過去回想と決意

 私には義兄がいる。

 光希くんは昔から勉強が出来て優しくてかっこよくて私の憧れの人だった。

 母に女で一つで育てられた私に取っては光希くんは唯一無二の存在だった。

 あんなに好きだったのにお世話になっていたのに私は光希くんを裏切った。

 愚かだった中学生の頃の私は周りに傷つけられる事を恐れて光希くんに酷いことを言ってしまったのだ。

「光希くんが余計なことしなければ!」

「居なくなれば良いのに!」

 本当に醜い。

 歪でおぞましくて吐き気がする。

 そんな私にも光希くんは笑みを浮かべてくれた。

「大丈夫、直に居なくなるから」

 それがさも当たり前かの如く自然な笑みだった。

 それから光希くんは徐々におかしくなっていってしまった。

 もちろん、それからすぐに後悔して何度も謝った。

 言葉を労し紡いだ。

 そんな私を彼は許してくれた。

 いや、気にしていないとすら言っていた。

 いくら謝っても苦しんでも泣き喚いても願っても壊れてしまった彼は戻ってこない。

「ごめんない、ごめんなさい!」

もっと早く伝えられていたのなら何か変わっていたのだろうか。



私は最近、光希くんと登下校を共にしている。

私が何かしたところで現状が変わるとは思えない。

だが、少しでもほんの僅かでも光希くんの気持ちを理解できたなら。

笑顔にさせる事ができたなら。

自己満足なのかもしれない。

でも井上の一件以降、以前以上に光希くんがどこか遠くへ行ってしまった気がした。



フードコート。

小学生の頃まではこうしてよく2人で来たものだが、中学校以降はぱったりとなくなってしまった。

「クレープ食べよっかな~」

光希くんは昔から甘党でこうしてフードコートに来た時にはいつもクレープを頬張っていた。

なのでクレープを食べることにした。

「よし、なら俺買ってくるわ」

そういうと光希くんは財布片手に歩いていった。

それからちょっとしたくらいだろうか。

隣のクラスの男子が馴れ馴れしく話し掛けてきた。

「西上さんだよね~?」

「あっ、うん」

私を見る目は舐め回すようなおぞましいものだ。

「ならさ~遊ばね?」

「ごめん、連れいるし無理かな」

「連れも一緒で良いからさ~」

本当にしつこい。

でも、私はこんな人と同類だ。

「な~頼むよ~」

「むり」

ふと店側に目を向けると光希くんが私達を眺めていた。

少しモヤモヤする。

そんな自分に自己嫌悪を覚えながらも私は助けを求めるLINEを送った。

今日は光希くんと遊びに来てるのだし相手の男子が聞く耳持たないからしょうがない。

何て自分の中で言葉を連ねていくが結局は他力本願なだけだ。

そんな自分がたまらなく嫌いだ。



「よし、帰るか」

あれから男子を追い払ってくれた光希くんと私はクレープを食べ終え、席を立った。

「...ちょっと待って!」

「どうした?一緒に歩くの嫌だからお前だけ遅れてこいてきなやつか?」

「そんなわけないじゃん!話があるんだけどさ...その...大事な話。だから、昔よく行ってた公園行かない?」

こうして私の戦いが幕を開いたのだった。

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