秋の国の話終章1
~
しいなは夢を見ていた。どこかぼんやりした風景だった
しいなでも夢は見るが、ただ今回の夢はどこか違う雰囲気だった
しいな「あれ?私寝間着なんか着て夢見てる…?」
不思議に思うと、どこからともなく声が聞こえる
?「おーい、お前。そう、お前だ」
その声を聞くとそちらへ無意識に歩いた。夢だってわかっていても不思議な夢だった
しいな「そこにいるのは誰?私を呼んでる?」
そう言うと今度は声の主がはっきりわかるような姿が現れた
その人物は巫女服姿をして、どこか古めかしい。レニの着ている巫女服とはなにか違う
その巫女は笑顔でしいなを見ていた
しいな「あなたはだあれ?なんで私を呼んだの?」
?「私はトウコだ。まあ、ちょっと前に亡くなった巫女だけどな…」
しいな「もしかして、ダークロード戦争に関わってる巫女さん?」
そう言うとトウコは少し驚きの表情をする
トウコ「おー!よくわかったな!そうだ。私はダークロード戦争で活躍した巫女なんだ!お前達の遺跡巡り、よくやってるな!」
どういうことだろう。今までやってきたことが巫女に覚えられてることは。しかもちょっとどころじゃない…
しいな「私達の遺跡巡りを今まで見てきたの?」
トウコ「実は途中から見たけどな。ところで、私達巫女の封印を解除してほしいんだ。お前しかいない」
しいな「封印の…解除?」
そう言うと説明しようとする
トウコ「そうだ。アメパ遺跡ってあるんだが、そこで封印の解除をしてほしい。そしたら私達は現世へ行けるんだ」
しいな「ふーん…でも、やり方があるでしょ?」
トウコ「かんたんなことだ。まず遺跡にある無造作に置かれてる石を十字に置いてほしい。それだけだ
後は、お祈りするように願ってほしいんだ。そしたら、私達は現世に姿を見せたまま目的地まで行ける。かんたんだろ?」
説明を聞くとなんだかかんたんなことで分かるが、ただ私でいいのか?と思ってしまう
しいな「なんで…私に?」
そう言うとトウコは笑顔で言う
トウコ「お前は人間だが、ただの人間ではない。特別な力を持つ人間だからだ。だから、こうやって夢に介入してるんだよ」
この巫女は他人の夢に介入できるのか。しいなはありえないことでびっくりした。ただ、特別な力とは?
しいな「でも私、ただの中学生だし…」
トウコ「いやいや、お前は友人達とは違う力なんだ。だからこそ!だ」
しいな「そ、そんなこと言われても…」
トウコ「じゃあ、そろそろ朝だし私は消えるぞ。頼んだぞ!」
しいな「え!?もう!?ちょ、ちょっとまってよ!」
しいなは言うが、本当にすっと消えてしまった。まだ質問したいことがあるのに…!
…朝。しいなは目覚めた。今の時間はちょうどいい、支度する時間だった。しいなは夢の内容をはっきり覚えている
目覚めは不思議と良い。いつもはこの時間に起きてもぼーっとしてることが多いが…
しいな「…アメパ遺跡の…封印…そして解除…」
しいなは起きて、忘れないようにノートにメモした。そこまで行くかどうかわからないが、とりあえず
~
昼…しいな達遺跡部の一行は新しい遺跡のレポートを掲示板に貼ることにした
しいなは今日夢で巫女に出会ったことが今も印象に残っている。自分は特別な人間とはどういうことだろう?
