第6章

【避難者たち】

 宮殿横の森に着陸する一機の飛行機。中から、見慣れた者らが降りてくる。「ひやあ、着いた。一時はどうなるかと思ったが。やはり奇跡屋は奇跡を起こさなくてはならない」「よく言うぜ。奇石とやらが無ければ俺らは死んでいた」「本当よ。彼らに感謝しなくてはいけないわ」「…有り難や」奇跡屋に続いて降りてくる者。「おい、奇跡屋!よく生かしてくれた!祝いの料理を振る舞うぜ!」「まあ、楽しみ」口の悪い店の店主ショーンと客マダムに続いて降りてくる者。「なんて大きな宮殿だ」ダラスが宮殿の中に入る。自分と同じ顔で黒い長髪の者と目が合う。「ダリア姉さん」近づいて来るダリア。「ダラス…その名は、店をやる間だけ。今の私は、ライアン・バスコミュールよ」「そうだったね。ライアン兄さん。僕も今はモーリー・バスコミュールとして振る舞っている。でも、兄さんは、店の時と同じ格好でよくいられるなあ」「この格好はやめられないのよ。逆に、店の時だけおかまになるモーリーの方が不思議でたまらないわ」「やっぱり僕と兄さんは意見が合わない」「そうね」ダリアと距離を取るダラス。お互いを気にする二人の間を通れる者はいない。宮殿の外を見つめる仙人。「闇の兆しが出てきとる。この闇を払えるのは救世主だけじゃ」


【伝説の獣との戦い①】

 面々は、目を覚ます。「おかえり。よく戻ったね」「ボーンさん…」茫然とする面々。「疲れたかい?隣の部屋で休むといい」不眠室に入る面々。タクトとチグリスがトランプをしている。「やあ、楽しんできた?」「チグリスさん…」「おや、あまり楽しめなかった?それとも、楽しみすぎた?」「あがり!」「また負けた」「もう一回」その時、雷が鳴り響く。外に出る面々。そこにバイクに乗った新聞配りのラッパーが現れる。「ヘイヨー。伝えにきたよ。レジェンドなビーストが暴走中。本部の危機だよ。助けに行こう」「本部の危機だと!」「助けに行きましょう」「そうだね」「行かなきゃ…」「乗って」レイピアがウィングエッジになり、面々が乗る。空を飛んで行く面々を見送るチグリス。タクトが来て言う。「あの人たち、ヒーローみたい」「うん、そうだね」「ゴー。ビーストバスターズ」


 面々の前にティアマットが立ちはだかる。「我はティアマット。風を司る伝説の獣」「あの獣は知ってる。僕が行くよ」サトリが飛び降りる。サトリが風のネアを発動する。ティアマットが相殺する。「貴様は、覚えているぞ。一度我に挑み、そして敗れた奴だ。また我の技で吹き飛ばしてやろう。我特製“ツイストーム”」激しい竜巻がサトリを襲う。「ははは。前は我の技を和らげたことに驚いたが、今回はそれすら敵わないだろう。なぜなら、ツイストームの威力が上がっているからだ!」サトリは集中している。「“大旋風・竜巻(ビッグウェーブ・スクリュー)”!」竜巻がより大きく、より激しくなる。(うわ…本当に風が操れる…!)「すごい!サトリの風が、相手の風を吸いこんでいるように見える」「いや、見えるんじゃなくてそうだ。あいつの方が勝ってるってことだ」「我の“ツイストーム”が!」「そんなの、そよ風に感じる。止めだ!“大旋風・乱気流(ビッグウェーブ・テンペスト)”!」サトリが手を伸ばし、ティアマットに向かっていく。ティアマットが抵抗するも勢いは収まらない。「かつて我の餌食となった者が、何故これほどまでに強くなった!」「そりゃあ、僕、エレクトなんで」「エレクトだと?」「選ばれし者のことさ」ティアマットを捉える。「ぐああ!」落下するティアマット。(この力があれば僕も戦える…!)「ぐぬぬ、何のこれしき、ここで負けてはバハムートに顔向けができぬ」飛び立つティアマット。サトリは力を使い、体を浮かせる事で限界の状態。「ははは!終わりだ、少年!」「“獣王無尽”」翼の生えたライオンがティアマットの腹部に強烈な頭突き攻撃。「ぐあ…」再び落下するティアマット。「なんだ、貴様は…」「我はレオ」レオは寿命が近づいていた。その中で技を繰り出したことで、死の寸前まで来ていた。「ふははは!その姿、もう王とは呼べないな」「我は王の座を渡した。もう王ではない」「そうか!なら、我が速やかに死を与えよう」ティアマットが翼で攻撃しようとした時、一羽のウィングエッジが翼でティアマットを切り裂く。「ぐあああ!」倒れるティアマット。「大丈夫デスカ?百獣ノ王」「大丈夫だ…だが、我はもう王ではない…」「本当デスカ?王ハ一体誰デスカ?」「あの者は老人と共に暮らしている」レオを舐める小さなライオンが現れる。「そう…このくらいの…なぜここにいる…」テンテンが言う。「老人は死にました。僕は王の死をこの目で見る為駆けつけました」「そうか…我も最期に会えて良かったよ…あとは頼んだ…」レオは目を閉じる。「王は立派な最期でした」「アナタガ新タナ百獣ノ王、ライオンキング!」ティアマットが横目で見ている。「なんだ、これは。我は伝説の獣だぞ…」そこに大きな鳥が現れる。「…バハムート!」バハムートが空を高く飛ぶ。「そうか。我の負けだ…」ティアマットも目を閉じる。


【伝説の獣との戦い②】

 面々の前にフェニックスが立ちはだかる。「英雄リンクの相棒、フェニックスか。俺が相手をする」ロンドが火のネアを発動する。「“獅子舞・熱風バージョン”!」熱風の波動をフェニックスは跳ね除ける。「流石だ。俺はどんな壁も乗り越える男ロンド。こんな事で諦めない」ロンドが飛び降りる。「サトリ!俺を飛ばせ!」「わかった」サトリが風を飛ばし、ロンドが風に乗る。「“獣王拳・火炎バージョン”」ロンドがフェニックスの放つ炎を弾きながら顔面を殴る。奇声を発し、落下するフェニックス。フェニックスを支えるようにバハムートが現れる。バハムートを見たフェニックスが正気に戻る。二体の伝説の獣が並んで飛ぶ。「すごいぜ…かつての英雄リンクの仲間、ドラグーンが揃ったぞ…それより俺を助けろ!サトリ!」サトリが風を飛ばし、ロンドが風に乗る。サトリとロンドがウィングエッジのレイピアに乗る。「ふう、なんとかなったぜ」「あとは、海と山にいる2体…」「山の方は、わたしに任せて!」「海の方は、僕が行きます!」ナタリーが山に、クリスが海に向かうため飛び降りる。山で暴れるゴーレムは、巨大化した後分裂する。小型のゴーレムがSONG隊員や脱獄者を襲う。山に着いたナタリーは、土のネアを発動する。「出てきて。“大地の獣フェンリル”。お願いね」土で出来た犬の形の獣が小型のゴーレムを次々と破壊していく。「僕も手伝う。ガウ、頼んだ」ダンの相棒のガウも小型のゴーレムを次々と破壊していく。ゴーレムが残り一体となる。フェンリルとガウがゴーレムに突進攻撃。ゴーレムは負けを認め、姿をくらます。「君の犬いいなー」「君の犬もかわいい~」海で暴れるヌタオロチは、複数の首を動かし、水を吐く。激しい水しぶきが起こり、SONG隊員や脱獄者を襲う。海に着いたクリスは、水のネアを発動する。「“連続・水流斬り”!」水で出来た複数の剣が縦一列に並んで、クリスが居合抜きの動作をすると、ヌタオロチの複数の首に飛んで行く。いくつかの首はちょん切れ、残りの首は左右に動き、命中しない。しかも、切れた首が再生していく。「もっと速く、もっと連続で斬るしかない!“高速・連続・水流斬り”!」再び複数の剣が飛んで行く。首がちょん切れ、数本の首が残る。切れた首が再生する。また数本の首が残り、切れた首が再生することの繰り返しが続く。「凄い再生力だ」「クリス、私も戦うわ」ライラが水のネアを発動する。「見様見真似だけど」水で出来た剣が現れる。「一本しか出ないわ」「慣れてないからですよ」「ごめんね」「十分です。行きますよ」「「“W水流斬り”!」」ヌタオロチの首がちょん切れ、残り一本となる。残り一本の剣が向かう。首が避ける為、横に倒れる。「また再生しちゃう」そこに、三つ頭の獣が現れ、ヌタオロチの首を持つ。「やれ!ティガ!」ヌタオロチの最後の首を剣がちょん切る。首を失ったヌタオロチは、もう再生せず、その場に倒れる。「何とか倒しました。最後の剣、きっとライラのですよ」「いやいや、クリスのじゃない?それより、あの人のお陰で倒せたわ」ティガに乗る者がクリスとライラの横に下りる。「いやあ、すごい再生能力だったね」「ダイアンでしたか」「クリス、助けにきたよ」「有難うございます」「いいよ。僕は君の親友だから」その時、メンドールとアグラウスの戦況に変化が起こる。アグラウスがボロボロになり、吹き飛ばされ、メンドールが暴走して、目つきが鋭くなっている。


【史上最強の面倒くさがり屋①】

 メンドールの前に面々が集結する。「俺らが相手だ!行くぞ」「「了解」」メンドールが向かって来る面々を見て言う。「あー、めんどくさい」メンドールがネアを発動する。炎が発生。「炎とくれば、俺の出番だ」ロンドが炎を纏った拳で突っ込む。「ダメだ、この炎、ただの炎じゃねえ!」「水であれば、消えるかもしれません」クリスが水を纏った剣で斬る。「全く効果がありません」「これは消えない炎というわけ?」「火は土で消す方法もあるよ」ナタリーが土を被せる。「やっぱり消えない」「僕の風で!」「待って」サトリが風を起こす。炎が勢いを増す。「わあ!」「風は火を強めるんです」「囲まれたわ」気づくと面々は消えない炎に囲まれる。「これで、ぼくの勝ちだ。あー、めんどくさかった」「レイピア!俺らを乗せて上から脱出だ!」「知らないの?炎は上が一番熱いのよ。通れないわ」「どんどん大きくなってる」「どうすればいいんだ…」「クリス!なんとかしろ!」「確かネアは合成すると化学反応のように、別の効果を発揮します。水と風で雪、水と土で氷柱、水と風と土で溶けない氷…そうです!水と風と土のネアを合成すれば、溶けない氷ができます」「それだ!早くやるぞ!」「ロンドと私は火のネアしか使えないから。静かに任せるわよ」「あ、そうか。お前ら、頼んだ!」クリスとライラの水、ナタリーの土、サトリの風が合わさり、溶けない氷が発生。溶けない氷が消えない炎を弱める。溶けない氷の上を通る面々。「あれ?めんどくさい人たちだ」メンドールが全てのネアを合成して、無が発生。「無は全てを消す」「クリス!何とかしてくれ!」「無は全員のネアを合成すればいいんですが…」「もう間に合わないわ!みんな、避けて」「避ける必要はないよ」もう一つの無が現れ、無を相殺する。「あなたは…」「チグリスだよ」「ぼくと同じすべてのネアを使える人がいたなんて…めんどくさい、めんどくさい、めんどくさい…」メンドールの様子が変わる。「ははは。はっはっは!アナザーメンドール様の誕生だ」


【史上最強の面倒くさがり屋②】

 チグリスとメンドールの無と無の激しい攻防が続く。メンドールは心で葛藤する。「これはすべてお前の望むことだ」「…違う!こんなことは望んじゃいない!やめろ!!」「ええい!」アナザーがメンドールを投げ飛ばす。「邪魔をするな。面倒なことは嫌いなのだろう?もう良いから、そこで黙ってみていろ、お前のすべては俺のものだ」メンドールが強力な無を生み、ぶつける。面々とチグリスが吹き飛ぶ。「なんて威力だ」「あの人の力、底が知れません」「あの人、苦しんでる」「ナタリー、何か聞こえるの?」「うん。あの人、もう一人の自分と戦ってる」「もう一人の自分…」考え込むサトリ。「チッ、本当の敵は彼の心というわけだ。彼じゃないけど、面倒くさいぞ」心で葛藤するメンドール。「苦しいことや辛いことからは避けてきた。それは、自分の望んだことで、やっぱり正しかったとさえ思っていた。それでも、どこかでそんな自分を悪く思う自分もいないわけではなかったと思う。でも、ぼくはもう一人のぼくの声に気づけなかった…」そこにチグリスが現れ、メンドールの肩を掴む。「気づけなかったんじゃない!気づかないふりをしていたんだ!もう一人の君は叫んでいたのに、聞かないふりをしていたんだ!」「そうかもしれない。でも、言い訳じゃないが、今更もう変えることはできない。でも、結局、聞いたところで僕はまた楽な道を選んでしまう。それは多分、この先も、何度繰り返しても、同じことだ!」「何を強く言っている。それに君は『でも』が多いんだ!」「君は…、君は何でもできるから言えるんだ!」「僕だって、出来ないこともあるさ!現に、災害を起こせる人間がいるなんて知らなかった。前は、大事な妹を守ることだって出来なかったんだ…得体の知れない出来事はまだまだたくさんあるんだ!それでも、まだ見ぬ未来をより良くするためにそれに立ち向かっていくんだ!そこには不安も、怖さもある!それだけじゃない!希望や、期待もある!だから、苦しいことや辛いこともしなくちゃいけないんだ!」「…僕にもできるのか…?」「ああ!もちろんさ!」「…今からでも遅くないのか?」「ああ!むしろ早いくらいだ!」「それなら、頑張って…」覆い隠すように、アナザーが現れる。「…頑張って、だと?もう、今更遅いんだよ。<邪念>が大きくなりすぎた。こいつの未来に希望はない。この<アナザーメンドール>様が存在する限り…こいつはもう、<アナザーメンドール>として生きていく以外に道はない」「そんなことはない!君には、君にしかできないことがあるはずだ」「そんなものはない!」「君には夢がある。いつか君は書いていたよね。『友達をつくりたい』って」「それは…」「作れるよ。まず僕が君の友達になってあげるよ。そのためには、君が面倒くさがらなければだけど」アナザーの様子が変わる。「体が消えていく…」チグリスが手を差し出す。「友情の証だ」「友情の証」メンドールが握手する。メンドールの心の葛藤が終わる。メンドールが倒れる。クリスが確認する。「気絶したみたいですね」チグリスも倒れる。「ふう…。骨が折れた」「大丈夫?」「大丈夫、慣用句だから」「ナタリーは優しいね」「なんだ」サトリが尋ねる。「何をしたの?」「“リンク”さ。彼とリンクすることで、心に入って話した」「何だか凄いのは分かった」「まあ、また今度話すよ」その時、アグラウスが起き上がる。片腕が剣に変わり、面々を攻撃して来る。「なんだ!?」「危険分子を排除する…」


【救世主】

 アグラウスの両腕が剣に変わり、面々に襲い掛かる。突然、空の一点が光り、一筋の線を描き、剣が舞い降りる。剣が弾かれ、アグラウスが体勢を崩す。「宇宙特捜隊アグラウス、規定違反だ」「アグル。彼らは危険分子だ」「それを決定するのは、上の仕事だ」「私は危険と判断した!」「仕方ない」向かって来るアグラウスの剣を、アグルの剣が折る。剣が折れても向かって来るアグラウスをアグルは斬る。アグルは剣を腕に戻し、面々に言う。「迷惑をかけてすまない」その時、面々らの立つ地面が割れる。「危ない」アグルの気付きで間一髪避ける。グボアギが言う。「よくもおれの息子をやってくれたな!」「お前の相手は私だ!」グレートが蟻地獄を作り、グボアギを引き留める。「おれの邪魔をするな!」グボアギは自分の立つ地面を割り、落下する。次の瞬間、グレートの真下から現れ、後ろに下がったグレートの右頬を殴り飛ばす。「平和的じゃありませんね。平和の志士ダグラスが制裁を加えます」ダグラスの拳をグボアギの両腕が防ぐ。「おれの邪魔ばかりしおって!」ダグラスの立つ地面が割れる。ダグラスは地面に手をかけて、落下を防ぐ。しかし、地面が元に戻り、身動きが取れなくなる。「次は貴様らだ!」グボアギは面々の立つ地面を割る。ナタリーが土のネアを発動する。盛りあがる地面が面々を乗せる。「小癪な真似を!」グボアギは激しく地面を割り、マグマが噴き出る。「火は俺の出番だ」「私も手伝うわ」ロンドとレイピアが火のネアを発動する。「「“W獣王拳”」」マグマの勢いが抑えられる。「あとは僕たちに」「任せて」クリスとライラが水のネアを発動する。マグマが冷やされて固まる。「おれを本気にしたな!これでお終いだ!」面々の乗る地面が割れる。宙に投げ出され、落下する先の地面が割れ、巨大な穴が開く。グレートが痛みを堪えながら、面々を見る。「みんな…」「サトリ!」「まだ終わりじゃない!」サトリが風のネアを発動する。割れた地面で出来た玉を凄まじい風が吹き飛ばす。面々は地面の上に乗っかる。グボアギは玉を寸でのところで避ける。「そんな…」「ははは、そんな攻撃当たるか!」「これならどうだ!」グレートが土のネアを発動する。不意を突かれたグボアギは両側から地面の波で勢いよく挟み込まれる。「ぐぼあぎ!」地面が元に戻ると、グボアギが現れ、そのまま倒れる。「やったぞ…」「「やった!」」喜ぶ面々。「良かった…」「助かったぜ、サトリ。レイピアも手伝ってくれてサンキューな」「咄嗟の事だから手伝っただけよ」アグルが近づいてきて言う。「君たち、強いな」「あなたは、かつての英雄リンクの仲間の一人、アグルさんですか?」「そうだ。よく知っているな」「あなたたちは、伝説になり、それを書いた本を愛読書にする者もいるくらい有名です」「クリス、俺の事を言っているのか」「君だったか」「会えて光栄だぜ。それより、さっきの仲間じゃなかったのか?」「ああ、あれは私ともう一人の男を基にしたクローン人間だ。代わりは沢山いる。まだ試作段階で勝手な判断をするおそれがあった。それを確認しに来たら、案の定だったわけだ」「もう一人の男は?」「そこにいる」アグルの隣に立つ男が会釈する。「ラウスだ」「いつの間に!?思えば、これで英雄リンクの仲間全員と会ったことになるな。感動だぜ」「それにしても、これで戦争は終わったのよね?」「あれ?浮かんでる岩がこっちに向かってるよ」グボアギが痛みをこらえながら、隣に立つ者に言う。「怪盗ミラー、最後の国クモリテを守れ」「了解」怪盗ミラーがグライダーで飛ぶ。面々らがそれを見る。「シュンが飛んで行く…」「いや、シュンじゃなくて怪盗ミラーです」「何をするつもりなの?」「何だか危険な気配がする」「彼を止めないといけないみたいね」「待て、レイピア」ロンドはラウスに言う。「頼む。あんたの足で、あの国を奪ってきてくれ」ラウスがアグルを見る。「行ってやれ」頷くラウス。怪盗ミラーが後ろの気配に気づき振り返る。「何だ!?」ラウスが高速で足を動かし、空の上を走る。「凄い…空の上を走ってる」ラウスは怪盗ミラーを追い越す。「アイツは誰だ!?怪盗ミラー、負けるなー!」叫ぶグボアギ。「勝ち目がないな」怪盗ミラーことラウスが諦める。ラウスは、クモリテに到着する。ジャンプしながらガッツポーズするラウス。「負けを認めるか、敵組織の首領グボアギ」「くそー!なぜだ!策は万全だった!それなのに、なぜ負けた!?」「結果が全てだ。勝者は勝ったから勝者だ」前のめりに倒れるグボアギ。


 アグルが戻る指示をジェスチャーで示す。ラウスが一瞬で戻って来る。アグルとラウスがグッドポーズで合図する。「流石ラウスは速いのう」驚く面々ら。「「ウォーリー博士!」」「何年ぶりじゃろう?最近物忘れが激しくてのう」「私たちは1000年に1歳しか年を取らないから時の流れには疎い。だから、わからないが、再会できて嬉しい。その隣のロボは新作か?」「そうじゃ。わしの最新作リメビウスじゃよ」「ドウモ。Reメビウスデス」ラウスとリメビウスが会釈する。「変わらず続けているのか。何だか安心した。よし。この星の危機は去ったようだから、私たちは星に帰る」「星ってどこだ?」「遠い所にある星、ガイアだ。この星とよく似た綺麗な星だ」「そうなのか」「ガイアではこの星のことをテラと呼ぶ。テラに起きる自然災害のことを星が呼吸する様子に似ていることからテラブレスと呼ぶ。またテラに生きる人間のことを時に事件を起こすことからテラノイズと呼ぶ。私たちは常に監視している」岩のような宇宙船が飛来し、中から現れた者が言う。「アグル、ラウス。迎えに来た」「セブンか。感謝する」宇宙船に乗るアグルとラウス。「元気でな」グッドポーズで合図するアグルとラウスとセブン。宇宙船は空の彼方に飛んで去る。


