第4章
【開戦】
鏑矢が上空に放たれた時、世界各地で敵組織が動き出した。また、同じ時SONG本部でも事件が起きていた。「総司令官様!大変です!アンドロイドがハッキングされました!」「何だと!すぐに戻る」「俺らも行くぞ」グレートと面々が総司令室に向かう。隊員が倒れている。「戦いの跡がある。メビウスはどこに行った?」グレートが画面を見る。「支援室!」メビウスが隊員を弾きながら、移動している。「あそこにはSONG本部から支部までのSONGに関わる全てのデータがある。何としても守らねばならない」「追うぞ」グレートと面々が支援室に向かう。「メビウス!何をしてるんだ!」グレートがメビウスにしがみつく。「止まれ!」メビウスが華麗な身のこなしでグレートを弾き飛ばす。「大丈夫ですか!?」「ああ。だが、ここで、あまり無茶は出来ない」そこにウォーリーが来る。「何やら大変なことになっとるのう」「博士!良い所に。アンドロイドの修復はできますか!?」「…すまん、わしは作る専門なんじゃ」「…分かりました」グレートが前を向く。「支援部隊の皆、聞いてくれ。これは世界を巻き込む戦争を左右する大事な局面だ。この局面を乗り越えるためには支援部隊の皆の力が必要だ。そこで命令する。直ちにハッキングを解いてくれ!」「「は!」」ジムとユノナをはじめとする支援部隊が総力を挙げ、ハッキング解除に挑む。その結果メビウスのハッキングは解除される。「「やりました!!」」「よくやったぞ!」喜んだのも束の間、予期せぬ事態が起きる。「エラーハッセイ。エラーハッセイ。バクハツシマス」「爆発だと!」ジムが言う。「ひょっとして解除と同時に起動するウイルスかもしれません」「なるほど。あと何分後だ?」「アト15フンゴデス」「メビウスの電源を切ればいいのだろう?」「それができないんです。メビウスのシステムとSONG全基地のシステムが連動していて、個別に電源を切ることは不可能です」グレートが一考する。「よし!一度、SONGのシステムを落とす!」「本気ですか!?」「そんなことをしたら、全てのデータが初期化されますが…」「安心しろ。SONGは一時間おきにバックアップをしているんだ。このアンドロイド、メビウスの中に!」納得する一同。「では、SONGのシステムを落とします」SONG全基地のシステムが停止する。「よし!メビウスを再起動してくれ」「おかしいです。メビウスの爆破装置が作動し続けています!」「何だって!」ウォーリーが呟く。「そういえば、これを作った時、最終兵器の役割として爆破装置は一度起動すると停止しない設定にしたんじゃ」「アト5フンゴデス。エラーハッセイ。エラーハッセイ。バクハツシマス」騒然とする一同。「私が直々に解決する。ジム、バックアップを取り出してくれ」「え…」「時間がない!」「はい…」メモリーカードを抜き取る。「アト3フンデス」メビウスを担ぐグレート。走って外に出る。「アト2フンデス」ライオンになり走る。「あと1プンデス」鎮守の森に入る。メビウスを地面に置く。「アト10ビョウデス」グレートが土のネアを発動する。メビウスを土が固く囲む。「3、2、1、ゼロ…」メビウスが爆発する。グレートが土のネアを解く。ボロボロに大破したメビウス。「すまない、メビウス」
【復旧】
SONG本部支援室。グレートが戻って来る。「被害は最小限に留めた」「さすが総司令官様です」「メビウス…」群がる一同。「お前はこんなに愛されとったんじゃのう」「博士、直してあげてください」「わかった。わしに任せておけ」メビウスを受け取るウォーリー。「無事バックアップ出来ているね」巨乳の支援隊員ボニーが答える。「はい。順調に進んでいます。ただ元通りになるまで最低でも半日はかかりますね」「そんなにかかるのか。それまで支部と連絡が取れない…そうか。それが狙いか」「ウイルスがなければ無事済んだ事ですが…」「そうだね。敵組織が送って来たのだろう。支援部隊の皆はこのまま作業を続けてくれ。私は統一国家ユニオンの各都市の代表にこの事を連絡せねばならない」グレートが総司令室に向かう。面々も追う。「ぞろぞろといつまでついてくる気だ」「何か手伝える事はあるか?」「どうしたんだ?ロンド君は、私に不満があるのだろう?」「いや…何というか、働く姿を見ていたら気が変わった」「そうかい。じゃあ、連絡をする手伝いをしてくれるかな?」「分かりました、総司令官」面々はグレートを手伝い、各都市の代表に連絡をした。「これから戦争が起きます。命を守る行動をしてください。SONG本部があるパンベンシティに避難も可能です」「よし!君たちの協力のお陰で終わったよ。ありがとう」「お安い御用です」「ロンドも敬語が上手ですね」「まあな」
【集結】
数時間後、呼びかけられた者たちがSONG本部に続々と集合する。グレートが台に立つ。「皆、急きょの呼びかけによく集まってくれた。もう知っている通り、SONGは宣戦布告を受けた。これに対して、SONGは真っ向から応戦する。現在、支部との連絡が取れず、状況が分からない。危機的状況に陥っている可能性もある。その場合を考慮して、一部の者には支援に向かってほしい。残りの者は要である本部を守ってほしい。編成はこの後伝える。それから奇石を各部隊に配布する。奇石を使用すればネアと呼ばれる自然の力を発動でき大幅に戦力が増加する。ネアの発動にはコツがある。カリュードが出会った仙人から教えを受けたのが、“無の境地”だ。簡単に言えば、精神を研ぎ澄ます事で極限まで集中力を高める技だ。敵組織が奇石を使用する事も考えられる。敵より適確なネアを発動して、勝利してほしい。これは、SONG全部隊を投入する最大の作戦“トッカータとフーガ”である。全員で作戦成功させる。以上だ。皆の健闘を祈る」編成を聞き、それぞれがそれぞれの戦地へ行く。本部に残った主な戦力は、総司令官、近衛衆、タブララサ、カリュードそれから急きょ集まった者たち。「ナタリー!無事だったんだね」「うん!この人たちと一緒にいたから」「「どうも。英雄です」」「英雄!?じゃあ、リンク様の子孫っていうことか!」「いかにも!」「英雄が復活したという噂を聞き急きょ集まって頂いた」「ライラも呼びかけで来たんですか?」「ええと、私じゃなくて、ロペスさんが呼びかけられたの」「私はレーサー王ですが元ロードバイク選手でもあります。足の速さを活かしたいと思います」「そんな過去もお持ちなんですね。レインボーさんも来ていたんですね」「私と一緒に来たいって、本人の意志なの」「皆さんのお役に立ちたいと思います」「オサフネ君、久しぶり」「プークスさん?」「そう。元パパラッチの僕が何だかわからないけど、ここにいる」「実力で引き抜かれたんですよ」「あの時の兵士の人もいるわ」「ピーナッツです。今は大臣をしている元兵士です。あの時はどうも」「え…ソーさん?どうしてここに…」「いちゃいけないのかい?私は元マジシャンとして集められた」「…」「彼らの他に元プロサッカー選手ディフェンダーのオローレ、元プロ野球選手ホームラン王のペープ、リリーフエースのモノが集まってくれた。彼らを元連合とする」「あの時の巨人さんだ!」「僕、メガロ、よろしく」「メガロ君の他に、火のネアを発動できるアポロン、その助手ジョシュー、近衛衆のナイルの娘ユーフラテス、近衛衆のヒヨウの息子ミミハがいる。彼らはタブララサに加わってもらう。七武器を持つ頼もしい戦力だ」「七武器なら私も持ってる」「カリュードのパキラ君か。その槍は“一撃必殺”グングニル」「そう。神オーディンが振るったとされる槍よ」「となると、いかづち、ハヤテマル、グングニル、悪宿剣と7分の4が揃っていることになる。これらの武器とこれだけの戦力が味方だ。今のSONGは百人力になった」
【近衛衆①】
支援隊員は、システムのバックアップ作業を行う。「ユノナ、ちょっと席をはずすよ」「わかったわ。すぐ戻って来てね、ジム」ジムが席を離れる。「ボニーさん、あの二人は仲が良いですね」「サキちゃん、そうよ。二人はいつも一緒にいるのよ。それは仕事でパートナーだからよ。二人は優秀で“影のツートップ”と呼ばれているの」ジムは総司令室の前に立つ。「ユノナのためだ。やるしかない…」そこに、グレートと近衛衆が現れる。「彼らには外の守備を、私たちは中の守備を固める」「あれは、支援隊員のジムでは?」「そうだ。ジム、どうした?」「ちょっと…」「悩み事かい?いつも君には助けられているよ。ありがとう」「そう言って頂けて、うれしいです。僕も救って頂いた恩をお返ししようと思って…もっと活躍したいです。そうだ、とっておきの情報があるんです」「何だ?」近づくグレートの腹を殴るジム。「うっ…何故だ、ジム」「こいつめ!」ルシナンテがジムを捕らえる。「よくやった」近衛衆の一人が言う。武器を手に取る。ヒヨウを庇いナイルが腕に怪我を負う。「何の真似だ、ラル」「見ての通りだ」「まさかお前…」「そうさ。今まで隠していてすまない。あと、俺の本当の名前は、スパイラルだ」「スパイ、ラル…スパイだと隠していたのか。総司令官を守ると誓い合ったじゃないか!あれは嘘だったのか!」「いや、嘘じゃない。今この時までは。だが、今からは嘘になる」ヒヨウが呟く。「ラル、スパイはあなただけ?」「いや、違う」武器を手に取る三人。「嘘でしょ…シェリンダ、それにアルフレッドとクレセントまで」「もうSONGは終わりだ!だから、お前たちも諦めてこちらにつけばいい」「そんなのするわけがないだろう!」ナイルが剣を抜く。「やる気になったな」「ああ。俺は、お前を倒して、SONGを守る」「一度お前とは剣を交えたいと思っていた」ラルとナイルが鍔迫り合いになる。ルシナンテがジムを気絶させる。「ちょっと寝てろ」「大丈夫ですか、総司令官様」「問題ない。それより今はこの状況を対処しなくては」
【近衛衆②】
近衛衆にいたスパイが残りの近衛衆とグレートに向かい合っている。「こんな事になって残念に思うぞ」「それはお互い様だ。SONGのやり方が上手けりゃこうはならなかった」「そう言ってSONGなんてどうでも良かったんだろ。お前は強さを求める男だ。お前は敵組織の方が強いと思ったから寝返った」「ふふ。さすが近衛衆筆頭ナイル」ラルがナイルを弾き飛ばす。「さすがに片腕では上手く戦えん」「危ないわよ」ナイルを庇うヒヨウの首を絞めるラル。「うっ」「おい、ラル。覚悟はできているのかよ!」ルシナンテが繰り出す拳を掴むラル。「かつての仲間に容赦ないな。こちらも容赦なく行かせてもらう」ラルはヒヨウを気絶させた後、ルシナンテの腕を掴んで壁にぶつける。続けてルシナンテの腹を蹴り、別の壁に吹き飛ばす。「ぐは」「まさか、ヒヨウとルシナンテがやられた」「あとは思う存分戦おう、ナイル」「ナイル!」「総司令官!貴方の相手は私たちだ!」シェリンダが立ちはだかる。アルフレッドとクレセントが武器を構える。後ずさりしながら、総司令室の中へ入るグレート。「君たちはなぜ私に武器を向けている?」「貴方を倒さなければ、SONGはあり続ける。私たちの世界を守る夢は実現しない」「SONGも守っているだろう」「いいえ。SONGが行う一つの災害を対処する悠長なやり方ではいずれ世界は滅んでしまうでしょう」「では、どうするのが正しいやり方か教えてくれ」「災害の根源があるはずです。それを見つけ出し、一気に止めに係ります」「それまではどうする?被害は出続けていいのか?」「いいえ、そうは思いません。被害の少ない地域への避難を進める一方で災害の発生も増やし根源を見つけやすくするのです」「それは、かなり危険だ」「実行する前に決めつけてはいけない、貴方が言った言葉です」「私たちも真剣なのです」「だから、こうして私たちの道をふさぐのか…言ってくれれば共に向かうことができたかもしれない」「それはすでに試しました。貴方は忙しさでお忘れなのでしょう。私たちの発言を却下なさった事を」「そうだったのか…」沈黙するグレート。「貴方は強いお方です。しかし、相手が三人では、どうでしょうか」「この状況で、勝つ可能性は非常に低いです」「もう諦めてください」沈黙を解くグレート。「…今までずっと気にかけていたんだ。どうも敵の動きが先回りしているな、と。おかげですっきりした。そうなったら、もう手加減しなくていいな。油断するなよ。君たちは私が本気を出した時どうなるかを知っているはずだ」「勿論知っております。ですから、私たちも全力で行かせていただきます!今までお世話になりました!!」「夢の実現のために!」「世界を守るために…」本気の戦いが始まる。
【近衛衆③】
ウマになるシェリンダとアルフレッドとクレセント。三人ならぬ三頭の突進を躱すグレート。三頭の攻撃が次第に加速し、グレートを捕らえかける。「暴れ馬を相手にするのは骨が折れる」ライオンの腕で一頭の突進を受け止める。もう一頭の突進をもう片方の腕で受け止める。「お終いです!」三頭目が突進する。グレートは腕の力を使って高く跳躍し、突進するウマに跨る。暴れるウマにしがみつくグレート。ウマに矢が入った袋がぶら下がっているのに気づく。「この袋、君はシェリンダか。この矢で君は多くの獣から私を守ってくれた。君は本来優しい」「だから、どうしたんです!」「この矢には睡眠薬が塗られている。君は眠らせて獣を倒すんだ。こうやって」グレートが矢をウマに突き刺す。ウマから降り、残りのウマ2頭に矢を放つ。「ひと眠りすると、頭がすっきりするぞ」眠る三人を一瞥した後、総司令室を後にする。廊下のあちこちに血がついている。血の跡を辿った先に、足に剣が刺さり倒れるラルと口から血を流すナイルの姿がある。「二人とも大丈夫か!」「…ちょっと苦戦しました」回想。ラルの猛攻を全部受け止めるナイル。「負けを認めろ、ナイル!」「負けを認めるのはそっちだ、ラル」ナイルはずっと隙を狙っていた。疲れで一瞬出来た隙をつき、足に剣を突き刺した。「うお!」「もう動けまい」回想終わり。「そうか。二人とも本気で戦ったのか。今動けるのは私だけだ。初戦は私たちの勝利だ」「私たちも動けます」ヒヨウとルシナンテが現れる。「ラル、私の気絶したふりを見抜けないなんて、あなたらしくないわ」「俺があんな蹴りで気絶するわけないだろ」「ちっ、手加減しすぎたか…」「正直になったらどうだ。手加減したんじゃなくて、私たちの強さを前にして力が出なかったんだろう」「そうさ、いざ勝負をする時、自分の選択が間違いだと気づいた。普段共に行動して強さを知っていたはずなのにな…」「ラル、反省したなら総司令室で眠る三人とジムを連れて監獄へ行くんだ」「はい…」ラルが足の剣を抜き、ナイルに渡す。「あの三人が起きるのをここで待ってます…」眠るラル。「お前が眠ったら待てないぞ」ジムが目を覚ます。「あ…」「ジム」「申し訳ありませんでした!」土下座をするジム。「ウイルスも僕がやりました。後、総司令官様を殴ってしまって…」泣き出すジム。「良いよ、もう過ぎたことだ。なぜあんなことをしたのか聞きたい」「ユノナに危険が及ぶと脅されたんです」「そうか。おそらくジムが戦闘出来ないと知って脅してきたんだろう。たとえ、そうだとしても、君は監獄に入る。その事は考えなかったのか」「考えました。でも、自分がたとえ悪者になったとしても、それでも僕は彼女を救えるのなら自分を犠牲にする方を選びます」「そうか。だが、彼女はこの事を知って悲しむと思わないか」「…」「私もきっと彼女も君に本当の事を言ってほしかった」「本当に申し訳ありませんでした」「ラルが君を監獄に連れて行く。それまで待て」うなだれるジム。「私たちは総司令室で監視だ」「「はい」」
