしく少し怖かった。
俺は手の震えを抑えながらまた目を閉じる。
ある時は海へ行ったりまたある時は京都へ旅行へ。
あの頃の俺たち家族は足りない何かを埋めるために色々な所へ出掛けていた。
母が死んでから痩せこけて落ちぶれていた父だったがこの頃は笑顔絶さず笑っていた。
頃のころの俺は気づかないふりをしていたのかもしれない。
「光希は宿題あるんじゃないの~?」
「えー光希くん行っちゃうの~?」
「光希はやっぱり夏目さんに似て頭が良いんだね~」
「私たちとは元が違うのよ~」
「私たちはバカだから社会見学ってことで美術館にでも行ってくるわね」
義母の笑みの裏には確かな俺への憎悪があった。
気づいていた。
だが、俺はよるが襲われる前の日の夜まで自分を騙し続けていたのだ。
気づいていた。気づいていたのだ。
父と義母が再婚したのも別に特別お互い好きあっているからではない。
何かに依存したいのだ。
すがっていれば楽だから。
父が急に明るくなったのだって母を忘れバカな今の自分を肯定するための言わば処世術だ。
母が俺を憎んでいるのだって寄生先の昔の女に俺が似ているからだ。
そこで俺は圧倒的な『違和感』を覚えた。
傷つけられるのには慣れている。
ならば何が俺にこうも訴えかけているのか。
俺は考えた。
その度否定し再度案を出した。
そしてやっとわかったことがある。
俺は父が母を捨てたのが許せなかったのだ。
母を恨み俺たちの過去を否定してくる義母がどうしようもなく憎かったのだ。
でもこの時の俺はまだ意識的にはそれを理解していなかった。
でも思えば無意識に俺は父と義母を殴りいたぶっていたのだろう。
「光希くんなに読んでるの?」
「夏目漱石さんの作品だよ。後から芥川さんのも読むつもりだけどね」
母の形見であり母が自分と同じ名前だからとよく読んでいた夏目漱石の本をリビングで読んだり。
母が学のある人だったので俺は元々勉強は出来る方だったのだがより一層力を入れ英検1級も取った。
運動も母がテニスをやっていたので血が滲むような努力をして小学生大会であるがその街で一番になった。
結局俺はクズなのだ。
とにかく憎かった。
よく考えずにすぐにバカ女に手を出す能なしの父が。
自分の出来が悪いがために母に劣等感を抱き当たってくる義母が。
両親を遺伝子レベルで劣っていると見下していた節すらある。
よると仲良くしたのに関しても自分の優位性を確認したかったからだろう。
きっとよるを助けたのだって自分が両親とは違うと思いたかったからだろう。
でも今の俺にはそんな悪意も怒りも何もかもない。
違和感の正体はわかっている。
俺はきっと委員長が過去を捨てたこと。
そして壊れてしまったが為にもう本当の意味で罪の償いようのない自分への失望からそれは来ているのだ。
作者から
今回は結構長くなってしまいすんませんρ(тωт`) イジイジ
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