マーガレット「こうやって何度もレポートを貼り付けてると結構活動的なんだって思うぜ」
シャニオン「そうですね。活動しないと駄目ですからね」
りな「私は途中ですけど、こうやって部活に携えることができて嬉しいです」
マーガレット「りなはもう立派な私達の仲間だぞ。なあしいな!」
しかししいなは何か考え事していて全然反応が無かった
マーガレット「おい、しいな。ぼーっとしてるのか?」
マーガレットに言われるとしいなははっとする
しいな「うん?いやいや、なんでもないわ。で、なんの話?」
そう言うとマーガレットは微妙な顔をする
マーガレット「何してんだよ。りなは立派な一員だよなって話だ!」
しいな「あ、そういうことね!そうだよ。りなちゃんは遺跡部の一員だよ!」
しいなはさっきまで見せたぼーっとした顔をせず笑顔で言う
りな「やったー!部長にそう言われると嬉しいです!」
そんなこんなで掲示板へと辿り着く。部室から掲示板までちょっと距離があるが、まあそこまで辛くはない
しかし、掲示板の前に誰かいた。スーツを着ている。男性だが、校長先生や副校長先生でも無さそうだ
しいなはすぐに気づいた。前に会った遺跡研究調査チーム代表、タツジだった
しいな「…タツジさん!」
そう言うとタツジは声のほうへ向く
タツジ「お!しいなちゃんじゃないか。久しぶりだね」
4人はタツジへと近寄る
マーガレット「え、タツジさんってあの遺跡調査代表の?」
タツジ「おっと、他の人ははじめましてだね。私はハマタツジ。遺跡研究調査チーム代表だよ。今日は特別に学校にいて
君たちのレポートを見てたんだ。とても良くできていて私は関心してしまったよ」
タツジは笑顔で言う。関心したというのはお世辞でもなく嘘は言ってない言葉だった
りな「わあ、代表さんが来るなんて凄い!もしかしてしいな先輩絡みですか?」
タツジ「そうだ。アヤメ神社に行ったときに彼女に会ってね。しいなちゃんとは知り合いなんだよ」
シャニオン「先輩の交友関係、広すぎですね…」
しいな「ふふーん!私は特別な人間だからね!」
マーガレット「ただのヒューマンだろがお前」
しいなは思ったが特別な人間と夢の中で言われてもしかしてこの事なのか?と自問してた
タツジ「そうそう!君たちにぜひとも行ってほしい遺跡があるんだ。日にちが合えば、私たちもいるんだよ」
しいな「え?どこどこ!」
そう言うとタツジは更に言う
タツジ「アメパ遺跡だ。あそこは謎が多くて、私達はちょこちょこ行ってるんだ。もし、都合が合えば遺跡部も来てほしい
土曜日にそこへ行く。きっとレポートのネタも多くなるだろう。ちなみにそう遠くはないから安心してくれ」
アメパ遺跡…巫女…夢…しいなは不思議だった。こんなタイミング良くその遺跡へ向かえるとは思わなかった
もしかして、巫女が誘導したのか?それしか考えられなかった
マーガレット「嬉しいな。それなら行こうか!な、しいな!」
しいな「え?うん!行こう!」
シャニオン(しいな先輩、今日はなんだか反応悪いですね。なんやろ)
タツジは言った後に自身の時計を見た
タツジ「さて、そろそろ私は戻るとしよう。校長先生に挨拶してここを出るよ」
しいな「もう?じゃあね!タツジさん!」
マーガレット「おいおい代表にタメ口かよ」
タツジ「ハッハッハ!大丈夫だ。それでは」
タツジは掲示板から離れ、職員室へ入った。おそらく校長先生に挨拶するのだろう
しいな「アメパ遺跡…」
小さな声で一人で言った。これは一体?夢の内容と一緒だ。しいなは疑問に思いながらも新しいレポートを貼り付けた
夕方…遺跡部4人は下校していた。この国の夕日はとても綺麗だ。その綺麗な夕日を浴びながら帰っている
マーガレット「…相変わらず綺麗な夕日だなあ」
りな「はい。本当に綺麗です。でも私この遺跡部の仲間で入れて嬉しい限りです」
シャニオン「りなちゃんはもう立派な一員や」
しいな「そうよ。ハーフエルフってなんだか貴重な感じするし、それに仲間が増えて嬉しいわ」
りな「いえいえ~全然貴重じゃないですよ~この国、ハーフエルフは結構いますよ」
マーガレット「まあそういう俺も天使だしなあ」
しいな「例の一族だもんね」
マーガレット「やめろその言い方!全然特別じゃねえから!」
そう言うとりなは不思議に思った
りな「例の一族?ってなんですか?」
マーガレットはそれを説明しないといけないのか…と思いつつ説明する
マーガレット「俺な、ユキノウエにある天使協会総本山の大天使ミカエルさんって人の親族なんだよ。それだけ」
りな「わあ、大天使の親族…!特別感ありますね~」
マーガレット「祝福の術とか使えんからただの天使なんだがな」
しいな「いつかマーガレットちゃんが祝福の術習得したらかけてもらおっと」
マーガレット「前言ったろ!誰にでもかけていいものじゃねえって!」
シャニオン「クスクス…ツッコミ面白い」
ちょうど分岐点へと歩いた。しいなは今日もアヤメ神社へと向かおうとしてた
しいな「じゃ、アヤメ神社に行くからここで。バイバイ」
しいなはそう言うとアヤメ神社へと歩く
マーガレット「おう、じゃあな」
シャニオン「今日も一日お疲れ様です」
りな「先輩、またあした」
アヤメ神社に向かうしいなを3人は見送ってた
アヤメ神社に着いた。もちろん、レニ目当てである。神社に着くとあたりを見渡す
しかし、すぐにレニの姿が見えた。参拝客用の椅子に座っている
巫女服のままで何か考え事でもしてるのだろうか?しいなはレニに近づく
しいな「レニさん?」
そう言うとレニははっとしてしいなの顔を見る
レニ「あら、しいなちゃん」
慌てたのか、笑顔を見せるレニ。そんなレニの横にしいなは座る
しいな「何か…考え事?」
そう言われるとレニは正直に答える
レニ「わたくしの、過去をふと思い出しましてね」
しいな「レニさんの過去…」
レニは答える
レニ「わたくし…巫女になる前は、やんちゃしてましてね。それをたまに思い出してしまうんです。
暴走族の一員になってたときがありましたし、万引きしたり、ガラの悪い男や女をとっかえひっかえするように付き合ったり…」
しいな「でも、今は巫女さんっていう立派な神職についてるじゃん」
しいなが言うと、レニは言う
レニ「ある日ですね。家族からこれ以上悪いことをしたら縁を切るって言われて…そこでようやくわたくし、悪事をやめたんです。
暴走族をやめましたし、もう付き合いすることもやめました。そして頑張って大学へ入学して、巫女になれたんです」
しいな「レニさん…」
レニ「わたくし、本当は悪いエルフなんです。昔ギャルになって、その時は楽しかったですけど相当悪かったんだなって
それを今思い出して、ちょっと胸が苦しい感覚です。フラッシュバック…なのかしらね」
そう言うとしいなは少し悲しい顔をする
レニ「これが、わたくしなんです。今は巫女という職業になれましたが昔悪事をしてたってことはなんも変わらない重荷なんです。
いくら洗い流しても、警察に捕まって前科持ちになりそうなほど、わたくしはこの過去を償わないといけません。
だから…時々思い出すんです」
そこまで言うとしいなはレニのセリフを遮るように言う
しいな「…レニさん!」
少し声を高くしてしいなは言う。レニはしいなの顔を見る
しいな「大丈夫だよそんなこと!今を楽しく生きればいいじゃない!過去は過去!そして未来は未来!それだけでいいじゃん!
