第4話 僕には見えるその正体
「確かここら辺だったよな」
僕は先生に渡された天川の住所の紙を手掛かりに、彼女の家の近くまで来ていた。
その場所は近くにある住宅街から少し離れた所にあり、あまり人が住んでいる雰囲気が無い場所だった。
しばらく続く一本道を進むと、目の前に草に覆われた鉄格子の大きな門が現れる。
その門の奥を見ると、そこには全く手入れをされてない雑草が生い茂った中庭があり、その奥にはまるで遊園地の幽霊アトラクションに出てきそうな洋館があった。
その洋館には光は灯されておらず、誰もそこには住んでいないように見える。
中を覗き終えて、僕は門の横を見る。
そこにはローマ字で『AMAKAWA』と書かれた標識があった。
どうやら間違いはなかったようだ。
僕は、そこの標識の下にあるインターホンのボタンを数回押した。
「……………………」
返事は返ってこない。
もう一度インターホンのボタンを数回押す。
そして、しばらく時間が経ち返事が来るのをあきらめかけた時――。
「…………はい」
か細い、今にも折れそうな声が返ってきた。
「天川、同じクラスの星月だ。先生に頼まれて、溜まっていたプリントを届けに来た」
「…………そう、わざわざありがとう。……悪いけど、今外に出れる状態じゃないの。プリントは、外にあるポストに入れといてちょうだい」
「天川、かなり具合が悪そうだけど、大丈夫か?」
「…………ええ、心配ありがとう。でも気にしなくて大丈夫。それじゃ」
そう言うと、天川は一方的にインターホンを切った。
僕は言われた通り、プリントを入れる為にポストの場所を探した。
それはまた少し生い茂った雑草の中にあり、ポストの中は色々なチラシが押し込められていた。
どうやらしばらくの間、誰もこのポストの中を確認していないらしい。
僕はプリントをそこに入れると、もう一度彼女の住む洋館を、目を細めて鉄格子の間から見つめた。
少し時間が経つと、僕は振り返りその洋館を後にする。
「どうじゃった?」
クコは、ある事を確認する為に質問をしてくる。
「ああ、ハズレだけど……アタリだな」
「そうか……で、どうする?」
「まあ、ほっとくわけにもいかないよ。一応クラスメイトだからね」
僕の返答に、クコは呆れたように首を横に振った。
「まったく、相変わらずお人好しじゃの」
「いいだろ別に」
「まあ、別に嫌いではないがの」
「早速、今日の夜に行く。奴もその時間帯になれば正体を現すだろ」
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