夏の国の話終章2「Still In My Heart」

光とピットフィーンドは館へと戻った。半分駆け足だったが、ピットフィーンドは光の身体を考慮して全力を出さなかった

ピットフィーンドは館のドアを開く。するとすぐにシェリルが来てくれた

シェリル「ピットフィーンド様!」

ピット「ああ!話は聞いている!」

シェリル「後ですね。アークデーモン様、ヴァンパイアロード様、あいりさんとこうみさんが来てくれたんですよ!」

ピット「その4人が来てくれたのか!?」

光「えっ!いつの間に!」

そう言うと4人はリビングから顔を出した

アーク「我が友人の緊急事態だ。いてもいられない状態だからな」

ロード「だってデスちゃんだもん!」

あいり「アタシ達はちょっとゲストって感じにな」

こうみ「…一応私と姉さんも悪魔協会の一員になってるから来たのよ」

4人がそう言うとピットフィーンドは嬉しい表情になった

ピット「全く。心強い味方だ。よし!すぐに地下室へ行くぞ!光、準備はいいな!?」

光「うん!ピットちゃんに着いてく!」

全員地下室へと向かう

地下室の祭壇…ここにゲートがある。しかし、ゲートを開くには捧げものが必要なのだが…

光「ここをくぐると地獄へ行けるの?」

ピット「しまった。捧げものが無い。調達する時間はあるだろうか」

アーク「ピット、安心しろ。私にまかせておけ」

ピット「アークデーモン?」

そう言うとアークデーモンは人間の言葉ではない呪術の言葉を言う

すると、ゲートが開いた。紫色をしたゲートが出てきた

ピット「あ、そうだアークデーモンはゲートを開く呪術ができるんだった」

あいり「お~さすが悪魔のトップだな」

アークデーモンが言葉を終えると全員に振り向いた

ロード「さっすがアークちゃん!そこが惚れる要素満載!」

アーク「冗談は後にしろ。みんな。行くぞ」

シェリルを含めた7人は覚悟してゲートをくぐった


地獄へと着く。一般人の光とあいりとこうみは慣れないせいかくぐったときに若干のだるさがあった

しかし、そんなだるいなんて言っていられなかった。時は争う

ピット「…よし、あまり餓鬼とか言ったのはいないな」

ロード「走っていく?でも光ちゃん達と離れ離れになりそうよ」

シェリル「私も走りたいのは山々ですが、ここは光さん達に合わせましょう」

アーク「そのほうが懸命だな。光、あいり、こうみ、絶対離れるなよ」

こうみ「…わかったわ。でもモンスターがいる場所で襲ってこないかしら」

ピット「それは安心しろ。私という高位悪魔はまず近寄らないし、悪魔のトップと不死のトップがいるから余計近寄ってこない」

光「じゃあ安心していけるね。行こう!」

あいり「デス!待ってろよ!」

7人は走るように歩くように急いで中心部へと向かった

道中、餓鬼みたいなのはいたが、全部避けるかのように道を通してくれた。やはりトップがいるとわかるらしい

何事もなく、7人は中心部へと辿り着く。そして門にいる鬼2人が出迎えてくれた

ピット「鬼たち!」

あいり「へえ、鬼なんだ。アタシたちと一緒じゃん」

こうみ「…別次元の鬼かしら」

2人のつぶやきはともかくピットフィーンドの言葉に反応して、鬼たちが言う

鬼1「ピットフィーンドさん!あれ!代表と副代表も!」

鬼2「大変なんです。デス様が無闇地獄へと向かって…!」

鬼は非常に慌ててる状態だった

ピット「止めようとしなかったのか!?」

鬼1「いやいや俺たちも止めようとしたんだよ!でも言うこと聞かない状態で…!」

鬼2「何をあんなに追い詰めてるのか私たちには一切わからなくて!」

ピット「…どうしてなんだ、デス」

ピットフィーンドは落ち込んでしまった。しかし、アークデーモンは動じずに言う

アーク「おい、無闇地獄へ案内しろ。まだいるだろう」

鬼1「…わかった。まだいるかどうかわからないが、案内するぜ」

ロード「アークちゃん?そのまだいるっていう自信はどこから来てるの?」

アーク「ロード、お前もわかるだろう。気というのが」

ロード「あ…確かにほんのりだけどデスちゃんがいるっていうのわかるわ!」

光「つまりまだチャンスはあるってことだよね!急ごうよ!」

鬼に連れられ7人はまた急ぐように向かった


無闇地獄の入口に辿り着く。入口でも、その先は漆黒の闇になっており光達はその暗闇に恐怖した

正気度が減りそうな、闇の包まれ方をしており、やはり人間の来るところではないことを感じた

そしてその入口には、1人の少女が立っていた。間違いない。デスである

ロード「やっぱり…デスちゃんだわ…」

鬼1「すまん、俺が案内できるのはここまでだ。後は、なんとか止めてくれ」

あいり「ありがとな!」

シェリル「いつもお勤めご苦労様です」

7人はお礼を言うとデスの場所まで向かう

ピット「デスーーーー!!」

ピットフィーンドが叫ぶとデスが振り向いた

デス「ピットフィーンドさん…?アークデーモンさん?ヴァンパイアロードさん?…どうしてここに」

アーク「デス。お前はここへ来るとこではない。生きてたお前の貢献…全て感謝してるんだぞ」

ロード「そうよ!無闇地獄なんて行かないでよ!貴女はどうしてそこまで追い込まれてるの!」

2人がそう言うとデスは口調を変えずに言う

デス「…言いましたよね?私は貴女達の素晴らしさに敵わないんです。私は何もできません。そして今でも…

私は、貴女達に嫉妬してるんです。だからこの場所を選んだ。もう何も言わないでください」

ピット「やめろデス!無闇地獄の事わかってるよな!?もう永遠に魂が消えるんだぞ!それでいいのか!」

デス「…うるさい。うるさい!うるさい!!私に近寄らないで!!」

デスは何かの術をかけようとした。これは吹っ飛ばす術…!ピットフィーンドはわかっていた

ボーン!!…しかし、7人はけっして吹っ飛ばされずに済む

デス「なっ…」

アークデーモンのおかげだ。術をかけると予測してあえて防御の術をかけていた

アーク「デスよ。お前はそういう風系統の術が得意だったな?わからないわけではない」

デス「…くっ!ならこの術を!」

デスが術を唱えようとする。しかし、先に動いたのはピットフィーンドだった

ピット「バカ野郎!!」

ピットフィーンドはありったけの力でデスの顔面を殴った。デスは吹っ飛ばされる

そんな力ある殴り方をしたせいかデスの詠唱は不発に終わった。デスは殴られ、倒れた

光「ぴ、ピットちゃんそんなことしなくても…!」

あいり「でも、とんでもない術を唱えようとしてたんじゃないか」

ロード「そのとおりね…」

倒れたデスをピットフィーンドは強引に起き上がらせ、胸ぐらを掴み、言葉を投げかける

ピット「お前!お前は…!悪魔協会の一員なんだ!そして、アークデーモンとヴァンパイアロードに愛されてたんだぞ!」

デス「…!」

そう言うと6人がデスの元へ近寄る。もう術の詠唱はしなさそうだ

アーク「…デス、私はお前の事を誇らしく感じた。悪魔協会を改装してるときに約束したよな。3人で盛り上げようって」

ロード「デスちゃん。アタシ、デスちゃんの事が好きよ。だって、一生懸命働いたじゃない。今でも覚えているわよ」

シェリル「デス様、私達の館に来て色々と教えてくれましたよね。私が不死になって1番に嬉しそうにしてたの、デス様ですよね?」

デス「…!!」

デスは息を飲む。3人とも優しい口調で、デスの事を言ってた

ピットフィーンドは胸ぐらを掴むことを止めた。デスは座ったまま、うつむく


デス「私は…私は…!まだ、私の心の中では…!!」


さっきまで喋らなかった光、あいり、こうみは言う

あいり「なあ、デスさん。やっぱりこんなに愛されてるなら、無闇地獄なんて行かなくていいんじゃないか?」

こうみ「…少ししか会ってないけど、デスさん絶対良い人よ。地獄にいるのはもったいないわ」

そして光が言う

光「デスさん、もうやめよう。こんなにデスさんのこと好きって言ってくれるだけで幸せだと思うよ。

それに。デスさんがいたらきっと良い悪魔協会になってたんだって思う。デスさんは優しくて責任感強いんだね。

わかるデスさん?代表と副代表にこんな好きって言ってくれるの、デスさんだけだと思うんだよね」

光、あいり、こうみに言われて、デスは涙を流した。亡霊のトップが、止まることのない涙を流した

デス「うっ…ひっく…うわあああん!!」

デスが涙を流して、もらい泣きかヴァンパイアロードとシェリルが泣いてた。アークデーモンは黙ってデスを見ていた

ピットフィーンドは座ってるデスの肩をぽんと叩いた

ピット「デス…これでわかったろ。お前は愛されてるんだ。だから、やめようぜ」

デス「…でも、私は、私自身で地獄を選んで…」

すると、めったに晴れることの無い地獄の世界から光が降りてきた。7人は不思議に思い、見ていた

あいり「な、なんだ?何が来るんだ?」

こうみ「…あら?天使ね」

光「天使?どうしてここへ…」

そこに現れたのは、天界にいる天使だった。天使はデスの側へと降りる

天使「よかった。間に合いました」

ロード「あなた天使よね?どうして地獄に?」