【雪】
外は夜になり暗くなる。面々とタブララサが会話している。「ユーフラテスさん、占いの店はどうしたんですか」「母に任せてきました」「そうですか。戦闘は出来るんですか?」「ええ。父の修行を受けた時、自然とすぐに上達しました。父の遺伝子を受け継いだのだと思います。経験はないんですけど」「経験はないんですか」「ミミハさんは男の人ですか…?」「はい、そうですが」「いや…綺麗だなと思って」「ありがとう。私の母が、美人が多い水仙一族だからかもしれません」「水仙…また、姫は花に関係が…。どうしてこんなに多いんだ?」「私、男です」「あ、そうか。姫じゃなくて王子ですね。失礼しました。…じゃあ、妹と違うか」「ペリドット、仲間が増えて良かったな」「うちでは珍しい事だよ。兄さんも前に会った時より仲間が増えてる」「ああ。俺のは入れ替わりが激しいんだ」モゲレオがペリドットの怪しい仕草に気づく。「何故ネアを発動してる?敵がいたか」氷ついた手を隠すペリドット。「見えました?隊長は侮れませんね」「ペリドット、お前、スパイか」「そうだったらどうするの?」「俺が、止める」空から雪が降り出す。「あれ?何か降って来た」「ライラ、雪だよ!」「初めて見たアル。レイピアはどうアルか?」「私は初めてじゃない。あの時も雪が降っていた」回想。レイピアは山賊の敷地内の檻の中にいた。外には雪が降り出した。徐々に下がる体温。レイピアは横になる。見回りの山賊はレイピアが倒れているのを発見。息をしているか確かめるためもう一人を呼び、鍵を開ける。近づいた時、レイピアが足払いで一人を倒す。山賊が気づくともう一人が壁で倒れ、羽交い絞めにされている。「生きていたいのなら捕虜を解放し逃がせ」山賊が失神。「ひ弱な奴だ」山賊から奪った鍵で檻を開ける。逃げだす捕虜。その中の一人がレイピアに抱きつく。「レイピア。怖かった」「姫様、とりあえず、逃げましょう」「待て。荷物を忘れてる」二人の荷物を投げる少年。「誰だ」「名乗る程の者じゃない。またどこかで会える気がする」回想終わり。「あの雪はネアだったのね、ペリドット」ペリドットが手を広げてかざす。「兄さん、僕を止めてみせてよ」
【本部の戦い①】
SONG本部に向かう二人の金髪の少年。「雪だ。僕らの出番だ」「やっとこの時が来たんだね、兄さん」「ああ。見せてあげよう。僕らの実力を」グレートが画面を見る。「おや?ロンドとペリドットが戦っている。兄弟喧嘩かな?」ロンドの拳を躱すペリドット。「当たらねえ。相変わらず強いな、お前は」「兄さんには負ける気がしない」ロンドの腕を掴み、投げ飛ばす。「ロンド!」「手を出すな!俺が、止める」「あの少年、熱い男だ。いいぞ!頑張れ!」「一方、雪の少年は避けるだけで攻撃をしない。何を考えている」「ちょっと、先輩。誰か来たっぽいです」「何!」英雄たちが気づいたのは、二人の金髪の少年。アルメオとミザリオがそれぞれ受け止める。「なかなか力強い!」「まさか、雪が少年たちへの合図だったのか!」「気づいても遅いよ、おじさん」「僕ら、チャック兄弟を相手にして勝てた者は一人もいないんだ」オックウが聖剣を使い、雷を放つ。「おっと」後ろに下がるチャック兄弟。「そんな技が使えるんだ。こっちも秘密兵器を繰り出そう。いいよね、兄さん」「ああ。ワスト博士の発明品、クローン・インキュベーション・ボール」二人がボールを投げると、中から大量のクローン兵が生み出される。「行け!クローン兵!」元連合とタブララサと面々がクローン兵と戦う。「強そうな人が来たなあ」「何を呑気な事を言ってるんだ。一体お前、何を考えてる」「僕は、水が好きだ。物を流し、包み込むことも出来る」「何を言ってる」「温度が下がれば、固まるし、温度が上がると、見えなくなって触れなくなる」「だから、何なんだ!」「僕は水と相性があった。水のネアが使えるからね。本当に良かったよ。水のネアがあれば、何でもできる」クローン兵が二人を襲う。氷漬けにするペリドット。「危ないよ、兄さん」「おい、スパイが助けていいのか?」「僕の役目は合図だけ。もう終わったよ」「お前は、そういう奴だったな。水のように自由な奴だ。お前には水が合ってる」「ありがとう」「自由はいいが、一言言ってほしいぜ」「言ったら、兄さんに止められちゃうでしょ。まあ、気をつけるよ」「アルメオ、私たちもオックウのように」「そうだな」アルメオとミザリオが聖剣を使い、炎と水を放つ。チャック兄弟が本気を見せる。「速すぎて見えん…」「当たっていない…」「僕たちを甘く見過ぎだ」「僕たちは首領様の組織の一等兵だ」高速移動の攻撃を受け、オックウが吹き飛ぶ。「いてて。やったな」オックウが本気を見せる。雷が四方八方に飛び散る。「うわあ!」「兄さん」チャック兄に命中。「おい!どこ撃ってんだ!」「きゃあ!」クローン兵や仲間にも命中。「やり過ぎた…ごめんなさい」「兄さん、離れよう」「ああ…」「逃がしては厄介だ。追うぞ」「行くぞ、オックウ」「はい」英雄たちがチャック兄弟を追うように本部を離脱。
【本部の戦い②】
面々とタブララサと元連合はクローン兵を倒していく。仲間の中で戦闘に慣れていない者にとって一瞬の隙が命取りとなる。「このバズーカ反動がデカい」空からクローン兵が鋭い爪の足で襲い来る。「危ない!」横から助けた者の飛び膝蹴りでクローン兵が吹き飛ぶ。「君はタケル!」「プークス殿、ご無事か」別のクローン兵が襲い来る。「“居合切り”」「長船さんも!」「拙者らは志願したのでござる。王様の同行を」クリスとナタリーがライラとサトリとレインボーを守りながら戦う。「守るように戦うのは大変です…」「クリス!後ろ!」クローン兵を盾で防ぐ者。それは王冠を頭に付けたスーツ姿のカタナシティの元王スキピオウだった。「遅れてしまって申し訳ない」「ナタリー!今度はそっちが危ないです!」クローン兵に槍が刺さる。「只今参上」「ピヨ丸、かっこいい」「元役者スキピヨ駆けつけたぜ。元連合に加わるぞ」さらにもう一人が現れる。「私も加わります」「父さん!」「いや、私は君の父じゃない。叔父のヘンリーだ」「叔父さん!どうして、ここに?」「呼びかけを受けたからだよ。ただ、兄さんは姉さんの救出に向かっていて不在だった。兄さんは何でもやり遂げる人だ。無事に救出すればとっくに戻ってきているはず。だがまだ戻らないということは何かがあったとしか考えられない」「叔父さん、聞いてください。実は僕たちは父さんに会いました」「ええ!本当かい」「はい。実際に母さんを助けに向かう手助けをしました。その時に、ユートピア教と戦闘になりましたが、倒したので追手はいないはずです。新たな敵との戦闘に巻き込まれているのかもしれません」「一体何と戦っているんだ…助けに行かないと兄さんが危ない」「どりゃ!」メガロがいかづちを振るう。「はっ!」ミミハがハヤテマルで射貫く。「止め!」パキラがグングニルで貫く。「よし!クローン兵は全滅した!」「あれは…」サトリは飛空艇が飛んでくるのを見つける。そこからパラシュートが一つ降りて来る。飛空艇は旋回し戻っていく。「誰か飛んでくる…」この時、たった一人がどれだけ恐ろしい相手か誰も知らない。「あれがSONG本部か。忌々しい。破壊しよう」パラシュートの真下辺りから地割れが発生し、面々らを超え、SONG本部を真っ二つにする。驚愕する面々ら。
【本部の戦い③】
真っ二つになったSONG本部の片方が傾く。「うむ。いい景色だ」面々らの方から激しい強風が吹く。パラシュートが押し流される。「おれと同じネアラーが敵にもいるらしい。おれもまけないぜ」モゲレオがペリドットに伝える。「ネアの加減から言って、距離は300メートル先だ。狙えるよね、ペリドット」「了解」面々らの方から激しい炎の玉が飛んでくる。「今度は炎か。一人が一つの属性を使うとすれば二人いるのか。だが、おれは一人で複数の属性を使うことができるぜ」炎の玉と炎の玉が相殺する。その時、パラシュートの真上から巨大な氷柱が落下。パラシュートが破れ、落下するグボアギ。「アポロンさん、協力感謝します」「お役に立てて良かったです」その時、地割れした穴からマグマが噴き出す。「これもアポロンさんがやってるんですか!今すぐ止めてください!」「違います!私じゃありません」「そうでしたか、失礼しました」ペリドットが水のネアを発動し、マグマを凍らせる。「アポロン先生。ペリドットさんのネアで凍らせたはずなのに、岩になっています」「当然だ。マグマの熱は地中で1300~1400度、地上付近で800~1200度はあるという。冷えると溶岩に変化するだけで凍ることはない。溶岩!まずい!敵の土のネアを使ったら…」溶岩が割れ、空中に浮かぶ。「これで本部は終わりだ!!」グボアギが叫ぶ。「そうはさせない!」グレートが叫び、本部を覆うように地面が伸びる。伸びた地面が溶岩を防ぐ。さらに、伸びた地面は移動し、パラシュートの落下場所を盛り上げる。「首領グボアギ、捕らえた!」伸びた地面が包み込むように露わになったグボアギを捕らえる。地面を移動させ、グボアギを近くに寄せる。「よくも本部を真っ二つにしてくれたな」「挨拶だ」「随分とへたくそな挨拶だ。だが、お前が捕まれば挨拶の意味もない」「果たしてそうかな」「黙っていろ。ナイル!ヒヨウ!ルシナンテ!頼んだ」「「はい」」ナイルらが監獄へ連行する。「首領という男、呆気なく捕まった。だが、まだ終わった気がしないのは何故だ」「遅れてしまい申し訳ありません」「スキピオウ。それにスキピヨ。よく来てくれた。その者たちは?」「私の同行に志願した者たちです」「そうか。盾はあるか?」「はい。7つの武器の一つ、“刀折り”カタナ=エンドを持参しました」「矛盾の実現といわれる盾。守りの役目を同じく元連合のオローレとロペスと共に任せた」「はい」グレートにクリスが申し出る。「総司令官様、お伝えしたいことがあります」「どうした」「私の父が何者かとの戦闘に巻き込まれているようです。行方不明になったのはユートピア教の本拠地です」「わかった。君のお父さんは元連合の一人だ。直ちに元連合はユートピア教本拠地へ向かってくれ。場所は今ここに向かっている者が案内する」ここに向かう者を待つ間、ロペスが面々に話しかける。「お話の通り、私は娘と離れなければなりません。娘のことどうかよろしくお願いいたします」「任せとけ。俺らはこう見えて強い」「頼もしい言葉が聞けて安心しました。レインボー、この方と一緒にしっかりやるんだよ」「任せて!私もしっかりやるから、お父さんも頑張ってね」「頑張るぞ。生きてまた会おう」数時間後、空から一人の男が舞い降りる。「お待たせしました。『ユートピア』を持参しました」「ありがとう。怪盗ミラーこと、ジュゼット・マクベウスの息子ラウス君」面々が驚く。「シュン!」「久しぶり」「総司令官様。今この時の為に貯めておいた奇石も持参しました」「ありがとう。これも貴重だ。大切に使わせていただく。元連合の分を持って行きたまえ」こうして、元連合はユートピア本拠地へ向かった。数時間後、システムのバックアップが完了する。「何だって!?支部の半分が壊滅的な被害を受けている。支部を失う事は支部が管轄する都市を失う事を意味する。つまり、半分の都市を失いかけている状況という事か…まずいな。元連合の向かった先の近くの支部と、モスクルドノワ支部。それから、もう一つの支部のこれら3つの支部の被害が大きい。そうか…」グレートは面々に命令する。「カリュードの諸君にも支援に向かってほしい。本部から南にあるホッカイロ支部が支援を必要としている。そこにいるプレリュードを率いるガルと合流せよ」グレートが呟く。「支部の半分を失いかけている事を考えると、敵組織の狙いは支部か。てっきり本部を攻めて来ると思ったが、首領が呆気なく捕まった事から考えにくい。だが、何かまだありそうな予感がする」監獄の中で、グボアギが呟く。「予定通りだ。おれは次の予定まで時間があるな。待つのは慣れている。今まで宣戦布告の時を散々待ったからな。だからこそ、必ず成し遂げてみせる」
【本部の戦い④】
鎮守の森。英雄たちはチャック兄弟と戦闘している。「聖剣の力を持ってしてもこれほど苦戦するとは思わなかった!」聖剣から発動される炎や水は一向に命中しない。「彼らの動きが速すぎて当たらない。何か策はないものか」「僕が雷を撃ちましょうか?」「だめだ。君のは敵味方関係ないじゃないか」「そうっすね。ここぞという時に撃ちます」グレートが近衛衆と会話している。「英雄の3人は敵組織とみられる2人と戦闘中だな」「はい。おそらく鎮守の森のほうに逃げた2人を追っていったようです」「素早い動きを見せていたが、一体何者なんだ」「タブララサの話では、チャック兄弟と名乗ったようです」「チャック兄弟!?そうか」「総司令官様、ご存じなんですか」「2人は“通り魔チャック”の異名で知られる指名手配犯だ。彼らのかつて戦争で活躍した一族の子孫だ。敗戦したみたいだが。戦闘能力が高いのはそれが理由だ」「そんなに強い相手ですか」「単純に言えば、剣の腕はあるが、経験がない。最近では各地の事件現場に出没していたらしい。それで経験を積んでいたとしたら、厄介だ。英雄たちなら大丈夫だとは思うが…」チャック兄弟は高速移動をしながら会話している。「同じ攻撃ばかりでつまらないね、兄さん」「ああ。同じすぎてこっちも攻撃できないままだ。僕たちが勝利して、首領様に報いなくちゃいけないよ」「せっかく戦いの場を与えてくれたんだもんね」「ああ」雪が止み、空が晴れる。「空が晴れてきたな。僕たちの心は曇ったままだというのに…」「このままでいいわけないよね、兄さん?」「ああ。行こう」スーツ姿のチャック兄が二丁拳銃を集中砲火する。「“クロス・ファイア”」「うお!一気に攻撃してきた!」「うっ」「ミザリオ!大丈夫か!」続けて、デニム姿のチャック弟が二刀を構えて突っ込む。「“クロス・ソード”」「俺が守る!」吹き飛ぶアルメオが木に背中を打ち付ける。「ぐお!」「先輩方!大丈夫っすか!」チャック兄弟は横に並び、勝負をかける。「畳みかけるよ、兄さん」「ああ。終わらせよう」二人の連携した攻撃を雷が弾く。そのままチャック兄弟まで雷が届く。倒れる兄弟。「…動けないや、兄さん」「ああ。僕たち死ぬみたいだ。一緒に死ねて良かった…」「…一か八か撃ったらちゃんと相手にだけ当たった。危ない、危ない。もし先輩方に当たってたら死んでたな。今の感覚覚えとこう。先輩方、大丈夫っすか?」「おう。俺たちは大丈夫だ、オックウ!」「…私は銃弾を数発受けた程度だ」「大丈夫じゃないじゃないっすか!」「偶然急所は外れている。大丈夫だ」「オックウも隣に座れ。少し休むとしよう」