もう忘れよう!胸が痛くなるなら今を大切にして、未来へと繋げばいいと思うわ!レニさん!もう過去を悔やむのはやめよう!
だって!今のレニさんが私は大好きだもん!それだけ!」
そう言うとレニの目から涙が溢れた。レニは思った。こんな純粋な子がいるなんて…!涙ぐみながら、レニはお礼を言おうとする
レニ「あ、ありがとう…ぐすっ…ございます…」
しいな「レニさんに涙は似合わないよ。とびっきりの美人の笑顔が、レニさんの素晴らしいところなんだから。涙ふいて?」
しいなはポケットからハンカチを取り出す。レニはそれをとると静かに目に溜まった涙をふいた
レニ「…本当に、ありがとうございます…。貴女を友人にしてよかった…」
しいな「そうよ。それでいいのよ」
レニは泣くのをやめて、笑顔になった
レニ「そうですね。もう過去を言うのはやめます。そして何も思いません。今を生きます。本当にありがとう…しいなちゃん」
しいな「それでいいの…。私もこれからどんな未来が待ってるかわからないけど、楽しいことがあるってだけでワクワクしちゃう」
しいながそう言うとレニは言う
レニ「でも…壁があるかもしれないですわよ」
しいな「大丈夫よ~。壁なんぞ、ぶち壊して進むわよ」
そう言うとレニは笑った
レニ「あら、登るんじゃなくてぶち壊して進む?ちょっと表現が変ではありませんの?」
しいな「え!?そ、そうかな…」
レニ「クスクス…でも、しいなちゃんらしくて面白いですわ」
レニの過去の話はどこへやら。2人はすっかり笑顔になり暗いことは吹っ飛ばしたような雰囲気になっていた
しいな「ねえ、レニさん。今日も一緒に帰ろう?」
レニ「もちろんですわ。今支度するので、待っててくださいね」
レニは帰りの準備をする。しいなはワクワクしながら待っていた
夜…しいなはまたまた牧へ連絡しようとしていた
もう何度目だ。と思うほど牧へ連絡してるほど、彼女には話したいことがある
何度牧にアドバイスをもらったか、何度牧の事を考えたか。この何日でそう思ったか。わからない
当然、牧は受話器を取る
しいな「あ、牧さんこんばんは。今日もお疲れ様」
牧「あらしいなちゃん。今日もお疲れ様ね」
しいな「あのさ、今日学校でタツジさん来たのよ」
牧「あ~、タツジさん今日出かけてくるって言ってたの貴女の学校だったの」
しいな「うん。私達のレポート見て高評価もらったわ」
牧「まあ、変人だけど子供には甘い人だからね」
しいな「そうなんだ。でね、今度アメパ遺跡に行かないかって言われて今度行くのよ」
牧「はいはいそこね。私も同行するわ。良かったら私の車に乗って行く?」
しいな「いいの?でも最近1人増えたから…」
牧「私も含めて合計5人の計算でしょ?大丈夫よ。私の車は馬力が違うから」
しいな「じゃあ、お願いしまーす」
牧「ええ。じゃあ、その日に会いましょう」
しいな「うん!今日は短時間だけど、切るね。おやすみなさい」
牧「おやすみ」
しいなは受話器を置いた
しいな「…私達、鳥になれるかな」
そんなこと言いつつ、次の日に備えようとしいなは自室へと戻った
ヒダンゲの夜は涼しい
4つの国も暖かくなったが、ヒダンゲは相変わらず快適な気温だった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます