第21話 一閃突き極
奴は自身に何が起ったのか理解できないまま、痛みの原因である自分の左肩に目をやった。そこには、つい先程まで僕の手の中にあった槍が貫いたものだった。
「ぐっ! どうなっている!? 貴様の槍は、ついさっき手を離れたばかりではないか? それが、この我が避ける間もなく攻撃を受けるとは……」
僕は、未だ状況把握が出来ていない奴の肩に突き刺さった槍に手を向ける。すると、その槍は瞬間移動した様に僕の右手の中に収まった。
「戻る所さえ目に出来ぬとは……貴様、それは幻術の様な物か?」
「おいおい。さっきまで威勢が良かったのに、もう相手に答えを求めるのか?」
「くっ、よいだろう。もう一度放つがよい。必ずや避けて見せよう」
ただの妖怪ではなく、奴は己の存在に誇りを持ちそれに自信を持っているタイプなのだろう。奴の言葉に僕はそう思う。
しかし、そんな奴に対して僕は冷徹に事実を言う。
「それは無理だ」
その言葉と共に、奴に向けて再び槍を投げ飛ばす。
「なっ! くっ……馬鹿な……」
奴の目線は、今度は自分の右足に移っている。そこには先程と同じ様に、槍に貫かれた痛々しいものだった。そして、その槍は再び僕の手に瞬時に戻る。
「いいだろう。このまま、何が起ったのか分からないまま葬られるのは気の毒だ。この槍の能力を教えてやる」
「貴様……舐めているのか?」
「いや、そういうわけではない。僕もそこまで自信過剰じゃない。自分に不利になるような情報は与えないよ。ただ、これはその存在を教えても無意味だからな。お前のその誇りの代価と思って聞け」
僕は、奴に見せつける様に一閃突き極を向けた。
「この『一閃突き極』の能力は極めて単純。ただ、その能力は絶対。これは相手に向けて投げれば、相手がどんな存在だろうが必ず命中するもの。お前がどれほどの素早さを持っていようと、これを避けるのは不可能。僕がお前に向けて投げるたび、その身は何度でも貫かれる」
因みに、この武器の弱点とも言うべき所は、その貫く部分がどこか投げた僕自身にも分からない事だ。
しかし、さっきも言ったように、自分が不利になる情報は与えない。この事は言わないでおこう。
「では、いつまでも話していても時間の無駄だ。悪いがここで終わらせてもらう」
再び僕は奴に向けて槍を構え、勢いよく投げつけた。そして槍は能力通りに自然の摂理の様に、抗う暇もなく奴の胴体を貫く。
だが、今度はそこで終わらない。僕は右足の能力で一気に奴との距離を縮める。
普通なら、早虎は己の素早さを生かし逃げるだろうが、今の奴は槍に貫かれ身動きが出来ない状態だ。
そんな奴の首をはねる為に、僕は左手に風の能力を集結させる。まるでつむじ風の様に無数の風が左手を包み、剣の様な形を作り出した。
そして、その左手を奴の首筋に向け振り抜こうとした時――。
「崇! 上じゃ!」
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