【終結】

 グレートがグボアギの前に立つ。「これはさっきのお返しだ」倒れたグボアギの右頬を殴るグレート。「ぐぼあぎ!」「そして、これは脱獄までして世界を危機に陥れた分だ」倒れたグボアギの左頬を殴るグレート。「ドゥブグフェ!」「グボアギ・ドゥブグフェ。戦争犯罪と脱獄の罪で再逮捕する」「私が連行します」「ナイル。頼んだ」「SONGは今のままでは必ず滅亡するぞ!」「来い!」ナイルがグボアギを連行する。「彼らは私たちが連行します」「ヒヨウ。ルシナンテ。頼んだ」ヒヨウとルシナンテがメンドールと科学者二人を連行する。「俺たちにも手伝わせてください」「ラル。シェリンダ。アルフレッド。クレセント。頼んだ。だが、君たちもまだ拘留期間中だ。自分たちも速やかに戻るように」「「はい」」「それと、これを持っていけ。後で読んでくれ」グレートがラルに紙を渡す。ラルらがネアラー衆を連行する。グレートがツルギの前に立つ。「君は、元レクイエムのコードネーム、ダ・カーポ。何故、急にいなくなった?そして、敵組織に加担した?」「どちらも同じ理由です。悪宿剣、あれを手に入れるためです」ツルギは悪宿剣の方を見る。「そんなことのために、君と君を追いかけたルバートがいなくなった。やはりあの剣は悪魔が宿っているかもしれない」「そうかもしれませんね。ダ・カーポは冒頭からやり直すという意味です。もう一度やり直したいですよ」「拘留期間を終えたら、何度でもやり直せる」「はい」「隊員で動ける者は、手を貸してくれ」SONG隊員たちがツルギと脱獄者たちを連行する。「あとは、あの女性だけだ。その前に、悪宿剣を回収しなくては」グレートが悪宿剣を拾おうとした時、先に拾うクリスピー。「君、脱獄者だな。それを渡しなさい」走って逃げ出すクリスピー。「待て!」グレートが追いかける。グレートは土のネアを発動し、クリスピーを止める為攻撃する。クリスピーは飛んでくる土の塊を避け、木に激突する。「うっ…なんのこれしき!“ドサン流・付け焼刃”」アブソリュート=サンで木を焼き切る。切れた木がグレートの行く手を塞ぐように倒れる。「しまった!」その場から行方を晦ませるクリスピー。「私としたことが、手痛い失態だ」戻って来たグレートに地面に埋まったダグラスが声をかける。「すみません、私を助けて頂けますか?」「ああ、はい。今助けます」グレートは土のネアで地面からダグラスを出す。「助かりました。何だかお困りのようでしたが?」「ああ、聞かれてしまいましたか。実は、悪宿剣を持ち逃げされてしまって」「それは大変です!それなら平和の志士ダグラスが解決してみせましょう。どちらの方向に犯人は逃げましたか?」「こっちです。それにしても任せていいのですか?」「お任せあれ」ダグラスはクリスピーを追いかけ、走り去る。グレートはピリオドの前に立つ。「この方は、モスクルドノワシティ代表の娘、アリスさんだ。大変だ。怪我をしている。手当てをしなければ」支援室に入るグレート。「この方の手当てを頼む」支援隊員がアリスを引き取る。「そこにいるのは、ジム」「総司令官様…これには訳があって」「分かっている。でも、拘留期間は守ってもらう。その前に、各支部の全隊員に伝えなくてはならない。用意してくれ」「はい」用意するジムと支援隊員。各支部に連絡を取る。ホッカイロ支部。「ガル!突然寝てしまってどうしたの?」「…母さん。あれ?夢だったのか」「疲れてたのかしら。それより本部から連絡よ」「わかった」モスクルドノワ支部。「アジズさん!」「は!どうした!」「やっと起きました。本部から連絡です」「本部から!わかった」マレードネシア支部。「元連合の方々!無事か!」「お気を確かに!」「これは夢でしたか。長船さんタケルさんご心配おかけしました」「安心した。本部から連絡である」「わかりました」本部。「用意が出来ました」「有難う」グレートがマイクの前に立つ。「えー、各支部のSONG隊員諸君に伝えることがある。敵組織との戦争は終結した。さらに、最後の独立国クモリテを統一した。これで全世界の統一が完了した。しかし、いまだ災害は止まらず起き続けている。そこで命じる。SONG隊員の各部隊は持ち場に戻り、引き続き任務に当たってくれ。以上だ」グレートがマイクを置く。「よし。では、行こう」「はい」ジムとギルバートを連行するグレート。「脱獄者の内いなくなったのは、ひょろひょろの僧とクリスピーの二名。そして、脱獄させたのは、怪盗ミラー」グレートは怪盗ミラーを探しに外へ行く。


【旧友】

 面々の元に降り立つ怪盗ミラー。「シュン」「負けてしまった」「相手は異星人のラウスさんです」「ラウス。僕と同じ名前だ。由来は伝説になった人のように速くなること。僕はもっと速くならなきゃいけない」そこに獣を連れた3人が現れる。「クリス、それからシュン。俺だよ、ダイアンだ。三人がまた集まれて嬉しいよ」「懐かしい」「ダイアン、それからダンくん、もう一人は誰ですか?」「私は、BATTのリーダー、モンステラ。よろしく」モンステラが口笛を吹く。テンテンがモンステラの腕の中に飛び乗る。「あれは、テンテンじゃない?」「本当だ!元気にしてたのね」さらにウィングエッジがテンテンを見守るように飛ぶ。「あれは、あの時の」レイピアが槍を構える。(アノ時ハ悪カッタ。私ノ翼ハ復讐ノタメデハナク、王ヲ守ルタメニ使オウト思ッテイル)「レイピア、やめてあげて。あの子は、テンテンを守りたいって。前の事も謝ってる」「そう」レイピアは槍を下ろす。「あなた、獣の言葉が分かるの?」「ちょっとだけ」「すごいわ。BATTに欲しい人材よ。でも、どうしてテンテンを守ろうとしてるの?」「テンテンのことを王って呼んでる」モンステラが倒れたレオを見る。「そう。この子が新しいライオンキングになったの。よろしく」「にゃー」「新しい仲間も増えたわ。ダイアン、よろしく」「はい!よろしくな」(ヨロシク)「折角だし名前つけてあげるか。何がいいかな」(ナンデモイイワヨ)「よし!お前の名はべスだ!」(イイ名前ネ)翼を広げるべス。そこにグレートが来る。「カリュードのみんな、来てくれて助かった。それにしても、ネアの力をどこで手に入れたんだい?」「ボーンさんという人がいる研究所です。そこで夢の世界へ行って死んだ人に会ったり、欲望や自分の苦手意識と戦ったりしたら、ネアを使えるようになったんです」「夢の世界か。気になる研究だ。その人連れてきてもらえるかい?」「いいぜ。頼んだ、サトリ」「僕?」「風で運べるだろ。お前が総司令官の役に立てる時だぜ」「分かった…」サトリが飛ぶ。(鏡の世界で見た時もロンドに似た人に似たような事言われてたな…)夢世界研究所に降り立つ。「サトリ君、見てたよ、凄かったね」「ボーンさん、SONG本部に来てください。総司令官が呼んでいます」「総司令官が僕を呼んでる?ちょっと待って」不眠室に入るボーン。「タクトも一緒に行こう」「え?でも、外は危険だから行きたくない」「僕が行くとタクトは一人になる。一人でいる方が危険だよ。一緒に行こう」「…」ボーンはタクトの前にしゃがむ。「背中に乗って」「…うん」ボーンの背中にタクトが乗る。「サトリ君、二人でも大丈夫かな?」「大丈夫です」サトリが風を起こす。「行くよ」風に乗って、サトリとタクトを乗せたボーンが飛ぶ。「BATTの方々も助かりました。感謝します。それから、ラウス君。君が脱獄させたのは本当かい?」「はい」「分かってると思うが、君には来てもらう必要がある」「一つお伝えしたい事があるので聞いていただけますか?」「何だい?」「僕が持つ奇石をすべて提供します。それで許していただけますか?」「どれくらいだい?」「約1万個」考えるグレート。「いいだろう」「感謝いたします」「但し、それは正式に無罪になった後の話だ」「行ってきます」怪盗ミラーは飛ぶ。統一国家最高裁判所に降り立つ。法廷に入る怪盗ミラー。最高裁判長ピスーが言う。「判決を言い渡す。怪盗ミラーは、無罪」「有難うございます」サトリとタクトを乗せたボーンが本部に降り立つ。「凄かった。タクトはどうだった?」「…凄かった」「連れて来てくれて有難う。貴方がボーンさんですか?」「はい」「夢の世界の研究について聞きました。彼らがネアを使えるようになったのは夢の世界のお陰だそうですね。その研究を世界のために役立ててみませんか?」「ぜひ」グレートの元に近衛衆の三人が来る。「総司令官様、宮殿にて開かれる世界会議に出席する代表の方々が集まっています。直ちにお向かい下さい」「わかった。ボーンさん、一緒に来てください」「はい」「モンステラさん、あなたも一緒に来てください」「え?どうして?」「敵組織の首領が最後に言ったセリフ、このままではSONGは滅亡する。確かに、そうかもしれない。だから、変わらなくてはならない。今まで敵対関係だったBATTと協力することは変わる第一歩になります」「そういうことなら喜んで。良かったら、BATTのトラックに乗って」「では、お言葉に甘えよう」グレートとボーンとモンステラがBATTのトラックに乗る。「ねえ、思ったんだけど、僕たちの本当の世界にいた学級委員ってグレートさんとモンステラさんに似てない?」「そう言われてみれば、そうですね」「他にもこの世界にいるのかもしれない」BATTのトラックは宮殿へ向かう。


【家族】

 面々は一人でいるタクトに話しかける。「こっちおいで」「一人でいたら危ないですよ」「俺らが守ってやる」「そういえば、ウォーリー博士に聞くことがありました。あなたは、息子を探しているんですよね?」「おお、そうか。世界の理を得たんじゃな。そうじゃ。目鼻のくっきりした、おかっぱ頭で、5歳くらいの女の子じゃ」面々とウォーリー博士がタクトを見る。「「同じ!」」ウォーリー博士が信じられないという表情になる。「まさか…ここにいたのか」「お父さん…?」「そうじゃ」「お父さん!」タクトを抱きしめるウォーリー博士。「探したぞ」「辛かった…」「もう大丈夫じゃ」面々が思わずため息をつく。「よかった…あれ、みんなもため息?」「良かった、と思って」「本当に良かったです」「一つ問題が解決したわ」「あともう一つの問題は、鍵だね」「ああ、どこにあるか全く分からないが」ナイルがチグリスに声をかける。「チグリス、生きてるか?」「生きてるよ」「ならいい」「待って。久しぶりなのに、冷たすぎない?」「すまない」ユーフラテスがチグリスを見つける。「お兄ちゃん!」「久しぶり」「久しぶり、元気だった?」「まあ、元気だったよ」「何してたの?」「まあ、いろいろと」「これからは何するの?」「ん?何しよう?」「私、今SONG隊員として戦ってるんだ。お兄ちゃんも一緒にどう?」「そうだな。やってみよう」「やった!良いでしょ?お父さん?」「問題ない。タブララサにチグリスが入れば、百人力だ」ヒヨウがミミハに声をかける。「大丈夫?」「うん」ルシナンテがモゲレオに声をかける。「大丈夫か?」「ああ」「他の奴も大丈夫か?」「「はい」」「そうは言っても全員傷だらけだ。支援室で手当てするから行け。英雄の奴らも傷だらけじゃねえか」ルシナンテが英雄たちの方へ行く。「あの人、口が悪いけど、いい人ですよね」「そうだな」「おい!カリュードも支援室に行け!」「「はい!」」


【世界会議①】

 グレートらは宮殿に到着した。「お待ちしておりました」隊員が出迎え、エレベーターに案内する。「こちらで会議が開かれる最上階まで行けます」「有難う」エレベーターに乗るグレートら。音が鳴る。最上階に到着したグレートら。「お待ちしておりました」「これは、モスクルドノワシティの代表のクロゼアスさん」「皆さん、貴方を待っています」「分かりました。その前に一つ、貴方の娘アリスさんを発見したのでSONG本部の支援室に保護しています」「本当ですか!心配していたんです」「もう心配はいりません」「良かったです。気になったのですが、隣の方々は?」「彼らは、今後の私たちに希望をもたらす二人です」「それはすごい。グレートさんの席はここです」「どうも。すみません、ボーンさん、モンステラさん」首を振る二人。席に着くグレート。円卓の周りにある席に座る代表者たち。ビーンシティ代表ピスタチオ、バカンスシティ代表コスモス、カタナシティ代表スキピオウ、ミトコンドリアシティ代表サンタマリア、モスクルドノワシティ代表クロゼアス、マレードネシアシティ代表アステカ・ゴーン・ストロガノフ3世、ホッカイロシティ代表ンゴマ、ショクシティ代表麺・長州、メリーシティ代表サンタクロス法王、デオードシティ代表ガジュマル、パンベンシティ代表グレート、フィラデルシティ代表ギルバートほかを除く11名の代表者が集まった。(サンタマリアさんの後ろに誰かいる。あれはユートピア教の教祖ビドーさんだ。人を連れてきたのは私だけじゃなかった。そろそろ話し始めよう。)「今回大変な状況の中でこれだけ大勢の皆さんがお集まりいただき感謝申し上げます。現在の統一国家の代表を務めるパンベンシティ代表グレートが司会を務めます。議題は、統一国家の目指す未来についてです」「ちょっと分かりにくいです」麺が言う。「言い換えると、現在から未来への変更点についてです」「制度は引き続き変更なしでいいと思います」スキピオウが言う。「では、多数決を取ります。すべての権力は法の下にあると定めた、統一国家における最も重要な制度“金科玉条の新誓約書”と呼ばれる統一国家大憲章マグナ=メンコは変更なしでいいですか」全員が挙手する。「世界各地域の関係性は基本的に平等で、代表者が各地域を統治することが主に書かれている。第一に代表者の集まりである委員会の権限は最大限のものとして委員会の決意を新たにし、委員会を審議し評価する全国民の個々の意思も尊重するとも書かれたイーストファリア条約は変更なしでいいですか」全員が挙手する。「宗教とは一切関わらないことを宣言し、聖俗を分離し、世俗を強化、保護すると書かれた聖俗分離宣言は変更なしでいいですか」全員が挙手する。「以上で、制度は変更なしでいきたいと思います」「待ってくれ。宇宙船地球号令は変更ないですか」コスモスが言う。「そんなのもありましたね。宇宙好きなコスモスさんが『世界が一つになれば、無敵艦隊となる』と言っていました」アステカが言う。「申し訳ありません。地球を宇宙船に例え全人類が一つにまとまることを決起させるために出された号令“コスモポリタニズム(世界市民主義)”宇宙船地球号令は変更なしでいいですか」全員が挙手する。「改めて以上で、制度の変更なしでいきたいと思います。「君臨すれども統治しない。その精神で私は存在する」法王が言う。「各地域の細かな取り決めも変更なしでいきたいと思います。皆さん、いいですか」全員が挙手する。「続いて、機関についての変更点を考えたいと思います。まず、統一国家直属の機関SONGについてですが、今回の戦争の被害を出した責任を取り、私グレートは、総司令官の職を辞します」


【世界会議②】

 全員がどよめく。「ソレハ本当デスカ!」ンゴマが言う。「次の候補者は誰かいるのですか」ピスタチオが言う。「ご安心ください。候補者はいます」「それは安心した。でも、残念だよ」クロゼアスが言う。「SONGについてあと2つ変更点があります。1つは、私の後ろにいる彼女がリーダーを務めるBATTとSONGは協力を結ぶことです」グレートがモンステラにマイクを渡す。「はじめまして。獣生物保護団体Beast and Animal Treatment Teamの略して通称BATTのリーダーをしているモンステラです。私たちは、“生類憐み”というスローガンを掲げ、傷つき動けなくなっている動物や獣を保護する活動をしています。今までは、獣を抹殺しようとするSONGと敵対関係にありましたが、今後は協力を結ぶということで動物や獣との共存を目指す方向で力を合わせたいと思います」「それはいい。無暗に命を殺すのは気が進まない」ガジュマルが言う。「私は賛成します」サンタマリアが言う。「他の皆さんも賛成でいいですか」全員が挙手する。「有難うございます。これ、BATTのマークのステッカーです。どうぞ」モンステラが全員に配る。「有難う。コウモリがモチーフなんだね」「はい。コウモリは英語でバットですから。夜でも遠い場所でも活動します」「もう1つは、私の後ろにいるボーンさんが研究する夢世界を広めるためにSONGは協力します」モンステラがボーンにマイクを渡す。「夢世界について簡単に説明します。夢世界は現実世界を救うために創られた世界です。難しく言うと、現実を救うことのできる力を持つ者、別名“選ばれし者エレクト”を増やすために創られた世界です。今回の戦争を鎮めたのは、実際に夢世界へ行ったエレクトたちです」「エレクト。凄い人たちです」サンタマリアが言う。「分からない事が多い。夢世界はどうやって行くのですか?」クロゼアスが言う。「奇石の持つエネルギーを利用します。私の研究所にある大量の奇石と接続した機械を通して夢世界へ誰でも行くことができます」「夢世界へ行けば誰でもエレクトになれるのですか」クロゼアスが言う。「いいえ。試練を超える必要があります。欲望や自己の欠点に打ち勝つ試練を乗り越えることでエレクトになることができます」「そもそもエレクトは何ができるのですか」クロゼアスが言う。「エレクトは“リンク”の能力を持ちます。リンクの能力があれば、自然の力ネアを操ったり、他の人の感覚を共有できたりします」「それでは、プライバシーの問題はどうなるのですか」クロゼアスが言う。「それは…いずれ考えていきたいと思いますが、このリンクの能力があれば色々と役に立つこと間違いなしです。これからは“リンク”の時代です」「いや、私はそうは思わない」クロゼアスが言う。「いつもあなたは否定から入るのね」ガジュマルが言う。「そうではない。確固たる意見を持っているだけだ」「そう言えばあの二人は仲が悪かったな」「どうしましょう?」小声でボーンがグレートに言う。「会議において全員の賛成が必要だ。困ったな」「奇石を使えば解決します」ビドーが言う。「どういうことですか」クロゼアスが言う。「奇石がリンクの能力を与えた。反対に、リンクの能力を奪う事も奇石なら出来ます」「なるほど。一理ある。但し、リンクされる人が奇石を持つ必要がある。世界中の人が持つ程の奇石があるのですか」クロゼアスが言う。「ありません。但し、SONGの全隊員が持つ程の奇石があります。SONG隊員がプライバシーの保護についても行っていきます。これで賛成して頂けますか」グレートが言う。「いいだろう」「有難うございます。他の皆さんも賛成でいいですか」全員が挙手する。「他に機関について変更点がある方はいますか」「私が教祖を務めるユートピア教は解散しました。同じくファントム教も解散しました。但し、私は解散した者を集め、新しい宗教を立ち上げました。それは奇石教です。今後は奇石の有り難さを広めていきたいと思っています」ビドーが言う。「わかりました。但し、統一国家は聖俗分離宣言により、一切関係は持ちません」「わかりました」「他に変更点がある方はいますか。いないようなので、これで会議を終わります」


【新事実】

 サトリが目を覚ます。隣を見ると、他の面々がベッドに寝ている。「ちょっとトイレ」サトリはトイレに行く。用を足していると、隣にチグリスが来る。「サトリくん、起きた?」「はい。今起きました」「そう」手を洗うサトリ。隣にチグリスが来る。「こうやって隣で手を洗うと、学校を思い出すよね?」「え?」「そんなに驚かなくても。僕も夢世界へ行ってきたんだよ」「つまり、あの場面を見たんですか?」「あの場面が何のことを言ってるか分からないけど、僕たちの生きる本当の世界を見たことを言ってるなら見たよ」「じゃあ、あの場面は見てないんですね!」「見てないと思うよ」「よかった…」「サトリくん、本当は何歳?」「えっと…17歳です」「じゃあ、高校2年生だね。僕は18歳。一学年上だ。クラスでエレクトを決める所は見たよ」「え…じゃあ、やっぱり見たんですか!」「いや、僕たちクラス違うよね?」「あ…そうか。良かった…」「君、面白いね」チグリスが笑う。「ジュース、飲む?」「え?いいんですか?」「いいよ」チグリスが自動販売機で買った缶ジュースをサトリに渡す。「はい」「有難うございます」「美味しいね」「はい…」「何か悩み事かい?相談に乗るよ」「実は、僕、エレクトになったんです」「良い事じゃないのかい?」「僕はなりたくなかったんです…でも、周りの人が僕の名前を書いて選ばれたんです。いつも目立たない僕を目立たせようとして…」「そう。目立つことが嫌なのかい?」「はい…」「それは辛いね」チグリスが缶ジュースを飲み干し、ゴミ箱に投げる。外れて落ちた缶を風のネアで中に入れる。「こんなことも出来ないなんて不自由な世界だよね。“リンク”が使えれば、サトリくんの気持ちもみんな分かってくれるのに」「リンクって何ですか?」「簡単に言えば、繋げる力だね」「繋げる力…」「そう。ネアは自然の力とリンクすることで使うことが出来る。自然は意思を持たないから比較的リンクしやすい。それに比べて、人や動物のように意思を持つものにはリンクしづらい。リンクと言えば、僕は前にリンクの仲間の一人だったんだよ」「え?」「そう。この世界で言えば前世になるのかな?僕の他に妹のユーフラテスと同級生の3人、あとウォーリー博士、そうだ、君の仲間のロンドとクリスもいた」サトリは耳を疑う。「そう。本当の世界で言えば、僕らの事を“経験者”と言うみたい」サトリはチグリスの横顔をじっと見つめている。「二人とも、ここにいたんですね」「何を話してんだ」ロンドとクリスが現れる。「他愛もない話さ」チグリスが答える。「おい、二人でジュース飲んでるぞ」「いいですね」「分かった。二人にも買ってあげるよ」ロンドとクリスが缶ジュースを貰って飲む。「あ、ライラ、いたよ!」「ここにいたのね。あれ?みんなでジュース飲んでるの?いいなあ」「こっそりといいわね」「はいはい。3人追加」面々がジュースを満喫した後、グレートらが帰って来る。「みんな、ジュース飲んでるんだね。いいね」「はい。チグリスさんが奢ってくれたんですよ」「この流れは、まさか」「いいよ。僕らは自分で買う」グレートらがジュースを飲みながら話す。「たまに飲むと美味しいなあ」「本当ね。嬉しい時に飲むとより美味しく感じるわ」「本当だねえ」グレートは飲み終えた缶をゴミ箱に捨てた後、言う。「カリュードのみんなに頼みたいことがある。総司令官と近衛衆をみんなにやってもらいたい」驚く面々。「「ええ!」」「それはどういうことですか?」「つまり、私と近衛衆は辞職するということだ」「どうしてですか?」「今回の戦争の被害を出したのは、私の責任でもあった。だから、辞職する」」「そんな…」「気を落とさないでほしい。寧ろ、喜んでほしい。君たちだから頼むんだ。君たちは僕のお気に入りだから」「そうか。じゃあ、総司令官は俺がやるしかないな」「何でですか?」「何でだって?俺はリーダーだ。リーダーがやるのが普通だ」ロンド以外の面々が顔を合わせる。「何だよ」「ロンドが向いてるとは思えない」「思えない」「思えないわ」「クリスが良いと思う」「思う」「思うわ」「何だと!クリス、総司令官の座をかけて勝負だ!」「僕は、サトリが良いと思います」驚く面々。「「ええ!」」「何で、僕…」「サトリは優しいです。優しい人は他の人の立場に立って考えられます」「優しいだけじゃだめだ!俺のように強くないとだめだ!わかった!総司令官の座をかけて3人で勝負だ!」「いいですよ」「勝った人が総司令官になるの?」「そうだ。俺は負けねえ!」「勝負に負けるつもりはありません」「勝負、嫌だな…」「君たちは面白いな」グレートらが笑う。