【戦略家】
クモリテ上空。飛空艇内部。幹部の男と女が会話している。「上手くいってるわね」「僕にかかれば当然だよ」「さすが首領が認めた男ね」「そうだ。僕はグボアギ様に認められた優秀な戦略家だ。僕、三千院ツルギが必ずグボアギ様を勝利に導く」「自信満々だこと」回想。飛空艇内部。「SONGの裏の顔、レクイエムがまた一つの国を統一したな。いよいよその時が近づいている。戦略に間違いはないか、ツルギ」「はい。こちらの狙いはSONG本部です。まず、SONGにいるスパイたちが行動を起こします。混乱に乗じて、本部をグボアギ様に襲撃して頂きます」「派手に暴れて、本部を破壊してやろう」「そうなれば、こちらの勝利です。しかし、SONGにもネアラーが数名います。無理は禁物です」「分かっている」「同じ時に世界各地の支部の半分をこちらのほぼすべての者共が襲撃します。そうなれば、SONGはこちらの狙いが支部にあると思わざるを得ません」「半分もやられているからな」「SONGは支部にほぼすべての部隊を送る事でしょう。そして、手薄になった本部を僕と今はいない女、それから後ろにいる者共が襲撃します」ツルギとグボアギの背後に6人の者。「あれは、おれと同じくネアを使える者たち、ネアラー衆だ」「これだけの戦力があれば、手薄になった本部を落とす事は容易でしょう。この戦略の起点として、チャック兄弟に本部を襲撃してもらいます」「ああ。あの兄弟には、役目がある。おれが登場する前に盛り上げる役目がなあ。ぬはははは」回想終わり。「チャック兄弟は英雄と戦っているらしい。以前、僕の戦略にはまり、英雄がやられていくのは面白かった。その英雄が復活していたのは予想外だった。もし英雄が勝ったとしたら、また僕の戦略で倒してあげよう。ふふふ」「怖いわ~。敵じゃなくて良かったわ」
【連合①】
元連合の乗ったマシンは、怪盗の後ろからついて飛んでいる。「狭いな…サイモンもう少し奥行けないか」「もう行けない。ギリギリだよ」「こっちもギリギリなんだ。他の人に武器が当たりそうで怖い」「みんな一緒だよ、ピヨ丸」「分かった、我慢する」「プークス殿、己らは、シュンの案内で進んでいるが、なぜシュンは目的地が分かるのでござるか?」「タケル君、それは、彼が実は怪盗で、なんでも『ユートピア』という珍しい本を持っていて、そこに書いてあるらしいんだ」「本に場所が書いてあるのでござるか?」「たぶん、そうじゃないかな…ごめん、僕もよく知らないんだ。シュンが怪盗だった事に驚いているのに…」「私が答えよう」「あなたは、確かソーさん」「『ユートピア』という本には、幾つも楽園と思われる場所が記されている。それらの場所は、非常に行きにくい場所で、死者も出たという呪われし本と言われている。今向かっているユートピア教の本拠地は、それらの場所を世界地図上に記した時の中心地にある」「詳しいですね」「私も本が好きなだけだ。前を飛ぶ彼と同じように」「「へえ」」ソーは怪盗を見つめる。目的地に到着する。敵に気づかれないように低く飛び、少し離れた位置に着陸する。
【連合②】
ユートピア教本拠地の前に立つ元連合ら。ラウスが中に入るのを見て、プークスが言う。「シュン、一人で大丈夫かい?」「大丈夫さ」小さな体の彼の背中から強い意志を全員が感じた。本拠地内には、受付があった。「信者の希望者の方ですか?」ラウスは黙っている。「もし、希望者でないのならお引き取りを」ラウスは黙り続ける。(何もしてこない。誰かに伝えるわけでもない。ということは、何もしてこないのではなく、何もできないんだ)ラウスは、奥へ進む。「ちょっと!痛い、足が動かない」ラウスが本拠地の奥で見た光景は、何者かに痛めつけられるサンタマリアの姿だった。突然、火が飛んでくる。ラウスが避けながらカードの銃を放つ。敵がサンタマリアを放す。続けて、カードの銃を撃ち続ける。「くそっ」敵は全力のネアを放出し、本拠地の天井に穴を開け、外に出る。サンタマリアの元に近寄るラウス。「こんな姿貴方らしくないですね」「怪盗ミラー、どうしてここに来たのですか…?」「兄さんの危険を察知したからですよ」「ヘンリーまでいるとは私は夢を見ているのか…」「姉さん!とりあえず安全な所へ行きましょう」外に出る。「…ひどい怪我だ。こちらへ。私が手当てします」ピーナッツがサンタマリアを手当てする。「この方たちは?」「兄さん、彼らは、SONGの危機に集まった元連合の方たちだ。そして、兄さんもその中の一人として呼びかけられている」「お待ちしていました。サンタマリア殿」ラウスが斧を手渡す。「これはあなたのものですよね?」「有難う。“慈悲の斧”クライアックス。確かに私のものだ。ご迷惑をおかけしました。今から元連合に参戦いたします」
【支部の戦い①】
元連合を目がけて火の雨が降り注ぐ。元連合の乗って来たマシンが破壊される。「ああ!マシンが!」「敵の攻撃だ!下がってください!私たちが守ります」ロペスが前に出て盾で防ぐ。「私たちも守りましょう」スキピオウとオローレも盾で防ぐ。「このシールド・フランスで火は後ろに通しません!」サンタマリアがヘンリーに言う。「ヘンリー、ここは危険だ。妻とともに安全な場所にいてくれ」「分かりました」二人はマシンの中に避難する。「この攻撃は、ファントム教教祖ツォンザによるものです。今彼は、ユートピア教教祖ビドーに会えず苛立ちを見せています。彼は非常に短気です。その分攻撃も単調になりやすい。防ぐ時は防ぎに徹し、攻める時は攻めに徹すれば、勝機はあります」サンタマリアの指揮で敵の元に向かう。「まだ支部を落とせないのか!ファントムの強さの誇りを見せろ!」「「おー!」」支部の部隊を襲うファントム教信者たち。その数二千人。全員が奇石と武器を持ち戦う。対する部隊の中に、元ミファソファミの者らがいる。「彼らが危ない!」プークスが走り出す。「プークス殿!」タケルと長船も追う。「勝手に前に出るのは危険です!早く下がって…」プークスはバズーカで敵を吹き飛ばす。タケルと長船も敵を薙ぎ払う。彼らを見るサンタマリアを火の玉が向かって来る。スキピオウが防ぐ。「サンタマリア殿、守りはお任せください。久々の戦場で胸が騒ぎます」「感謝します」攻撃が止み、サンタマリアはクライアックスを振るう。一度振るう度に、数十人が吹き飛ぶ。「凄い威力ですなあ」「このクライアックスは、かつてこれを使用した豪傑な者が今から倒される相手のことを思い、慈悲の涙を流したとされることから名付けられたそうです」「へえ。その武器一つで勝ててしまうかもしれないですな」「そうだといいのですが…」スキピヨとサイモンが信者たちと戦う。「ピヨ丸、クモの糸でまきつけたっす!」「でかした!」彼らを横から、火の玉が大量に襲う。「危ない!」すかさずロペスが防ぐ。「すみません…攻撃に集中しすぎて攻撃に気づきませんでした」「大丈夫です。私が二人を守りましょう」ピーナッツが敵を切り伏せ進む。「信者と侮っていたら、強者の集まりではないか!」火の玉が襲う。相殺する火を放つソー。「火で火が消えた」「あれは異なる温度の火。ぶつかった火は互いに温度が変化し、威力を失う。貴方も奇石を使ってみては?」奇石を取り出すピーナッツ。「“無の境地”…出ない」「初めはそんなもの。今は私に任せて」ソーが火の玉を放ち、数十人が吹き飛ぶ。オローレが防ぎ、ペープとモノがバッテリーとなり攻撃する。「「“ノック戦法”」」数十人が吹き飛ぶ。ツォンザは状況を見て苛立つ。「何だか敵の勢力が大きくなってやがる。くそ!苛立つぞ!」ツォンザは集中し、巨大な火の玉を作る。「これでストレス発散だ!“マギ・ド・ボム”」巨大な火の玉が破裂し、爆風が巻き起こる。信者、元連合ともに大ダメージを受ける。「ふう…大分すっきりした」ユートピア教本拠地と、その付近のマレードネシア支部も大打撃を受ける。「ここは制圧した!」立ち上がる者たち。「…だいじょうぶ?タイミャーさん」「大丈夫だ…筋肉ムキムキだから!」「二人とも…無事でよかった」「真でござる」「真…」「プークスさん、それにタケルさんと長船さんも」ツォンザはそれを見てまた苛立つ。「俺の火を受けて立っていいのは信者だけだ。もう一発受けろ!“マギ・ド・ボム”」巨大な火の玉が向かって来る。ラウスが上空で指を鳴らす。巨大な水の玉が最速で落下し、火の玉が蒸発。「「シュン!」」手を振るラウス。ソーが呟く。「火同士の相殺と同じ原理で相殺させたか。間に合わないと思ったが、4℃の水で重量を最大にして落下させたのだろう。侮れないな、怪盗ミラー」「彼もやるなあ。私も頑張ろう」ピーナッツが集中すると、奇石から氷の玉が放たれる。「出た!」ツォンザに向かって飛んで行く。それを相殺する氷の玉を放つ者。「お前は、ビドー」「…すまない。遅くなった」「お前に連絡がある。敵組織に加われ」「すでに加入ずみだ」「なら話が早い。一気に片付けるぞ。あの苛立つ者共を」立ち上がる元連合たちが武器を構える。「若い彼らのように、私らも手を取り合えば、勝てる見込みはある」
【支部の戦い②】
集合する元連合。「彼らは純粋なネアの使い手。奇石を使ってネアを放つしかない私たちは、先ほどのようにやられる一方です。但し、人数がこちらの方が多い。最初に言ったように、防ぐ時は防ぎに徹し、攻める時は攻めに徹すれば、いいのです。連携していきましょう」ツォンザが苛立つ。「何を話している!会議は部屋の中でしろ!」大量の火の玉が元連合に向かって来る。「「とお!」」ロペスとスキピオウとオローレが連なって防ぐ。攻撃が止む。「今です!」元連合が前進しながら、奇石によるネアを発動し攻撃する。敵の二人は相殺する。「攻撃が相殺されて意味がない!」「よく見て。敵の位置が離れている」ツォンザとビドーが100メートル程離れている。「二手に分かれましょう」二手に分かれる元連合。ツォンザが不敵に笑う。「かかったな。準備はいいか、ビドー」「いいぞ、ツォンザ」気づく元連合。「何かしようとしている」「皆さん、注意してください」ツォンザとビドーは空に向かい手を伸ばす。「「“ジェット気流”」」直後、立っていられない程の強風がツォンザとビドーの間を吹き抜ける。その間にいる元連合は、予想外の攻撃を受け、怯む。「立つことすらできない…」「吹き飛ばされるぞ」「何が起きているんだ?」ソーが分析する。「火のネアは温度を上げる力、反対に水のネアは温度を下げる力だ。温度変化は空気にも起こる。暖められた空気と冷やされた空気は、互いに同じ温度になろうとして流れる。温度差が大きい程流れは速くなる。それが今起きた現象だ」「解説感謝する。だが、そんな事を言ってられるのは今の内だ」「流れが速くなってきた…!」「このままでは…!」「この流れの先には支部の瓦礫の山がある。この速さでぶつかれば、無事ではないだろう…俺たちの勝ちだ」空を飛ぶグライダーが敵二人の上空に近づく。「僕たちを忘れてるよ」「そうだな」「真でござる」「真」「みんな、投げて!」ラウスの声で、マーリンとタイミャー、タケル、長船が氷を投げる。投げられた氷は、敵二人の上空を流れ、ビドーに全て命中する。「ああ!痛い」「ビドー!!」ジェット気流が止まる。「何が起きた!」ソーが分析する。「そうか。流れは私たちのいる下側だけでなく、上側も流れている。それを利用して、先ほどとは逆の軽い氷を投げる。それは流れの中にいる敵の一人に確実に命中する。怪盗ミラー、侮れない」サンタマリアが指揮を執る。「今です!」元連合全員の攻撃がツォンザを襲う。「待て…ああ!!」瓦礫の山に突き刺さるツォンザ。「ファントムは永遠に不滅…」確認するサンタマリア。「死んでいます。私たちの勝利です」「「やった!」」ビドーは反省する。「私たちはユートピアを求めているだけで、こんなことは正しいと思わない。もう一度許されるならばやり直したい…」ラウスは元連合と別れる。「僕は行くところがあるので。アリーデヴェルチ」「全く読めない男だ」ソーが呟く。「支部がボロボロだ…」「己が手伝うでござる」「拙者も助太刀いたす」「私たちも手伝いましょう。片付けは人手が多いほど早く終わります」「助かります」元連合とマーリン、タイミャー、タケル、長船は支部の片づけに取り掛かる。
【支部の戦い③】
