幼馴染の罪

「委員長、それでどうしたんだ?」

 夏の風物詩であるセミの音と月明かりに照らされながら俺たち三人はベンチに腰を下ろしていた。

 ふと辺りを見回してみたが屈強な男たちはいないようだった。

 よかった...流石の俺もそんな胸糞展開はタマヒュンものである。

 ちなみにタマヒュンの正式名称は『チンさむ現象』と言うらしい。

 ほへ~。

「...これからの私たちの話だよ」

 水野は何か思い詰めているのか神妙な面持ちで右手を膝元で握りしめている。

「...私のせいでさ...今みたいな風になってるからけじめをつけようと思って」

 私のせい?

 水野は何を言っているのだろうか。

 水野は正しい。

 間違っているのはいつだって俺だ。

「...あの時は助けられなくてごめんね...」

 水野は声を震わせながらそう呟いた。

「中学の時の話か?あれなら俺なんて見捨てて当たり前だろ。庇っても委員長にその皺寄せが行くんだし。俺が委員長でもそうしてるよ」

「...嘘。光希はそんなことしないよ...」

 今の俺は人というよりは、生きるロボットなので助ける?かもしれないが昔の俺ならばすぐ見切りをつけていただろう。

「...それとしつこいかもしれないけど私は加藤と付き合ってないから」

 加藤とはサッカー部キャプテンのナイスガイの事だろう。

「またその話か~別にそんな嘘つかなくても良いのに」

 第一水野は何で俺にここまで取り繕いたがるのだろうか。

 俺なんてどうでもいい虫けらみたいなものだと思うのだが。

「...嘘じゃないよ。加藤には周りも頭が上がらなかったから...逆らうのが怖くて...」

 水野はさらに握る力を強めたのか右手がほのかに赤く染まっていた。

「そうだとして委員長は何も悪くないよ。人として当たり前だよ」

「...悪いのは私...光希が一番辛いって分かってたのに...自分だけ庇って光希の事は知らんぷり」

「それは違うだろ」

「...違わないよ...だからさ、私どうすれば光希くんに償えるか考えたんだ」

よるはうつむきながらただ俺たちを会話に耳を傾けていた。

「...最近の光希、前より笑顔も増えて良い感じじゃん?だからさ...私もう光希に近づくのやめるね...光希になにかしようとするやつは裏で潰してやるつもりだから他人とまではいかないけど...」

「...私が居てもきっと昔のこと思い出しちゃうし光希の幸せを壊す膿になるらだけだと思うから」

水野はスッーと流れる涙をハンカチで拭くなり走り去って行ってしまった。

それと同時に俺はズキズキと激しい痛みを胸に感じた。

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