冬の国の話終章1
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アルエル「…はい、なるほど…。そういった物件、あるんですね。ならちょうどいいです」
天使協会総本山…アルエルは自室でとある人と連絡をとっていた
アルエル「2人が住むのはちょうどいい…同性OK…天使協会も近くですし、大丈夫ですね」
アルエルはなにかを言ってるようだ。しかも物件の話らしい
アルエル「はい。わかりました。また伺いますので、はい。色々ありがとうございます。一旦失礼します」
電話を切った。実はアルエル、冬美と一緒に住みたいと思い、不動産屋へと連絡をしてた
アルエルは胸が高鳴った。恋人との生活。これを1番楽しみにしていた。今からウキウキしてしまう
アルエル「…冬美との生活…ここから離れる嬉しさ…うー!今からでも楽しみだわ!」
部屋に響き渡るほどの大きい声を出していた
…しかし、その声をドアごしで聞いていた天使がいた。ガブリエルである
ガブリエルはその言葉を聞いて驚愕した。まさか?娘様がここを離れる?跡継ぎはどうするんだ?
ガブリエル「たまたま通っただけですが…まずいこと聞いてしまいましたね…!これは一刻も早くミカエル様に言わないと…!」
彼女は慌てて代表室へと向かった
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クリスタルウィンター大学…
とにかく生徒の多い昼時間の食堂で冬美達は食事をしていた。おそらくアルエルも来るだろう
ギン子「…で、冬美は大天使の血をもらったからオーラが大天使になって祝福の術、使えるようになったのね」
ギン子は言う。だが、冬美は決して話をそらそうとはしなかった
結局冬美は大天使の血を受け継いだので祝福の術ができるようになっていた。ほぼ無許可の受け継ぎだが…
冬美「ええ。そうみたいね。でも、仕方ないわ。好きだからこそ、そうしたんだって思うの」
そう言うとミサゲは言う
ミサゲ「すげーな。なんなら私に祝福の術かけてくれねーか?」
冬美「いやよ。祝福は誰にでもかけていいわけじゃないの。アンタにかけたら調子に乗りそうだし」
ミサゲ「い、いや。そんなことないぞ!」
ミサゲの発言はちょっと戸惑いを感じた。高確率でなにかをやらかしそうである
冬美「駄目。何度も言うけど誰にでもってわけじゃないの」
もう自分は大天使の血を受け継いだからどうにも冷静になってしまった冬美である
コーク「いいなあ。大天使の血。ボクも血をもらいたいなあ。それでいつか医者になって幸せ、分け与えたいなー」
コークは意外と目的があるためなんだか術をかけたいが、そうではないと思い冬美は何も言わなかった
冬美「後は…相変わらず天使から熱い視線があるの、なんとかしたいわね…」
今でも4人でいるがチラチラと天使から視線が来るのが気になる。大天使のオーラとはそういうものだ
ギン子「ねえ、変な言い方だけど術をかけまくってオーラをじょじょに少なくするとかいう手段は無いの?」
冬美「うーん…それができればいいけどそうともいかないのかもね…」
ギン子「作り上がったオーラだものね。もう視線に関しては諦めて無視するのが1番じゃないかしら」
4人は黙ってしまう。どうすればこのオーラをなんとかするか。もうほとんど手段が無い
くどいようだがアルエルに相談するしかないだろうか。だが、手段は何も無さそうだ
黙っているときに、1人の天使が近寄った。しかし、それは冬美の恋人であった
アルエル「冬美!」
冬美「まあ、アルエルじゃない。今日はすぐに来れたのね」
アルエルだった。冬美にとびっきりの笑顔を見せて冬美の側に近寄る
ミサゲ「よおべっぴんさん。笑顔が素敵だな」
アルエル「いえいえ、そうでもないですよ!…あ、冬美、今大丈夫かしら?」
気がつくとアルエルは友人の前にでもタメ口で冬美を言うようになった
冬美「2人きりかしら?大丈夫よ」
アルエル「よかった!じゃあ2人で…ギン子さん達、ごめんなさいね」