面々は、ホッカイロ支部へ向かっている。「レイピアさん、空をとべるんですね」「レインボーは知らなかったね。これは獣化っていうの」「へえ。知らないことがいっぱい」「ライラも獣化できるよね?」「…まあね」「そうなの?すごい。今度みせて」「え?まあ、いいけど…」「そのためには生きて帰らないといけませんね」「安心しろ。俺らは勝って、生きて帰る。レインボーは後ろで見てればいい」「かっこいいな、ロンド」「当たり前アル」「ちょっと、下を見て」広大な砂漠地帯の中に、あちこちで煙を上げるマシンと倒れる隊員が見える。「押されているな」「そのようね。どうやらあそこにいる3人の人物が敵の主戦力のようね。レイピアちゃん、突っ込んで」「突っ込むわ」レイピアが降下していく。その背中から飛び降り、攻撃するロンド、クリス、パキラ、ジョー。「「ええ!飛び降りた!」」「ウチも行くアル」「近づくから飛び降りないで」「勇敢な人たちだわ」「勇敢というか無鉄砲というか…」「みんな、強いから大丈夫」「そうだね。ロンドとクリスなら大丈夫」ロンドらの攻撃をはじく2人の者。「不意打ち!」「我らにとって不意打ちなど蚊を追い払うのと同じように対処できるがね」着地するロンドら。「やるな。お前ら」「貴様、いい目をしている。このラーヴァ・カストロ、一戦交えてくれよう」「今の剣捌き、速くて見えなかった…かなりの手練れです」「我にとって剣は腕と同じ。このアルトゥーレ・ザイガンにとって剣を振ることは腕を操るのと同じ」ラーヴァが一撃を繰り出す。「“獅子舞”」波動で吹き飛ぶロンド。「しっかりガードしていた。我の攻撃を防ぐとは面白い」ラーヴァがロンドの元に駆ける。「ロンド!」「貴様の相手は、我だ」アルトゥーレがクリスの行く手を塞ぐ。立ち上がるロンド。「つ、強い」「やはり防いでいた。だが、驚くな。我らよりもっと強いお方がいる」奥で数十人の隊員が吹き飛ぶ。包帯で全身がぐるぐる巻きの人物がいる。体に巻かれた包帯をムチのようにしならせて使っている。「あの武器は何なんです!」「あのお方にとって包帯は我にとっての剣と同じ。あのお方にとって支援に来た部隊を倒すことなど用を足すことと同じくらい容易い。あのお方、点様にとっては」点の包帯がしなり、数十人の隊員が吹き飛ぶ。「パキラさん、ジョーさん、ここは僕に任せてください」「1人で大丈夫?」「何とかして勝ちます」「任せたぞ」パキラとジョーが点の元に駆ける。「貴様にとって我を倒すことは命を投げ出す事に同じ」「試してみなければ分かりません!」「いい目になった。その心意気を讃え、万が一勝てたなら、この剣、アブソリュート・スターを譲ろう」ロンドがラーヴァのグローブに興味を持つ。「そのグローブ、棘がついておっかないな」「そうだろう。昔、恐ろしい力を持つとされたバステト神。性能が高く、高価な武器は、バステトの力を宿すと評判になった。このグローブはその一つ。その名もバステト・クロー」「かっこいいな」「そうだろう。よし!万が一勝てたなら、このバステト・クローを譲ってやろう」「本当か!」「本当だ。だが、これはそう簡単に手放すことは惜しいほど高価だった。奪う気なら本気で奪え!」「本気で奪ってみせる!」
【支部の戦い④】
ロンドを幾度となくラーヴァの攻撃が襲う。波動を避け続け、時には当たり、押されている。ロンドが尋ねる。「お前は、何で敵組織として戦っている?」「我が戦う理由。それは、ずばり金だ。首領は、協力する代わりに大金を与えてくれた。だから、我は戦う」「単純な理由だ」「単純で何が悪い。恐らくこの組織の大半はそれが理由で戦っている。あのアルトゥーレという男も」「首領は一体何者だ?まあいい。理由が単純であるほど、俺も本気を出せる!変身!ビーストモード」ライオンになり、全力で助走をつけ、腕のみをライオンのままにして拳をぶつける。しかし、寸前でラーヴァの波動に阻まれる。「“獅子舞”!我の波動を前に近づくことはできない」「何度でもやってやる!」「何度だろうと無駄だ!“獅子舞”」吹き飛ばされるロンド。「くそ!まだまだ!」「なかなか倒すのは惜しい男だ。だが、我も負けるわけにいかない!」波動がロンドを襲う時、間に入る者が現れる。「ヨー!」吹き飛ばされるヨー。「…ロンド!気にせず打つアル!」「分かった!“獣王拳”!」「くそ!間に合わない!“獅子舞”!」波動を受けながらも勢いは止まらない。ロンドの拳がラーヴァに炸裂する。「うっ…やるな。だが、我もまだ…」立てないラーヴァ。「ライオンは一撃で仕留める」「負けを認めよう。これを約束通り渡そう。バステト・クローだ」バステト・クローを受け取るロンド。「ほお。かっこいいな。有り難く使わせてもらうぜ」倒れるヨーに手を伸ばし立たせるロンド。「立てるか?お前がいなきゃ勝てなかった。助かったぜ」嬉しそうなヨー。「嬉しすぎて夢みたいアル…」気を失うヨー。「おい!しっかりしろ!」(本当は起きてるアル…ロンドの胸でしばらく眠るアル)
【支部の戦い⑤】
クリスが容赦なくアルトゥーレの剣技が襲う。(速い…どうやら先を読まれているようだ。居合切りで躱してはいるが、いつまでもつか…)「我にとって我の剣技が一度も当たらないことは重力が反転することと同じようにあり得ない。“剣の舞”」「“居合切り”!」「居合切り…確か、カタナシティの侍が用いる技だ。何故貴様が使えるのか…“剣の舞”」「“居合切り”!」「おや?その刀は、その侍の刀ではないか…確か、名前は…“剣の舞”」「“居合切り”!」「そうだ。長船だ!忘れもしない。カタナシティの闘技大会決勝戦。長船の居合切りに我の剣技が敗れた記憶を…“剣の舞”」「“居合切り”!」「思い出すだけで、腹立たしい。我にとって敗戦は死ぬことと同じくらいに辛い事…」(何だか…強い技の予感がするような気がする…)「クリス!その通りだよ!」ナタリーの注意を受けて、クリスは構える。アルトゥーレのアブソリュート・スターが光り輝く。「北斗七星の霊力を受けよ。“七天抜刀”!」「“高速・居合切り”!」二人の一撃が交差する。「ぐっ」アルトゥーレが倒れる。「安心してください。峰打ちです」「我にとって情けをかけられる事は大事な所を見られることと同じくらい恥ずかしい。我にとって剣士の終わりを意味する。約束通り、アブソリュート・スターを君に渡そう」アブソリュート・スターを受け取るクリス。「やったね、クリス」「やりました。あとは彼らのリーダーとみられるあの人だけですね」
【支部の戦い⑥】
包帯がムチのようにしなり、数十人の隊員が吹き飛ぶ。ガルが周りを見て愕然とする。「あと一撃で、部隊はほぼ全滅だ。あの包帯の攻撃範囲が広すぎて、近づけない。このまま負けてしまうのか…」そこに高く飛んだ槍が点を目がけて落ちる。不意を突かれ驚く点。「今よ!」パキラの声で隊員たちが息を吹き返す。点が慌てて包帯を構える。「かかったわね」隊員に意識する点は、近づいたパキラに気づかなかった。奇石を使用し、火のネアを纏ったグングニルで攻撃する。包帯で槍を防いだが、火は防げなかった。「うわあああ!」燃え移る火を高速回転で消す点。「よくも!よくもおお!」「怒らせてしまったわ」何本も伸びた包帯が隊員らを襲う。素早い剣がガルとパキラを守る。「危ないぞ」「ジョー、助かったわ」「残るのは、僕を含めて三人」怒りが収まらない様子の点の包帯が襲う。「火が!燃える!逃げてええ!」「くっ、勢いが激しいわ」「躱すのがやっとだ」ガルは思うところがあり考える。(火に対する過剰な反応。まさか…)狼になり駆けだすガル。「“竜の舞”!」左右に移動し、攻撃を躱すガル。「無茶よ!…すごい!躱してる!」「いや、躱せていない。半分の攻撃は受けている」ガルの身体をムチのようにしなる包帯が痛めつける。「竜…?ソウリュウの技の名だとしたら間違いない!」ヤマアラシになり近づくガル。「あんなに小さくもなれるのね!今度は躱せているわ」「ああ。進みは遅いが、全て躱せている」「ここまで来れば…」「火は!やめてええ!」包帯を直接刺す点。ガルはソウリュウで受け流す。倒れる点を抱えるガル。「母さん!もういいんだ。戦いは終わった」ガルが顔の包帯を解く。天の顔には火傷の跡がある。点が呆然としている。「…あなた、ガルなの?」「そうだよ。母さん、生きててよかった」「ごめんね、ガル。一人にして…」「大丈夫だ。僕は一人じゃない。SONGという組織で仲間がいる」空から面々が降りて来る。「大丈夫ですか?私を見てください。傷を癒します」レインボーを見る点。点の顔の火傷が癒える。「…ありがとね」気を失う点。「あれ?そんな…」「大丈夫だ。気を失っただけだ。楽になったからだと思う。母を助けてくれてありがとう」「ガルさんのお母さんだったんだ…」そこに大量のクローン兵が現れる。「“獅子舞”」「“剣の舞”」ロンドとクリスがクローン兵を倒して現れる。「まさか新たな敵なの?」「そうみたいね。少し遠くに気配があるわ」「早く止めに行くぞ。新しい武器を手に入れた俺は無敵だ」「行きましょう。僕も手に入れたので無敵と言っても過言ではありません」「すまない。君たちに任せる」面々はクローン兵が来る方へ向かう。
【支部の戦い⑦】
身軽な動きで追跡の網をひょいひょいと潜り抜ける男。階段がある場所を確認し、長い廊下を駆け抜ける。待ち構えていた部隊が行く手を阻む。一人また一人とかわされて、最後の一人がしがみついても投げ飛ばされる。階段を駆け上がる男の背中を見ながら上の階にいる部隊に連絡を取る。「上に行った。絶対に逃がすな」指示を受けた別の班も屋上を目指して急ぐ。ちょうどその階段の近くにいて、指示を受ける前に男のすぐ後ろを追いかける隊員が二人いた。あと一階分ほどの差がある。屋上に出る扉が開く音が聞こえる。ついに屋上に出る。しかし、そこには誰一人見当たらない。そこに別の班も合流する。「確かにいるはずですが…」と二人の隊員は言う。「いったいどこに行ったんだ…まさか飛びおりたのか」「いいえ、ここにいます」声はすれども姿は見えない。探す中で一人の隊員が驚きの声をあげた。「隊長、あれを…」隊員が指さした先には、屋上から離れた空中に浮き、こちらを向く男がいた。「これが新時代の力です」男は集中すると、屋上一体に風が巻き起こる。屋上に集まった部隊が一網打尽になる。男は空を飛び去る。海の防波堤の横で、何とか声を張り上げなくても話すことのできる距離に、銃を向ける警官と髭を生やし落ち着きのある佇まいの男が面と向かう。「もう逃げられないぞ」「ああ、逃げるつもりなんて一つもない。ただ、安心するのはまだ早い」「どういうことだ?」「もう手には負えないということさ」そう言って、髭の男が空を指さした、その先には飛行機が飛んでいる。間もなく飛行機が急降下するのが見え、遠くで海に落下し、巨大な水飛沫が上がる。「…!いったい何をした!?」髭の男が答えないため、やむを得ず警官の男が倒して上にのしかかる。「だから、もう手には負えない、ただそれだけさ」回想。飛行機落下地点上空。髭の男の仲間である男が飛行機と同じ高度に浮き、強い風によりバランスを崩して落下させる。回想終わり。「風使いマロー・ノワールの再現をしたまで」「何のことだ?」「知らないのか?私は、風使いが乗る飛行機を操縦していた。あれは大変な事故だった。私もつい最近まで寝たままだった。しかし、夢を見たんだ。特殊な夢だった。自らを克服すれば、現実の自然の力を操れるようになるというじゃないか。私は風を望んだ。私は自らに勝ち、夢から覚めると、この通り、風を操れるようになっていたのさ」男が集中すると、警官に目掛けて突風が吹き荒れる。吹き飛び、意識を失う警官。警官が目を覚ますと、髭の男が倒れている。飛行機を墜落させた男がこちらへ来る。「シロッコ!」「おっと、向こうから近づいてきてくれるとはありがたい」警官は、手を伸ばし、男の放つ風を退ける勢いの火を放つ。転げ落ちる男。「お前もネアラーだったのか!」「たった今ネアラーになった!」火のネアを纏う拳で男を殴り倒す。「飛行機を墜落させた現行犯としてお前を逮捕する」手錠をかける警官。「この俺が犯人を逃がすことはない」犯人二人を抱え、町に戻る警官。
【支部の戦い⑧】
敵組織の一味は、森の中を移動している。「モスクルドノワ支部までもう少し。急ぐよ」木の上を移動する忍者のクウが言う。「ライラック様!同じ方向に向かう者がいるでござる」「誰だい?」「拙者と同じ格好をした4名でござる。あ奴らは、忍び族でござる」遠くの方から木の上を移動して近づいてくる忍び族。「この先にクチハの気配がする。急ぐよ」「アヤメさん!同じ方向に行く人たちがいます」「あれは…クウ、久しぶりに見たねえ」「知り合いですか?」「知り合いも何も、クウはあたいらと同じ忍び族だよ」平行に移動する一味と忍び族。「久しぶりでござる。アヤメ殿」「クウ、その人たちは?」「拙者の仲間でござる」上空から鷹のホークスと鷲のワシスンが現れる。「見たところ敵ではないようだ。報告する。前方、モスクルドノワの町から逃げる人々が来る」「建物の屋根を移動することを推奨します」「わかった。屋根への移動、頼むぜ」「おう。俺も任せた」ロイドを掴むホークスとベルモンドを掴むワシスンが建物の屋根へ移動させる。「あたいは大丈夫」ライラックが軽い身のこなしで移動。「何となくアヤメさんに似ている方ですね」「左様でござろう。故に拙者はライラック様の一味に入ったでござる」建物の屋根を移動する一味と忍び族。「あれ?誰かいるよ☆」町の中で避難誘導する警官。「皆さん、落ち着いて!でも、押さないで!押さない、走らない、しゃべらない、です」建物を移動する彼らに気づく。「お?そっちは危ない!この俺、ワカトラは見過ごさない」「追いかけてきますよ!」「仕方ない!“悲し針”」「こら!止まれ!とま、りなさい…」倒れるワカトラ。「アヤメさん、今のは?」「あれは、少しの間動きを止める針さ。それより、急ぐよ」「「はい」」一味と忍び族は町の中心地へ向かう。
【支部の戦い⑨】
モスクルドノワ支部は壊滅の危機にあった。マシンとマシン、奇石と奇石を互いに使用した戦いが互いに多大な被害を出した。その中、敵組織とSONGの戦いに割って入って来た者が状況を一変させた。「あの男を止めろ!メドレー部隊は左から、コーラス部隊は右から挟み込め!フィナーレ部隊は支部の守りを固めろ」アジズが各部隊に指示を出す。メドレー部隊とコーラス部隊に囲まれる男。「人の命を奪う行為は罪に値する。この“断罪者”ガルバドスが自ら死刑を執行する」ガルバドスが剣を抜く。次の瞬間、メドレー、コーラスの部隊は全滅している。「…二つの部隊が一瞬でやられた」ガルバドスがアジズに剣を向ける。「お前が隊長か。1度死んでみろ!そうすれば戦争をする気などなくなるだろう」「こっちが戦争を仕掛けられてると分かってない。正気じゃないぞ」「私は正気だ。正気でなければ、裁判官は務まらないじゃないか」回想。統一国家最高裁判所。指名手配者の裁判が行われる。「判決を下す、今回は…無罪」裁判後、ガルバドスが最高裁判長ピスーに尋ねる。「またですか!今回はもう少し重めの罪でもいいのでは?」「確かに罪に対し罰を与えることは簡単です。しかしながら、私は人が更生することに信じているので。ただ、二度はあり得ません。それに二度も起こすと思う相手にはさすがの私も放っては置きません。それではここの役目も務まりませんから。それでも二度起きた時はその人物はそれまでだったということで、重い刑を与えますが、私にも責任はあるでしょうから、すぐに辞任します」「…納得がいきません。私は、罪には罰を与えるべきだと思います」ガルバドスが指名手配者の前に現れる。「誰だ。今考え事をしているんだ」「それは、新たな犯罪の計画だな!」「ち、違う…」剣で斬るガルバドス。「私は“断罪者”」回想終わり。「裁判官は剣を振るったりしない」「確かに。だが、私は正気だ。戦争をする者は全て有罪だ。自ら死刑を執行する」フィナーレの前に現れる者。「お前は…また来たのか。ボルボ・ロア」「レクイエム。今日こそ“執行者”の務めを果たしに来た」ボルボの腕時計が鳴る。「4時か。4の鐘が鳴る時、依頼を執行する」ボルボの全身を覆う棘を利用した攻撃がレクイエムを襲う。華麗に避けるレクイエム。「素早い奴らだ」タチェットは他のレクイエムに向かって言う。「俺たちは協力し庇い合う“コード”ではない、全員ばらばらの“アルペジオ”だ。忘れるべからず」頷くレクイエム。一方、バラン、ンギー、テルの三人は、敵組織の組織員たちと戦っている。「そっち行ったで!」「了解」「気をつけて、まだまだいる」「安心しや、このままの調子ならここは守り切れるで」バランが言う。その時、ンギーが倒れる。「ンギー!どうしたんや?」近づくバランとテル。「腹から血が出とるやないか!テル、何とかできひんか?」「傷が深い…。僕には何とも…」「そんな…一体誰や!」その時、テルが倒れる。「テル!嘘や、嘘やー!」テルが指さす。「う…うえ」「上にいるんか、敵が」バランが上を見る。建物の上にスナイパーの姿がある。「見つかったか。だが、問題ない」スナイパーがバランを狙う。その時、スナイパーに銃弾が掠る。「ワレ、なんで、ここに?」「俺は風来坊。どこにでも現れる」スナイパーはスミスに狙いを変える。「面白い。勝負だ」
