1から

 俺とよるは今、昔よく遊んでいた公園にいる。

 小学生の時はここでよく無邪気に走り回ったものだ。

 今となってはそんな少年も人間不信な鬼畜のぼっちに。

 世の中何が起こるかわからないものである。

 なんてくだらない事を考えていると隣のベンチに座っているよるが手を強く握ってきた。

 表情は今にも泣き出しそうなそんな儚げなものだった。

「どうした?」

 よくこの時期に起こる思春期独特のと言うやつだろうか。

「...ごめんなさい...本当に!ごめんなさい」

 なぜよるは謝っているんだ?

「中学生の時裏切ってしまってごめんなさい...!」

 どうやら?よるはまだそんな事で気を落としていたらしい。

「別に何とも思ってないし良いよ」

 というか鬼畜のぼっちを舐めないでほしいものである。

「...ごめんなさい」

 なぜそこまで謝るのだろうか?

「俺は鬼畜のぼっちだぞ?本当に気にしてない」

「...そんな風に心を鈍らせてしまってごめんなさい...」

 よるはとうとう堪えていた大粒の涙を流してしまった。

「別に狂ったのは弱いせいだし俺は何も気にしてないから」

「...それが問題なんだよ...!」

 よるは握る力をさらに強めてきた。

 なぜそこまで俺なんかに必死になるのだろうか。

 俺なんてどうでもよいはずだ。

「勝手かもしれないけど...私は光希くんには笑っていてほしいし、自分を傷つけないでほしいの...!」

 思えば、壊れる前の俺は人に一番に思われたかったのかもしれない。

 でも、裏切られるのが怖くて怖くて気がついたら感情が心が死んでいた。

「...自分を傷つけるくらいなら私を傷つけて!...好きにして...!...痛いことだって...その...えっちな事だって私何でも頑張るから...!」

 よるは何を原動力にここまで言ってくれているのだろうか。

 わからない。

 わからない。

 いや、きっと裏切られるのが怖いからわかろうとしていないんだ。

 本当にわからない。

 わからない...

「...本当にわからないんだよ」

 気づけば目から涙が流れていた。

 だが、俺の脳は今クエスチョンマークで溢れているだけだ。

 おそらく本能的なものだろう。

「...いいんだよそれで...0とは言わない...また1からさ...私と一緒に始めようようよ...お願い...」

 よるはそういうと俺に抱きついてきた。

 俺にはよるの気持ちは全く理解できないしどうしてこうなっているのかもわからない。

 だけどこの一瞬は昔に戻っているような気がした。


※次回から水野(幼馴染)編に入ります

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