冬美とアルエルは去った。去った後、3人は難しそうな顔をした
ギン子「大天使の血、すごいわね」
ミサゲ「悪魔の血とはまた違うベクトルなんだろ?」
コーク「冬美ちゃん羨ましくなっちゃったよ」
大学内では2人きりになれるスペースがないため面倒だが人気の少ない屋上へと向かった
2人は屋上へ着き、アルエルが話すことになった
アルエル「ねえ、冬美。君に単刀直入に言いたいんだけどね…」
冬美「ええ、何かしら」
アルエルは呼吸を整えて、発言する
アルエル「私と一緒に暮らさない?」
そう言われると冬美はびっくりした
冬美「え!?でも、アルエルってミカエルさんの後継者でしょ?勝手に総本山離れて一緒に暮らしていいの?」
冬美がそう言うと決して表情を変えずアルエルは言う
アルエル「冬美、私は一度もお母様の後継者になりたくないとは言ってないわ。あくまでも冬美と一緒にいたいの。
君と一緒に暮らせる生活…これを求めているのよ。大丈夫、天使協会から離れてない物件見つけたの。
そこで幸せに暮らしたい…それが私の衝動でもあり、そして願いでもあるの」
なんだかまた衝動的と言われて冬美はまた驚いたが、しかし全然悪い話ではない。むしろ、肯定的になればいいと感じた
冬美「…わかったわ。私も貴女と住むことを希望したいわ」
冬美が言うとアルエルは思いっきり喜んだ
アルエル「やった~~~~!ありがとう冬美!やっぱり君を選んで良かったわ!」
冬美「で、でもお母さんの許可が必要じゃない。それに天使協会内部でそんなことしたら大丈夫なの?」
一緒に暮らす…そのことはプラスな話だが母にとってはマイナスの話ではないだろうか。後ガブリエルも
アルエル「安心して。私がなんとか言うから」
冬美「なんとか言うでなんとかなるのかしらね…」
冬美は若干ながら心配したが、アルエルの顔を見ると大丈夫かなとは思った
そんな2人の会話を聞いていた天使がいた。その天使は象徴的な6枚の羽があった
その天使が言う
?「やはり貴女達は…私の存在を知らず…!物事を勝手に進めて…!」
誰だ?冬美とアルエルはその声に振り向くと驚きの人物がいた
アルエル「…お、お母様!?」
冬美「ミカエルさん!?どうしてここに…!」
ミカエルであった。そしてその横にはガブリエルがいた
なぜ、ここへ来れたのか!?その言葉を言う前にガブリエルが言った
ガブリエル「私たち、娘様が行った後、電話の内容をミカエル様に伝えたのですよ。
そして、ここの大学へ行きました。娘様…貴女は天使協会を裏切るつもりですか?」
ミカエルもガブリエルも、非常に険しい顔をしていた。どうもさっき話した電話の会話を聞かれてた
アルエル「そ、そんなことないですよ!だって!私は後継者になりたくないなんて一言も…!」
ミカエル「お黙り。今までは普通に見てきたけど、もう耐えられなくなったわ。貴女達の行動は一体どういうことなの!?
それにアルエル!冬美に勝手に大天使の血を分けて、貴女は重罪とも言える行為をしたのよ!」
ガブリエル「娘様!!貴女がそういうことをするとは…!どう責任をとるのですか!」
冬美「ば、バレてるじゃない…!」
アルエル「そ、それは…」
もはや言い訳無用であった。アルエルはバレないとは言ったが、結局バレている。アルエルの失敗である
その後、屋上へかけつけてきた3人がいた。ギン子、コーク、ミサゲである
ギン子「…2人とも。ごめんなさい」
コーク「たまたま、ミカエルさんが来て血の話してたらね…」
ミサゲ「やはりまずかったんじゃねえかこれ」
何も言えない。何も言い訳できない。ただ、これはミカエルの怒りである。ガブリエルもだ
アルエル「ご、ごめんなさい…私は…大天使どころか天使ですらない全てに対して…失格です…」
アルエルはただ、ただ涙を流し謝罪するしかなかった。それで怒りは収まりそうでも無かった
しかし、冬美はあえて反論を言おうとしてた
冬美「…もう、アルエルをこれ以上いじめないでください!これは運命なんです!私が、血を受け継いだのも!すべて!