【支部の戦い⑩】
ガルバドスとアジズの間にボルボとレクイエムがなだれ込む。ガルバドスとボルボの目が合う。二人は互いを見て驚く。「お前も雇われたのか?断罪者」「断罪者は自ら行動する。執行者、お前だけは1度の死では罪を償い切れない。2度死んでみろ!」ガルバドスの剣とボルボの角が激しくぶつかる。「バステト・ソードの威力を受け止めるとは、やるな」「運命を感じるぞ。バステト・ファングも喜んでいる」ガルバドスとボルボの激しい戦い。「フィナーレ、何があった?」「あの者は敵組織のボルボ・ロアです。私たちは何度か命を狙われました」「そうか。得体の知れない敵同士が戦っている。これは好機だ」「まとめて対処します」レクイエムが攻撃を仕掛ける。「「“バステト・バスター”」」「「ぐわあ」」ガルバドスとボルボの共同攻撃により、レクイエムが致命傷を負う。「大丈夫か!フィナーレ」立ち上がるレクイエム。「俺たちは、全員ばらばらのアルペジオ」「4と4が重なる時、任務を遂行する」「お前たちも有罪の仲間入りだ」三つ巴が始まる。一匹の猫が通る。これがレクイエムにとって悪夢の始まりとなる。優しき暗殺者アダージョが駆け出す。アダージョは猫を掴み、陰に投げる。「まず、お前からだ」ボルボがアダージョを襲う。抵抗もむなしく、心臓を貫く角。「あれ」「彼は優しいとは言えない…暗殺者である限り。だが、最期は隠し切れなかったか」「…アダージョ…」「泣くな!デュス、ジョス、ああ!言いにくい!」「パッショナート、気持ちは伝わりました。たとえ弟のような存在をなくしても泣いている場合じゃない。私がアダージョの敵を取らせて頂きます!」礼儀正しい暗殺者ジュストがボルボに刃を向ける。「甘い!」「…!」ジュストの心臓を貫く角。「アダージョに続き、ジュストまで!もう我慢できない!」情熱的な暗殺者パッショナートも心臓を貫かれる。「心臓が燃える…!」滑らかな暗殺者スラー、明るい暗殺者メジャーが続けて挑むも心臓を貫かれる。「…なめらかに」「…ここまで生きれて良かった」タチェットが言う。「マイナー、君は逃げろ」暗い暗殺者マイナーがクナイを握りしめる。「…」マイナーがボルボに向かう。そこに飛ぶ4人の忍。「“檜扇殺め”!」ボルボの角がマイナーの心臓を貫く。同時にアヤメのクナイもボルボの心臓を貫く。「俺はもう組織と関係ない。俺は俺だ…」アヤメはクナイを抜き、クチハを抱きかかえる。「…クチハ」クチハがアヤメの手を握る。「…生きろ」クチハの手の力が抜ける。「クチハ!」ガルバドスがアヤメに向かって来る。「有罪だ」「それはお前の方だ」ガルバドスの心臓を貫く刃。「“背浪拳”」タチェットが刃を抜き、倒れるガルバドス。そこへ飛んでくる鷲。「貴方の力をお借りしたい」
【支部の戦い⑪】
ワシスンがタチェットを掴んで飛ぶ。「いいぞ。遠距離を得意とする相手は接近戦に弱い。あとは動き回り翻弄する」回想。スナイパーがスミスを狙う。「危ない!兄さん」ロイドが身代わりとなり、撃たれる。スミスが不安になる。「ロイド!」ベルモンドが怒りを露わにする。「あの野郎!」バランが動揺する。「どうなってんねん!」ライラックが叫ぶ。「大切な仲間ロイドが撃たれた。私たちはスナイパーを倒すよ!」ホークスが作戦を言う。「敵は百発百中のスナイパー、ビスタ・シンドラ。一度狙った標的は確実に仕留めることで知られる。標的を絞らせないように翻弄する必要がある。クウはビスタの潜む建物に侵入し、翻弄しつつ接近戦を仕掛ける。ワシスンと私は獣化で空を飛び回り翻弄する。他の者はなるべく止まらないようにする。以上」「わかったよ!作戦開始!」ホークスがボルボ・ロアとの戦闘を見て言う。「ワシスン、君はあの中の誰かを連れてきてくれ」「どうして?」「万が一の為の保険だ」回想終わり。ビスタは標的が定まらない。「さっきより狙いにくくなった。建物の中に一人入った。何者かの知恵だ。確かホークスという探偵がいた。まさか裏切ったのか。さっき標的を庇ったのが仲間か」「ご名答」ワシスンが離し、タチェットが降りる。「コードネーム、ルバート」「その声は、タチェットか」ホークスが言う。「やはり知り合いだったか」「どうしてわかったの?」「標的にするなら主戦力にする。しかし、ビスタはそうしない。つまり、主戦力であるレクイエムを後回しにする理由がある。その理由が知り合いだからだ」ゴーグルを外し、ビスタはタチェットの方を向く。長い髪が風でなびく。「ルバートは、音楽用語で転調。調子を変えることができる。お前はスナイパーでありながら、近距離の戦闘にもすぐ対応できる」「そう」ビスタは銃を素早く取り出し、タチェットを撃つ。「過去の仲間にも容赦ないな」「十分優先した。ただ、私の最優先は、血の苦手な彼だから」「ダ・カーポか」ビスタは適確に銃を撃つ。「誰もそばに近づけさせない」(それはどうかな?あと一歩…)「見破った!」「な!」タチェットの腹に銃弾が命中する。「うっ…何故分かった?」「分かってない。あたかも見破ったかのように声を上げる。見破られないと思っている貴方は驚く。驚いた声で場所を特定したら瞬時に反撃する。これが、“背浪拳返し”!」「分かってなかったのか…よく俺の背浪拳を止められたな」「それは元々彼があなたに教えた技だから、その技は対策済みよ」「さすがだな。元レクイエムのルバート…すまない。ダ・カーポ」倒れるタチェット。「依頼にはしっかり答える。それは、任務をしっかり遂行する、レクイエムのやり方と同じだから」クウが居場所に到着する。「仕留めるでござる」ビスタがクウの足を撃つ。「痛いでござる!」「タチェットが来たということは、ボルボがやられたということ。ここの支部を落とす作戦は失敗。負けは認める。ただ、命を失いたくはない」そこにワカトラが駆け付ける。「こらー!君たち全員逮捕だ!“ポリス・ファイア”!」タチェットは間も無く死んだが、ロイドは急所が外れ生きた。ライラック一味とビスタは連行される。忍び族は森の中を駆ける。「あたいらは、忍び族。捕まるわけにいかない」アジズは残った隊員に指示を出す。「支部は守られた!片付けを手分けして行うように!」
【隠れた戦い】
雪が舞う竹林を歩く二人。一人は頭に三度笠を被り、身に甚平を纏い、足に下駄を履く剣士で、もう一人の少女の用心棒をしている。名前は、又三郎という。その剣技の速さから剣士の中での異名は“風の又三郎”。少女の名前は、マリ・ゴールドという。又三郎が旅の途中寄った町で災害が発生。辛うじて生き残ったが記憶を失った二人はそこで出会う。あてもなく歩き続け、すでに世界を一周しようというところである。反対側から歩いてくる者。被り笠に寒さをしのぐ衣に身を包む北国生まれの剣士。名前は、寒太郎という。風のように来て、風のように去ってゆくことから、剣士の中での異名は“北風の寒太郎”。彼は、現在敵組織に所属している。敵組織にとって、強い存在は全て敵なのである。又三郎と寒太郎の目が合う。二人は、何か互いに通じ合うものを感じる。又三郎はマリを後ろに隠すように立つ。「ここも寒うござんす」寒太郎が一言呟く。それは語り掛けたのか、独り言だったのか本人にも分からない。二人は剣を抜く。風が吹き、雪が横から吹き付ける。二人は駆け出す。「“百花繚乱桜吹雪”」「“燕返し”」二人がすれ違う。風が止み、雪が真上から降る。「ぐっ…」寒太郎が倒れる。又三郎が剣を納める。その後、腕を抑え、膝を折る。マリが駆け寄る。又三郎が立ち上がり、マリの頭を撫でる。二人はまた歩き出す。この先は二人が出会った地であり、ゴールド宮殿がある、マリの故郷だ。
【支援センター】
SONG本部支援室。別名支援センター。支援センターから総司令室へ連絡が入る。「バックアップ作業、完了しました。各支部の連絡も可能です。完全にシステムが復旧しました」「わかった。よくやってくれた。早速各支部に連絡して状況を確認しよう」グレートは各支部に連絡を取る。マレードネシア支部で片付けを行う元連合とマーリン、タイミャー、タケル、長船。ビドーは支部の中に捕らえられている。「ファントム教が崇める唯一神ファントム、ユートピア教が崇める楽園ユートピア、このどちらよりも優るものがあった。奇石、あれは持つ者の願いを叶える石だという。その上、ファントムやユートピアが存在しないのに対して、実際に存在する。この事が、何より素晴らしい。決めた!これから私は、ファントム教とユートピア教をまとめ、奇石教の教祖となろう!」電話が鳴る。「おや?電話ですよ!」作業を止めて、マーリンが出る。「こちらマレードネシア支部です。支部は無事です。元連合の方々の協力のお陰で、ファントム教とユートピア教に勝つことが出来ました。教祖の一人は死にました。もう一人は支部で捕らえています。元連合の方々のお陰で片付けも順調です。はい。頑張ります」ホッカイロ支部で片付けを行うソナタ大隊。支部で点を休ませるガル。「敵組織の首領が母さんを助けていたとは、分からないこともある」「今思えば、利用されたのかもしれない」「それで、まさか戦っていた包帯の中から母さんが出てきた時は驚いた」「人間は余計なものに目が向く生き物よ」「驚いたと言えば、その包帯の材質にもだ」「驚くのも当然よ。この包帯は、ある武器職人に創ってもらった特製だから。使いようによって、時には体に合わせてしなやかに曲がるただの布、時には獣をも切り裂く固い刃にもなるのよ」電話が鳴る。「こちらホッカイロ支部です。支部は無事です。カリュードの者たちの助けのお陰です。カリュードの者が残党と戦っています。私は敵組織のリーダーとの戦闘し負傷しましたが、そのリーダーというのが私の母でした。はい。驚きました。片付けを終えた後、本部へ戻ろうと思います」モスクルドノワ支部で片付けを行うロンド大隊。支部の中にいるアジズに報告するバランとスミス。「スミスから申したいことがあるそうです」「一度脱退した身でありながら、勝手を申します。SONGに復帰したいのですが、お許し願えますか?」「俺では答えを出せない。共に本部に戻り、総司令官様にお許し願え」電話が鳴る。ゼックスがアジズに言う。「本部からお電話です」「こちらモスクルドノワ支部です。支部は無事です。フィナーレ部隊を含めた多くの者の犠牲がありました。断罪者の襲撃もありましたが、忍び族たち、それからスミスのお陰で、難は逃れました。はい。復帰したいと言っています。片付けを終え次第、共に本部に戻ります」グレートが連絡を終え、総司令室へ戻る。「支部の壊滅は防がれた。首領も捕らえた。残るは、カリュードの面々が戦っている残党を残すのみだ。SONGの勝利は近い」
【スパイ①】
パンベンシティの宮殿が避難場所と指定された。世界各地から避難者が向かう。ある姫も護衛と共に宮殿へ向かう。「我が部隊にスパイはおろかヒッコリー一匹入る余地はない」そう言った隊長をよそにスパイは心の中でほくそ笑んだ。彼が動いたのは、目的である姫の誘拐の任務の時。部隊の任務としては姫の移動中の護衛である。目的地は猛毒を持つ獣が出現する鬱蒼と茂った森を通るため、全員全身に鎧を身に着けていた。予定では、まっすぐに目的地まで行くことになっていた。その途中で彼の仲間が彼の合図で作戦を決行する手はずになっている。つまり、彼の仲間は部隊には見えないように並行して移動している。彼はできるだけ被害を出したくない男で、他の隊員が姫から離れる機会をうかがっていた。しかし、そんな場面は訪れず、目的地までたどり着いた。「いったいいつだせばいいんだ?…」彼はタイミングを決めかねていた。「よし、我らの任務はこれにて完了だ。引き上げるぞ」と隊長の男がいつ言うかを待っていた。彼はその瞬間合図を出そうと思った。隊長は姫が謁見する仙人の小屋に入るのを見届けている。姫は小屋に入った。そして、隊長は徐に口を開いた。「われらの任務は護衛だ。だから、もう少し見届ける」(なぜだ!?)彼は耐えかねた。合図を出した瞬間、同じく耐えかねていたスパイの仲間たちが一斉に飛び出し、部隊の横を通り過ぎ小屋へ飛び込んだ。「まんまと引っかかったな」隊長は彼に言った。「スパイがいる事なんてお見通しだ。お前がすり替わった人物は寡黙な男だ。寡黙だからわからないと思ったのだろうが、甘い。彼には癖がある。我々にしか知らない癖が。長年共にいる私たちの目を甘く見るでない」「くそう!ただな、甘いのはそっちも同じだ!こちらももしもの時を想定してある。ばれていたときのための作戦、その名も、“催眠作戦”だ!」そう言うとスパイの彼は手に握っていた粉末の入った袋を逆さまにしてばらまこうとした。「そうはいくか!」隊長はスパイの彼の腕を寸でのところで掴んで止めた。二人が攻防していると、小屋の中から悲鳴が聞こえた。「「ひゃー!」」隊長はスパイの彼の腕を背中に回し、しゃがませる。隊長は笑いながら言った。「今更気づいても遅い。そうだ。元々ここに姫などいない」「なぜだ!?確かに顔を見たはず」「あれは変装だ。私たちのバックには誰がついていると思う?」「さあな」「わからないだろう。では教えてあげよう。私たちのバックについているのは、怪盗ミラーだ!」「なに!」スパイの彼は半分あきらめたのか、粉末の入った袋を落とした。「あの変装は怪盗の変装術だ。さすがは怪盗。一見本物の姫に見える。だが、正体は屈強な男さ!」そして、小屋から次々と隊員が倒され飛び出してくる。「くそう!…作戦失敗。繰り返す。こちらは作戦失敗」「おい、何を言ってる」「ふっふっふ。まだ私たちには最後の作戦がある。さあ、本物の姫の場所を言え!」彼は鎧を脱ぎ捨て、銃を構えた。他の護衛たちが彼を取り押さえようとした。その時、辺りの茂みから、銃を構えた男達が現れた。「まだいたのか…。これはさすがにまずい」