【男の勝負】

 面々は、本部の集合場所に移動する。ロンドとクリスとサトリが向かい合う。3人の頭に風船が付いている。「この風船は必要か?」「必要です。これを最後まで割らずにいた人が総司令官になります」「わかった。これは男の勝負だ。何があっても文句はなしだ」「いいですよ」「サトリもいいな?」「うん…」「じゃあ、勝負開始だ!」ロンドが火を纏った拳でクリスの風船を狙う。「まずはお前からだ!」「負けませんよ!」クリスが水を纏った剣でロンドの攻撃を弾く。サトリは隅の方へ移動する。「サトリ、何してるの?逃げてたら負けちゃうわよ」「逃げも戦術の一つよ」「頑張って~」ロンドがサトリを見て言う。「逃げる気か!」「サトリは僕が守ります」ロンドとクリスがぶつかり合う。サトリは考える。(二人はこの世界に来たことがある。僕は来たことがない。二人は強い。僕は強くない。二人は僕の名前を書いた。僕はエレクトに選ばれた。どうして?二人のどっちかがエレクトに選ばれれば良かった!)突然、サトリの周囲から激しい風が巻き起こる。その風は、ロンドとクリスの風船を割る。「割れた!」「サトリの勝ちです」「すごいわ」「サトリが勝った~」「やるわね」「あれ…勝っちゃった」「サトリも総司令官になりたかったなら言えよ!ずるいぞ!」「いや、なんというか、成り行きで…」拍手する者ら。「皆さん…」「おめでとう。サトリ君。君に総司令官を任せる」「そんな…まだ心の準備が…」「大丈夫。君に任せるのは1か月後だ。引き継ぎが1週間かかるとして、それまでは時間がある。自由に過ごしてほしい」「自由時間か。俺はリンク島に戻ってみるか」「僕もミトコンドリアに戻ります」「私も帰ろうかな」「久しぶりだな~」「故郷でゆっくりしたいわ」「僕はどうしよう」「みんな、ちょっとだけ待ってほしい」「ちょっとだけってどれくらいだ?」「それはウォーリー博士次第だ」「わし?」ウォーリーはボーンに協力を申し出た。「その前にちょっとやる事がある。協力してくれ」「分かりました」翌日。宿舎兼倉庫で待つ面々が呼ばれる。「みんな、待たせたね」「まだ一日しか経っていません」「老いぼれにはちと過酷じゃったわい」「ウォーリー博士、本当にご苦労様です。お陰で最高の移動手段が出来上がりました。これを君らに渡す」グレートが面々に見せる。「靴ですか?」「ただの靴じゃない。靴底にクモリテの浮遊する奇石が取り付けてある。名前は“ソングライダー”。これを履けば、空の上を走ることも可能だ」「すごいな!」「ありがとうございます」面々がソングライダーを履く。「すごいわ!」「浮いてる!」「便利ね」「まるでラウスさんになった気分だ…」「これで自由時間を有意義に過ごしてほしい。ではまた会おう」グレートは本部に戻った。怪盗ミラーが待っていた。「約束通り奇石をお持ちしました」「無罪だったようだね」「お陰様で。では、マアッサラーマ」怪盗ミラーは飛んで行く。


【休暇①】

 面々はそれぞれ別々の場所に行き、休暇を過ごすことにする。ライラは、支援室に向かう。支援隊員が仕事をしている。その中で、サキが一人で人形遊びをしている。ライラがサキに声をかける。「寂しくない?」「…え?」「もし寂しかったら、私、良い場所知ってる。来て」ライラはサキに手を差し出す。サキは手を握る。二人にボニーが気づく。「あら、二人でお出かけ?」「ちょっとそこまで」「行ってらっしゃい」「行ってきます」手を振るボニー。「あの…」「どうしたの?」「プーちゃんも一緒に連れていきたい」「あの犬ね。いいよ」「良かった。おいで、プーちゃん」「ワン!」サキがプーちゃんを抱きかかえる。「かわいいね」「プーちゃんはかわいいの」「じゃ、行こっか」外に出るライラとサキ。ライラはソングライダーに履き替える。「サキちゃん、しっかり私の手を握っててね」「はい」ライラが走り出すと、空の上を進む。「ライラさん、すごい」「すごいでしょ?でも、すごいのは私じゃなくて靴だけどね」しばらく走り続け、森の中の建物に着く。「ここは…?」「孤児院よ。家族と離れ離れになった子が集まる場所。サキちゃんと同じ境遇の子だから、友達になれると思うの」孤児院の中に入るサキ。孤児院にいる全員がサキを見る。一人の女子がサキに話しかける。サキが答える。女子が他の子にサキを紹介する。サキが輪の中に入る。サキの笑顔を見てライラは安心する。「よかった」女子が来る。「有難う、ライラ」「お礼を言うのはこっちよ、デスティニー」「あの子はいい子だからすぐに仲良くなるわ」「いつも有難う」ライラは1週間孤児院で過ごした。「そろそろ私行くわ」「もう行くの?」「大丈夫、また会えるから。久しぶりにここで過ごして楽しかった」サキがライラに言う。「ありがとう、ライラさん」「いえいえ。ここの子と仲良くね」ライラは本部へ戻る。(怪盗ミラーを追ってここを出て以来ゆっくり過ごした。それにしても、ララとレイラの二人は声が出ないままね)クリスは、ミトコンドリアに向かう。中心建造物の前に民衆が押し寄せている。(あれは、原住民のローグ族。見たところ、反乱でしょうか)中心建造物最上階のバルコニーに降り立つクリス。ノックすると、扉が開く。「クリス。見ないうちに大きくなったわね」「母さん。無事で良かったです」「サンタマリアさんが助けてくれたのよ」「父さん。救出できたんですね。その父さんはどこですか?」「兄さんは、反乱を鎮めに外に出ているよ」「ヘンリー叔父さん。反乱ってどういうことですか?」「敵組織が起こした戦争の影響だよ。元々の住民だった彼らは、土地を取り戻すために後から来た僕らを追い出そうとしている」「戦争の影響…父さん…」クリスがローグ族に囲まれるサンタマリアを見る。「「反対!反対!」」「みなさんは統一に反対のようですが、一体何が不満なのでしょうか」「統一したら、もうこの国は取り返せない!」「統一国家が俺たちに何をしてくれた!」「何もしていない!国は自分たちで守る!」「ここにある石。一体何の石だと思いますか」「そんなの知るか!」「先日の災害を止めた力…それを発揮したのは、この石です!」「え?」「そんな石ころが?」「そうです。これこそ統一国家ユニオンが統一の証として各都市に分配した代物です。死者が1人もいなかったのはこの石のお陰なのです。これでもまだ統一に反対する者はいますか?みなさんは過去の禍根を忘れられないだけなのではないですか?今はそんな時ではありません。各地で起きる災害に立ち向かうため皆さんの協力が必要なのです。みなさんは強いです。しかし、今その強さは反発し合い打ち消し合っています。その強さを同じ方向に使うことでわたしたちはより強くなることができるのです」「…仕方ねえ。あんたについていってやるよ!」「感謝いたします。みなさんの期待に応えていきたいと思います。大変なのはこれからです。手を貸していただけますか?」「当たり前だ!」こうして反乱は鎮まり、ローグ族の代表とサンタマリアは握手する。ローグ族はサーガ族に協力することを誓う。サンタマリアが最上階に来る。「どうにか鎮まったようだ」「やっぱり父さんはすごいです」「クリス、来ていたのか」「はい。休暇をもらったので戻りました」「ゆっくりするといい」クリスは1週間ミトコンドリアで過ごした。「そろそろ戻ります」「もう行くのかい?」「はい」「元気でね」「母さんもお元気で」クリスは本部に戻る。


【休暇②】

 レイピアは、故郷の村に向かう。「久しぶり、ローザンヌ」「レイピア、戻って来たの?」「休暇を貰ったのよ」「そうなのね。おかえり」「ただいま」「久しぶりに、あれやる?」「いいわね」二人は、海の見える丘に来る。丘には、神バステトの石像がある神殿がある。村では、年に一度祭が開かれる。祭りでは、腕に自信のある者が神殿の前で戦い、勝ち抜いた者が一年間バステトの力を授かる儀式がある。バステトの力を授かるため、村の戦士は常に腕を磨く。「レイピア、行くわよ」「来い、ローザンヌ」二本の槍が交差する。レイピアは村で1週間過ごした。「そろそろ帰るわ」「また帰ってきなよ」「わかった」レイピアは本部に戻る。ロンドは、リンク島に向かう。誰もいない道場に入るロンド。『壁を越えて強くなれ』と書かれた道場訓を見て、ロンドは父を思い出す。回想。ロンドが5歳の頃、周囲にいたのは父の道場に通う者たちばかりだった。年下で弱いロンドはいじめを受けていた。ある日殴られた後、倉庫のような場所に閉じ込められた。扉は頑丈で壊したくても壊せるものでなくずっと泣いていた。しかし、しばらくして自分とは違う泣き声が聞こえた。扉が開くと、いじめっ子の少年と父がいた。ロンドが倉庫から出た後、父は「彼らは弱い。それに比べてお前は強い。人を傷つける力は何の意味ももたない。そんな奴らを相手にすることはない。だからお前は偉い。だが、お前にがっかりもした。それは、倉庫からでようとしなかったことだ」「出ようとはしたよ。でも硬すぎて…」「そうじゃない。どんなに硬くてもそれを壊してでも脱出してほしかったんだ。俺の息子としては。それに強くなればお前でもあの倉庫を壊せる。見てろ、俺ぐらいになれば、こうやって…」父は家の木を倒した。その衝撃で銅像も倒れた。翌日、父は母にこっ酷く怒られた。頬に手の跡が残る父は「強くなればどんなものも壊せる。しかし、その力を無暗に使っちゃダメだ。自分を邪魔する者や障害が現れた時だけに使え」と言った。父の言葉を胸に、ロンドは試しに岩を殴るが痛みだけが残った。ロンドが更なる修行を決意しその場を後にする。少女がロンドを追いかけて通った時、岩にひびが入り割れた。回想終わり。ロンドが道場を後にする。丘で寝転んでいると、後ろから声をかけられる。「ロンド!ここにいたアル!」「ヨーか」「探したアルヨ。レインボーたちと一緒に本部に戻って、ロンドの場所を聞いたら、休暇でいないと言われたアル。ロンドだったら絶対ここだと思ったら本当にいたアル」「そうか。お前を待ってた」立ち上がり、ヨーの肩を掴むロンド。「お前に伝えることがある」「え?何アルカ?」動揺するヨー。「もう離れないでほしい。お前には」「えー!そんな急アル」「お前にはこの道場から離れないでほしい。この道場は後世に残さなければならない場所だ。頼めるのはお前だけだ」「そういうことアルか…任せてほしいアル」「じゃあ、任せたぞ」去ろうとするロンド。「ロンド!私も伝えることがあるアル」「何だ?」「私と、け…決闘をしてアル!」(間違えたアル!)「決闘か。いいぜ」道場で二人は向かい合う。「ヨー。俺にはもう好きな奴がいるんだ」「やっぱりそうアルか」「ああ、悪いな」「分かったアル」(間違えて良かったアル。ロンドへの思いをすべてぶつけるアル!)ヨーが渾身の拳を放つ。ロンドは、ヨーの拳を掴み、自分の拳をヨーの顔面の寸前で止める。「やっぱりロンドは強いアル…」「ヨーも強くなった。道場は任せたぞ」「しっかり守るアル!任せてアル!」ロンドは本部に戻る。


【休暇③】

 ナタリーはアローンシティに向かう。城の前の門に付いたベルを鳴らす。騎士がナタリーに気づく。七人の騎士が一辺に現れる。「「お帰りなさいませ。姫様」」「ただいま」「一段と逞しくなられた様子です」「逞しいというのは姫様に失礼じゃないか」「褒め言葉だ。だが、確かに王子と姫様は違うか」「一段と美しくなられた!これが正しい!」「それもその通りだ。しかし、土守として逞しさは必要だ」「ナタリー様の父であるグランド様もそう言っておられた」「では、纏めると、姫様は一段と逞しく美しくなられた、が正しい!」「「姫様は一段と逞しく美しくなられました!」」「あれ?姫様は?」ナタリーは、自室に戻り、眠っていた。「姫様。お疲れなのですね」「ゆっくりお眠りください」ナタリーは1週間城で過ごした。「そろそろ帰る」「「もうお帰りに!」」「うん!みんなが待ってる」「左様ですか。お気をつけて」「爺やたちも体に気をつけてね」「「お元気で!!」」ナタリーは本部に戻る。サトリは、カタナシティに向かう。サトリの家に着く。サトリは、庭にある両親の墓の前で手を合わせる。(街は地震の被害のままか…そうだ、あそこに行こう。)サトリは、天成寺に来る。ウメが箒で掃き掃除をしている。サトリがウメの前に立つ。「あ!お客様ですか?…お客様、私と会った事ありますよね?」「はい。前にここの宿坊に泊まった者です」「やっぱりそうですよね!袖振り合うも他生の縁ですから、一期一会の出会いはすべて記憶するよう私は努力してるんです!」「すごいですね」「いやあ、お客様も喜ばせ上手ですね。私はウナギ登りの気持ちです」「それを言うなら、天にも昇る気持ち、じゃ…」「あ、そうですね。お客様は頭がいいです。さあ、中へどうぞ」(やっぱり、ウメさんは面白い人だ)布団を敷くウメ。枕に躓きコケる。「大丈夫ですか?」「やり遂げますよ、私の仕事ですから!」何度もこけながら無事に敷き終える。「やりました!」拍手するサトリ。ウメの髪と着物は乱れている。「ここでおくつろぎください。間も無くご飯をお持ちします」「楽しみにしています」(ウメさんは料理が得意だ)料理場。悲惨な僧たちの声はない。静かに刻むウメ。華麗な包丁さばきでウナギを切る。料理を運ぶウメ。「お待たせしました。召し上がれ」「これは?」「ウナギの煮つけです」「おいしい!ウメさん、料理上手ですね」「お客様は褒め上手です。私、ウナギ登りです。ウナギだけに」笑うサトリ。その夜は、1か月に一度舞を行う日であり、サトリは舞を見る。化粧を施したマツとウメが庭に作られた舞台に現れる。演奏が流れ、舞を踊るマツとウメ。「綺麗…」サトリは1週間過ごした。そこでサトリは重大な事に気づく。(はっ。お金がない…)マツとウメが笑顔で言う。「いいですよ。あなたは前に天成寺を守ってくれた隊員の方です」「覚えていてくれたんですか?」「当然です。一期一会の出会いを大事にしていますから。そうよね、ウメ」「はい!お姉様!」「また仲間の方といらしてください」「有難うございました」サトリは本部に戻る。


【休暇④】

 SONG本部倉庫兼宿舎。その一室に面々はいた。「暇だな」「暇です」面々はそれぞれ1週間を過ごした後、1週間こうしてだらだらと過ごしていた。「休暇は嬉しい。でも、やる事がないと退屈ね」「でも、グレートさんは休めってうるさい」面々は一度退屈のあまり、総司令官の元を訪れ、仕事を要求した。しかし、グレートは、面々を思い、断った。「私は、もう一度行って来る」「レイピア、何度行っても同じことだよ。諦めて休んだ方が良い…」サトリは、退屈に慣れていた。「すごい!サトリをすごいと思ってしまった」「達人の域です」「一日中同じ姿勢でいるわ」「心の底から休みを満喫しているよ」「私たちにはできないわ」サトリを除く面々は、外に出る。(何だ…また自主練に行ったのか。すごいな…みんなの事を尊敬するよ…むにゃむにゃ)「サトリ、サトリ」「誰…?」サトリは前にいる人物を見て驚く。「シュン!どうして、ここに?」「ここにいると知ってたからね。今は休暇なんでしょ?」「どうして、それを?」「僕は情報集めが得意だ。ここに来たのは、君たちに手伝ってほしいからだ」「手伝うって?」「もちろん、怪盗の仕事だよ」面々が集まる。「まさか、シュンから怪盗の手伝いを頼まれるとはな」「それで、具体的にどんな仕事ですか?」「僕の仕事は、名品や珍品の宝を集めることだ。いずれ、集めた宝は美術館に献上する予定だ。多くの宝は、富豪の家にある。それを気づかれないように盗み出すことがこの仕事の難しいところだ。君たちが手伝ってくれたら上手くいくと思う」「なんて光栄なことなの」「ライラ、目が輝いてる」「次の狙いは、マレードネシアの富豪ジョーニアス邸だ。今日の夜、行く予定だ」「早いわね」「行く?」「当然だ」「ちょうど退屈していましたし、シュンの役に立てるならやりましょう」「じゃあ、行くよ」怪盗ミラーはグライダーで空を飛ぶ。「待って…」面々はソングライダーで空を飛ぶ。ジョーニアス邸。「怪盗ミラーから予告状が届いたのです。どうか名宝“100万カラットの腕時計”を守ってください」「ご安心ください。怪盗ミラーの宿敵である私、怪盗キラーにお任せください。今日こそは捕まえてみせるぞ!」ジョーニアス邸の屋上から、奇石を通して様子を見る怪盗ミラーと面々。「誰かいるぞ」「かなりの数の警備です」「どうするの…?」「僕には秘策がある」「秘策ってなに?」「変装だよ。警備の者になりすます」「やっぱり!怪盗ミラーの十八番だもの」「ライラは本当に怪盗ミラーのファンね」「そうよ。こうして怪盗ミラーの手伝いが出来て夢が叶ったわ!」「この服に着替えて」ジョーニアス邸。「もうすぐ予告時間か。始める」怪盗キラーは警備の者の頬をつねる。「いたた!」「すまない!怪盗の変装を見破るためだ!我慢しろ!」怪盗キラーは凄まじい勢いで警備の者たちの頬をつねっていく。(あの人の勢いすごい…こっちに来る…!)サトリの頬をつねる怪盗キラー。サトリの変装が解かれる。「お前誰だ!」「うわあ!ごめんなさい!」「怪盗ミラーじゃない。お前誰だ?」その頃、ジョーニアスに近づく警備の者。「ジョーニアスさん。ここは危険です。こちらへ」「はい」狭い部屋に入ると、ジョーニアスの口を塞ぐ。「う!お前は…」「お察しの通り、怪盗ミラーです。宝は国の美術館で飾られます。また、いつでも見られます」眠るジョーニアス。腕時計を手に入れた怪盗ミラーは部屋を出る。「行くよ。みんな」廊下の警備の者が頷く。「シュン!早く!」「誰だ!お前!」「サトリが!」怪盗ミラーは照明弾を投げる。辺りが光りに包まれる。「何だ!見えない!」サトリの手を掴み、外へ出る怪盗ミラー。照明弾が切れる。「怪盗ミラー!待て!」「ではまた。アディオス」「くそ!また逃げられたか!やっぱり、ワカトラさんがいないとダメなのか!いや、必ず私が捕まえてみせる!怪盗キラーとして!」空を飛ぶ怪盗ミラーと面々。「ありがとう。みんなのお陰で、宝を手に入れることが出来た」その後、それぞれの都市で、さまざまな宝を狙い、怪盗ミラーと面々は活動した。「はあ…また見つかっちゃった」「サトリは怪盗には向いてないわね」「僕は怪盗になるつもりはない…シュンは見つかったことないの?」「あるよ」驚く面々。「「え!」」「一度だけワカトラっていう警官に。その時に、決心した。怪盗の道を究めることを」回想。ワカトラ刑事と怪盗ミラーが向かい合う。「どうして?完璧だったのに」「残念だったな。俺は直感が鋭いんだ。1つ聞きたい。何で、宝を盗む?」「宝はより多くの人の目に見てもらうべきだ」「それはいい。頑張れ」怪盗キラーが駆け付ける。「ワカトラさん!奴を見つけたんですか?」「はい。でも、逃げました」「え!?」「直感的に俺は手を引きます。後は任せました」回想終わり。ヘンジイに宝を預け、怪盗ミラーと面々は次の宝を狙いに空を飛ぶ。


【休暇⑤】

 「シュン、次の宝は?」「次は、リオデジャトーンの富豪スコット邸にある“竜のネックレス”を狙う」「ネックレス…」「サトリ、どうしたの?」「ネックレスといえば、サトリのお母さんの形見でしたね」「そう。妹に渡すように預かってる…」「いつか渡せるといいですね」「うん」リオデジャトーン上空。「うわあ。綺麗な湖」「真っ白で雪みたいね」「真っ白な湖…」「向こうの山の頂上に何かあるぞ」「あれは遺跡ね」「山頂の遺跡…」怪盗ミラーと面々は、スコット邸の屋上に降り立つ。「何だ!?騒がしいぞ」「カーニバルかしら」「派手~」「頭の飾り、すごい」「過激な衣装で踊る人々…ここは、ユーフラテスさんの予言の場所だ!」「サトリ、ここに妹さんがいるんじゃないですか?」「そうかもしれない」「スコット邸はあの女性たちの恰好をして忍び込む」「「ええ!」」「嫌だな…」「これは俺も嫌だぞ」「僕も気が進みません」「嫌だったら、僕一人で行って来る。折角全員分用意したけど」「分かった。やってやる!俺はどんな壁も乗り越える男だ」「ロンドがやるなら僕もやります」「私たちもやらないわけにはいかないわ」「はあ…」面々は過激な衣装に着替える。「うわあ…」「ライラ、いい感じ!」「ナタリーもかわいい。レイピアも美人」「お世辞はいいわよ。それにしてもロンド、ひどいわね」「俺も好きでやってるんじゃねえ!シュンの為だ」「シュンは、何でも変装できるんですね」「まあね。女装に関しては、ダラスとダリアという二人を参考にした」「「ええ!」」怪盗キラーは、スコット邸に到着する。「今日こそは捕まえてみせる」スコット邸に過激な衣装の者たちがなだれ込む。「こら!待て!頬チェックが済んでない!」1人の頬を捕らえる怪盗キラー。「捕まえたぞ!」「うわあ!」「またお前か!こっちへ来い!」サトリは捕まり、リオデジャトーンの宮殿に連れていかれる。宮殿の臣下が問い詰める。「罪人、名を名乗れ!」「…マロー、いやこれは前の名前、じゃなくて後の方の名前だった。僕の名前は、シンメン・サトリです」それを聞いて、姫が反応する。「マロー?サトリ?」「む?姫様、どうかなさいました?」「本当にあなたはシンメン・サトリ?」「はい、そうですが…」「やっと来てくれた。お兄ちゃん」「「えっ!」」「失礼ですが、あなたの名前は?」「ヒナギク。シンメン・ヒナギク。因みに、後の方の名前は、フォンセ・ノワール」姫はサトリの妹だった。「どうしてここに?…それはこっちのセリフだ!」「どうしてここに?…それはこっちのセリフよ!」「シンクロしている…本当に兄妹のようだ」「僕はSONG隊員になった」「SONG隊員ってあの?」「そうだよ。世界中を旅して廻ったんだ。いろいろあった」「私もいろいろとあったよ。お兄ちゃんが起こした事故を聞いて驚いたよ」「あの事故は僕も驚いた。あんなことになるなんて…」「違うよ。お兄ちゃんが“風使い”と呼ばれて有名になったからだよ。私まで有名人の家族として注目されちゃった。困っちゃったんだからね」「それはごめん…」「私も注目した一人です」眼鏡をかけた男が言う。「あなたは?」「現在この都市の代表者代理にして、姫様の執事でございます。その頃から、この都市の代表者であるお方が病に倒れ、現在も闘っています。私は跡継ぎを探していた時、お兄様の事故を知りました。そこで、姫様の事を知り、わが都市の跡継ぎになって頂きたい!と思い至りました。幸いなことに、姫様が快く引き受けて下さりました!大変嬉しかった私は、ご家族の方ともどもわが都市にご招待しました。わが都市に伝わる最大級のおもてなしをさせて頂き、ご家族の方に娘を任せると言ってくださりました。そして、現在に至るわけでございます」「すごくいい人よ。ここもすごくいい所で、毎日楽しい」「そうなんだ。執事さん。妹を大切にして頂きありがとうございます」「こちらこそ、ありがとうございます」臣下が面々を連れて来る。「この者たちは自ら捕らえてほしいという怪しい者です!」「サトリ!何やってんだ!」「ごめん…」「あれ?レイピアじゃない?」「もしかして、姫様!?お久しぶりです」「レイピア、僕の妹と知り合い?どういうこと?」「私はSONG隊員になる前、故郷の村の者が山賊にさらわれ、救出に向かった。その時に姫様と出会い、一時的に護衛として仕えた」「そんな事があったんだ…」「お久しぶりです。あの時は姫様を助けて頂き本当に有難うございました。何とお礼を申し上げたらいいのやら」「もう済んだ事です。頭を上げてください」「それにしても、お兄ちゃんもレイピアも面白い。どうしてそんな格好なの?」「これにはちょっとしたわけが…」「ふーん。そういうわけだから、今回は水に流してあげて」「畏まりました。姫様の仰せのままに」「お兄ちゃんたちにおもてなししたいんだけどいい?」「畏まりました。わが都市に伝わる最大級のおもてなしをさせて頂きましょう」その後、面々は最大級のおもてなしを受ける。「まさか、姫様がサトリの妹だったなんて驚きよ」「ご縁だな」「ご縁と言えば、ロンドの弟は山賊の仲間にいたわよ」「マジか。あいつ自由だから。でも、驚きだな」「おいしい~」「本当ね~」「喜んでもらってよかった」「ヒナギクちゃんの口にホクロがある」「本当だ。サトリと同じところにある。二人は兄妹だね」「サトリ!照れるなよ!」「いやあ」笑う一同。「サトリ。妹さんに渡すものがあったのではないですか?」「そうだ。これ、母さんから」「わあ、きれいなネックレス」ネックレスをつけるヒナギク。「きれい」「似合ってるよ」「最近、母さんから返事が来ないんだけど、お兄ちゃん何か知ってる?」引きつるサトリ。「…実は、母さんは死んだ」「え?」「僕が母さんに再会した時、地震が起きて、お腹を怪我したんだ。SONG隊員の人が助けてくれたりしたけど、もうダメだった。だから、それは母さんの形見だよ」「そうなんだ。ありがとう。大切にするね」「うん」面々は、盛大に見送られながら、宮殿を後にした。「すごい派手な見送りだ!」「そう言えば、シュンはどうしたの?」「首のネックレスを手に入れた後、私たちがサトリを助けに行くから別れると伝えたら、先に飛んで行ったわ」「そう。シュンも忙しいから」「サトリ。ちゃんと渡せて良かったですね」「うん…」「何か気がかりですか?」「妹と別れて寂しいのか?」「そうじゃないよ」「じゃあ、何だよ」「実は、僕の妹はもう死んだんだ」「「え?」」「どういうことですか?」「僕たちの本当の世界で妹は病気になって死んだ」「じゃあ、あのヒナギクちゃんは幻みたいなもの?」「そうだと思う」面々は不思議な思いで本部へ戻る。