天使「はい。実は神様からデスという全く無実の罪で地獄に行った人がいるから地獄へ向かえと言われて、この方を天界へ上がらせます」

アーク「神の命令か」

天使「そうなんです。皆さん、デスさんを天界へ行かせてよろしいでしょうか?」

7人は誰も反対はしなかった

天使「ありがとうございます。では、デスさん。天界へ行きましょう」

デス「…は、はい…」

デスはもう拒否反応もしなかった。デスが上に上がる。その姿を見て、7人は言葉を言う

アーク「デス。天界で幸せにな」

ロード「デスちゃんのこと一生忘れないから!さようなら!」

ピット「いつでもお前を思い出すからな!」

シェリル「デス様ありがとうございました」

あいり「天界ってどんなところなんだろな!じゃあな!」

こうみ「…お幸せに」

光「デスさーん!バイバイ!」

デスは天井まで行き、そして光が消えた

7人はデスを見送り、顔を合わせる。もう、地獄にいる用事はないだろう

ピット「…さあ、現世に戻るか」

光「そうだね!」

7人は鬼に挨拶し、現世へと戻った


7人はピットフィーンドの館に戻った。ピットフィーンドはもう必要ないだろうと、ゲートを閉まった

リビングへ戻ると、あいりが言う

あいり「いやー…なんかファンタジーな経験したぜ。これ一生忘れないわ」

こうみ「…こうやって摩訶不思議な出来事があったこと、他の人に教えたいぐらいね」

光「…デスさん、今どうしてるんだろ」

光がそう言うとピットフィーンドは答える

ピット「あまり天界は詳しくないが…きっと神に会ってんだろうな」

シェリル「天界の一員に、なったんですね」

シェリルがそう言うとアークデーモンはぴしっとした声で発言する

アーク「…あいり、こうみ、そして光。ありがとう」

ロード「アタシからも言わせてもらうわ。本当にありがとう。貴女達がいてくれたから、デスちゃん天界へ行けたんだわ」

代表と副代表にお礼を言われた。3人はそんな必要だったかなーと思ったが…

アーク「ちょっと、悪魔協会に行かないか?お前達のお礼をしたい」

光「え?でも私たちそこまで活躍しなかったけど…」

ロード「いいのよ!さ、いこ!」


悪魔協会総本山懺悔の場所…ここに、全スタッフの悪魔と亡霊と不死が集まっていた

その中心にアークデーモンとヴァンパイアロード。そして光とあいりとこうみ。その横にピットフィーンドとシェリルがいた

アーク「…お前達のおかげでデスが無闇地獄に行かず、そして天界へと向かう我々には想像もつかなかったことがあった

お前達がそう思ってなくとも、私はお前達に感謝している。これを受け取ってほしい」

そう言うと箱から邪悪だが、ドクロをかたどった紋章が取り出された

光「これは?」

アークデーモンが言う前にヴァンパイアロードが言う

ロード「これはね、悪魔協会を貢献した人にあげる紋章よ!本当は3人にあげたいけど、今1つしかないの。ごめんね」

そう言うと光はどうしようかと悩んだ

光「でも…」

あいり「ほら、光。代表として受け取れ」

こうみ「…私達より貴女が受け取るのが1番だわ」

光「…わかった!」

もはや断る理由すらなかった。アークデーモンは光に紋章をあげる。そして言った

アーク「本当に、ありがとう」

アークデーモンは少しだが笑顔になった。無表情の悪魔が、笑顔を作った

悪魔「代表が笑った…!」

不死「す、すごい素敵です!」

亡霊「さすがですね…!」

全スタッフがザワザワした後、ヴァンパイアロードは大きい声で全員に呼びかける

ロード「みんな!このヒューマンに紋章をあげ、そして我々の仲間とする。文句はないわね!?」

全員が言う

悪魔「異論はありません!光さん!あいりさん!こうみさん!ばんざーい!」

不死「我々は、貴女達を心から尊敬いたします!」

亡霊「これからも共に悪魔協会を盛り上げましょうぞ!」

この場所から大きな歓声が湧いた。その風景を見て、ピットフィーンドとシェリルは顔をあわせ、笑顔になった

既にアークデーモンは笑顔を止めてるが、ヴァンパイアロードはニコニコと3人を見る

そして、光はある決心をする

光(私、決めた!悪魔協会を支援する会社へ行きたい!悪魔協会に関係する仕事に就くんだ!)

まだ止まらない歓声の中、光は将来の夢をこの場で作った


アマリリスの夜。そして、光の決意

将来の夢は、光にとって大きい未来となりそうだ


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