第7話 霧昇って雨が降る

「ふっふっふふ、、!ハハハハハッ!やっぱりあなたは冒険者だ。さぁ行きましょう。」


目の前の青年は手を伸ばしてくる。


「だからそこどけって、装備部屋なんだけど。」

「あっと失敬失敬。では5分後食堂でまた会いましょう。」

「時計持ってんのはあんたら騎士だけだから。それにおれは待たないぞ。」

「ほう、普段からお一人で行くのですか?それであそこまでの資料を持ち帰るとは、街で聞く噂とはずいぶんと違うのですね。」

「人数が多いほうが楽なのはわかってるが、おれは結構わがままなんだ。来るなら合わせろ。」

「ふふ良いでしょう。あとかr\\\\\」


体を寄せて道を作った青年騎士の横を抜け、話を聞かずに装備を身に着け、深緑の外套を纏って窓から飛び降りる。


窓から背の高い木に飛び移り、空にスロープがあるかのように軽快に着地を決める。


行く先は西の大遺跡、ここらで一番デカい遺跡にして、あの胡散臭い青年騎士の目的の場所。

何もないわけがないとおれの鼻が言っている。


西の暗雲から重く湿った風が吹く。


西の大遺跡はソロのおれではその厳しさゆえに今まで探索を控えてきた場所だ。

出現する魔物はどれも危険でパーティーを組まなければ休憩もままならない。

それでもおれの足は、重く湿った風に導かれるように歩みを止めない。


暗い雲が広がる空は力強い風は地上に降りて、雨粒を雲に堰き止めているようだった。

決して冒険日和ではないけれど、怪しい暗闇は、冒険を求めて走る少年に風を吹きつけて心を揺らす。


「今日は心躍るよい冒険日和だ!」


宿から遺跡へ行くには、一度北上して街まで行き、そこから真西に一本道を進めばよい。

しかし、少年の足はまっすぐ遺跡に向かう。

そこに生い茂る深い木々を掻き分けて、まるで野生の獣のように森を突き進む。



「まさか、窓から森を抜けてまっすぐ遺跡に向かうとは。宿の出口、周辺の遺跡までの道には騎士を配置しているというのに骨折り損ですね。幸運、直感、はたまたこれを運命というのか。」


青年騎士は先程までの心からの笑みを消して、面白くなっそうな顔をする。

そこに壮齢そうれいの男性が静かに膝を突く。


要所にのみ金属を覆う軽武装の壮齢騎士は、その身に纏う武人の気配でそれを鉄壁の完全武装に思わせた。


「ミスト様、どうなさいますか?命令通り追っ手は出しておりませんが、今なら追跡可能です。」


壮齢騎士が膝まづく青年は全身にまばゆい金属鎧を纏う。

そこには覆ることのない身分の差が表れていた。


「追っ手はいりません。行き先は西の大遺跡で間違いないでしょう。街に近づけば近づくだけ監視は多くなる。冒険者もバカでない、さてどう動くか。」


青年は、ぽつぽつと地面を打ち始めた空を見て思考にふける。


冒険者の街に嵐が訪れようとしていた。

その空はこれから始まる運命が波乱に満ち溢れたものであると告げるようであった。


ーーーーーー

どうも赤城灯火です。遠距離通信のなかった時代、情報を伝える方法は駅伝制というものだったそうです。簡単に言えば手紙がバトンのリレーです。この方法は各地に駅を設置する必要があり、それすなわち権力の証明にもなっていたようですね。今でこそ駅伝という言葉はマラソンでしか聞きませんが、思う以上に歴史が深いのかもしれませんねぇ〜。私は日曜朝アニメが見れなくなるので嫌いでした、はい、昔ですよ昔♪


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