【明るい未来】

 面々が休暇の間、色々な動きがあった。英雄たちは臨時近衛衆として働いていた。BATTは自然災害対策室の機関としてSONGと連携し、獣の保護活動をしていた。「戦闘してもコンバットに陥るだけ。それなら、獰猛な猛獣の攻撃は軽やかに躱せばいい。上手く躱せば、攻撃にもなる。“アクロバット”」チグリスを加えたタブララサはモスクルドノワ支部に異動になった。「サトリくんにも妹がいたんだ」「はい…」「浮かない顔だね」「実は僕の妹死んでて、それを思い出したんです」「そうだったのか。実をいうと、僕の妹も交通事故で死んだんだ」「え?本当ですか?」「うん。目の前で轢かれたんだ。猛スピードで走る車に。あれは、事故というより、故意だったような気がする。そんな事より、この世界でまた会えて良かったね」「はい」「モゲレオ。アリスさんの事もよろしく頼む」「しかと成し遂げます」アリスがサトリをじっと見る。サトリは視線に気づく。「アリスさん、行きましょう」「ええ」(何だろう…)ウォーリーの協力を得て、夢世界の開発も完成していた。『パンベンシティのシンボルタワー“ジャスパー”。この中の巨大な奇石を利用することにより完成した、夢世界と繋げる新機関“ノヴム・オルガヌム”。ここは、オープンアクセス、即ち、出入り自由な場所であり、誰でも好きな時に夢世界を訪れることが出来る。さあ、リンク能力を得る旅に出かけよう』と書かれた記事があちこちに張り出されていた。「私も行ってきた。君たちの凄さを改めて感じたよ」「それでエレクトにはなれましたか?」「エレクトになったよ」「それじゃ、世界の理を見ましたか?」「見たよ。サトリ君は、この世界だけでなく本当の世界でもエレクトだった」「やっぱりグレートさんが僕たちの学級委員ですか?」「ああ。私とモンステラは学級委員だ。ちなみに父モゲレオは校長先生だ」「ええ!」ボーンが訪れる人々に説明している。「凄い勢いで説明してますね…」「彼にとって新機関が完成した事は念願の夢が叶ったといえるのだろう。張り切って当然だ。因みに、彼もエレクトになったらしい」「本当ですか!」「本当だ。話はこれくらいにして、早速だけど、引継を始めるとしようか」サトリを除く面々は近衛衆に付き従う。「お前さんたち5人が私たちの跡を継ぐ者共か」ナイルが言う。「そうだ」「5人か」「何か問題でも?」「本来近衛衆は7人だ。あと二人足りん」そこにバラライカが現れる。一緒にパキラとジョーがいる。「お前ら!二人とも近衛衆になってくれ!」「私?いいわよ」「良いぜ。暇だからな」「助かるぜ。7人揃ったぞ」「わかった。それでお前さんたちは何の用だ?」「総司令官様に災害を鎮めた報告をしに参りました」「そうか。総司令官様なら向こうにいる」バラライカが向こうへ行く。「頑張ってますね」「そうみたい。何か安心したわ」サトリがグレートに付き従う。「わかった。有難う」「みんな。アーヴィングは残念だったけど、お互い頑張ろう」「「頑張ろう」」バラライカが去る。「皆、頑張っている。しかし、まだまだ頑張らなければならない」「明日は明るい日と書きます。きっといつか明るい未来になりますよ」「サトリ君、良い事言うね。明るい未来のために頑張ろう」


【本当の世界】

 「引継も残すところわずかになった。それにしても、みんないい働きだ」「当たり前だ!俺ら優秀なんだ」「流石だ。やっぱり君らは私のお気に入りだ。少し休憩にしよう」面々らが集合場所の広場で休む。「そうか。もう明日からお前さんが総司令官となるのか。よし!元教官の私が直々にお前さんの腕試しをしてやろう!」「ええ!」ナイルとサトリは木刀を持って向かい合う。「来い!今までの成果を見せてみろ!」サトリは面々らを見る。(みんな見てるし、やるしかないか…)サトリは前を見る。「ええい!」「甘い!」「うわあ!」ナイルとサトリの稽古は休憩いっぱい続いた。「まだまだだな」「はあ…」「だが、最初に見た時に比べて勢いは良くなった」「本当ですか?」「ああ。他の仲間に助けてもらいながら、その調子で頑張れ」「ナイルは容赦ないな」「これでも手加減しているつもりです。私も警察官の端くれですから」「「警察官?」」「みんなに言ってなかったね。近衛衆の3人と臨時近衛衆の3人もエレクトになった。それで、本当の世界で彼らは警察官だと分かった」「「ええ!」」「私たちだけでなく英雄のお二方も警察官だったとは驚きましたぞ」「我らも驚きました!一番の驚きはオックウの事だったが」「本当に。まさかオックウはアルメオの命の恩人だったとは」「感謝してほしいっすよ。猛スピードで迫る車から体当たりで命を救ったんすから。あれはまさに命がけでしたね」「オックウ、本当に感謝している!」「はいはい…もういいっすから」サトリが疑問に感じる。(あれ?確かチグリスさんの妹も猛スピードの車に轢かれたって言ってた…)「あれは私でも怖かったな!」「暴走運転の車は何人かを実際に轢いた。指名手配されたが、捕まっていない」「まだ町の中にいるんすかね」「さあな。戻ったら必ず見つけて借りを返すさ!」その頃、猛スピードの車がバイクに乗るワカトラ刑事を狙っていた。「待て、待て。立場が逆転してるぞ」ハンドルを切り、暴走運転の車に向かい合う。「これでも食らえ!」ワカトラ刑事は火のネアを発動。暴走運転の車が炎上する。「熱いイ!」中から、焼け焦げた男が現れる。「この切り裂きジャックならぬ切り裂きニャックを怒らせたこと後悔するがいイ!」男はトラの獣化をし、猛スピードで迫る。ワカトラ刑事が警棒を構える。その時、男が目の前で消える。「どこに行った?」森の中。「我の通り道にいたのが悪い」「助けてくれエエ!」ワカトラ刑事が見つけた時、男は死んでいた。「何があった?よく見えなかったが、何かが通り過ぎて、この男が轢かれた?」


【十勇士】

 面々らが総司令室で引継作業をしている。「はあ…」「グレートさんがため息とは珍しいですね」「あと少しでこの場所とお別れか、と思ってね」「もう少しだ!お前さんたち頑張れ!」「任せろ!」そこに、傷だらけの隊員が現れる。隊服が血で汚れている。「…総司令官様…ご報告があります。ついにあの獣と対峙しました。その結果、生存したのは私のみとなりました」「そんなまさか!」「おい、ひどい怪我だぞ。誰だ?」「彼は、SONG最強の十人と言われる十勇士が集まる部隊“ララバイ”の隊長エンリケ・ラナケインだ」「ララバイ…知らねえな」「初耳ですね」「すまない。引継作業が一つ残っていた。ララバイについての説明だ。ララバイは、どの大隊にも属さない特殊編成部隊だ」「タブラ・ラサと同じ編隊か…」「その証に、隊服は純白の生地に藍のラインの入ったもの、武器は十字の剣と紋章入りの盾を身に着ける。彼らの任務は、一つだけ。それは、最強の獣の討伐だ。十勇士であれば、倒せると思っていたが、甘かったようだ」「…あの獣は、初めて確認された時、一体のみでした。しかし、私たちが対峙した時、あの獣は分散し、複数体になり襲ってきました」回想。「隊長、貴方だけでもお逃げください!」「だが…!」「ご安心を。隊長なしでも、討伐してみせます」「ララバイの名に懸けて全力で倒します!」「我らはこの時の為に鍛錬を積んできた」「所詮獣だろー」「一刻を争います!お急ぎください!」その時、ララバイの隊員の半数が一瞬でやられた。「隊長…!逃げて…!」「くっ…!」エンリケは悔しさを堪え、その場を後にした。回想終わり。「…地獄を見ました。あの獣は、生きる災害です。もっと対策する必要があります」「わかった。ありがとう。エンリケ。君は支援室で処置を受けてくれ」「怪我はしていません」「それでも休んだ方が良い」「私が連れて行きます」ナイルがエンリケを連れて行く。「みんなに見てもらいたいものがある」グレートが面々らを連れて行く。資料室。「今から映像を見てもらう。それは、獣の初確認の様子が収められている。初確認した部隊の者が報告をしている」


【始まりの獣】

 私たちの部隊は、当時、住民から森で普通の動物とは異なる生き物を見たという知らせを受けた。それは夜のことだったらしく、調査も夜に行うことになった。しかし、普通と異なるとはいっても当時は前例がないことだったため、それほど警戒することもなく、少数の編成で向かった。森の中は悪路で、視界も悪いため、それだけで危険を伴う。しかも、日中の仕事の疲れもあり眠気との戦いでもある。そんな中、たわいもない会話から隊員どうしで口げんかを始めてしまった。それがいけなかった。口げんかをなだめていた自分は前を見たら、そこには当時は考えられない程に大きな影が見えた。一人の隊員が「オーマイガー!」といった。そのとき、ハンドルを握っていた隊員も前をよく見ていなかったから、慌ててハンドルを切ったが間に合わず、その影に激突した。その後、鼓膜が破れるかと思うほどの大きな雄叫びが聞こえたかと思うと、何が起きたかわからなかった。次に目を開けたら、車が横倒しになって、自分以外の隊員は血まみれだった。一瞬で恐怖に襲われた。それでもこのままじっとはしていられなかったから、外に出てみたら、まだその影はあった。あれが知らせを受けた生き物の正体だと確信した。どうやら自分たちは弾き飛ばされたようで、車はへこんでいた。そこでまた恐怖に襲われ、立ちすくんでしまった。相手は気づいてない様子だったから、考えることにした。この生物は力がとても強いが、動く様子がないところから弱点は身動きを取ることをしないところだと判断した。確認はできたがこのままにして置いたら、被害がもっと出てしまうと考えた。そこで、その時装備していた銃弾の中で一番強力なもので仕留めることにした。準備を終え、狙いを定めた。見事に命中した。すると、そのまま影が倒れていきすごい地響きが起こった。とりあえず、しばらく動く気配はないと判断して帰還することにした。車を起こして血まみれになった隊員たちを後ろに移動させた。二人とも重傷だった。そのうち一人は話せた。とりあえず確認して一撃命中させたことで気絶させたことを伝えていたとき、また雄叫びが聞こえた。様子を見ていたら、こちらを見て走り出した。恐ろしくて、猛スピードで発進させた。相手もなかなかの速さで全速力でも追いつかれそうだった。すると、重傷で話せた隊員が言ってきた。自分が車の運転を代わり囮になるから逃げて報告してくれということだった。それはつまり死ぬつもりだということだった。このままだと追いつかれることも目に見えていたがすぐには返事ができなかった。すると強引にその隊員がハンドルを奪ってきて車の方向がずれて木にぶつかりそうになり、ハンドルを切って急停止した。体勢を整えていたとき、すぐそばに来ていたヤツが車に突進してきた。そのあと、外に投げ出されていた。車に戻ろうとしたら運転席に重傷の隊員がのろうとするところだった。そのとき、俺たちの方にまた突進しようとしていたヤツにもう一人の隊員が射撃した。あの援護がなければ全員死んでいただろう。そして、車に乗った隊員たちは報告を任せて、ヤツを引きつけるために走って行ってしまった。無事報告を終えたのはもう翌日の朝のことだった。森に援護として向かった時に、車の中で二人の死亡した隊員が発見された。しかし、ヤツの死体は発見されなかった。この事件の後からSONGは獣に備えた戦闘訓練を強化するようになった。この頃のSONGは人々の恐怖であったが、獣が現れたことで新たな恐怖である獣から守る頼られる組織となった。今は当然のように考えられるが、獣がいなければ今のSONGはない。だが、獣の存在は人を脅かす限り放ってはおけない。だから、最初に発見した人間で、かつ被害を最小限に留めてくれた二人の隊員の勇気ある死を忘れないで、任務に当たってほしい。ちなみに、最初に発見された獣であるヤツの事を、最初に発見した隊員が発した言葉から、“オーマ”と呼ぶことになった。


【鍵】

 「今見てもらったのが、最強の獣オーマの初確認の様子だ」「オーマ…」「オーマはこの時以降姿を見せていなかった。ララバイが追っていたにもかかわらず、今までだ。しかし、今回複数体で姿を現した。何かの前兆だろうか」「グレートさん、エレクトになったということは鍵についてご存知ですか?」「鍵?いや、知らない」「あのおばさん、全員には教えていないのか。教えてやれ、サトリ」「ええと、鍵はこの世界から現実世界に戻るために必要なものです。最強の獣が持っているとか」「ということは、オーマが鍵を持っているということかい?」「はい。その人はセレクト・サモンと言っていました」「一体誰がそんな事を教えてくれたんだい?」「世界の意思です。この世界の開発者の妻と言っていました。その人はこの世界に囚われた娘さんを見つける為に災害を起こしていたそうです」「分からなくはないが、困る。それで、娘さんは見つかったのかい?」「はい。タクトという子です」「ウォーリー博士と一緒にいる子か」「はい。ウォーリー博士の正体が開発者で、その子の父親だから一緒にいるのだと思います」「驚きだ。博士が開発者だったのか。相応しくはある。しかし、博士はエレクトになっていないのに現実世界の記憶があるのは何故だ?」「それはたぶん、経験者だからです」「経験者?サトリ君、詳しく教えてほしい」「前にこの世界に来たことがある人を経験者っていうらしいです。チグリスさんもその一人で、教えてくれました」「そういうことか。他にも経験者はいるのだろうか?」「チグリスさんは、妹ユーフラテスと同級生3人、ウォーリー博士、ロンドとクリスも経験者だと言っていました」ロンドとクリスを見る面々ら。「君たちも経験者なのかい?」「そうだ。黙っているように先輩に言われたから、黙ってた」「僕も先輩に他言無用と言われて黙っていました」「嘘、二人は記憶があったの?」「はい」「オサフネの時も覚えてたの?」「覚えているというより、うっすらと靄がかかる感じでした」「ロンドにしては、先輩の言うことを聞くなんて偉いわね」「俺は先輩を心から尊敬しているからな」「経験者が二人もいる君たちには近衛衆が適任だ」「任せとけ。SONGは俺らが守る」「しっかり守りたいと思います」ナイルが戻って来る。「総司令官様。退任式の時間です」「わかった。行こう」SONG本部集合広場。ロンド大隊、ソナタ大隊、編隊の隊員が集合する。前に、近衛衆が並ぶ。司令台にグレートが上がる。「この度、私グレートと近衛衆7名は戦争の責任を取り、退任することになった。明日から総司令官と近衛衆は編隊カリュードの8人に引き継ぐ。隊員の諸君は、今までと変わらず任務に当たってほしい。最後に一つ伝達事項がある。ララバイが複数体のオーマの襲撃を受け、隊長エンリケを除く隊員を失った」隊員がざわつく。「静かにしてほしい。私は近衛衆、英雄のお三方、エンリケとともにオーマを追うつもりだ。ララバイの意志を引き継いだ“ニューメソッドララバイ”としてSONGに協力したいと思っている。オーマについてわからない事は多いが、SONGの隊員が力を合わせれば勝利できると私は思っている。SONGに栄光あれ。では、健闘を祈る」翌日。SONG本部正門前。面々がグレートらを見送る。「それでは、私たちは行く。何かあったらこれで連絡する」奇石を掲げるグレート。「サトリ君、任せたよ」「はい。頑張ります…!」グレートらが本部を去る。「はあ…」サトリの背中を叩くロンド。「おい!下を向くな!元気を出せ!」「僕らがついてます」「うん」面々は総司令官と近衛衆になった。


【リンク】

 監獄。「グレートさんに渡された紙、一体何が書いてあるんだ?」ラルが紙を開く。「『私と近衛衆は戦争の責任を取り、退任することになる。拘留期間が開けるまでここで待つ。』ここは、リオデジャトーンの宮殿。確か親交が深い代表者が病気になっている」リオデジャトーンの宮殿。グレートらは代表者の部屋にいた。「様子に変化はありますか?」代表者代理の執事が答える。「いえ。回復の兆しはありません」「そうですか。全身の筋肉が動かなくなる難病でしたね」「はい。治療法も特効薬もありません。最後にもう一度、皆さんに会いたいとおっしゃっていました」「そうでしたか。その願いは、今なら叶えることができます」「本当ですか?でも、視力は既にないのと同然です。どうやって顔を見せるのですか?」「こうやります」グレートは目を閉じる。ナイルとヒヨウ、ルシナンテ、英雄たちも目を閉じる。代表者の心の中。静かな海。静かに佇む代表者。海の向こうから一隻の船が近づく。その船の上にグレートらがいる。彼らを見つけ、手を振る代表者。顔は笑みがこぼれ、目から涙がこぼれる。グレートは目を開ける。「お会いしてきました。様子に変化はありますか?」「はい…。一瞬笑ったようでした」「良かった」その様子を見ていたヒナギクも笑う。「有難うございます」「君は?」「シンメン・ヒナギクといいます」「シンメン?もしかしてサトリ君を知っているかい?」「はい。私のお兄ちゃんです」「そうか。サトリ君の妹さんか。何と偶然だろう」「あなたは?」「私は元総司令官だ。彼らは元近衛衆の者らだ」「偉い方々なんですね」「前まではそうだった。今の総司令官は、君のお兄さん、サトリ君だ」「え?本当ですか?」「本当だ」「そんなはずはありません。お兄ちゃんは不運です。そんな偉い立場に選ばれるなんて何かの間違いじゃないですか?」「そんなことはない。彼の実力さ。彼が総司令官に、彼の仲間が近衛衆になってくれて、私は安心している。彼らは私のお気に入りだからね」「そうですか。こんなかっこいい人にお気に入り何て言ってもらえて、お兄ちゃんも喜んでいると思います」「それは良かった。私の仲間をここで待つことになっている。しばらくよろしく頼む」「わかりました。わが都市に伝わる最大級のおもてなしをさせて頂きます」


【初仕事】

 SONG本部総司令室。ガルとアジズが面々に面会している。「「総司令官様。挨拶に参りました」」「どうも…よろしくお願いします」「サトリ!総司令官ならもっと総司令官らしくしろ!」「ロンド。サトリも初めてですから」「それにしても驚きました。あなたたちが総司令官と近衛衆になるとは」「ロンクさんはやっぱり俺の上を行くっすね」「まあな。エレクトにもなった。俺はどんな壁も乗り越える男だ」ガルとアジズが驚く。「あのノヴム・オルガヌムのエレクトですか!?」「俺とガルさんを含め、SONGの隊員は総司令官と近衛衆以外誰一人合格できなかったのに!?」「まあな。試しに能力を見せてやる」SONG本部集合広場。面々がネアを発動して見せる。「おお!」「すごいっす!」うらやましがる二人を見て、サトリが言う。「チグリスさんが言ってた事だけど、エレクトはリンクを使うことが出来る。そのリンクを使えば、二人にもネアを教えられるかもしれない」「本当ですか?」「教えてほしいっす」「教える前に、二人がどのネアと相性が良いか聞かないと…」「それなら奇石を使用すれば分かります」ガルとアジズは奇石を使いネアを発動する。「僕は水です」「俺は炎っす」「じゃあ、水のネアを使えるガルさんにはクリスが、炎のネアを使えるアジズ君にはロンドがリンクを使って教えてあげればいいんだ」「どうすればいいんですか?」「リンクと言ったら英雄リンクしか知らねえぞ」「リンクというのは、繋げる力としか聞いてない…」「なんじゃそりゃ」「あくまで僕の予想ですが、ネアは自然の力にリンクを使って発動できるのはないでしょうか。ネアを使う時自然の力に向いていた自分の意思を、人に向けることでリンクできるのでは?」「さすがクリス」「頭いい~」「ロンドとはわけが違うわ」「うるさい!」「たぶんクリスが合ってると思う…」「早速試してみましょう」「おう」クリスとロンドが目を閉じる。「「リンク!」」ガルの心にクリスが、アジズの心にロンドが現れる。「僕に体を貸してください」「俺に任せろ」ガルの体にリンクしたクリスと、アジズの体にリンクしたロンドがネアを発動する。「「ネア!」」「奇石を使っていないのに水が出た!」「すごいっす!」クリスとロンドがリンクを止めて目を開ける。「ふう、疲れますね」「おい、折角教えてやったんだ。使ってみろ」ガルとアジズがネアを発動する。「本当に出た!」「すごいっす!」「これで二人も使えるようになった…」「「総司令官様。有難うございます」」「いえいえ。お役に立てて良かった…」「グレートさんも優しい方でしたけど、サトリさんも優しいですね」「そうかなあ…」「喜んでる場合じゃないぞ」その後、同様にパキラとジョーもそれぞれ風と土のネアを使えるようになった。ガルとアジズは持ち場に戻り、面々は総司令室に戻った。「サトリにとって総司令官の初仕事だったわね」「うん…」その時、クリスとロンドが頭を下げる。「すまない!」「ごめんなさい」「どうしたの?突然」「2人とも何か悪いことしたの?」「いや、経験者だと黙ってた事を謝ってる」「その事ね。もういいわ」「2人が何かしたわけじゃないし」「そう言っても黙ってたのは事実です。経験者として分かることは皆さんに共有したいと思います」「共有って?」「たとえば、アジズは現実世界で空手部の後輩だ」「ガルさんは僕たちの同級生で、陸上部のエースです。ちなみにシュンも同級生で、陸上部ではガルさんとエース争いをしています」「気づかなかった…」「ロンドも空手部だったわね」「ああ。レイピアは薙刀部、クリスは剣道部だったな」「私は合唱部だった」「僕は何も入ってない…」「私と同じ帰宅部だね」「今後も分かり次第教えます」「ありがとう。あれ?パキラさんとジョーさんは?」「寝てるな」「2人は学生ではないようです」「一体誰なんだろう…」その時、総司令室のアラームが鳴り響く。「対策室からだ」「スクリーム発生。スクリーム発生。直ちに急行してください」「了解しました」面々は総司令官と近衛衆の仕事に勤しむ。


