追憶編 2
あれから俺はドリンクバーに行くふりをして聞き耳を立てていた。
「あ~そういえばさ木村がさ~」
「あれはウケたよね~」
共通の友人の話だろうか。
仲良さげ微笑み合う二人。
ズキリと胸が痛む。
だが、当たり前だろう。
水野は明るくて優しくて美人だ。
そんな水野に彼氏がいないわけがない。
至極当然のことだ。
「木村は学習能力がないんだよな~」
「だよね~」
どうして俺はこんなにも惨めなのだろう。
家族にも嫌われ学校では邪険に扱われ。
好きな人にも冷たくされかと思ったら彼氏持ち。
俺は前世で猟奇的殺人を犯した大罪人なのだろうか。
そうでなければ説明がつかない。
でも、俺は水野が誰かと笑っているのを見てやっと始まってもいなかった恋が終わった気がした。
水野の事をキッパリと諦めた俺は本当にドリンクバーを使っていた。
オレンジジュースのフルーティーな香りがしてくる。
こういう時は飲むに限る。
ドリンクを利き手に持ち通路を歩いていたらサッカー部のキャプテンと少し目があった。
「なあ、西上っていう犯罪者知ってるか?」
これは俺が一番恐れていた会話だ。
もう諦めたとは言え幼馴染が自分の悪口をいう姿などみたくない。
「...あーうん」
「幼馴染なんだろ?やっぱ昔から頭おかしかったのか?」
「いやぁあんまり今も昔も関わりがないからさ」
これならまだ罵ってくれた方がよかった。
今の俺にとって唯一幸せを感じられる母も生きていて水野とも仲がよかった思い出。
俺の良心や人として必要最小限に受けた愛は全部あの時だ。
だが、水野にとってそれはどうでもよかったらしい。
アイデンティティーの根幹を揺るがされるような否定されるような一言に俺は思わずその場を走り去ってしまった。
それでやっと水野が気づいたのか声を掛けてきたがその善意が一番きつい。
「ち、違う!待って光希!」
作者
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