【スパイ②】
一方、本物の姫は護送車の中にいた。「あの方たちは大丈夫かしら。今頃猛毒に侵されていたりして」「大丈夫です。彼らはそんなに簡単にやられたりはします、いや、しません!それにSONGがついていますから」「それならいいのだけど」護送車は今、姫の護衛たちが囮として入った森を迂回するように走っていた。「あなたは、今後の世界の決定に必要不可欠ではない、いや、必要です!ですから、なんとしてもあなたを無事に送り届けてなくてもいい、いや、なければなりません!」「分かりました」彼女は心の声のようなものを感じ取ることができる。それは人も獣も同じである。彼女の持つ能力は、人と獣を繋げることができるかもしれないと思われた。そして、仙人が彼女を呼んだ。しかし、現在彼女は世界的に有名となり、動くに動けない状況になった。そこで、もともといた姫の護衛たちに加えてSONGが護衛を援護する形になった。「それにしても本当に誰も通らない道だ」
「早く言え!言わないと、撃つぞ!」「待て!そう興奮するな!」その時、隊長のヘッドホンから情報が入った。「こちらSONGの支援センターです。姫様の城の周りを数人の男達がうろついていたのですが、直ちにSONG隊員が向かったところ暴れたため即座に捕獲しました。おそらく彼らは仲間だと思われます」隊長は小声で応答した。「わかった。それより今大変な状況なんだ。スパイの仲間が銃をこちらに向けている」「なるほど。それでは、SONGから協力者を送ります。しばらくお待ちください」「わかりました」「おい、姫の居場所はどこだ!?」「姫は優しいお方だ。いつも笑っていらっしゃる」「おい!居場所はどこだ!?」「姫は私の手を良い手だと言ってくださった」「何を言っている!?」隊長がとぼけた発言をした。その時、風が前を通り過ぎた。いや風ではなかった。それは人だ。そう思っている間に、スパイたちは次々と倒されていった。残るは鎧を脱いだスパイのみだ。「な、何者?」スパイの彼は、銃を乱射した。「「うっ」」なんと銃弾が隊長以外の護衛たちに当たってしまった。「おい、大丈夫か!?くそっ。偶然にも当たりすぎだ」「大丈夫です。鎧を着てますから」「ああ、そうか。そうだった!自分たちは鎧を着ていたのを忘れていた」「瞬息の僕が来るまでもなかったですね」「怪盗ミラー!」隊長が安心したのもつかの間、木がめきめきと音を立てて倒れている。そして、それはだんだんこちらに近づき、スパイの彼の背後に突然現れた。例の猛毒の獣だった。「逃げるぞー!」隊長の命令で隊員は車に乗り込んだ。「あれ、協力者の彼がいない!おーい!」その時、ラウスが勢いよく遅れて乗ってきた。スパイの彼とともに。「早く車を出した方が良い」猛獣の獣が舌を振り回しながら追いかけてきている。「どうして連れてきた!?」「えーと、死にそうだったんで」「いや、そいつはスパイだ。助ける必要なんてないでしょうに」猛獣の獣が今にも追いついてきそうだ。「いや、私のモットーは“助けられるものは助ける“ですから」「ハー、それはすごい。でも、今は気を失っているからいいが、起きたら何をするかわからない」「その時はその時です」皆が呆れたとき、車はスピードを出しすぎて、うまくコントロールできなくなり、森の外へ飛び出した。
【スパイ③】
護送車は誰も通らない道を静かに、まっすぐ目的地へ走っていた。「順調では、いや順調です。」「そうですね」その時だった。左手の森の方から、勢いよく車が一台飛び出してきた。木々にぶつかったのかフロントガラスが割れてボロボロである。護送車は避けて少し進んだが停止した。「あれは、囮のみんなかもしれません」「あんなボロボロで何かあったのではないかしら」二人が降りて近寄ろうとしたとき、大きな獣が森から飛び出した。「何なのあれ!」「わかります、いや、わかりません!」停車していた囮の護衛の車は獣に当たる寸前で走り出した。同じく停車していた護送車も走り出した。そして、2台の車は並走しお互いを認識した。「良かった。姫様はご無事で。いや無事じゃないか」後ろから舌を勢い良く振り回した獣が近づく。「あんなのにあったたらどうなってしまうのかしら…」「大丈夫です。我々にはSONGがついていますから」その時護衛たちに情報が入った。「こちら支援センター。今そちらの状況を衛星画像から追跡中。もう間もなく援護が到着しますので、頑張ってください」獣は今にも追いついて来ようとして、長い舌を伸ばしてきた。「ひゃー!」護送車はギリギリで避けたと思ったが少しかすったようで、後ろから煙が出ている。「大変!あの獣、怒ってるわ。自分の森を荒らしたと言っている」「何ですと!」次に、獣は囮の護衛の車に向かって舌を伸ばした。「ひゃー!」今度もまたギリギリでかわしそびれた。二台の車からは煙が出ている。「もうボロボロだ…。どこまで逃げ切れるか。早く援護来てくれ!」その時スパイの男が目を覚ました。「…?どこだ?お前たちの車になぜ?」「おう、起きたのか。それより今大変なんだ。ほら」「あれは!獣!」「え!今起きたのか!お前何もするなよ」「もうこの状況じゃあ何もできない。いや、これだけはできるか…」獣がさっきよりも速度を増して追ってくる。しかし、すぐに獣の様子が変わった。動きがだいぶゆっくりになり、眠るように止まった。いやすでに寝ている。「どうした?何があったんだ?」「粉末さ。予備でもう一個持っていたのさ」「おお、お前も役に立つな。協力者の彼が助けなければ今頃どうなっていたことか」「心配いりません。今援護が来ました」「こちら支援センター。獣の状況を確認。睡眠しています。こちらで対処しますので、護衛を引き続き継続してください。」「了解しない、こちらにはスパイが乗っています。どうしますか?」「それなら身柄を拘束して引き渡してください」(ん?何やら怪しい雰囲気)スパイの彼は無線の情報は聞こえていないが、察知した。「さすがに一人じゃ無理かな。又出直すぜ」そう言って彼は車から飛び降りた。「君!」ラウスも飛び降りて彼を追う。スパイの彼は行方をくらませた。「うまくまかれた…この瞬息から逃げるとはね。警察は僕を逃がすときこういう気持ちだったのか。次にあったら必ず捕まえてやる」
スパイの彼は敵組織が先回りしている宮殿に着いた。そこで、水に顔をつける拷問に合っていた。「はーはー」「ふふ」「鼻で笑うな!」「しくじったからだ」「お前は首領の偽物のくせに!」「何だと!そんな事を言うならもう一回だ」「はー」「ふふ」「おい、また…」「ふふ」「すみません、次はしくじりませんから、もう一度チャンスを私にください!」「一度失敗する奴はここではもう終わりだ。…だが、ちょうどもう一人必要になった。宮殿に駆けつけるSONGの部隊の乗る車を妨害して隙を作れ。もし失敗すれば、もう次はない」「はい、必ず」「よし、これを持っていけ。これは爆弾だ。ひもを抜けば、数秒後に爆発する仕組み、くれぐれも気を付けろ」「はい、必ず!」「…行ったか。あいつには犠牲になってもらう。あれはひもを抜いた瞬間に爆発する。奴には悪いが、これで姫を確実に捕まえる」
【スパイ④】
宮殿に向かう道の途中でスパイの彼が立ち、道を塞ぐ。「あいつだ!」スパイの彼はひもを抜く。走る間も無く、爆発。「「うわあ!」」二台の車は爆発を避けるようにして、走る。煙で視界が悪く、気づいた時は宮殿が目前に迫っていた。激突した。車の外に出る姫。宮殿の非常ベルが鳴る。宮殿にいた鎧を着た護衛が姫を誘導する。姫は鎧を着ているのは自分の護衛たちだと思っていた。しかし、避難した先で鎧を外したその人物は見知らぬ男だった。「あなたは誰?」「僕はスパイです」「どうして、その鎧はいつ手に入れたの?」「鎧はたくさんありました。彼らが全員脱いでいますから」「え?鎧は全員まだ身に着けていると聞いていたけど…」「それも僕が流した情報です」姫は驚いて何も言えなかった。「さあ、姫様こちらへ」「いいえ!行きません!」「大丈夫です。おとなしくして頂ければ何もしません」「待て!姫様を離すんだ!」隊長だった。「どうしてここが?」「理由などない。分かるものはわかる」「そうですか…、仕方ありませんね」スパイは姫の腹を殴り気絶させたのち、担いで逃げた。「おい!待て!」姫は目を覚ますと、先ほどの宮殿だった。(私は連れ去られたから、これは夢かしら)そう思っていると、鎧を着た者が現れた。姫様は咄嗟に悲鳴を出していた。鎧の者が駆け寄る。ますます怖がる姫のそばまで来て肩に手を置いた。「あ、あなたは誰?スパイ?それとも護衛?」そうするとそれに応えるかのように鎧を外し、顔を出した。「あなただったのね」それは寡黙な護衛だった。続いてもう1人現れた。「あ、あなたは?」「私です!」隊長だった。「鎧を着ているから驚いたわ」「いややっぱり危ないので念のために。ここで合流予定の仙人様の姿が見当たらず、宮殿中を探しています」「それは大変」「見つかるまでここに彼といてください」「気を付けて」鎧の中の人が護衛だったので姫は安心した。スパイが現れた。慌てた様子でおかしい。護衛が難なく倒し前に進む。もう1人現れた。やはり様子がおかしい。そこに隊長が来て、不意を突いて倒した。「ここには敵が多すぎます。早く逃げましょう」その頃、自称敵組織の首領は恐れおののいていた。「ひえー!来るなー!俺は関係ない!」「白々しく白を切るつもりか…!」首を左右に振り音を鳴らしながら近づく者。「我はかつての英雄リンクの子孫、英雄アルメテオス・ヴォルケーノじゃ!」「うわー!!」仙人の伸ばした手から激しい炎が放たれる。「今だに現役」燃える部屋を後にする仙人。その後、宮殿の外で姫と仙人が合流する。「仙人様!探しましたよ!」「すまん。姫、ご無事で何より。外は冷える。さ、中へ」「でも、中には敵が…」「安心せい。もう一人もどころかヒッコリー一匹おらん」「まさか…仙人様、力をお使いに…」「ほっほっほ」笑いながら宮殿に入る仙人。
【スパイ⑤】
面々は、クローン兵を倒しつつ進んでいく。倒しきった時、岩山に到達した。「俺らなら楽勝だ」「誰もいないようですね」サトリが岩陰に見知った気配を感じる。「いや、あそこにいる…」面々が見ると、SONG隊員7人がいる。「ドレミレドのみんな…」「知り合いか、サトリ」「うん。僕がSONGに来て最初に入った部隊の人たちだよ」「そうでしたか。あれ?その白い姿は…ロニョさんですか?」「オオ!イツカイッショニタタカッタヒト!イカニモワタシガロニョダ」「貴方に伝えなければならない事があります」「ナンダ?」「貴方をその姿にした人物に会って元に戻す方法について聞きました」「モトニモドレルノカ…?」「方法がありませんでした」ずっこけるロニョ。「アッテホシカッタナ…マアイイヤ。コノスガタサイキンキニイッテキタンダ」「それは良かったです」「そうか。ロニョが気に入ったなら良かった…」「おらの相棒だど。ワスト大隊バラライカ小隊のエースだ」「エスタだったよね?」「んだ」「何だか聞いたことない言葉遣いアル!」「おらの出身地では普通だべ」「私の出身地でも普通アルヨ!」「2人ともいい勝負だ…」「君、レインボーだよね?」「どうして私のことを?もしかして、あなたは、オズワルドなの?」「そうだよ」「オズワルドがレインボーの幼馴染だったんだ…」「これ。スバラ石。お守りにしたよ」「…いいと思う」「…ありがとう」「「…」」「あれ?静かになっちゃった…」「オズワルドはどうしてSONG隊員になったの?」「…もう言われるがまま流されるままの人生とはお別れ。僕は僕らしく生きる…って思ったから」「…かっこいいな」「…え?」「オズワルドは自分がなりたい者になれててかっこいいなあ」「…そんなことないよ」「私は体が弱いからSONG隊員になれるオズワルドがうらやましい」「…え、ごめん」「謝らないで。だからこそ、私は私の出来る事をしようと思って、この方たちについてきたの」「…良いと思う」「…ありがとう」そこに敵組織の組員が現れ、面々を襲う。「おっと!」「危ない」パキラとジョーが返り討ちにする。「シグムント、一体どういうこと?」「えっと…」倒れた組員がシグムントに言う。「今だ!」「出来ない…」「約束したじゃないか!協力してくれるって!」「でも、彼は僕たちの仲間だった…」「君はどっちにつくんだ!」「シグムント、君はそんな人じゃない」「僕は…」その時、シグムント以外の6人に動きがあった。「隊長であるアーヴィングが命じる!彼らを倒せ!」「嘘でしょ、オズワルド」「…うう、僕にもできない」「おらはやるど!ロニョ、カタナになれ!」「エエ!」ロニョが刀に変身する。エスタがロニョを掴み、ライラを狙う。「きゃあ!」「“居合切り”」咄嗟にクリスが剣を抜く。「ウワ!」振動がロニョに伝わる。「だいじょぶか?」「ダイジョウブダケド、シンドウハナレナイ」「ええい!…うああ!」「ヴィクトール、不器用だ…」ヴィクトールは剣を振りかぶって岩山に剣が刺さる。「…」「ザック、何を考えてるんだ?」ザックは剣に手を置いて固まっている。「どりゃー!」アーヴィングがナタリーを狙う。ナタリーが土のネアを発動し、地面を波打たせて押し戻す。「やっぱりスパイは僕らには荷が重すぎたんだ…」挫けるアーヴィング。その時、激しい地震が発生。「「うわあ!」」地震によって岩山から大きい岩が転げ落ちる。「岩が!ナタリー何とかできる?」「地面から離れてるからだめ!」岩がヨーの方に落ちていく。「グングニルよ!岩を割れ!」パキラが岩を割る。地震が収まる。ヨーがパキラに駆け寄る。「大丈夫アルか!?」「ああ。ちょっと、腕をかすっただけ」「強がるな。お前、片腕折れてるぞ」ジョーが見破る。「今すぐ癒します」レインボーが駆け寄る。「結構重症だ。時間がかかるぞ」「時間がかかっても私は治します」一方で砂漠に出来た亀裂にアーヴィングが落ちそうになっていた。「「アーヴィング!」」「悪いことをしようとしたから罰が当たったんだ…僕は罰を受け入れる」「止めろ!アーヴィング!」「やっぱり僕は隊長には向いてないからこうなる運命…」「そんなことないよ…」「アーヴィングは僕らの隊長だ」「すまない。これは一種のアポトーシスなんだ…僕の分まで生きてくれ…」亀裂の中に落ちていくアーヴィング。「…」ザックが必死に腕を伸ばす。「…弱い奴や」ザックが呟く。俯くバラライカの者ら。「お前たちが戦わないからこうなるんだ!」「お前は黙ってろ!」ロンドが組員を倒す。「お前たちは何で戦わない?」「勝てると思えなかった…」「じゃあ、スパイになっていいと思ったのか?」首を振る者ら。「じゃあ、なんで断らないんだ?」「「…」」エスタが言う。「断ることは出来た。だども、断ったら、この先にある研究所を襲うというもんだから」クリスが首をかしげる。「研究所?もしかすると、ワスト博士のもう一人の部下がいるのではないでしょうか?」「行ってみるか」パキラが言う。「すまない。私は置いていけ」「私も残るアル…」「俺が見張りを務めてやる」「わかった。お前らは残れ。俺らは行く」ジョー、パキラ、ヨー、レインボーを残し、面々は研究所に向かう。
【続・本部の戦い①】
SONG本部に一機の飛空艇が飛来する。タブララサが気づき、ネアで攻撃する。アポロンの発動した火で飛空艇の翼が燃える。飛空艇が本部前に落下。搭乗口が開き、中から6人の者が現れる。「何者だ」「我らはネアラー衆」「ネアラー衆…はてな」「ネアラーとはネアの使い手のこと。我らは全員ネアが使える」「何だって!」「メガロ敵だ、倒せ!」「わかった」メガロがいかづちを思い切り6人目掛けて振り下ろす。「「はっ!」」凍った地面が盛り上がりいかづちを防ぎつつ、いかづちを凍らせる。「うわ!凍った!」手を放すメガロ。アポロンが炎で溶かす。メガロが落ちたいかづちを拾う。「これは、水と土のネアの合成、氷柱だ。このようにネアを合成させることができる。ネアには、火と水と風と土の4つがあり、合成のパターンは15種類だ。我らネアラー衆は、それらを駆使して戦う」「恐ろしい…」「隊長!恐ろしがっている場合じゃないですよ」「そうだな。だが、どうしたものか…」その頃、総司令室にいるグレートと近衛衆の3人は画面でネアラー衆を確認する。「私たちも向うぞ」「「は」」グレートは走りながら、気になり、一つの部屋を開ける。開けると部屋が半分だけ残り、もう半分が離れていた。これは、グボアギの攻撃により、本部が半分になったからだった。「どうしましたか?」「ゼルがいない…」「ゼル、という名の隊員は知らないのですが」「隊員じゃない。ゼラチンの名前だ」「ゼラチン!あの、保護した個体ですか」「そうだ。無事だといいが…」「今は敵が優先されるべきかと思います」「ああ。急ごう」グレートらは走る。彼らが外に出た時、衝撃の光景が目に入る。ゼラチン族の群れがおり、その中心にゼルが歓迎されている。「ゼル…そうか、会えたんだ」「総司令官様!敵衆が技を放とうとしております!」竜巻の中に火を注ぎ入れている。火を吸収した竜巻の中に細かな電撃が発生する。「これは、火と風のネアの合成、雷だ。さらに、水のネアを合成する。その結果生まれるのが、光だ」竜巻が激しく光り出す。ゼルが目の色を変える。群れの中の王らしき個体に挨拶する。頷くゼラチン族の王。隣にいる個体が悲しんでいる。「あの個体が妃か。となると、ゼルは王子ということか!」ゼルは決心したように、竜巻の方に向かう。グレートも追いかける。ネアラー衆の技が完成する。「光に焼かれるがいい!」放たれた光。タブララサを庇うようにゼルが受け止める。「ゼルー!!」「このゼラチンは一体!?」焼け焦げ、ボロボロになったゼルをグレートが抱きしめる。ゼルは安心させるように手をグレートに伸ばし、息絶える。「くっ」グレートが拳を固め、立ち上がる。「許さないぞ」グレートが土のネアを全力で発動。ネアラー衆の立つ地面が6つに割れる。6人をばらばらにすることに成功。そこにツルギが現れて言う。「ほう。さすが総司令官だ。でも、このあと貴方方が負ければ、あのゼラチンは無駄死にになってしまいますね」「ゼルは、必死に生きていた。その死は決して無駄じゃない。私たちが勝って、それを証明しよう」幹部の女が言う。「ツルギ、私たちはこっちよ」「ああ」本部に向かう二人をゼラチン族の群れが塞ぐ。「あら、邪魔よ。ぷにぷにして嫌だわ」そこに犬のような獣が走って来る。「ヘルハウンド、追い払って」ヘルハウンドが噛みつく。ゼラチン族の王が必死に耐える。「助けに行きたくても、目の前の敵を相手せねばならない」グレートをネアラー衆の一人が塞ぐ。
【続・本部の戦い②】
鎮守の森で休んでいた英雄たちが話している。「気になる事聞いていいですか?」「どうした?何でも聞いていいぞ」「先輩方の名前、オで終わってるじゃないですか」「それがどうした?」「僕の名前、知ってます?」「何を今更言うんだ。オックウだろ?」「はい。どうも気になるんすよ」「わかったぞ。私の名前ミザリオとアルメオと違うのが気になるということだな?」「はい」「でも、それを言うなら土の英雄も同じだ」「そうだ。彼女の名前ナタリーだし、その父親の名前はグランドだからな」「本当だ。すっきりしました。仲間外れじゃないんすね。良かったっす」ミザリオがアルメオに小声で言う。「ここだけの話だが、グランドの子がもし男だった時は、ジオと名付けるつもりだったらしいぞ」「その時は、オックウに何て言えばいいかわからなかったな」「その時は、風の英雄は、他の英雄とは格が違うとでも伝えれば納得するだろう」「なるほどな。嘘も方便ということか!」「何話してるんすか?」「いや、風の英雄は、風だけでなく雷も扱えるからすごいと話していたんだ」「いやあ、褒めても何も出ないっすよ」「確かに、格が違うな」その時、本部の方で煙が上がる。「あっちで何かあったみたいだ」「休みはここまでだ」「了解っす」英雄たちが本部に駆けつける。グレートが英雄たちに気づく。「英雄の皆さん、本部に侵入しようとする二人を止めてください!」「「了解!」」オックウが風のネアを発動し、ヘルハウンドを攻撃。一撃を受け、飛び退くヘルハウンド。「ここは任せろ」ゼラチン族の王が退避する。「ほう。あなたたちは、まだ生きていたのですね。チャック兄弟は使い物になりませんね」「お前は…あの時の借り、ここで返す!」アルメオが火のネアを発動し、ツルギを攻撃。しかし、ツルギは剣で火を吸収する。「何!」「この剣、アブソリュート・ムーンは、熱を吸収する力がある。つまり、火の攻撃はすべて無効となる!」「ならば、私とオックウが相手をする!」「ちょっと待って。貴方たちの相手は私よ」「お前は…誰だ?」「私はピリオド。終わりの意味よ。偽名だけど」その頃、グレートはネアラー衆の一人と対峙していた。「我の名は、バイオレンス。通称イオン。イオンは水だ。水の使い手担当を先輩にとられた。俺は光の使い手に回された。望めばネアは手に入る。俺は努力した。その結果、3つもネアを使えるようになった」「お前は、ゼルを倒した張本人だ。ゼルの敵とらせてもらう」「あんたもゼルと同じ運命だ」イオンが雷を放つ。グレートが土の壁をつくる。「守るだけじゃ勝てない」「わかっている」壁から土の矢が生成される。イオン目がけて矢が飛ぶ。水を放ち、矢を落とす。「所詮土だ」「どうやら一筋縄ではいかないようだ」
【続・本部の戦い③】
アポロンはネアラー衆の一人と対峙していた。目元を覆う仮面をつけている。「我の名は、Ms.ショット。火の使い手よ。この弓で、貴方の心臓を打ち抜いてあげるわ」「奇遇だ。俺も火のネアの使い手だ」「あら、燃えるわね」ショットは、弓で火のついた矢を射る。アポロンが横に避ける。さっきいたところは爆発を起こす。「容赦ないな」「一気火勢よ」ショットが同時に複数の火の矢を放つ。アポロン目がけて矢が飛んでくる。回想。アポロンとジョシューがホークスとワシスンと町の中で出会う。「君、探偵かい?」「そうだが、なぜわかった?私服なのに」「キセル、それは私が好んで使用している」「それだけでどうして探偵といえる?」「この町でキセルを吸う者は、大抵2通りに分かれる。1つはただの愛煙者、もう1つは私に憧れた新人の探偵だ」「予定の時間に遅れるよ」通り過ぎるホークスとワシスン。「三日坊主にならないことを祈る」回想終わり。「ホークス、負けないぞ!」アポロンが火のネアを発動し、火の矢を燃やし尽くす爆発を起こす。爆風がショットを吹き飛ばす。気絶するショット。「火は、情熱の象徴。俺は、ホークスに負けないと情熱を燃やしている。一気火勢というのはこれで合っているかい?」モゲレオはネアラー衆の一人と対峙していた。マントをつけている。「我の名は、ライジング。風の使い手。ビュンビュン」「お?調子悪いのか?」「チッチッ。俺は絶好調だ」ライジングが風を放つ。モゲレオのひげが半分切れる。「は!何て鋭さ!」「シャキーン。俺の風は刃になるのさ」ライジングが風を乱れ打つ。風の刃がモゲレオ目がけ飛んでくる。回想。グレートに総司令官のバッジを渡すモゲレオ。「これからは、息子のお前が、わしの跡を継ぐ。総司令官の役目をしっかり果たすように」「はい。しっかり果たします」総司令室に静寂が流れる。「それで、父さんはこれからどうするんですか?」「…わしか?わしは、その辺で武器でもいじっとくか」回想終わり。「わ!危ない!」モゲレオは風のネアを発動し、自分を竜巻で包み込む。風の刃は、竜巻によって勢いを増して、ライジングに帰る。ライジングが風で抵抗するが、弾かれ吹き飛ぶ。気絶するライジング。「風は、流行の象徴。わしは、世代交代を早めにすることで、自由に行動が出来るようになった。タブララサという部隊は、わしのお気に入りだ」ペリドットはネアラー衆の一人と対峙していた。リヴァイアサンのマスクをつけている。「我の名は、リヴァイア。水の使い手。よろしくね」「そのマスクは、リヴァイアサンですよね?」「そうです。知ってる方がいて嬉しいです」「僕も好きなんで、ほしいです」「ダメです!これは負けてもあげません」リヴァイアが水を放つ。龍のような形の水の中を移動する。「どうです?リヴァイアサンみたいでしょう?」「何か言ってるけど、水の中で聞こえないな」ペリドットが水に触れ、凍らせる。「氷のアートだ」ツルギがアルメオを蹴り飛ばし、本部の中に入る。追いかけるアルメオ。ツルギは、集中して、何かを探している。アルメオは悩んでいる。(火を放っても剣で吸収されてしまう。オックウのように風を発展させた雷を撃てればいいのだが…俺にそんなことはできない。いや、待てよ。何故俺は撃てないと決めたんだ!諦めたらそこで試合終了と誰かが言っていた。試してみよう)アルメオは集中する。火のネアが聖剣に纏う。さらに集中する。「うおおお!!」火に電撃が走る。「やったぞ!成功だ!」雷をツルギに向けて放つ。「食らえ!」ツルギが剣で防ぐ。「何度やっても一緒…」剣を雷が伝い、ツルギに伝わる。「ああ!」本部から落ちるツルギ。追いかけるアルメオ。ツルギが立っている。「やられた。だが、まだ弱いな。それにここには探し物がなかった。ちょうど移動しようと思ってたところだ」ツルギが倉庫兼宿舎の方へ向かう。「待て!」追いかけるアルメオ。「あそこにあるはずだ。必ず手に入れる」
【続・本部の戦い④】
近衛衆の3人はネアラー衆の一人と対峙していた。ふんどしと髷をつけている。「我の名は、通拳。通称つっけんどん。土の使い手でごわす。張り手で皆殺しでごわす」「お前さん、俺らを甘く見たら痛い目をみるぞ」「私たちの連携に勝てるかしら」「本気で行くぜ」つっけんどんが土を放つ。壁をつくり、張り手で土の塊を飛ばす。ヒヨウが奇石を使い、水のネアを発動。「“バブルカーテン”」水の膜が塊を防ぎつつ、つっけんどんに迫る。「水は苦手でごわす」避けるのを見越して、ナイルが切り込む。「甘いでごわす!」土の壁を瞬時に作り、防ぐ。「甘いのはそっちだぜ!」ナイルの肩を利用してルシナンテが壁を超えるほど高く跳ぶ。その位置から刀を振り下ろす。気絶するつっけんどん。「安心しろ。峰打ちだ」タブララサの4人はネアラー衆の一人と対峙していた。ポケットに手を突っ込んでいる。「…我の名は、ボア。闇の使い手」「失敗を挽回する」メガロのいかづちがボアに命中。しかし、ボアは闇を生み出し、防ぐ。「…闇は全てを吸収する」続いて、ミミハがハヤテマルで矢を、ジョシューが銃で弾を打つ。闇に吸収される。「そんな…」「何なんだ、あの闇は?」ユーフラテスが見破る。「あの闇は、火と水と土のネアの合成によるもの」「…見破っても意味がない」ボアがネアを放ち、4人が倒れる。「つ、つよい」近衛衆の3人がボアと対峙する。「よくも俺らの子供たちをやってくれたな!」「私たちの連携を受けなさい」「本気で行くぜ」「…無駄だ」闇に吸収される。ボアがネアを放ち、3人が倒れる。「この男無敵か…」アポロンとモゲレオとペリドットがボアと対峙する。「俺の火と」「わしの風と」「僕の水を合成して生まれる」「「光ならどうだ」」「…無駄だと言ってる」闇に吸収される。ボアがネアを放ち、3人が倒れる。「油断した…」「すまない、グレート」「後は頼みました、総司令官様…」グレートは策を練る。(土は水に弱い。普通に攻撃してもだめだ)「あのゼラチンと同じように光で葬ってやる」イオンが光を生むために雷をつくる。(時間がかかるようだ。今しかない)グレートが土のネアを発動。土でイオンの足を掴む。「何!」ライオンの腕で殴る。気絶するイオン。「一人倒した」「…あとはお前だけだ」グレートがボアと対峙する。グレートが土のネアを発動。土でボアの足を掴む。しかし、ボアも土のネアで解放する。「お前も土のネアを使えるのか」「…俺がお前を倒す。そして、首領の座をもらう」ツルギが倉庫兼宿舎に着く。「感じる。この倉庫にあるぞ」ツルギが悪宿剣を掴む。「手に入れたぞ!これを手に入れる為に悪の組織に入ったんだ」「理由が何でも許せん!」その時、アブソリュート・ムーンが悪宿剣に取り込まれる。「これは一体、どういうことだ!」「おい、あの剣が無いということは火が効くんじゃないか!」「しまった!」アルメオが全力で火のネアを放つ。「うわあ!」ツルギが爆風で吹き飛ぶ。同時に悪宿剣が吹き飛ぶ。ミザリオが飛んできた悪宿剣を拾う。「これは…黒の剣士の剣」ミザリオが悪宿剣を抜く。漆黒の剣が現れる。様子のおかしいミザリオ。「…うおおおおおおお!!!」
【続・本部の戦い⑤】
グレートが試行錯誤する。地面を割る攻撃。地面を盛り上げる攻撃。地面を突き出す攻撃。どれもボアは土のネアで対応する。ライオンの腕で殴る攻撃。ボアは闇で吸収する。ボアがネアで攻撃。グレートが土の壁で防ぐも、僅かにダメージを負う。(隙が無い…どうすればいいんだ?あの闇が厄介すぎる。ん?待て。あの闇はその場所の攻撃を防ぐ。それなら…)地面を突き出す攻撃。「…無駄無駄」闇で吸収される。しかし、ボアを覆うように地面が突き出す。ボアが防ぐも、防ぎきれずダメージを負う。「…俺の唯一の弱点を見つけるとは、やるな。だが、俺は負けない」ボアが火と土のネアを合成した地雷の連続攻撃。グレートが土の壁が破壊され、吹き飛ぶ。「くっ…早くしないと先にやられてしまう」そこに、新たな敵が二人現れる。一人は若い男、もう一人は白髪交じりで、片目の眼鏡をかけた男で、二人とも科学者の外見をしている。「コードナンバー:1、モデルネーム:キョトン、タイプ:マグレガー。発進せよ」キョトンという名のロボットがグレートに迫る。「まずい…この状況でさらに敵が増えた」そこに、ウォーリーと見覚えのあるアンドロイドが現れる。「博士!」「待たせたのう!わしが改良したリメビウスが相手じゃ」「私ノ名前ハ、Reメビウス。行キマス」リメビウスは、キョトンに強烈なパンチを浴びせる。「びくともしとらん」キョトンはリメビウスを掴むと、その巨体を活かし、押しつぶす攻撃をする。しかし、リメビウスはキョトンを掴み、後ろに投げ飛ばす。「グググ」キョトンは自重で破壊され、爆発四散。「くっ、自信作だったのに。あとは、ワスト博士が造ったロボ兵器に頼るしかない。コードナンバー:2、モデルネーム:オメガン、タイプ:マグレガー。発進せよ」オメガンは瞬間移動のような速さでリメビウスを殴り飛ばす。「いかん。さっきのロボが遅かったせいで、より速く感じられるわい。任せたぞ、リメビウス」リメビウスが立ち上がる。オメガンが間髪入れず殴る。リメビウスは一度殴られたことで、動きを読み、避ける。一発をガードして、一瞬の隙を突き、強烈なパンチを浴びせる。オメガンがふらつく。リメビウスが畳みかけるように殴る。オメガンは耐え切れず破壊され、爆発四散。「そ、そんなばかな…」ついでにマグレガーを殴り飛ばす。気絶するマグレガー。「もう、オメガンなど、古いのですよ。私の名前、ダルタニアンをとって、かの建築家の機能的という意味の作品名に似せた、ユニテ・ダルタニアンが最強のロボットです」ユニテ・ダルタニアンが瞬時にリメビウスに近づき、殴る。しかし、リメビウスは避ける。蹴りを浴びせる。「ユニテ・ダルタニアンは相手の情報を読み取り、完全に同一の状態、能力、動きをトレースする。相手より、少し上の能力を繰り出し、必勝するのです」ユニテ・ダルタニアンとリメビウスが蹴りとパンチの殴り合いになる。リメビウスが気合を込めたパンチを繰り出す。しかし、ユニテ・ダルタニアンが少し速くパンチを繰り出す。リメビウスが吹き飛び、破壊しかけの状態になる。「よく頑張ったぞ」そこに現れる者。「ウォーリーさん、あとはこの私、平和の志士、ダグラスにお任せください」「人を相手にしたことはないです。楽しみです」ダグラスは、ユニテ・ダルタニアンの前に立つ。直後、パンチと蹴りを畳みかける。ユニテ・ダルタニアンが起き上がる隙を与えない。そのまま破壊しかけの状態になる。「とどめ!」蹴りで吹き飛ばし、ユニテ・ダルタニアンが爆発四散。「な…なんて卑劣な」「確かに強かった。だが、トレースするためには一度その攻撃を受けなくてはならない。そこが、敗因だ」「人間に負けるなんて」「人間はロボットに負けない」気絶するダルタニアン。「すごい!」「…油断禁物」ボアの攻撃でグレートが吹き飛ぶ。「今、助けます!」ダグラスがボアにパンチを浴びせる。闇に吸収される。「今です!」「…卑怯」「卑怯と言うのは、負けを認めたということだ」ボアがグレートの攻撃を防ぐもダメージを負う。「とどめ!」ダグラスが隙を突き、パンチを浴びせる。ボアがふらつく。パンチと蹴りの応酬。気絶するボア。「よっしゃ」その頃、ミザリオが暴走する。「なんなの?」蹴りで、ピリオドを吹き飛ばす。気絶するピリオド。ヘルハウンドは逃げる。「やりました、先輩」「…」ミザリオはオックウにも攻撃を繰り出す。「何するんすか。止めてください、先輩」一度避けるも、激しい攻撃で倒れる。アルメオがミザリオに飛び掛かる。「落ち着け!ミザリオ」剣を鞘に納めようとする。ミザリオが抵抗してアルメオを殴る。「いて!この野郎!」アルメオがミザリオを殴る。剣が鞘に納まる。気絶するミザリオ。「よし…やったぞ」気絶するアルメオ。
【続・本部の戦い⑥】
SONG本部内監獄。ジムが泣いている。ギルバートが宥める。「君、ここに来てからずっと泣いているけど、大丈夫?」「僕はしてはいけないことをしました。その事を深く反省しています」「君もつらいのか。気持ちが暗い時は、歌を聞くといい」ギルバートが歌をうたう。静かな監獄に歌声が響き渡る。「これは私の国に伝わる大切な人を想う詩です」「大切な人を想う詩…良い詩です」グボアギが目を閉じている。(歌か。暇をつぶすのに適している。もっと聞きたい)そのグボアギの檻に向かう者。檻の前に来てグボアギに言う。「首領様、約束通り参りました」「よく来た。もうちょっと聞いていたかったが、仕方ない。行くぞ」グボアギが檻を出る。「おれは行くが、後は任せた。怪盗ミラー」「かしこまりました」ラウスが全ての檻を開けて回る。指名手配者が続々と出ていく。最後に、クリスピー、アシュラ、ギルバート、ジム、ラル、シェリンダ、アルフレッド、クレセントが出る。クリスピーがラウスに言う。「シュン、どういうことだ?」「僕は怪盗として役目を果たす」「役目って?」「よくはわからない。ただこうしたいという意思のままに行動している」「何を言ってるんだ」「とにかく、この剣を渡すよ」ラウスはクリスピーに剣を渡す。「これは、アブソリュート・サン。かつての英雄リンクの仲間ガッテン作の剣」外に出る二人。逃げだした指名手配者を抑えるラル、シェリンダ、アルフレッド、クレセント。「俺も助太刀するぞ」クリスピーも指名手配者を倒す。「俺も指名手配者だったが、俺はこうしたい」ラウスは奇石を使い、指名手配者たちを氷漬けにする。「僕は敵組織の組員であり、SONGの協力者だ」アシュラが指名手配者を倒しながら、走る。「我は、只一人の者を追う」そのまま姿をくらます。ギルバートとジムは、支援室に向かう。「助けて、ジム」ユノナら支援部隊を追い詰めるヘルハウンド。「そんな…どうすれば?」「私の歌で鎮めてみよう」ギルバートの歌でヘルハウンドが眠る。「すごい!」ジムが驚く。ユノナがジムに抱きつく。「心配してたよ」「ユノナ、ごめんね」安心したのも束の間、ボニーの様子がおかしい。「私はピリオド。終わりの意味よ」そう言って、男の支援隊員の首を噛む。「好きになればなるほど隙ができるものよ。ああ、癖になっちゃいそう」「いつものボニーさんじゃない!」「早く止めなくては…」
【続・本部の戦い⑦】
アシュラは一人の男を探している。かつて自分を殺した男、ヴァスヴァンドゥ。殺された彼は、アブソリュート・スィンが保管された寺の名もなき僧。悪宿剣の力に魅了され、盗み出したが、寺を荒らす僧ヴァスヴァンドゥに殺された。殺された後、地獄に落ちた彼は、ヘルセブンの一つの役柄アシュラとなった。アシュラは、ひょろっとした僧に憑依した。ヘルセブンの任務は強い者を淘汰することと理解しながら、彼は修行の日々に明け暮れた。地獄の追手と戦いながら、修業を続けていた。アシュラは修行が必要不可欠だった。SONGの監獄で腕立て伏せをし続け、ついに満足のいく状態になった。ヴァスヴァンドゥは、寺を荒らす。それは彼がそうしたいからだった。彼が僧の首を絞めている。寺に向かう階段を上がる者。「時は満ちた」彼が気づき、僧を放す。「ん?誰だ」「…貴様に敗れてから幾年月、厳格なる修行に耐え、鬼の如き地獄の使者を何百、何千と払いのけたこと数知れず。今までの長きにわたる修行はすべてこの瞬間の為。力を追求めることはとやかく言わぬ。其れに生きとし生ける者はいずれ死ぬ。されど、故意によって、命を奪うなど許すことは断じてできず。戒を破り、破壊を行う貴様を私は、許さぬ」「誰だか知らねえが、少しは歯が立ちそうだ。この俺、修行僧ヴァスヴァンドゥの修行相手としてはな」「貴様がどれだけ強かろうと、このアシュラと同じ修行僧を名乗る資格はない。直ちにその名を剥奪させて頂く」アシュラが前転しながら蹴りを入れる。ヴァスヴァンドゥが防ぎ、隙が出来た腹に蹴りを入れる。血を噴き出すヴァスヴァンドゥ。「傷が出来ても、血の味って上手いからな…だから、俺は戦闘はやめられない」「さらば、その血に溺れて死せよ」アシュラの猛攻がヴァスヴァンドゥを襲う。其処ら中血まみれになる。「やり過ぎだ。もう反省したぜ」「否、是は貴様の行いに対する罰」「おい、剣が六本に見えるぜ、幻覚か?」「否、幻覚にあらず。厳格な罰にありけり。慈悲が及ばず。我、本体、<憤怒>。この怒りの全身全霊をかけて、貴様に裁きを与える。覚悟!“阿修羅・六文斬り”」ヴァスヴァンドゥの身体が6つに分かれる。アシュラは刀を仕舞う。「是にて、我が魂の定めを果たしたり。我、自ら帰還せん」名も無き僧は、気絶する。そこには、僧が一人生き残った。岩山の研究所。大量の奇石の山。そこから繋がった機械を装着し眠る少年。それを見守る研究者。「そうか。<欲望>はこのプログラムに異常があったからいけなかったのか」席に着き、パソコンのキーボードを叩く。SONG本部支援室。「ひゃあ…何なのよ、体の自由が、うばわれる…」ボニーが気絶する。男の支援隊員を介抱するジム。「何が起きたか分からないけど、無事でよかった」起き上がるボニー。「でも、ボニーさんに噛まれるなら、何回でもかまいません。今度は、甘い蜜のような口づけを…」「何を寝ぼけてるの!」「痛てて…夢だったのかなあ」「まだ起きてないなら、往復ビンタをお見舞いしてあげるわ!」「そんなー」支援室に笑いが起きる。その時、本部が傾く。「きゃあ!」「今度は何だ?」外で、脱獄したグボアギが暴れていた。「SONG総司令官、グレート。リベンジを果たす」グボアギの地割れ攻撃を、土の柱に乗って躱すグレート。「土は伝統の象徴。私は、父から受け継いだ総司令官の責務を全うする」土の柱をグボアギの方に倒す攻撃。グボアギは躱して言う。「まだ一人出てきていない。おい!おれの息子、メンドール、出てこい!」飛空艇の中から少年が降りて来る。「面倒くさ…」メンドールがネアを発動する。激しく地面が揺れる。遠くの山が噴火する。暴風雨が吹き荒れる。さらに、伝説の獣フェニックス、ヌタオロチ、ティアマット、ゴーレムが本部に現れ、暴れ出す。「何て力なんだ。伝説の獣と戦えというのか」驚くグレートの前に、空から彗星のように現れる者。「宇宙特捜隊、アグラウス。その使命にかけて、災害を排除する」
【夢世界研究所】
面々は、岩山を登る。その頂上に研究所を見つける。中に入る面々。壁や天井は青色で雲が描かれている。家のように家具が置かれている。ベッドの上に一人の少女が座っている。サトリが少女に不思議な感情を抱き、近づく。「君は、ここで何をしているの?」「ずっと起きてる」「起きて何をしているの?」「じっとしてる」「ここから出て行こうと思わないの?」「思わない」「どうして?」「だって、ここにいれば安全だから。外は危険でいっぱいだから」「確かにそうかもしれない。でも、君は自分自身でその事を強く思い過ぎてる」「…わからない」「何かあったんじゃない?」「…わからないんだ」「聞かせて」「言ったってわからないよ!」少女が一瞬気を失い、すぐ目を覚ます。少女がネアを発動し、強い風が巻き起こる。続けて、掌の上に炎を発現させる。熱が部屋全体を覆う。次に、氷を発現させる。熱が部屋全体から消える。最後に、部屋が歪み、元に戻る。「…成功だ」少女はまた一瞬気を失い、すぐ目を覚ます。少年はベッドに横になる。「疲れたから寝る」クリスが天井に何かを見つける。「あれは、カメラです。この部屋の様子を監視しているのかもしれません」「監視してるのは誰だ?」拍手しながら現れる者。「実験は成功した。いやあ、君たちのお陰だよ。いや、君のお陰と言うべきかな?ありがとう」手を差し出す科学者の男。「それほどでも…」握手するサトリ。「僕は君たちが来るのを待っていたのかもしれない。お礼のしるしに、君たちを夢の世界に招待しよう」「ライラ、夢の世界だって!」「ナタリーが嬉しそうで私も嬉しい」「夢の世界…どういうことでしょうか?」「嘘くせえ話だ」「分かるよ。簡単に説明しよう。夢の世界とは、寝ている間に行ける世界だ」「普通の夢と一緒じゃねえか」「とりあえず聞きましょう」「まあ、その通りだ。だが、ここでいう夢の世界は、願いを叶える世界」「まるで奇石みたい」「そう。察しが良い。夢の世界は、奇石を利用して行くことができるんだ。夢の世界で試練を超えれば、世界の理も分かるし、自然の力を手に入れることができる。ついに僕の仮説が証明されたんだ!」茫然とする面々。「あ、いけない。自己紹介がまだだったね。私の名前は、ボーン・イージー。専門が奇石。科学者の端くれだ」「貴方はワスト博士の部下でしたか?」「ああ。そういう時もあったね。でも、他の4人の異常さを見て、逃げてきたよ。他の4人を知ってるかい?」「知ってます…」「融合、洗脳、獣化、それから巨大化。気持ち悪いのばっかりだよね。よし、長話もここまでにしよう。ついて来てくれ」ボーンは隣の部屋に移動する。「うわ!奇石がこんなにたくさんある…」「誰かいるよ」頭に機械を装着した少年がベッドから起き上がる。「はー、よく寝た」「チグリス、よく頑張ってくれたね。もう機械を外していいよ」「意識的に寝るのも大変」「ずっと寝てたからね。隣の不眠室でタクトと一緒に遊んであげてくれ」「わかりました」チグリスが不眠室に入る。その前にサトリの耳元で囁く。「楽しんできてね。主人公くん」茫然とするサトリ。「チグリスは夢の世界に行っていたんだ。さっき隣の不眠室にいたタクトに憑依することで、自然の力を使ったんだ。不眠室というのは、これも奇石を利用して中の人を寝なくする部屋だ。人には睡眠エネルギーというのがあって、不眠室から得た睡眠エネルギーを夢の世界に行くことに使っているんだ」茫然とする面々。「あ、長話になってしまったね。早速、君たちにも夢の世界に行ってもらおう」機械を装着する面々。「準備が出来たみたいだ。それじゃあ、行ってらっしゃい。夢の世界へ」
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