【発見】

 半年後。ギルバートが監獄から出た。世界中で災害が増大の一途を辿る。「もう地球も限界のようじゃ。悲鳴があちこちから聞こえとるわい」ウォーリーは遥か上空から地球を見て言う。ボーンとタクトのいるノヴム・オルガヌムに戻るウォーリー。「どうでしたか?」「ひどくなっとる。世界の意思に災害を止めるように言ったが、もう止められんようじゃ」回想。「世界の意思よ。頼みがあってきた」「ウォーリーか。なかなか努力しているようだ。言ってみよ」「ええ。災害を止めてほしい」「ウォーリーよ。それは無理だ。一度始まったものは終わるまで止まらない。直に大きな災いが訪れる。恐らく最大にして最後となろう。その時、我の分身もまた現れる。これは人間への最後の試練だ」「分身というと」「人間が“オーマ”と呼ぶ最強の獣だ。おそらく人間に勝ち目はない。しかし、ウォーリー、分かっているな」「…御意」回想終わり。「奥さん、設定をしっかり守ってますね。それにしても何だか恐ろしいです」「妻が言う分身。あれが鍵を持っとる。その鍵を手に入れた時、物語が終わる」「鍵。手に入りますかね?」「皆が力を合わせれば手に入るじゃろう」「最近、SONGのガル君とアジズ君がリンク能力を隊員にも広めているそうです。おかげで、僕らは暇です」「そうじゃな。ネアを発動する時奇石を使うことがなくなった。じゃが、奇石はなぜか減っていっとるらしい」「変ですねえ」奇石の減少の原因は、面々への報告で明らかになる。「総司令官様、こちらモスクルドノワ支部所属部隊タブラ・ラサから報告があります!」「その声はモゲレオさん。どうしました?」「オーマが出現しました!」驚く面々。「現在の状況を教えてください」「現在、我々タブラ・ラサとプレリュードが追跡中です。オーマは雪山の中に侵入しており、我々は姿を見失ってしまいました。が、ガル大隊長は先頭で追跡を継続しています」「わかりました」「サトリ。ガルさんにリンクすれば状況が分かるのでは?」「そうだ。みんな、リンクを」面々はガルにリンクする。目の前を吹雪が流れる。全身を寒さが襲う。その中で、尋常でない速度で木々の間を抜けながら走っている。オーマの姿を探すサトリ。目を凝らすと、吹雪の中に黒い影がある。(あれがオーマ…?)その時、ガルが立ち止まる。黒い影が止まったからだ。黒い影に向かってネアが放たれたが、黒い影に当たってそのまま跳ね返る。弾け飛ぶ数人の人影。その隙に消える黒い影。「くそ!スピードマックスで追いかける!“爆走竜”!」ガルは追跡するが、どこにもオーマの姿はなかった。面々はリンクを止める。「はあ…疲れた」「ガルさん、より一層速くなってますね」「ちょっとふらふらするわ」「リンクってすごいね」「それにしても、オーマも速いのね」「ネアを跳ね返したぞ。あれはもう獣じゃなくて化け物だ」再び面々に報告が入る。「総司令官様、こちらプレリュードのガルです。報告があります」「さっき、モゲレオさんから報告があり、ガルさんの状況を見ていました」「そうでしたか。今、オーマを見失った地点にいるのですが、ここで驚きの物を見つけました」「何ですか?」「奇石が大量にあります。その一部が食べたように無くなっています」「まさか…オーマは奇石を食べる?」驚く面々の元に別の報告が入る。「こちら、タブラ・ラサのチグリスです」「どうしましたか?」「今、ユーフラテスが死にました。オーマにやられて、俺が病院に運びましたが、もうだめでした。以上です」「チグリスさん…もう切れてる」さらに別の報告が入る。「こちら、モスクルドノワシティのクロゼアスだ」「どうしました?」「娘のアリスがまた攫われた!オーマの仕業かもしれない!早く見つけ出してくれ!以上だ」茫然とするサトリ。背中を叩くロンド。「おい!しっかりしろ!」「僕らがついてます。1つずつ解決していきましょう」サトリは面々を見る。「うん、頑張ろう」


【相談】

 面々はショクシティに来ていた。「本部を開けてきたけど良いのか?」「本部にいても何も変わりません。サトリもじっとしてもどうにもならない心境なんでしょう」「チグリスさんが行方不明になってしまって、アリスさんの消息も分からないままだものね」「ここって仙人のお家?」「そうね。相談しに来たんじゃないかしら」扉をノックするサトリ。「お前さんらか。中に入れ」仙人の家に入る面々。「して、何の用じゃ」「相談があって来ました」「何の相談じゃ?」「ええと…」「分かった。何も言わんでもええ。『災害に遭う時節には災害に遭うがよく候。死ぬ時節には死ぬがよく候。是災害をのがるる方法なり』昔の人が言った。全くその通りじゃ」「え?」「世の中分らんことばかりじゃ。そんなに気に病むでない。そうは言っても無理じゃろうな。そうじゃな。誰にもどこにも披露した事のない技をお前さんらに授けようかのう。ついにこの時が来たか」外に出る仙人。追いかけて外に出る面々。「前に教えた“無の境地”は覚えとるな?今回授ける秘伝の技においても無論“無の境地”は必要となる。今回授ける秘伝の技、“弱者拳”は、敵の隙を突くことを極めた拳法じゃ。自らと相手の実力に差があればあるほど、即ち、自らが弱者であればあるほど相手が強者であればあるほど効果がある拳法じゃ。弱者拳には3つの構えがある。1つ目は“死の構え”といい、いわゆる死んだふりをして、油断して近づいてきた相手に不意打ちをする構えじゃ。2つ目は、“威の構え”といい、大きく振りかぶり相手の注意をそちらに向けておいて、振りかぶっていない方を用いて不意打ちをする構えじゃ。3つ目は、“酔の構え”といい、ふらふらになったと装って、相手が油断したところに不意打ちする構えじゃ。酔の構えのみ、連打攻撃が可能じゃ。睡眠時や泥酔時のように、己の力が抜けていればいるほど効果が高まるじゃろう。じゃから、この連打攻撃を“睡酔拳”と呼ぶ。この弱者拳は、あくまでも敵の隙を突くことを極めた拳法であって、追い込まれた時や敵を倒すきっかけに用いる拳法じゃ。戦闘に向かない者の方が向いとる。お前さんらでいうと、お前さんらじゃな」サトリとライラが仙人に指をさされる。「僕と」「私?」「確かにお前ら、戦闘じゃ役立たずだ」「今はネアがありますから十分役に立ちます」「ネアが無い時の話だ。まあ、二人にきっかけを作ってもらえるだけでも十分だ」「オーマにも使えるといいけど…」「念には念を入れよ、という。練習をしておくといい」「はい…」その時、サトリの持つ奇石に連絡が入る。「総司令官様、オーマを捕らえました!」「「ええ!」」驚く面々。「本当ですか?どこですか?」「ここは、モスクルドノワシティ南東にある森です。総司令官様の目でお確かめください。お待ちしています」サトリが面々を見る。「本当かな…?」「あのオーマがそう簡単に捕まるとは考えにくいですけど、確認すべきです」「敵だったら俺がぶっ飛ばしてやるから安心しろ」「うん。行こう」「お前さんら、気を落とさずに前へ進み続けることが肝心じゃぞ」「はい…!仙人様、有難うございました」面々はモスクルドノワに向かう。


【奇襲】

 モスクルドノワ南東の森。男が森の中の小屋に帰る途中で辺りが吹雪いてきた。男は急いでいた。なぜなら、この辺りでは吹雪になると、未確認生命体が現れる言い伝えが信じられていたからだった。その時、誰かが倒れているのを男は見つけた。心配になり、近づくと美人な女性だった。男は女性を家に連れて帰った。暖炉のそばに女性を寝かせて様子を見ることにした。それにしても、見れば見るほど引き込まれる魅力のある女性だった。男は何度も誘惑に駆られそうになりつつも結局やめることを繰り返した。何日か過ぎて、女性は目を覚ました。恩返しをしたいと女性は男に申し出る。男は薪割りを、女性は料理をして時を過ごした。幸せな日々だった。ある日、2人は男が女性を見つけた場所に行った。そこに一つの奇石が落ちていた。男が奇石を拾い上げ女性に渡した。その時、女性が不敵な笑みを浮かべた後、ヘルハウンドになり、姿をくらました。男は腰を抜かししばらく動けなかった。男が小屋に帰ると、大量の果物が置かれていた。面々は、吹雪く森の中を進む。「寒い…」「近いと思って油断してたぜ」「連絡があった森はこの辺のはずですが」面々の前に一人の女性が現れる。「待っていた。私の名はデリダ。コードネーム、トルーパー。覚悟せよ」トルーパーは奇石を使いネアを発動する。油断していた面々の立つ地面が巨大な三角錐状に盛り上がり、面々は散り散りになる。倒れるロンドがトルーパーに首を絞められる。「お前、誰だ?」「私は、元ファントム教、現奇石教過激派6人の1人」「何で奇石教の奴がSONGに攻撃する?」「戦争はまだ終わっちゃいない」パキラとジョーは強い吹雪の中状況を見ている。だんだん体の熱が奪われていき、倒れそうになるパキラをジョーが受け止める。その時、1人の老婆が2人に近づく。老婆はマッチを一本擦る。「私の名は、ゾフィー。コードネーム、マッチ売り。このマッチは特別なマッチでね、擦ると夢が見えるんですよ」ジョーは温かい火を見る。その瞬間、まるで温かい小屋の中にいる感覚になる。「いい夢が見れるといいねえ」老婆が言う。ジョーの手にいつの間にかマッチがある。ジョーはパキラの体が冷たくなってきていることを感じる。奪われていく体温。ジョーはマッチを擦る。マッチの火の温もりによって急激な睡魔に襲われ、眠る2人。「ひっひ。このマッチを擦ると私以外の者は眠るように奇石に願ってあるからねえ。どんなに強くとも奇石には敵わないのさ」マッチ売りは鋭い刃物を取り出す。眠る2人に近づくマッチ売り。「“高速・居合切り”」マッチ売りの持つ刃物が折れ、先端が飛んで雪に刺さる。マッチ売りはマッチを擦る。クリスはマッチ売りに近づく。「おかしい!奇石が効かないなんて!」「その奇石は既に割れています」「へっ!」マッチ売りが見ると奇石が割れている。「一体いつ!?」「僕はSONGの隊服を着る者が持つ奇石を除く周囲100メートルの奇石が割れるように奇石に願いました」「そんな…」崩れるマッチ売り。「これで敵は全滅したはずです」トルーパーはヘルハウンドになる。「お前獣化もできるのか!」ヘルハウンドは走り去る。「待て!」ロンドが追いかけると、ヘルハウンドは1人の女性に体を擦りつけている。「どういうことだ。お前分身もできるのか!」「混乱しているようね。私が本物よ。ある時はピリオド、そばに寄って来る獣はトルーパー、本当の私はアリス」レイピアは男と対峙する。「俺の名は、ロッソ。コードネーム、不知火。奇石が割れてしまった。しかし、もう一度願えばいいだけだ。探偵の起こした火事に巻き込まれた弟たちの敵を討つぜ」サトリも男と対峙する。「僕の名は、ジード。コードネーム、万雷。もう一度願おう。飛行機から落ちた雷に打たれた父さんの敵を討つために」ライラとナタリーは男女のカップルと対峙する。「私の名は、ジュリエット」「僕の名はロミオ」「2人合わせてコードネーム、アベック。私たちの愛は奇石などなくても一緒よ。そうでしょ、あなた」「ああ。いつでも一緒だ、おまえ」


【先輩】

 アベックは、雪の上を鋭い刃のついた靴で滑りながら移動する。「どうしてあなたはロミオなの?」「どうしてジュリエットはそんな美しい?」2人は腕を組み、片足を上げ、高速回転をする。ナタリーはネアを発動し、土の壁で防ぐ。「きゃあ、目に砂が!」「大丈夫かい?」ジュリエットの髪をかき分けるロミオ。「ああ、美しい!この愛を誰にも邪魔はさせない!」滑走する2人。「離れていくわ…!助走をつけて攻撃する気ね!私の歌で戦意を奪うわ!」歌うライラ。「何て心地いい歌…」「愛しているよ、おまえ」「私もよ、あなた」そのまま抱き合う2人。「いつまでも一緒よ」「ああ。絶対に離さないよ」「何だか凄い…」「寒いのに熱い…」万雷は、声を張り上げる。「さあ、千客万来!痺れる雷は何のその!」そこに不知火が来る。「あの女、容赦ないぜ」激しい炎が発生するが、不知火の持つ奇石に吸い込まれる。レイピアがサトリの元に来る。「レイピア…」「あの敵、火を吸収するように奇石に願ったようね」「そうなんだ。もう1人も同じだと思う…」「試しに撃ってみたら?」「うん…」サトリはネアを発動する。発生した雷は万雷の持つ奇石に吸い込まれる。「さあ、効果は絶大!たった一つの石が避雷針に早変わり!」不知火と万雷は鋭い刃物を取り出す。「そんな危険な物向けられたら容赦なくもなるわよ。行くわよ、サトリ」「うん…」レイピアとサトリは集中する。一段と激しい炎と雷が発生する。不知火と万雷の持つ奇石は臨界点を迎えたことでひび割れ、2人はネアを全身に受ける。「ビリビリ!!痺れる…これが雷の痛み…」「あつい!!これが!!火の熱さ!!」混乱するロンド。「お前、アリスなのか?」「そうよ。私、退屈だったのよね。だから、自ら家出までして、敵組織になってまで、物語に登場したのよ。分かるでしょ、経験者なら」「ん?よく見たら、先輩とよく一緒にいる女だ!」「今頃気づいたの?それじゃあ、あなたの好きな先輩が誰かまだ分かってないのね」「誰なんだ!?」「人に聞く前に気づく努力をしなさい。甘えた後輩にはお仕置きよ」アリスはロンドに比べて一撃の攻撃力はないが素早い動きで連続攻撃を得意とする。アリスの繰り出す武闘術に押されるロンド。「さすが先輩だ。全国大会に出場する女子空手部の主将だけはあるぜ」「男子にも負けないわよ」「ロンド!」ロンドの元に面々が集まる。「あなたはアリスさん!?」「あら?全員集合ね」「みんな、よく聞け。アリスは、経験者の1人だ。退屈だから自ら騒ぎを起こしたらしい」「「ええ!」」驚く面々。「貴方たちと戦えて楽しかったわ。物語は楽しんだ者勝ちよ」「すごい人だ…」「アリスさん、チグリスの居場所は知らないですか?」「ユーフラテスが死んだからいなくなったのよね。彼女は現実世界でも死んだから、この世界でも死んだのかもしれない。きっとこれもリンクなのね。でも、チグリスの居場所は知らないわ」「そうですか」サトリは考える。(現実世界で死んだ人間はこの世界でも死ぬ…じゃあ、ヒナギクも…!)サトリは風を起こして飛んで行く。「サトリ!」アリスはサトリを見て言う。「幼虫も蛹になる時、体を構成していたもの全てを一旦分解してしまう。そして、新たな体を構成し蝶になるの」


【大災害】

 リオデジャトーンシティ。ヒナギクはグレートらとともに真っ白な湖に来ていた。「いつ見ても綺麗ですね、ここは」「そうですよね?私もそう思います」「ここ一面が全て塩で出来ているとは驚きですな」「ここの気候がこの湖を作ったんです。自然って大きいなあ」「そうですね。自然は母なる大地とも呼ばれます」ヒナギクが塩湖の端に光る物を見つける。「何だろう…」「足元に気をつけてください」グレートらから離れ、光る物を拾うヒナギク。「これは、石?」ヒナギクの元に向かうサトリ。ヒナギクを見つけ安心する。その時、サトリを黒い影が抜き去る。黒い影は光る石、奇石を求めるオーマだった。それは一瞬の出来事だった。ヒナギクを突き飛ばし、石を奪うオーマ。「オーマ!」全身は赤茶色の毛に覆われ、胸部に宝石のルビーのように赤く輝くコアがある。コアは心音のような音を発している。猫のような顔が逆に凶暴さを際立たせている。その顔に三本線の傷がある。額に傷のあるオーマは、サトリを一瞥した後、飛び立つ。「待て…!」オーマの姿はもう見えない。額から血を流すヒナギクの側に寄るサトリ。「…お兄ちゃん?」「ヒナギク…せっかく会えたのに…」「お兄ちゃん、泣かないで。別れる時は笑顔の方がいいでしょ?」涙をふき、笑うサトリ。「…良かった。最後にお兄ちゃんの笑顔が見れて…」「ヒナギク…」グレートらはしばらく2人を見ていた。その後、ヒナギクとリオデジャトーンの代表者の葬式が行われた。一連の通式が終わった後、グレートがサトリに話しかける。「サトリ君。辛いだろう。私たちは味方になる」「有難うございます…でも今は1人にしてください…」サトリを見送るグレート。ヒナギクと最後に話した場所を訪れるサトリ。佇んでいると、ソングライダーを履いた面々が来る。「みんな…」「ここにいたのね。心配したわよ」「何にも言わずに勝手に行くな!」「アリスさんは無事に送り届けました。しばらく大人しくすると言っていました」「サトリの心、悲しみで溢れてる」「姫様に何かあったの?」「オーマにやられた…ヒナギクはもういない…残ったのはこのネックレスだけ」サトリを見守る面々。「現実世界と同じ状況になったということよね?」「再会出来た後の別れだから辛いんだろう。今オーマと遭遇したらどうなるか分からない程に」そこにオーマが塩湖の中心に降り立つ。塩湖の全体の塩が吹き飛び、中から大量の奇石が現れる。「あれ?サトリがいない!」サトリは高速移動し、オーマに拳をぶつける。「ヒナギクを返せ…!返せよ!!」サトリは思いを解放する。「“ネア・バースト”!!」次の瞬間、サトリを中心に爆風が巻き起こる。「危ない!」爆風によって地球上の半分が壊滅した。咄嗟にクリスが大量の奇石に願い、地球上の半分の人を移動させたため、被害は建物に留まった。後に、この災害は、サード・ビッグ・スクリームと呼ばれる。


【大災害の後】

 額に傷のあるオーマは、塩湖跡地にいた。「我が発見した貴重な食料が跡形もなく消失してしまった。あの若造のせいだ。次、会う時はどちらかが死ぬ時だ」そこに、伝説の獣たちが現れる。「我は我以外の生命体を好まない。例え、我と同じ分身であろうとも」ゴーレムが拳を振りかざす。オーマは手を添えるように拳を受け止める。そのまま拳を掴み、高速で振り回した後、ゴーレムを上空のドラグーンに向けて投げる。ドラグーンはゴーレムをキャッチする。オロチ種の伝説の獣が行く手を塞ぐ。「我の通り道にいると死ぬ」次の瞬間、オロチ種は死んで、オーマはいなくなった。


 サード・ビッグ・スクリームの被害を逃れた人々は、パンベンシティに移動した。面々は本部に戻ると、グレートらが総司令室で待っていた。「待っていたよ。みんなで作戦会議だ」会議室。大きな机を囲うように座る面々ら。部屋の壁を覆うホワイトボードの前にグレートが立つ。「今から“オーマ討伐作戦”の会議を始める」ロンドが言う。「何だか学級委員みたいに見えるぞ」「みたいじゃない。私は学級委員なんだ」エンリケが首をかしげる。「まず、オーマの生態についてまとめる。今分かっていることは、オーマは奇石がある場所に現れることだ。この事から、奇石を使ってオーマを誘き出すことが出来ると考えられる。現在SONGが保有する奇石はどれくらいあるか分かるかい?」サトリが沈黙している。代わりにクリスが答える。「現在クモリテを構成していた半分をソングライダーに使ったので、その残り半分と、シュンから預かった分を保有しています」「それは今どこにある?」「地下に隠して保管しています」「わかった。それだけあれば十分誘き出せるだろう」ナイルが尋ねる。「しかし、オーマを誘き出せたとして、倒せるでしょうか。あのララバイをほぼ全滅させた相手ですが」エンリケが深く頷いて言う。「奴の素早さは尋常じゃない。人の我らには敵うとは思えません」クリスが言う。「ガルさんが追跡する状況を見たのですが、オーマはネアを弾いたようでした。おそらくネアによる攻撃は無意味です」「確かに。通常の獣とは一線を画す強敵だ。だが、私たちは何としてもオーマを倒さなければならない。そして、私たちが力を合わせれば倒せると信じている」ロンドが言う。「どうしてそう言える?根拠は何だ?」「ララバイは10人でオーマと対峙して敗北した。それなら、もっと大勢でオーマと対峙すればいいだけの話だ。そうだろう?」ロンドが言う。「ああ。そうだ。俺としたことが似合わないことを聞いちまったぜ」「大勢で戦うということで、SONGのスパイとして監獄にいる者らを解放してほしい」頷くサトリ。「有難う」ミザリオが言う。「大勢で戦うとして、オーマは素早い。逃げてしまうのでは?」「それは大いに考えられる。そこで、私に考えがある。オーマを誘き出した後、逃げられないように、その場所に閉じ込める」ヒヨウが言う。「どうやって閉じ込めるんですか?」「逃げようとしたものを検知して発動する秘密兵器を作る」ナイルが言う。「秘密兵器?」会議室にウォーリーが入って来て言う。「いわゆる即席闘技場というわけじゃ。わしとボーン、それから、奇跡屋と名乗る者らで協力して作る予定じゃ」ロンドが言う。「博士、完成はいつごろだ?」「わしらにかかれば、1週間もあれば出来る。任せておけ!」「任せた!俺らはその間特訓だ!」ナイルが言う。「その特訓、私も付き合おう!」「では、オーマは大量の奇石で誘き寄せる。逃がさないよう秘密兵器を作る。そして、大勢で力を合わせて戦う。以上が、作戦会議で決定した。オーマ討伐作戦の健闘を祈る」作戦会議後、それぞれ活動を開始する。ナタリーがライラに話しかける。「みんな、張り切ってるね」「…」「ライラ?どうしたの?」「…」「もしかして、声が出ないの!?」頷くライラ。「大変!みんな、ライラが!」(ごめん。全部私のせい)


【それぞれの思い】

 近衛衆の4人とジムが監獄から出た。「俺らはもう出ていいのか?」「僕もまだ期間が終わってません」グレートが迎えて言う。「特例措置だ。君たちの力を貸してほしい」「「はい!」」ボーンはカフカと再会する。「君とこうして共同制作出来て嬉しいよ」「僕も光栄です。あの祭があったから、奇跡屋を始めました」「あの時の和太鼓、まだある?」「勿論です!」「思い出話も良いが、早く取り掛からんと待っとるぞ」「そうですね。始めましょう」ウォーリーは感慨に耽る。(現実世界で体験会に来ていた学生か。縁を感じるのう)回想。「ウォーリーよ。決して変な気を起こすのでないぞ。もし、お前が神の力で人を助けようとした時、その瞬間に人類は滅亡すると思いたまえ。お前の行動も含めすべてを、我は見ている」「お主も鬼じゃのう。わかったわい」「その口調、やめてくれないか」「仕方ないじゃろ。いつもの癖なんじゃ」世界の意思が睨む。「分かった、悪かった。気を付けよう」「しかし、すべてを見ることのできる我は明らかに有利だ。そこで、ハンデとして力のある者を導こうと思う。その者の研究は人類の未来を左右する」「ありがとうございます」「我もそこまで鬼ではないだろう」「ええ」ボーンが孤児院に遊びに来ていた。ボーンがタクトとの会話中、世界の意思がタクトに憑依する。「アイス買ってよ」「お金ないんだぞ。しょうがないなあ」「わ!雨だ」「急げ!」タクトが急に立ち止まる。「タクト、どうした?」「お前は選ばれし者」「どうした?難しい顔をして。誰かの真似か?」「お前の研究を発展させることで“リンク”という力が手に入る」「お前誰だ?どうなってるか知らないが、その子を利用して、どういうつもりだ?」「お前はこれからもう一つの世界 “夢世界”を創る者となる」「夢世界?何のことだかさっぱり」「さかさまの予言者の元を訪れよ。経験者の双子がいる。協力を得れば研究は捗ることだろう。人類の未来を左右する、もう一つの世界“夢世界”…」タクトが倒れる。「おい!…いったい何が起きた…夢じゃないな」回想終わり。(物語も最終局面じゃ)面々が集まる。「ライラの声が出ないって本当か?」「…」「本当みたいですね。何かあったんですか?」「サトリを追いかけて行った時は声が出てた。今話そうとしたら、声が出なくなっていたの」「サトリの起こした爆風が原因かしら」「それなら、俺たちの声も出なくなってるだろ」(みんなが心配してくれてる。全部私のせいなのに)「ライラ、私のせいってどういうこと?」(ナタリー。エレクトになった時見た光景を覚えてる?)「覚えてる」(サトリがエレクトに選ばれたあの時、逃げようとしたサトリにきつい言葉をかけたのは私だったの。きっとそれが原因でこうなったのよ。全部私のせいなの)「そんなことないよ。全部ライラのせいなわけない」「ナタリー、誰と話してるんだ?」「そうか、ナタリーが心の声が聞こえるからライラと話しているんですね」「ライラはサトリと同じように悩んでいるみたい」「悩む時は悩んだ方が良いです。時間が解決してくれる時もあります」そこにギルバートが来る。「君たち、久しぶりだね」会釈するサトリ。「元気がないね。無理もないか。ヒナギクさんという妹を失ったから。何で知っているか不思議だろう。実は、監獄を出てから会ったんだ。素敵な女性だった。彼女の死を知って歌を書いたんだ。たまたま会った彼にも協力してもらった」「ヘイ、ヨー。どうも皆さん」「アッパラッパーという彼がラップを作ってくれた。僕はヒナギクさんの明るさを歌に作った。聞いてくれるかい?」


ヒナギクの詩

作詩・作曲:ギルバート

歌:(ボーカル)ギルバート

(ラップ)アッパラッパー


 歯並びが素敵な君 花弁が似合う微笑み 何故笑っているの?気になり 聞くと歯がきらり 君との出会い まるで 夢物語 笑う君の横 雛菊が咲いてた 突然風が吹く 君の髪が舞う それとともに舞う 雛菊の花びら(ここまで1番)


<ラップ> 雛菊が咲く場所 君がいた 久しぶりに出会って 歯がきらり いつもと違う 眩い光 まるで太陽 君が見えない 鼻血が出た 一面のヒナギク 横になり 見ても歯がきらり <曲調戻る>


歯並びが素敵な君 離れ離れになり 今どこにいるの?気になり 思うと涙ぽろり 君との出会い まるで 夢物語 笑う君の横 雛菊が咲いてた 突然風が吹く 君の髪が舞う それとともに舞う 雛菊の花びら(ここまで2番)


<ラップ> 歯並びが素敵な君 花のかんざしつけ 話しかけてくる そのとき、花火が鳴った 話が聞こえない 鼻血が出た 花のかんざし 横になり 見ても歯がきらり <曲調戻る>


歯並びが素敵な君 花の御所に行き 話が弾み 気になり 見ると歯がきらり 君との出会い まるで 夢物語 笑う君の横 雛菊が咲いてた 突然風が吹く 君の髪が舞う それとともに舞う 雛菊の花びら(ここまで3番)


君との出会い まるで 夢物語 笑う君の横 雛菊が咲いてた 突然風が吹く 君の髪が舞う それとともに舞う 雛菊の花びら(サビ)


舞う花吹雪 ヒナギクの花びら (ボーカル・強く意思を込めて)

花びら 歯並び (コーラス・繰り返しながらだんだん小さく)


 「どうだったかな?」拍手する面々。「いやあ、聞き応えがあったな」「いい歌でした」「良かった。作った甲斐があったよ」「ヘイ、ヨー。この歌どんどん広めるよー」ギルバートとアッパラッパーが去る。「ライラ、声は戻った?」「…」「まだみたいね」「少し休んでいたら治るかもしれません」「そうだね。支援室に行こう」「俺らは特訓だ。サトリも気が向いたら来いよ」


【作戦決行前】

 それから、1週間、サトリは本部から特訓するロンドとナイルらを眺めていた。ある日、サトリの横にグレートが来る。「サトリ君は特訓しないのかい?」「気分が向かなくて…」「そうか。ついに秘密兵器が完成したよ。それから、オーマ討伐作戦を実行する場所は、カタナシティになりそうだ。秘密兵器の範囲がちょうどカタナシティと同じ面積で一番適しているんだ」「分かった…」「決行は明日が良いと思う。決行前に、ノヴム・オルガヌムを使って世界中の人に一言呼び掛けた方が良いと思う」「うん」「総司令官の許可を得たとみんなに伝えて来る」グレートを見送るサトリ。(グレートさんはやっぱりすごい…)ノヴム・オルガヌムに来るサトリとグレート。「エレクトがこのマイクに話せば、リンク能力で世界中の人に伝えることが出来る」「うん」マイクを持つサトリ。「あー…明日、カタナシティでオーマ討伐作戦を決行します。参加できる強い方はお越しください。繰り返します。明日、カタナシティでオーマ討伐作戦を決行します。参加できる強い方はお越しください。お待ちしています」「ははは。何だかおかしかったけど、伝わったはずだ」「明日か…」「明日だ」翌日。SONG地下の奇石をグレートがネアで掘り出す。掘り出した奇石をサトリがネアでカタナシティに運ぶ。「流石サトリ君だ。あの量の奇石を一度に運べるのは君だけだ」「いやあ、それほどでも…」「集まった者で秘密兵器の設置を始めよう」「うん」面々らが秘密兵器を設置する間に、続々と集まる者ら。「こちらユリアン。B-80区画、秘密兵器の設置、完了しました」「わかりました」「大分集まって来たみたいだ。どこにオーマが現れるか分からない。各自の持ち場に移動した方が良いね」「うん。グレートさん、色々助けてくれてありがとう」「いいよ。じゃあ、健闘を祈る」サトリはグレートと別れ、面々の元に向かう。「おう、遅かったな、サトリ」「こちらも設置終わりましたよ」「うん」「あとは、待つばかりだ」その頃、額に傷のあるオーマはカタナシティに向かっていた。「我が求める物が、あの地に」激しい衝撃を起こして鉄鋼採石場に着陸するオーマ。近くにいた隊員が声を上げる。「オーマだ!オーマが来たぞ!」「おい!道をふさげ!鉄球を落とせー!」「はい!!」1トンの鉄球をぶつける。「我をこんな物で、止められると思ったのか?」鉄球を人差し指で粉々にするオーマ。「おい!一個じゃだめだ!すべて落とせー!」「はい!!」「我には数が増えようと関係ない」すべての鉄球が粉々になり、緊張感が高まる。「お、おい!もうないのか!?」「はい!もうありません!」「仕方ない…全砲台、放て!」バズーカ砲を放つ隊員ら。「我には効かぬ」炎から現れるオーマ。その頃、スキピオウがいる城下町に別のオーマが降り立つ。「来たか。わが国の誇る戦車部隊、進め!」激しい攻撃がオーマに浴びせられる。しかし、炎から現れるオーマ。「化け物め!」同じように5体のオーマが各地に降り立つ。面々が鉄鋼採石場に着く。「あいつは、あの時の!」「待ってください!1人で向かって行っても死にに行くだけです!」「各地でも現れたみたいだ…全部で7体のオーマがいる」


【オーマ討伐作戦①】

 その時、額に傷のあるオーマの元に6体のオーマが現れる。「我の分身よ。我と一つになれ」7体のオーマが集まり、1体になる。「一体何が起きているんだ?」「合体しました」「…」「光ってる」「最終形態かしら」「勝てそうじゃない…」オーマは光を発している。「我は識別番号HI(ハーモニーインフィニティ)。特徴は調和と最強。活動限界は3分。我の邪魔者はすべて排除する」「やばい。3分で終わらせる気だ」「終わらせません」「クリス、どうやって?」「みんなでリンクして相手の動きを止めましょう」「そんなことできるの!?」「やってみる価値はある!」ロンドとクリスがリンクを行う。オーマに異変が生じる。「何だ?我の動きが鈍くなった」それでも、オーマは動き続け、隊員の首を絞める。「く、苦しい」「我の邪魔をするのが悪い」オーマの手が開いていく。「何!?我の動きに逆らっている」(いける!)(このまま3分耐えましょう!)(こんな全力を出したまま3分も…!?)オーマの手が閉じ始める。「我の邪魔をするなあ!!」(うわあ!)(諦めては駄目よ!)(みんな、負けないで…!)周りにいる隊員も異様な雰囲気に近づくことが出来ない。「うおおおお!!」(うわあああ!!)3分後。オーマの光が消え始める。「我の活動限界か」オーマが7体に分裂する。リンクが切れ、面々は意識を取り戻す。「やばい!」「ロンド!1人で行ったら死にます!」ロンドが向かって行くと、オーマ6体は飛び去る。「我は1人で十分強い。分身などいなくても邪魔者を排除できる」残った額に傷のあるオーマに拳を繰り出すロンド。オーマは躱し、ロンドの腹に拳を当てる。「ぐはっ」吹き飛んだロンドがぶつかり、一つの小屋が破壊する。「ロンド!」中から腕を出し、出てくるロンド。「どうだ!6体は恐れをなして逃げ出したぜ」「我の攻撃を受けて生きているとは、恐ろしい男だ。初めて召喚された元祖の獣である、この我の攻撃を!」高速移動でロンドに向かうオーマ=オリジン。激しい炎が生じる。「ふう、危ない、危ない」「流石っす!炎の勢いで攻撃を躱したんすね!」「アジズ!」「相棒の危機に大隊を引き連れて駆けつけましたよ。炎の名コンビ、再結成っす」「我の邪魔をする者はすべて排除する」オーマ=オリジンとロンド大隊が激しい攻防を始める。ロンド大隊の隊員が大勢吹き飛ぶ。「くそ!俺は躱せても他の奴らは躱せねえか!」「これならどうっすか!」アジズが炎のネアを発動する。「我には効かぬ」オーマ=オリジンが炎を弾き、アジズとロンドを狙う。「危ねえ!」炎のネアで躱す2人。「甘い!」オーマ=オリジンが山壁に拳をぶつけ、生じた岩がロンドに向かって落下する。「うお!」ロンドの目の前で岩が割れる。「やっと借りが返せたぜ」「お前は…誰だ?」「ゼックスだ!」「あ!思い出した」「わざとだろ!」「悪い。助かったぜ」オーマ=オリジンが怒りを露わにする。「我の邪魔する者はすべて排除する!」オーマ=オリジンの動きが止まる。「また動きが鈍くなった!」ロンドがリンクを始める。「何で急に倒れた!?」「ゼックス君、相棒は、この絶好のチャンスに攻撃を仕掛けろと言っているんだ」「何で分かるんですか?」「相棒だから」(格好いい)アジズとゼックスがオーマ=オリジンに拳をぶつける。「よし!戦えるぞ!」2人を弾くオーマ=オリジン。「我は元祖の獣。我は負けぬ」


【オーマ討伐作戦②】

 オーマ6体が逃げようとしたことで秘密兵器が作動する。磁場が発生し、見えない壁が生じる。更に、オーマ6体はそれぞれの箇所で秘密兵器が発射した聖水を浴びる。しかし、オーマ6体には効果がない。ボーンが驚く。「そんなまさか!戦意を喪失させる聖水が効かない!オーマは戦意の塊か!」カフカが言う。「でも、成功ですよ。僕らの秘密兵器がオーマを逃がしませんでした」「そうだな。成功だ。後は、オーマを倒すだけ」ウォーリーが呟く。「ついに始まったか」面々は立ち上がる。クリスが言う。「ロンドが1体のオーマと戦っています。僕は他のオーマを追います」サトリが言う。「今の見たよね!?ロンドが吹き飛ばされたよ!それでも行くの?」「勿論です。この時の為に、僕らは特訓してきたんです。先に行きます」ジョーが言う。「俺も連れてけ」クリスとジョーが走り去る。ナタリーが言う。「私もクリスを見習わなきゃ」レイピアが言う。「私も腕を振るうわ」パキラが言う。「私も戦士の端くれよ。戦うわ」ライラが頷く。サトリが言う。「みんな、行っちゃうの?」ナタリーが言う。「先に行って待ってる」ナタリーらが走り去る。1人になるサトリ。「みんな、すごいな…それに比べて僕は、暴走して世界を破壊してしまった…その力があっても戦う勇気がない…僕は何をしているんだろう…」そこに、高い崖から現れる1人の男。「落ち込んでいても何もならないぞ」「あなたは…?」「俺か?俺は、英雄アルメオの息子アルガオ・ヴォルケーノだ」「英雄リンクの子孫…」「俺は、若いに寅と書いて、あだ名がワカトラっていう新米刑事だ。こんなところで、落ち込んでちゃだめだ。それじゃ、刑事を止めて英雄になった、バカ親父みたいじゃないか」(わかとら…どこかで聞いたような名前…)「さっさと立て!行くぞ」「行くってどこへですか?」「決まってるだろ。あそこで、行われてる戦いに行くんだ。他の奴らはもう戦ってるぞ。後は、お前だけだ」サトリは自分に話しかける男が誰か思い出せない。その男は、自分が思い悩む事を突きつけるように選択を迫る。サトリは思いのたけをぶちまける。「あなたが、誰か存じ上げませんけどね、もう嫌なんですよ!あんな痛くて、傷が出来て、辛い思いしかしないことは!」「行かないのはお前の勝手だ。だが、これだけは言っておくぞ。お前が行けば、すべて上手くいく」「何でそう言えるんですか?そんなの誰が決めたんですか?あなたが行けばいいじゃないですか!」「いい加減にしろ!」驚くサトリ。「あのな、時間がないんだ。これは、かつて主人公だった者からの言葉として、よく聞け。俺もそうだったが、自分が躓いた時、自分だけでは立ち上がれないことがある。その時、仲間の存在が助けになって立ち上がれることもあるのさ。その恩を返すために自分も誰かの助けになるよう努力するんだ。お前の仲間は、戦場でそれぞれあの化け物と戦っている。今、お前は恩を返す時だ。行くか、行かないか、決めるのは、お前だ」サトリは決心する。「行きます!みんなに恩を返します」「よく言った!」2人は戦場に向かう。


【オーマ討伐作戦③】

 ニューメソッドララバイが1体のオーマと対峙する。「我は識別番号G(グレイト)。特徴は知恵と戦略」グレートが言う。「私と同じ名前か。良い戦いが出来そうだ」「帥がリーダーと見た」「いかにも」オーマGが拳を放つ。英雄たちが防ぐ。ナイルが剣を抜く。「グレートさんには指一本触れさせん!」「一筋縄ではいかぬ相手と見た」オーマGはヒヨウを連れて、城に逃げ込む。ルシナンテが叫ぶ。「しまった!ヒヨウが!追いましょう!」「慌てるな」「しかし!ヒヨウの身に危険が及びます!」「その心配はない。敵の狙いは私だ。寧ろ、慌てて城に攻め込めば一人ずつやられるだろう。敵の思うつぼだ」「では、どうするのですか?」「敵を城から出す」「それなら、城を破壊してしまえばいいのですね?」スキピオウが現れて言う。「それだけはご勘弁を!」続いてスキピヨが言う。「父上、お言葉ですが、この際城は諦めるべきです」サイモンが言う。「ピヨ丸、一度もしたことのないお父さんへの意見を言ったっす」「スキピヨ。よく言ってくれた。自分では諦めがつかなかった。有難う」驚くスキピヨ。「グレート様。我が国に伝わるこの城は、難攻不落と恐れられた堅牢な造りになっています。決められた順序通りに破壊していく以外方法はありません」「わかりました。教えて頂き感謝します」城内。オーマGが外の様子をうかがう。「誰もいない。全員で女を取り戻す算段か。それならば、待ち伏せて一人ずつ仕留めるまで」その時、城が大きく振動する。「何事だ!?」モノとペープが叫ぶ。「「“ノック戦法”」」ジョシューとプークスが銃を撃つ。「「バズーカ!」」スキピヨとサイモンとバランが剣を振る。「「セイバー!」」サンタマリアとメガロとミミハとスミスが7つの武器を振るう。「クライアックス!」「いかづち!」「ハヤテマル!」「イナライトファニングズマ!」アポロンとアルメオとピーナッツとソーが火の、ペリドットとミザリオが水の、モゲレオとオックウが風のネアを放つ。「「ネア!!」」基盤が破壊され、崩れる城。「落ちる!」「お母さま!」ミミハがヒヨウを受け止める。「有難う」オーマGがグレートを目掛け、突進する。目を閉じるグレート。「カタナ=エンド!」7つの武器の盾で防ぐスキピオウとロペスとオローレ。オーマGが反動で吹き飛ぶ。「何が起きた!?」「カタナ=エンドの最後の力、どんな力でも一度だけ跳ね返す。今まで有難う」奇石のついたカタナ=エンド折れる。目を開けるグレート。「今だ!」「「はい!」」ラルとシェリンダとアルフレッドとクレセントがオーマGに攻撃を放つ。「1発目」「ぐっ」ナイルとルシナンテとエンリケがオーマGに攻撃を放つ。「2発目」「ぐはっ」ライオンになったグレートがオーマGに攻撃を放つ。「3発目!」「ぐおお…」倒れるオーマG。「見事な連携だ。我の負けだ…」オーマGのコアが割れる。「これは…鍵」コアの中から現れた鍵を手にするグレート。一同が集まる。ナイルが言う。「グレートさんの戦略のおかげで勝てました」グレートが言う。「何を言っている。みんなのおかげだ」鍵は残り6個。


【オーマ討伐作戦④】

 ソナタ大隊が1体のオーマと対峙する。「我、識別番号F(ファスト)。特徴、活発、速度」ガルが言う。「速さが得意なのは僕も同じだ」「先手必勝」次の瞬間、ソナタ大隊の隊員が大勢吹き飛ぶ。「卑怯な!」「只、先制攻撃」オーマFが消える。ガルは殺気を感じ、横に駆け出そうとする。気づくと、ガルの瞼が切れて、血が飛び散る。「見えなかった…」「当然至極。次、最期」ガルが駆け出す。「遅」オーマFは瞬時にガルに追いつくと、爪を首目掛けて突き立てる。「“爆走竜”!」寸でのところで、ガルはオーマFの攻撃を躱す。オーマFが驚いて立ち止まる。「訂正。普通以上」ガルは陰に隠れる。「危なかった…あと少し遅かったら、確実に死んでいた」ガルはネアを発動する。瞼から出る血と首から出る血を、氷で塞ぐ。オーマFが破壊し、ガルが露わになる。「発見。覚悟」オーマFがガルの首を掴み、押さえつける。「うぐっ」その時、オーマFの頭上から踵落としが2つ落ちる。オーマFは不意を突かれ、倒れる。「シープ弟子さんとシープ爺さん!」「この隙に!」「逃げるのじゃ!」「はい!」ガルが駆け出す。「不覚」オーマFが起き上がり、シープ弟子とシープ爺に向かって爪で切り裂く。2人は軽い身のこなしで躱して、そのまま跳躍し、崖を登る。「流石に上には速く来れないでしょう」「悔しかったら来てみなされ」オーマFは諦め、ガルを追う。狼になり、逃げるガル。(爆走竜ならギリギリ逃げられる。ただ、体力が続かなくなっていつかやられる。こちらからも攻撃を仕掛けないと…その為にはもっと速くならないといけない…)「帥、競争。恐悦至極」(もう限界か…ここまで来て、終わってしまうのか…?)ガルの脳裏に、かつてのライバルであるジュゼットとの競争が思い出される。「また俺の勝ちだ。ははは!お前は俺の部下だ!俺より速くなるまではな」「本気出し過ぎですよ」「手加減してどうする。お前ならもっと速くなれる」さらに、現在のライバルであるラウスとの競争が思い出される。「まだまだだね」「くそお」「君も僕もまだまだだ。速くなると周りの物がスローモーションに見えるんだよ」「そうなの?」「それを高次元って言うらしいよ」「高次元…」ガルは決意する。(僕はまだ終わらない。もっと速く!もっと高次元へ!!)ガルとオーマFが通り過ぎる。「何だ、今の!」「次元が違う!」ガルとオーマFは、時速500キロメートルに達していた。その時、ガルは異変を感じる。(これは…!スローモーション…!ついに達したんだ…!高次元に…!)オーマFも異変を感じる。「帥、速度、上昇。我、本気」ガルに少しずつ近づくオーマF。ガルの脳裏に、ジュゼットが現れる。「速くなったな。俺の部下は卒業だ」「やっとあなたを追い超せた」ガルが叫ぶ。「“画竜点睛”!!」オーマFが驚く。「又、速度、上昇!」人に戻り、2本のソウリュウを手にしたガル。目にも止まらぬ高速移動でオーマFを斬る。「速!我、敗北」オーマFのコアが割れる。コアの中から鍵を手に入れるガル。そこにグライダーから降り立つ怪盗ミラー。「速くなったね。瞬足のガル」「ラウス。遅くなったくらいだ。とっくの昔に倒せていたんだけど」「よく言うよ。途中危なかったんじゃないの?」「まあ、ちょっとね」鍵は残り5個。


