よる 視点

「なぁなぁ?どうした?さっきまで女の前だからって散々イキってくれてよお!」

また、私のせいで光希くんが傷つけられる。

そう思うといてもたってもいられなくなり私は今度こそ光希くんに向き合おうと井上に突っ込んで行った。

「...いいから」

「で、でも!」

「...お前がいても邪魔」

でも、それさえ彼は許してくれないようだ。

感情的に声をあらげる私とは対比するかの如く光希くんはどこまでも無表情で我ここにあらずと言った感じだった。

彼に報い、尽くす事すら許されない私に出来ることなどあるのだろうか?

分かっている。

こうも拗れてしまったのは私がどこまでも独善的で傲慢だったせいだ。

私が自己保身の為に一度光希くんを裏切ったから...

もう一度光希くんを助けようと思ったけれどそれも無駄なのだと悟った。

先程、受け取ったボールペンに良く見たらレンズのような物が内蔵されていたのだ。

何か考えがあるのだろう。

ここで私が邪魔したら光希くんの努力も水の泡なるのではないか?そう思うと何も出来なかった。


それからは彼の独壇場だった。

光希くんはまるで作業かの如く井上をぼこぼこにしていた。

思えば光希くんがやられていたのもこの現場を教師達に見せつけ行動を正当化する為だったのだろう。

ボールペンには証拠も残っている。

それで教師達は止められる。

井上に関しても少年法などと言ったあまっちょろい制裁ではなく永遠に自分の人生を蝕むデジタルタトゥーで脅す。

下半身を脱がされたことも世間に画像を晒される事を考慮すれば何も文句は言えない。

だが、光希くんは私の為に自身を正当化してくれたのだろう。

光希くんはおそらく今回私が絡んでいなかったらもっと直接的に残虐に問題解決していたのだろうと無表情に暴力を振るう彼の顔をみて悟った。

私のせいだ。

今回だってそうだ。

義妹の為に自ら殴られに行くのは異常だ。

私は倒れている光希くんを目の当たりにして涙を堪えながら保健教諭の到着を待ったのだった。



~訂正~タイトルに誤字がありました。

ご指摘ありがとうございます。

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