『破滅へと歩む者』
そこからはもう、
ジョン・ドゥはまず瓦礫の欠片を拾い上げ、手首のスナップを効かせて5thの部下に投げつけた。
「『
軽い動きから放たれた石ころが超加速した。
銃口を構えていた隊員のベストに直撃し、そのまま後ろへ吹っ飛んだ。
残りの三人が反撃しようとトリガーを引こうとしたその瞬間、ジョン・ドゥの姿はもう消えていた。
走って逃げたのでも、地中に潜って隠れたのでもない。ただただ、急にその場から消えた。
「ァ……、ィイ……!」
5thは奴を見つけて殺せという命令で声を出すことも、そのためのハンドサインすらも出せない。
自身の権能を逆に使われてしまった影響で、敵対行為に繋がることは何も出来ない。
膝を折る5thの様子を確認しに、隊員が近付いて肩に手を伸ばしたその瞬間。
後ろで警戒していた部下の首が真っ赤に発熱し、ヘルメットごと転がり落ちた。
頭部を失って崩れ落ちる体躯。
そこに立っていたのは、右手の指々からバーナーの炎を放射するジョン・ドゥの姿だった。
「『
ジョゼちゃん、エグい
振り向いて銃撃しようとする隊員の懐までステップで潜り込み、バーナーフレイムの熱で重火器のバレルからボディまでを引き裂いた。
バラバラになったパーツが弾け飛ぶと同時に、その先にあった兵士の
「うっ、ああぁああぁああああああああァあっ」
悲痛な叫びをあげて倒れ込む仲間を前にしても、残る二人の兵士は恐怖に臆することなくジョン・ドゥにへ向けて小銃の引き金を引いた。
爆音と
「スゲースゲー、仲間があんなグロく殺されてんのにビビんねぇって、流石はよく訓練されてる。 主人公最強モノってのは、やっぱお前らみたいなのを楽勝に倒してこそだよなあ?」
超加速で背後に回った男の手に握られていたのは、瓦礫から拾ってきた1メートルほどの鉄パイプ。
それを人間離れした速度でフルスイングし、兵士の後頭部をサヨナラホームランでぶっ叩く。首の骨が思い切り折れる音と共に、前のめりに身体がアスファルトに突っ込んでいく
「
「くそっ……、化け物が!!」
再び連続する小銃のフラッシュの中を、重苦しそうなミリタリーコートの男が軽々しく飛び回る。
「分隊長、撤退命令をっ!」
「て、ったいし、ロ!」
5thの行動意思が『ジョン・ドゥに立ち向かう』ことから、『撤退すること』に変化した途端、ジョン・ドゥに危害を加える行動を起こすことが出来ないという束縛から外れ、縛られていた身体が動き出した。
しかし、まるでしっぽを踏まれた猫みたいに飛び跳ねて逃げ惑う5thを、ジョン・ドゥが見逃すわけがなかった。
突如して兵隊の真隣に現れて肩をポンと叩き、
「……『
敵前逃亡者を射殺する冷酷兵って敗役はどうだ?」
テロを起こす直前までは『
当然、それが扱えるのは彼も"友達"だからだ。
敗役を与えられた兵隊は小銃を構え、逃げ惑う5thの背中を
用済みになった敗役者の腰から肩までを、ジョン・ドゥの指から伸びるバーナーの刃が逆撫でするように斬り捨てる。
断面が真っ赤に熱された金属みたいに熱を残したまま五つに分割されて床に転がった。
「おっほ〜! すっげぇ切れ味。 やっぱ炎熱系の能力って最強だと思うんだよ俺はさぁ。 なあ、そう思うだろお前も?」
穴あきになってしまった背中のアーマーベストが5thの瀕死状態を物語る。
呻き声をあげながらグローブでアスファルトを引っ張り、少しでも遠くへ、少しでも遠くへと逃げようとしている。
ジョンドゥは近くの兵士が落とした小銃を拾い、ガチャガチャと試行錯誤して弾倉を抜き取り、残りの弾数を確認している。
「おー、本物ってこんな風になってんのか。 やっぱゲームの知識だけじゃ扱えねえよなこんなの。 持って帰って練習しとこう。 俺好きなんだよな、排莢の機構だけ精巧に作られたモデルガンとかずっとヒマな時ガチャガチャやっちゃうの。 あ、お前が持ってた
などと適当な言葉を並べて、追い剥いだ5thを放置して小雨の中を歩いていってしまった。
その後を廃墟に隠れていた白い少女が、両手の平で小さな傘を作って追いかける。
道中、呻く5thの横に着くと少ししゃがんで、ひねり出すみたいな小さな声を浴びせかけた。
「……ジョンは、嘘つきなの。 誰も幸せにできないし、当の本人も幸せになれない。 そういう、どう仕様もない嘘ばっかり
そう言い残し、小走りでミリタリーコートを追って行った。
取り残された5thは無線機にすら手が伸びず、そのまま霧雨にとどめを刺されて冷たい眠りについた。
世界中、一般人の知り得ない社会の陰で、権能による衝突は拡大している。
あらゆる思想、あらゆる目的、あらゆる欲望がぶつかり合い、放たれる火花は種となる。
異能による、戦乱の
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