【オーマ討伐作戦⑤】

 ワルツ大隊は1体のオーマと対峙する。「我は識別番号E(エコノミー)。特徴は省エネルギーと一撃必殺」ザックが言う。「…一撃必殺。嫌な予感がするやんけ」オーマEが気を溜める。次の瞬間、オーマEの手からビームのようなネアが放出され、ワルツ大隊の隊員が大勢吹き飛ぶ。ヴィクトールが言う。「ザックの予想通りだ!困ったぞ」シグムントが言う。「どうしよう…僕らに倒せる相手じゃないよ…」オズワルドが言う。「…スバラ石に願いを」その頃、オーマEの元に向かうクリスとジョーは、思わぬ人物と遭遇する。「おさふねさん。あなたが先輩でしたか」「誰だ?」「ジョーさん、この人は、経験者の1人で、僕の剣道部の先輩です」「オサフネ、あの時の再戦といこう」悪宿剣を抜くクリスピー。「僕は行かなくてはなりません」「俺に意思を見せてみろ」「先輩…分かりました。本気で行きます」クリスはアブソリュート=スターを抜く。「おい!今はそんな場合じゃないだろ!」ダグラスがジョーを制止する。「まあ、見ていてください」「誰だ?」クリスとクリスピーの剣がぶつかる。その時、悪宿剣にアブソリュート=スターが取り込まれ、眩い光が放たれる。「迷いのない剣。その意思があれば大丈夫だ」クリスピーは光る悪宿剣をクリスに渡す。「これは…一体?」「これは、悪宿剣の真の姿。その名もシン=アブソリュート!」「あなたは?」「私は平和の志士ダグラス。かつての英雄リンクの仲間ガッテンを祖先に持つ鍛冶職人でもある。疑問があるようだから答えよう。ガッテンは悪宿剣の改良を受けたが、あまりの闇の強さに失敗した。しかし、ガッテンは長い目で悪宿剣を改良することを思いついた。それは、悪宿剣が取り込むことで闇を光に変える剣を作ること。その剣が3本のアブソリュートシリーズだ!」「とにかく今は行くぞ」「はい!」オーマEの元に着くクリスら。オーマEが気を溜める。エスタとロニョが叫ぶ。「まずいべや!どうするべ!」「タイヘンダ!タイヘンダ!」「大丈夫ですか?」「クリスさん!あのオーマが放つビームやばいべや!」「ビーム…どうすれば?」オーマEがビームを放つ。クリスがシン・アブソリュートで堪える。「クリス君。上に弾くんだ!」クリスが弾いたビームは、闇に取り込まれる。「俺が囮になる。君たちはその隙にオーマを倒すんだ!」「チグリスさん、わかりました」そこに、長船とタケルが駆け付ける。「助太刀いたす」「一撃必殺には一撃必殺でござる」「みなさん、力を合わせましょう」頷く一同。ロニョソードを持ったエスタと長船とタケルとダグラスとクリスピーとクリスとジョーが同時に攻撃する。「「“全力・居合切り”!!」」オーマEのコアが割れる。コアの中から鍵を手に入れるクリス。「みなさん、やりました」喜ぶ一同。鍵は残り4個。


【オーマ討伐作戦⑥】

 BATTは1体のオーマと対峙する。「我は識別番号D(ディフェンス)。特徴は芯の強さと防御」モンステラが言う。「防御が得意なら、それ以上の攻撃をするまでよ。テンテン、あなたの強さを見せてあげて!」「にゃー」テンテンがオーマDにライオンキングとしての攻撃をする。ダンが言う。「ガウも行け!」「がう!」ダイアンが言う。「お前たちも続け!」(任せて!)ガウとべスとティガがオーマDに攻撃する。オーマDは両腕でガードする。「全く効いてないわ!」オーマDが両腕を開き、ネアを放つ。「テンテン!」「ガウ!」「お前たち!」瀕死になるBATTの獣たち。そこにウォーリーとボーンが駆け付ける。「わしが今までの戦いを見て分かることを教えよう。オーマは、それぞれ特徴がある。その特徴を上回ると思わせれば、コアが割れる節がある。防御が得意なオーマにはそれを上回る防御を見せるんじゃ。わしの最高傑作ロボ、リメビウス、その防御力見せてやれい!」様子のおかしいボーンが言う。「俺の名は、バーナブル・ボーン!!俺の炎を受けてみろ!」ダイアンが言う。「あの人、あんな一面もあったのか…」ボーンがネアを発動し、激しい炎がリメビウスを襲う。「どうだ!まだ足りないか!もっと熱く燃えろ!」さらに激しい炎がリメビウスを襲う。モンステラが心配する。「大丈夫なの…?」炎が収まる。中から、側転と宙返りをして現れるリメビウス。ダンが驚く。「すごい!」ダイアンが言う。「これで本当に倒せるのか…?」オーマDのコアが割れる。「本当に割れた!」「お嬢さんが鍵を取りなさい」「私ですか?」頷くウォーリー。中から鍵を手に入れるモンステラ。「これが…鍵」鍵は残り3個。


【オーマ討伐作戦⑦】

 オブリガードは1体のオーマと対峙する。「我は識別番号C(コーム)。特徴は穏便と分析」レインボーが言う。「穏便なら戦わずに済むかもしれない」オーマCが両手で覗く。「分析の結果、戦闘能力は皆無に近い。我との戦闘による全滅までの時間、44秒」その頃、オーマCの元に向かうライラとナタリーとレイピアとパキラは、思わぬ人物と遭遇する。「私も連れて行って」「アリスさん!心強い」「私もやっぱり来ちゃったアル」「ヨー。ここに来た以上は死ぬ気で戦ってもらうわ」「オーケーアル」オーマCの元に着くライラら。オーマCに向かって行くアリスとヨー。「私を楽しませてくれそうね」「大暴れするアル!」オーマCはアリスとヨーの猛攻を受け流し続ける。「乱入者か。分析をし直さねばならない」ナタリーとレイピアとパキラも攻撃に加わる。「グングニルよ!コアを割れ!」「バステト・ランスよ!今こそ加護の力を解き放て!」「聖剣よ!やっちゃえ!」オーマCが5人の猛攻を受け流し続ける中、一瞬の隙に跳躍して距離を取る。オーマCが両手で覗く。「分析の結果、戦闘能力は多少有り。我との戦闘による全滅までの時間、4分以上5分未満」ライラは、オブリガードと再会する。「あなた、前にうちにいた子よね?」「ああ、覚えてる。歌ばっかり歌ってた変な子よね」「…」レインボーが言う。「ライラさん、私もオブリガード部隊に入ったんです。あれ?声が出せないんですか?」頷くライラ。「私が治します。目を見てください」レインボーの虹色の瞳の効果でライラの声が元通りになる。「…ありがとう」「何かあったんですか?」「ちょっと勝手にショックを受けてたの。でも、悩んで分かったわ。考えるよりも行動する。それが私だって」オーマCが5人の元に戻り、猛攻をして、弾き飛ばす。「残り44秒」ライラが言う。「私、歌をうたうわ」ライラが歌い始める。オーマが苦しみ出す。オーマCは苦しみながら、分析を行う。「この歌は、我にとって戦闘能力が多大!我との戦闘による全滅までの時間、大幅に増大!」レインボーが言う。「ライラさん、効果があります!」「この歌は、癒しの歌。戦闘意欲を鎮める効果もある。レインボーも一緒に歌って」ライラとレインボーが歌う。オブリガードの者らも歌い始める。オーマCが苦しみながら、ライラに狙いを定める。5人がライラを庇うように立つ。オーマCが膝をつく。「効果的な歌の選択。それは正しい分析。我の負けだ」オーマCのコアが割れる。「うそ…本当に倒せたの?」オブリガードの者らがライラに謝る。「あなた、言うことがある。あの時相手にしなくてごめんなさい」「ただ歌うのが好きな子だと思ってた。ごめんなさい」「それにしてもいい歌だったわよね」「そうね」オブリガードの者らが拍手する。「いやあ、ははは」ナタリーが言う。「ライラ、鍵を取って」「そうだった」中から鍵を手に入れるライラ。「鍵を取ったよ」「早くロンドの所に戻るわよ」「さっきの歌効果絶大だものね」「ロンドを助けに行くアル!」「まだ他にいるのね。まだ楽しめるわ」鍵は残り2個。


【オーマ討伐作戦⑧】

 忍び族は1体のオーマと対峙する。「我は識別番号B(バランス)。特徴は器用と技」アヤメが言う。「技なら、あたいらも負けてないよ。行くよ!あんたたち!火遁の術!」ケンとフウマとユッカが叫ぶ。「水遁の術!」「風遁の術!」「土遁の術☆」オーマBは素早くネアを発動して、相殺する。そこに雷族が駆け付ける。ライコウが言う。「みんな!あの時のように、標的をよく狙って放て!」コウたちとライコウとライドウが雷を放つ。「「“付和雷同”!」」オーマBは相殺しようとするが、強力な雷に押される。そこに奇石教が駆け付ける。ビドーが言う。「私たちの信仰する奇石を食べるおぞましい獣。あなたたちはSONGを攻撃した反省として、奇石の力をお見せしてあげてください!」「「はい!」」マッチ売りと万雷と不知火とアベックとトルーパーが奇石を使い、総攻撃をする。オーマBは多彩な攻撃に押される。アヤメが言う。「あんたたち、とどめを刺すよ!」忍び族の4人が叫ぶ。「「“檜扇殺め”!」」忍び族の4人が檜扇のように持ったクナイでオーマBを攻撃する。「我の負けだ」オーマBのコアが割れる。中から鍵を手に入れるアヤメ。「朝飯前だね」腹が鳴るアヤメ。「飯が食べたい…」鍵は残り1個。


【オーマ討伐作戦⑨】

 ワカトラとサトリは、オーマ=オリジンの元に着く。「遅くなった。大丈夫か?」オーマ=オリジンが2人を見る。ロンドのリンクが切れる。「先輩!来てくれたんですね?」オーマ=オリジンの動きが元に戻る。「我の邪魔をする者はすべて排除する!」オーマ=オリジンから鉄鋼採石場全体に広がる激しい炎。それを包む青い炎。サトリが言う。「何だ…この炎、熱くない」仙人が言う。「熱くないわけではない。すべての熱を中心に移動させてるだけじゃ」炎が消え、オーマ=オリジンから煙が上がる。「我の邪魔をとことんする者たちだ。我の本気を恐れよ!」オーマ=オリジンが仙人に向かって高速移動する。「曾爺さん!」ワカトラが庇い、吹き飛ばされる。「よくも!先輩を!!」鬼の形相で向かって来るロンドを、返り討ちにして、吹き飛ばす。「「おおお!!」」続いて、向かって来るアジズとゼックスも吹き飛ばす。残ったサトリを見るオーマ=オリジン。「帥は、我に一発を与えた者。我の額に傷をつけた爪の獣以来の存在」「下がっておれ!」仙人が青い炎でオーマ=オリジンを包む。それと同時に、オーマ=オリジンはフィールドを展開する。青い炎はフィールドの外に弾かれる。「これは何ということじゃ」サトリは気づくと、フィールドの中にいる。「え…ここはどこ?」オーマ=オリジンが言う。「ここは、我の領域。帥と我の一騎打ちの場」「そんな…何か勘違いしてますよ…」「我は、識別番号A(アタック)。特徴は前進と攻撃」


【オーマ討伐作戦⑩】

 サトリは1体のオーマと対峙する。オーマAはサトリに近づく。「我の領域(フィールド)内では、外界と遮断されている。他者と意思疎通は出来ず、リンクを使うこともできない。勝敗を決めるのは、己の肉体を用いた打撃のみ」サトリは唾を飲み込む。(なんとかなる…なんとかなる…)オーマAが一歩ずつ近づく。オーマAのコアが発する心音が大きくなる。それを聞くにつれて、サトリの心臓の鼓動も速くなる。「我は常に前進する。我の通り道にいる者も邪魔をする者とみなし、排除する。帥は、自ら邪魔をした。帥は、必ず排除する」サトリは再び唾を飲み込む。(自らが弱ければ弱いほど相手が強ければ強いほど効果がある…)震える声で言う。「…あれは、お前が僕の妹を殺したからだー!!」サトリは叫び、大きく振りかぶる。「我の通り道にいるのが悪い。あれは事故に過ぎない。帥は逆恨みを」この時、振りかぶった腕を見て余裕をかましているオーマAは、もう片方の腕が迫っている事に気が付かなかった。「おりゃああ!」「ぐあ!」オーマAの顎を思い切り殴るサトリ。不意を突かれ、後ろに飛ぶオーマA。(僕が行けばすべて上手くいく…)その隙に、サトリは逃さず迫る。オーマAはふらふらした動きで迫るサトリを見る。「笑止千万!怖気づいたか!一撃与えた程度で満足するな!」サトリが無意識に拳を放つ。「!」サトリにもオーマAにも動きが読めない連打がオーマAを襲う。「おりゃああ!!」「ぐああ!!」吹き飛ぶオーマA。「帥、面白い」フィールドの外で見守る仙人。「あ奴、弱者拳を完璧に決めおった。感心じゃ」そこにライラらとクリスらが駆け付ける。「ロンドは大丈夫アルか?」ロンドが割れた岩壁の中から出てくる。「ロンド!オーマはどこ?」「あいつは、あの中だ」「これは、何ですか?」「オーマが展開したフィールドじゃ。あの中には誰も入ることは出来んし、何もすることは出来ん」「そんな…せっかく急いで助けに来たのに無意味じゃない」「中にサトリがいるよ!」「私たちは祈るしかないみたいね」オーマAは立ち上がる。「我の本気を恐れよ」オーマAはサトリを掴み、顔面を殴る。「うぐ…!」何度も殴った後、サトリを離す。倒れたサトリを思い切り蹴飛ばす。フィールドの壁に激突するサトリ。「ぐぐ…」フィールドの外で見守る面々が近づく。「負けるな、サトリ!」「頑張ってください!」「応援してるよ」「「頑張れー!」」面々の思いがフィールドを超えて、サトリの中に流れ込む。(感じる…みんなの思い…聞こえる…みんなの声!)オーマAが近づく。「我に倒される運命、受け入れよ」驚く面々。オーマAが腹を殴ろうと近づいた時、サトリがオーマAのコアを殴っていた。「おりゃああ!!!」「ぐああ!!!」オーマAが倒れる。その衝撃でフィールドが解除される。駆け寄る面々。「よくやった、サトリ!」「頑張りましたね」「応援してたよ」「みんな…ありがとう」オーマAが言う。「帥、何故恐れに打ち勝った?」サトリは今までの旅であった出来事や会った人々を思い返す。サトリが言う。「僕は、前に進むからだ!」オーマAが言う。「我の、負けだ」オーマAのコアが割れる。ロンドとクリスがオーマAの様子を確認する。「倒したぞ!」喜ぶ面々。「やったー!」「やったね~」「やった…やったんだ」「サトリ、鍵を取ってください」レイピアがふらふらのサトリを補助する。中から鍵を手に入れるサトリ。「や、やったよ」腫れて、鼻水や血だらけの顔で泣きながら笑うサトリ。


【異変】

 面々の元に集まる者ら。ウォーリーが言う。「皆の者、鍵は集まったかのう」グレートが言う。「これですよね?」「それじゃ。それがまさしく鍵じゃ」グレートとガルとクリスとモンステラとライラとアヤメとサトリが鍵を出す。「全部で鍵は7つか。これらの鍵を使えば、現実世界に戻れる」「それは待って頂きましょうか」「ソーさん!?」巨大な機関を取り込んだ木の根っこのようなものが絡みついた歩行する物体に乗るソー。ボーンが驚いて言う。「そ、それは、ノヴム・オルガヌム!どうする気だ?」「“夢世界”はこの世界にとって膨大な力の源である。現実世界にとってはこの世界そのものが膨大な力の源ということになる。そんな偉大な代物を独り占めしたいと思うのは、私だけでしょうか?」ソーは、ノヴム・オルガヌムに指示を出す。「ここにいる者を全員殺せー!」暴走するノヴム・オルガヌム。逃げ惑う面々ら。サトリが言う。「みんな!ネアが使えるんじゃ…?」「ナイス!サトリ!」「ネアで倒しちゃいましょう!」面々がネアを発動し、ノヴム・オルガヌムを攻撃する。謎のバリアで防がれる。「無駄だよ。私のマジックでネアは防がせてもらうよ」仙人が言う。「あれはネアの合成なのじゃろう。しかし、厄介じゃ。どうしたものか…」ボーンが鞄の中を探り、何かを探す。ソーが叫ぶ。「私だけが生き残ればいい!」ボーンが呟く。「あった」ボーンは、鞄から取り出した機械を操作する。動きが停止して倒れるノヴム・オルガヌム。「うわ!!何が起きた!?」「電源を落としたんです。常に予備の操縦器を持ち歩いていて正解でした」「思いのほか呆気なく解決したのう」「くそ!!私の計画が!!」「開発したこの僕でも自由に扱うことが難しいんですよ!それが、あなたに操縦できるわけがないでしょう!」ボーンが操縦器をソーから取り上げる。「これは永遠に封印します!あなたのような人がまた現れた時に対処するのが難しい。それほどこれは危険な代物です。あなたは自由がすべてだと思っているでしょう。でも、自由は、不自由があってこそ有り難いと感じませんか?」怪盗ミラーを見るソー。「私は、ただ悔しかった。ある日、マジックを披露する為に学校を訪れた。私はまだ駆け出しのマジシャンで緊張していた。そんな中、自信のあるマジックを披露した。その私のマジックのタネを彼に見破られた。それ以来、マジックをする度、彼のことが思い浮かんだ。私は、ただ悔しかった…」ラウスが言う。「僕もマジシャンを本気で目指しているので、つい言ってしまいました。いつか僕も見破られないほど上手いマジシャンになります」膝をつくソー。その時、空に異変が起こる。ライラが言う。「あれを見て!」空から月が落ちてきている。仙人が言う。「オーマとの戦いやノヴム・オルガヌムとの戦いで、バランスがおかしくなったんじゃろう」月がどんどん大きくなる。その時、ノヴム・オルガヌムのジャスパーと呼ばれる巨大な奇石とカタナシティにあるすべての奇石が光り出し、月に向かって飛んで行く者が現れる。「あれは…ウォーリー博士…?」月を押し戻したまま、姿を消すウォーリー博士。辺りは静寂に包まれる。


【祝賀会①】

 2週間後。宮殿では祝賀会が開かれていた。マイクの前に立つサトリ。「みなさん、お集まり頂きありがとうございます。この度は、オーマ討伐作戦が無事に終えられました。作戦に参加された方もそうでない方も一緒に喜びを分け合いましょう。それでは、お楽しみください」ロンドが言う。「おい!サトリ!乾杯を忘れてるぞ!」「ああ、そうだった…みなさん、お手を拝借します…乾杯!」「「乾杯!」」それぞれのテーブルで会話が弾む。1つのテーブルに奇跡屋と口の悪い店の店主ショーンと常連客マダムがいる。「今回は本当に凄いものを見た。まさしく奇跡と呼ぶにふさわしい戦いだった」「奇跡といえば、奇跡屋の連中が造った秘密兵器も活躍したそうじゃねえか」「あら、そうなの?感心ね」「ほとんどグスタフの仕事だけどな」「…ども」「まあ、ほとんどはそうだ。でも、みんなで頑張って完成した努力の結晶だ」「俺やグラナダはそうかもしれない。カフカはボーンって人と話し込んでただろ。冗談は顔だけにしてくれ」「ゲネも一人裏で休んでたのを見たぞ。お互い様だ」「少なからずカフカよりは仕事したぞ!」「まあまあ2人とも楽しい会だから」ボーンが来る。「みんな、今回はありがとう。乾杯!」「「乾杯!」」「ショーンさんの料理もあると聞きましたが、どれですか?」「このグレーパイルの炊き込み飯と、スコーピオンの唐揚げ、サボテンのスープです」「どれも美味しそうですね!いやあ、楽しいなあ」肩を組むボーンとカフカ。「おい、ゲネも飲め」「こいつ、酔ってやがる」肩を組むゲネとカフカ。「秘密兵器の成功祝いだ!今日は飲み明かすぞ!」「カフカ、そんなに酒に強くないだろ」「大丈夫だよ。楽しい時は楽しまないと損だ」「大丈夫かよ」見守るグラナダとグスタフ。「何だかんだ仲良しよね」「…そだね」ボーンが言う。「君たちも飲め!」「「はい」」


【祝賀会②】

 1つのテーブルにガルとアポロンとジョシューとシープ弟子とシープ爺がいる。ガルが言う。「みんな、お疲れさま」ジョシューが言う。「ガルさん、今回の活躍、聞きましたよ。一人であのオーマに勝ったそうですね。すごいです」「有難う。でも一人じゃない。僕はこの2人に助けられてオーマに勝てた。改めて礼を言います」シープ爺とシープ弟子が言う。「いえいえ。お安い御用じゃ」「寧ろ、ガルさんの速さ、恐れ入りました」ガルが言う。「ジョシュー君も活躍したと聞いたよ」「どうも。それも、あの時ガルさんと先生が救って下さったからです。改めてお礼を言います」「いやいや。それより、アポロン、一つ聞いていいか」「何だ?」「点は、知っているか?」驚いて、飲み物をこぼすアポロン。「どこで知った?」「まず僕の質問に答えてほしいね」「すまない。知っているも何も、点は俺の妻だ。俺は、あの火事の責任をずっと感じながら生きていた。ガルを彼女の分まで守る責任があると思っていたんだ。彼女が死んだと思っていたからだ。それでどこで知った?」「敵組織との戦いで、母さんと戦った。特殊な包帯を武器にしていて、もの凄く強かった。戦っている間、ソウリュウ一族の技を使ってきたから、ピンと来たんだ。母さんだって」その時、調理場で騒ぎが起こる。油がこぼれて火が引火して、大きな火が燃えている。「大変だ!火が!」逃げる人々。3人が調理場に取り残されている。ガルが救出に向かう。しかし、直前で足が止まる。(近づきたくても体が言うことを聞かない…!)アポロンの側に来て仙人が呟く。「彼はヤマアラシのジレンマに陥っているようじゃの」その言葉を聞き、ガルが閃く。ヤマアラシになり、火の隙間から入るガル。「ガル!火が苦手なのに!」「彼は今必死で葛藤に勝とうとしとるんじゃ」火を超えたガル。ソウリュウを持ち、水のネアを纏わせる。「“乱竜”!」火を消すことに成功。ガルに感謝する3人。笑うガル。


【祝賀会③】

 1つのテーブルにクリスとかつての旅仲間がいる。クリスが言う。「またみんなと会えて嬉しいです」ダイアンが言う。「本当だな。シュンは怪盗だから来られなくて残念だけど、あいつの事だからどっかで見てるかもな。ところで、俺がマーリンと会うの何年振りかな?」マーリンが言う。「3年ぶりくらいだと思う」プークスが言う。「クリスがオサフネだった頃、救出に向かって行った以来だ。あの時は大変だったなあ」タケルが言う。「己のいない間にいろいろあったようでござるな」タイミャーが言う。「まあ、何がともあれ、みんな生きてるから結果オーライだな!」ダイアンが言う。「タイミャーって時々良い事言うよな」「時々ではない!言葉には言霊があるから常に心掛けているのだ!」そこにダリアとダラスが同時に反対側から来る。「あなたたち、お友達がたくさんいたのね」「あなたのお友達?」ダリアとダラスが目を合わせる。「私、特製トロピカルジュース飲んでほしいわ」「私、特製ダンゴ食べてほしいわ」「「真似しないでよ!」」クリスとその仲間たちはジュースとダンゴを食べる。クリスらが言う。「「美味しいです」」「「良かったわ」」ダリアとダラスが再び目を合わせる。長船が間に入って言う。「まあ、お二人、落ち着かれよ」クリスピーが来て言う。「お互いの料理を食べてみたらどうですか?」クリスらが見つめる。ダリアとダラスが渋々ジュースとダンゴを食べる。「「…美味しい」」クリスが言う。「この際、仲直りしてはどうですか?」クリスらが見つめる。ダリアが言う。「あなたたちには負けたわ。イケメンなんだもの。見た目より心がね。仕方ないわね。また一緒に店をやってくれる?」ダリアが手を差し出す。手を掴んでダラスが言う。「仕方ないわね。やるからには手を抜かないわよ」「望むところよ」クリスが言う。「2人が仲直りしてくれて良かったです。ところで、クリスピーさんに聞きたかったのですが」クリスピーが言う。「剣のことかい?」「そうです」「親父を殺した剣を壊そうと思って、本部から持ち逃げした。追手もいたし、必死に逃げてある寺に着いた。そこである僧に出会った。驚くことに、その僧は、親父を殺した僧の息子だった。俺は放心状態になった。そしたら、僧が言った。『一緒に修行しませんか?』と。意味が分からなかった。そしたら、僧がまた言った。『心を無にすれば解放されます』と。意味が分からなかった。だが、俺は修行した。ひたすら腕立て伏せをした。追手も来たが、一緒に修行をした。それから、オサフネに剣を渡すためにカタナシティへ向かった」「有難うございます」「どうして礼を言う?」「わざわざ渡しに来てくれたからです」「こちらこそ」そこにピスーが来て言う。「話は聞きました。君は、無罪ですね。オーマとの戦いの功績で罪は解消されます」「有難うございます」「良かったですね」マーリンが言う。「やっぱり気になりますね…」ダイアンが言う。「どうした?マーリン」「クリスさんが敬語で話すことです。他の人はともかく僕にまで言うのは変です」「確かに。クリス、もういいんじゃないか?自分に十分な罰を与えただろ」クリスを見る仲間たち。クリスが言う。「みんなは優しい。僕は普通に話すけど、感謝は忘れない」「「よかった~」」サンタマリアが見守る。「クリス、良い仲間を持ったな」宮殿の外で見守っていた怪盗ミラーが飛んで行く。


【祝賀会④】

 1つのテーブルにナタリーと7人の騎士と英雄たちがいる。ナタリーが言う。「また会えて嬉しい」オックウが言う。「僕も嬉しい」アルメオが言う。「何だ?二人ともいい雰囲気だ」ミザリオが言う。「アルメオ、それからナタリーの騎士殿ら、私たちは離れていよう」7人の騎士の1人が言う。「そうですな。ナタリー様もそのような年頃になられたのですね」オックウが慌てて言う。「待て待て!待てよ、じじい!あっ、いけね」7人の騎士とアルメオが反応し、戻って来る。「「じじいとは誰の事じゃー!」」ナタリーが間に入って言う。「ごめんなさい。オックウも悪気があって言ったわけじゃないの。許してあげて」7人の騎士の1人が言う。「姫様にそう言われたら仕方ありませんな」アルメオが言う。「俺も最近気にしてたからつい…今回はナタリーに免じて許そう」ナタリーが言う。「よかった~」ミザリオが言う。「彼女と彼なら上手くやれるだろう」そこに仙人とワカトラが来る。アルメオが言う。「アルメテオス爺さん、それにアルガオ。いいところに来た」「何じゃ?」「どうしたの?」「土の英雄ナタリーと風の英雄オックウが付き合うことになった」「何じゃと!」「それはすごい!」オックウが慌てて言う。「待て待て!じ…アルメオ!まだそうと決まったわけじゃないっすよ!」「めでたいのう」「今日はお祝いだ」「いやいや!じじい!あっ、いけね」仙人が反応し、オックウに近づいて言う。「じじいじゃよ。おめでとう」「だから、じじい!違うんだって!」「じじいじゃよ。おめでとう」「じじいー!」笑うナタリー。その頃、ステージの準備が整う。司会者が話す。「私は、今回司会者を務めるSONG支援隊員のボニーです。調理場の火災などありましたが、怪我人もなく、こうして無事にステージを始めることが出来ます。ステージは第一幕から第三幕まであります。まず第一幕は、カタナシティにある天成寺の姉妹マツさんとウメさんによる舞踊です。では、どうぞ」


【祝賀会⑤】

 1つのテーブルにロンドとゴールド家とダグラスがいる。ロンドが言う。「まさかゴールド兄弟のいとこも死にかけてたとは。でも、生きててよかったぜ」メイドが言う。「マリ様は、用心棒様のお陰で生きたんです。本当に有難うございました」又三郎が言う。「礼には及ばない」ロンドが言う。「お前は、何て名前だ?」「又三郎」マリが走って行ったのを又三郎は追いかける。ダグラスが言う。「世界一の武器商人の跡継ぎは彼女だけです。世界一の鍛冶職人を名乗る私も感謝せざるを得ません」ロンドが言う。「自分で世界一って言っちゃうんだな」「ええ。そう思っていますから」「その自信、ガッテンの子孫だけはある」そこに、ワカトラが来て言う。「ロンド君、楽しくやっているかね?」「はい!楽しんでます」「うむ。それは何よりだ」アジズとゼックスが見て言う。「相棒、明らかに様子が違うぞ。相棒は悲しいよ」「あいつは、あの人に弱い。先輩とか言ってたな。そうか。先輩に弱いのか」「ゼックス君、ロンドは君の先輩だぞ」「あ、俺も同じか」隣のテーブルにいる忍び族と雷族と奇石教を見てロンドが言う。「英雄リンクの子孫がここに集まっているのか。そう考えると、俺はリンクの後輩ブルースの子孫だったわけだ。はースッキリしたぜ」奇石教のアベックが言う。「楽しいね、ハニー」「楽しいわ、ダーリン」「僕は幸せだ。君への思いを手紙にしてきたよ」「本当?嬉しい♡」「あれ?ない!」「どうしたの?」「いや、用意した手紙がないんだ」「いいわよ。そんなの無くたってあなたへの愛は変わらないもの」「愛しているよ、ハニー」「私もよ、ダーリン」コウたちの目を塞ぐライコウ。「子供は見ちゃいけません!」笑うライドウ。「ふぉっふぉっふぉ。若くていいのう」忍び族の4人は黙々と食べている。「「美味い」」その頃、レイピアが手紙を拾う。「何かしら、これ」ローザンヌが言う。「手紙よ。何て書いてあるの?」「読んでいいもの?」「誰も見てないわ」レイピアが手紙を読む。「『親愛なるハニー いつも君を見ている 君を想うと胸の鼓動が高鳴ってどうかなってしまいそう 君に気づかれないように抑えるのが大変 でももう抑えない その意思を君に伝える』…」「レイピア、大丈夫?顔が真っ赤よ」「え…気のせいよ」「待ってよ、レイピア」手紙を置いて立ち去るレイピア。それを見ていたロンドが手紙を拾う。「レイピアが珍しく顔を真っ赤にしてたぞ。何だ?手紙?」手紙を読むロンド。「これは…!」レイピアを追いかけるロンド。「レイピア!」驚くレイピア。「ロンド…」「お前、俺でいいのか?」「いいわよ」抱き合うロンドとレイピア。驚くローザンヌ。「何これ…どういうこと?」「そういうことになっちゃった」「あら、戦いだけじゃなく恋でも先を越されるなんて。おめでとう」気づいた周りの人々が祝福する。「ひゅ~」「おめでとう!」ロンドが手を挙げて答える。


【祝賀会⑥】

 マツとウメの舞踊が終わる。ボニーが言う。「マツさん、ウメさん有難うございました。綺麗でしたね。続いて、第2幕は、世界で隠れた人気の旅芸人、スキピヨさんとサイモンさんによる劇、『運命の糸を断ち切る神』です。では、どうぞ」神を欺く神役のスキピヨが言う。「お呼びでしょうか」最高神役のサイモンが言う。「運命の糸を調整する役目を与える」「はっ」「重大な役目である故間違いは許されない」「はっ」場面が変わる。「ここが運命の糸の元となる場所…ところでクモの姿がない。どこへ行った?」クモ男役のサイモンが言う。「ひっひ…クモはすでに俺の腹の中だぜ。この糸を使って俺の運命を変えてやる!」劇を見るスキピオウが言う。「ふむ。面白いじゃないか」1つのテーブルにサトリとグレートとナイルとヒヨウとルシナンテとモゲレオとペリドットがいる。サトリが言う。「みなさん、作戦ではお疲れさまでした」グレートが言う。「お疲れさま。サトリ君、カッコよかったよ」ナイルが言う。「お前さんがあの強敵を倒すまでになって元教官の私が褒められてるようだ」ヒヨウが言う。「ナイルは褒めてないわよ。サトリ君を褒めてるの」ルシナンテが言う。「そうだ。お前は褒められて嬉しい年じゃないだろ」「2人して言わなくてもいいじゃないか。私だってそれくらい分かってる」モゲレオが言う。「そうか。新米がそんなに強くなったら元上司の私が褒められてるみたいだ」ペリドットが言う。「隊長、違いますよ」「違うのか」グレートが言う。「ところで、集めた7つの鍵は失くしたりしてないかい?」サトリが言う。「はい。ちゃんと金庫に保管しています」「いつまで保管するつもりでいる?」「ウォーリー博士が戻ってくるまで保管しておきます。もうすぐ戻って来る気がするんです」「そうか」そこにクロゼアスとアリスが来て言う。「総司令官様。この度は作戦の成功をお祝い申し上げます。それから、先日はアリスがご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」「ごめんなさい」「頭を上げてください。もう過ぎたことです」「総司令官様、感謝いたします」「有難う」「いえいえ」「サトリ君、立派になったな」モゲレオが言う。「何か向こう盛り上がってるな」ペリドットが言う。「兄さんのいる方だ。レイピアさんが珍しく真っ赤になっている。まさか、2人は付き合ったんじゃ!?」「それはめでたいな」サトリが言う。「え…ロンドとレイピアが、付き合う…?」そこにバラライカの者らが来る。「「総司令官様、作戦お疲れさまでした」」「う、うん。お疲れ…」エスタが言う。「何か様子変だな。ん?ライラさんを見てるべか」「そ、そんなことないよ。みんな、こっちに来て食べて行って」「怪しいべな。ロニョも思うべ?」「ドッチニシロ、キョウハメデタイ」「ロニョ、一段とおでこが伸びてるべ」「ワタシノコトヲ、ロニョウジントヨブガイイ」「七福神の寿老人とかけてるべか!福禄寿の間違いだべ!」笑う一同。


【祝賀会⑦】

 1つのテーブルにライラと孤児院の子たちとレインボーとタクトとダンがいる。ライラが言う。「みんな、全部食べていいのよ」デスティニーが言う。「ライラ姉さんの言う通り、食べていいけど、よく噛んで食べてね」「「はーい」」「みんな、元気でよかった」「最近はララとレイラの2人も他の子とたまに遊んだりするのよ」「そうなんだ。前に私の声が出なくなった時に、2人の気持ちが少し分かった気がするの。気持ちを声に出したいけど出せないもやもやした感じなの。でも、周りの人が気にしてくれたり、いてくれたりすると考えたら、それだけで感謝でいっぱいになった。結局レインボーのお陰で治してもらったんだけどね」レインボーが言う。「お役に立てて良かったです。その後のライラさんたちの歌のお陰で倒せましたから」「そうなの?凄いわね、ライラの歌って」「たまたまよ。ララとレイラもその内声が出せるといいんだけどね」サキとダンが言う。「美味しかったね」「美味しかった。何する?」「外にプー太っていう犬がいるの」「僕の友達のガウも外にいるよ」「じゃあ、外に行く?」「行こう!」他の子たちと共に外に行くサキとダン。1人で寂しそうなタクト。そこにマリが来て言う。「1人?お邪魔するわ」お茶を飲むマリ。「紹介するわ。私の用心棒、又三郎よ」「はじめまして」握手する又三郎とタクト。「大きい手ですね」「まあね」お茶を飲むマリ。「あなたのお隣にいるのは誰?」「彼は、ウォーリー博士が造ったアンドロイド、リメビウスだよ」「ハジメマシテ」握手するリメビウスとマリ。「私たち、お友達よ。よろしく」「よろしく」握手するタクトとマリ。ステージ。クモ男役のサイモンが言う。「ひっひ。俺の糸で、運命の糸を弄ってやったぜ。俺の嫌いな奴は悪い方へ、俺の好きな奴も悪い方へ向くようにな!」神を欺く神役のスキピヨが言う。「ついに見つけた!運命の糸を弄っているのは貴様か!」「ひっひ。その通り。だが、今更分かったところでもう手遅れだ。すでに運命は狂ってしまった後だからな!」逃げるクモ男。「待て!」場面が変わる。「ひっひ。ここまで来れば追ってこれまい」「追いついた」「何!?」「神を甘く見るなよ」「ひい…神様、お命だけはお助けを!」剣を抜く神を欺く神。「運命の糸を悪しき色に染めるとは!この怪物め!成敗する!」神を欺く神がクモ男を斬る。「悪さをすれば天罰が下る。これが運命」倒れるクモ男。場面が変わる。最高神役のサイモンが言う。「此度の件、ご苦労であった」「はっ」「其方に伝える。運命の糸を調整する役目を新たな者に任せる」「私はどうなるのでしょうか」最高神は席を立ちゆっくりと神を欺く神に近づく。「其方は神を欺く神として直ちに処刑される」最高神が杖を掲げると雷が神を欺く神に落ちる。「重大な役目である故間違いは許されない」「悪さを見逃しても天罰が下る。これもまた運命…」倒れる神を欺く神。劇が終わる。ボニーが言う。「スキピヨさんとサイモンさん有難うございました。いやー、面白かったですね。続いて、最後の第3幕は、バカンスシティの歌姫リリー様とフィラデルの王ギルバート様による演奏です。では、どうぞ」リリーが言う。「ライラさん、もし良かったら一緒に歌いましょう」ライラが言う。「え?」ライラがステージに行く。「いいの?」「もちろん」準備が出来た合図をする3人。ギルバートが言う。「どうも。今回は3曲を演奏予定です。1曲目は鎮魂歌(レクイエム)という古くから魂を癒す詩として歌われてきた詩です。2曲目は狂想曲(ラプソディー)という近ごろの災害が多いことから生まれた、諦めた時に元気をくれる希望の詩です。3曲目はヒナギクの詩というある素敵な女性を想って私が書いた詩です。では、お聴きください」1曲目と2曲目が終わり、アッパラッパーがステージに出る。「ヘイヨー。ラップ担当アッパラッパーです。よろしくお願いするヨー」ユッカがステージに行く。「私はアイドルを目指しているユッカです。よろしくね☆」虜になる者ら。「かわいい」「いいぞ~」目で合図する5人。ヒナギクの詩を聞き、サトリがため息をつく。「はあ…楽しいなあ」その時、宮殿の外で激しい光と衝撃が起こる。


【帰還①】

 グレートが言う。「サトリ君、ここは私たちに任せてくれ」「任せました、グレートさん」サトリが外に出る。そこに、煙を上げる宇宙船がある。その傍に、未確認の獣が複数体蠢いている。サトリの横からパキラとジョーが走り抜ける。「あれの処理は任せて!」「俺が斬る」モンステラとエンリケが後に続く。「テンテンちゃん!お願い!」「にゃー!」「未確認の獣の討伐はララバイの任務だ」バランとスミスがさらに続く。「ワイらの本気、見ときや!行くで、相棒」「おう。テルとンギーの分も食らうがいい」面々と英雄たちも駆けつける。「ロンド、おめでとう」「おう。クリス、普通に話すようになったんだな」「うん。でも、感謝は忘れない」「レイピア、おめでとう」「ありがとう。ナタリーも彼氏できたのね」「うん。オックウっていうんだ」「どうも。ナタリーの彼氏になったオックウです」「ちゃんと挨拶して偉いぞ」「やはり彼女と彼は上手くいく」サトリは宇宙船の方に向かう。宇宙船の中から出て来るウォーリー。「おう、サトリ」「博士、心配しましたよ。どこに行ってたんですか?」「ちょっと宇宙空間を彷徨っておった。じゃが、彼らにすぐ助けてもらった。じゃから、何も心配いらん」宇宙船の中から出て来るアグルとラウス。「私は驚いた。監視していた星から人が飛び出てきたからだ。すぐ救出に向かった。もう一度私は驚いた。その人物がウォーリー博士だったからだ」回想。宇宙船の中。「驚かせてすまんのう。いやー、助かったわい」「何があったんですか?」「地球に月が落ちてきて、それを押し返した。そこまではよかったんじゃが、戻ることができんくなってしまってのう」「大気圏を通過する時、摩擦熱で燃えてしまうからな」「そうじゃ」静寂が流れる。「博士、一つ協力してくれるか?銀河に突如現れる、銀河獣、ネオスザウルスとの戦いに協力してほしい」「いいぞ」「感謝する」「地球代表としてお前さんたちに力を貸そう。その代り、終わったら返してくれよ。心配しとる連中がいるからのう」「勿論だ」「じゃあ、ちょっと兵器を造りたいんじゃが。これを使って」「何だ、それは?」「オーマの毛じゃよ」「オーマ?」「まあ、獣の一種じゃ。地球史上最強の獣と言った方が分かりやすいか」「ほう。面白い。地球史上最強の獣の毛を元に造った兵器で宇宙史上最強の獣を倒すというわけか。何日で出来る?」「一日あれば十分じゃ」翌日。ウォーリーは兵器を完成させた。「オーマの毛からオーマの遺伝子を読み取り、兵器として生み出された。お前さんの名は、オーマツーじゃ」「オーマツー。我ノ名ハ、オーマツー」「そうじゃ」アグルとラウスが来る。「博士、完成したのか。おい、いつの間にこんなに作った!?10体いるぞ」「ああ。わしにかかれば容易いよ。左から、オーマツーワン、オーマツーツー、オーマツースリー」「もういい。わかった。さすが博士だ。これで銀河獣を倒せる可能性が高まった。私たちの星の戦士たちは各銀河から集合してきている。私たちも直ちに向かう」そこには、背中に丈夫そうな羽が左右3枚ずつ生え、顔に瞳が青くそれ以外は赤い目が左右3つずつ口が縦に2つ付き、短い腕に鋭い爪を持つ、身体が桃色の、長い尾が生えた、一つの星ほど巨大な龍がいた。「行くぞ!」銀河獣との激しい戦いが始まった。銀河獣が目や羽や口から光線を飛ばし、ダメージを受けた。「我ハ人ヲ守ルヨウプログラムサレテイル」10体のオーマツーが戦地に飛び出した。それから2週間後、二つの星の戦力は協力したことにより銀河獣を倒した。しかし、ダメージが大きく、アグルとラウスとウォーリーを乗せた宇宙船は地球に落下した。回想終わり。「そんなことが…」「激しい戦いでオーマツーは1体になってしまったがのう」宇宙船の中から1体のオーマツーが出て来る。「我ハオーマツー。ヨロシク」


【帰還②】

 アグルが言う。「ところで、銀河獣の残骸が落下してこなかったか?」サトリが言う。「それなら、もう倒し終わります」ロンドとレイピアが力を合わせる。「行くぞ、レイピア!」「いいわよ、ロンド」「「“バステトバースト”!!」」「ギャアアアアア!!」ナタリーとオックウが力を合わせる。「行くよ、ナタリー」「うん、オックウ」「「“風と土のロンド”!!」」「ギャアアアアア!!」アグルが言う。「そのようだな。安心した。私たちがテラと呼ぶ星、地球の者も強いことが分かった。しかし、君は強すぎる力で地球を壊しかけたね?」「はい…」「十分危険分子と判断される。普段なら訪れていたが、私たちは銀河獣の出現でそれどころじゃなかった。その為、今判断する。地球の代表者は誰だ?」「僕です」「そうか。話が早い。ちょっと来てくれ」サトリとアグルは宇宙船に入る。クリスが言う。「これから彼らはどうするのかな…」グレートが言う。「もしかして、全世界の国が統一できたように、星同士が今度はかつての国のように提携を結ぶかもしれない。きっと彼らならそうする」サトリは、アグルとともに出てくる。ロンドの目の前で2人は握手をする。「どういう風の吹きまわしだ?」「こういうことだ」アグルが一枚の紙を出す。「“ガイアテラ相互不可侵共同条約同意書”?何だ、これ?」ウォーリーが言う。「つまり、二つの星はお互いに侵略することはなく、お互い共同で戦うという条約じゃな」「そう。今後、私たちがこの星を危険視することはない。私の故郷、ガイアの代表のこの私が言うのだから間違いない」グレートが言う。「でも、何故そんなすんなりと?」「このような話を持ち掛けてくる者が、悪い者だと思えなかった、それだけのことだ」「なるほど。サトリ君、やるね。私が見込んだだけのことはある」「グレートさんに言ってもらえるなんて、僕、感激です!」「君にはこの言葉を贈ろう。“青は藍より出でて藍より青し”。私は藍で、君は青だ」その後、アグルとラウスは迎えに来たセブンの宇宙船に乗って故郷の星ガイアに帰った。こうして、地球に平和がもたらされた。


【本当の帰還】

 SONG本部総司令室。面々とウォーリー博士が金庫の前にいる。「えーと、番号は…」「サトリ!お前、番号を忘れてないだろうな」「大丈夫。ちゃんとメモしてあるから」「よかった。折角オーマを倒したのが無駄になるもの」「ライラ、そうじゃなくて現実に戻れなくなることが問題だよ」「忘れても金庫を壊せばいいのよ」「開いた!」「やった~。これで帰れるね」「お前さんたちのお陰じゃ。本当にありがとう」「何を言うんですか。僕たちだけじゃなくて、みんなのお陰ですよ」「そうじゃな」面々とウォーリー博士が鍵を1つずつ持つ。「鍵を使えばこの世界にある意識が現実世界に戻る。心の準備はええか?」頷く面々。「現実世界をイメージするんじゃ」(現実世界…)現実世界と意識が繋がった者が、さっきまで居た身体から離れる。浮かぶサトリの目の前にもう1人のサトリ。サトリは別れの挨拶をする。「さようなら。もう1人の僕」その時、もう1人のサトリが返事をする。「貴方たちのおかげでこの世界は救われました。この世界は僕たちが守っていきます。ありがとう」「こちらこそありがとう。僕はこの世界に来て強くなれた気がする。現実世界でも頑張るよ。君も頑張って。さようなら…」サトリは光となって消える。


 「今日も、地球は平和な時が流れている。おそらく彼らも上手くやってるに違いない」「彼ら?」「誰だい?」「彼らといえば、彼らだ」「何を言ってるのかしら」「俺たちは本部基地の見回りだ」「うん、行こう」「きっと彼なら大丈夫。明日という字は明るい日と書くのだから」



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