大天使であるミカエルさんもガブリエルさんも運命なんてわからないでしょうけど!ヒューマンには、違う運命だってあるんです!
私は!アルエルを愛してます!ただそれだけなんです!大天使の血で、これ以上困らせないでください!迷惑です!」
冬美はありったけの大声でミカエルとガブリエルに言う。しかし、ミカエルとガブリエルは何も言わなかった
冬美「アルエル、私は大丈夫よ。あんな理解できない連中とはおさらばしましょう」
冬美は泣いているアルエルの身体を捕まえ屋上から去ろうとしてた
ミサゲ「お、おい冬美にアルエル!」
冬美「アンタ達。これ以上アルエルをけなしたら二度と会話しないわ!」
冬美とアルエルは下へと降りていった。気まずい空気が漂う
残ったのはミカエルとガブリエルと3人である。その空気を断ち切ったのはガブリエルだった
ガブリエル「…娘様…そして冬美さん…私達は、一体どうしたらいいのでしょう。…友人さん達?」
ガブリエルが初めて友人に声をかけた。しかし、3人とも暗い表情をしてる
ギン子「…ひとつ、わかることは…私達ではもう、止められないことよね。前からあの2人は仲良かったから私はある程度わかってたけど…
ここまで愛の重い話になってたとは思わなかったわ。愛ってものは、私にはわからないけどこんなにも難しい話なんだなって」
コーク「ボク…冬美ちゃんもアルエルちゃんも気に入ってるから…幸せにしたいけど…」
ミサゲ「私じゃあどうすることもできねえ。二度と会話しないと言われちゃ、もう何も言えねえよ」
3人は暗い表情で答えてた。ガブリエルはその言葉を聞いて、ミカエルに話そうとしてた
ガブリエル「ミカエル様…ミカエル様?」
ミカエルの様子が変だった。うなずいたまま、動いていなかった
ガブリエル「み、ミカエル…様??」
ミカエル「…うわああああああああああああもういやだ!!もういやだ!!どうして!!なんでなの!!私の子供なのに!!
どうして!!私の後継者なのに!!もう嫌よ!!うわあああああああああああ!!!!!!!!!!!」
ミカエルが悲鳴に近い声で発狂していた。当然泣き叫んでいた。その姿を見て3人は慌ててミカエルへ近寄る
ギン子「ミカエルさん!落ち着いて!」
ミカエル「わあああああああ!!あああああああ!!」
ミサゲ「落ち着け代表!」
コーク「これは心が壊れた発狂…!ガブリエルさん!すぐにミカエルさんを下に!」
ガブリエル「は、はい!」
結局、ミカエルは心が崩壊してしまい急いで天使協会総本山へと戻っていった
ミカエルは戻るときでも人格が崩壊したように泣き叫んでいた。学校内でも
そして、3人はミカエルとガブリエルを見送った後、冬美とアルエルを探した。しかし、見つからなかった
おそらく冬美もアルエルもまだ午後の授業があるだろうに、全く見つからない状態であった
とりあえずギン子は冬美の携帯電話に連絡をしたが、全く出ようとはしなかった
天使学科の人に話を聞いたら冬美はアルエルと共に大学内から出ていってしまったらしい
こうなってしまうとどこにいるのかわからない。3人は深いため息をついた
ギン子「…どこに行ったのかしらね」
ミサゲ「多分遠くには行ってないだろうが…」
コーク「お外でちゃったらもうわからないよね」
ギン子「そうね。私達の友情も、これでおしまいなのかしら…」
ミサゲ「おいおいそんなこと言うなよ。あいつはまた戻ってくる」
コーク「でも、あんな感じに言われたら…もう…」
ミサゲ「コークもそんなこと言わないでくれ…悲しくなるだろ…」
3人はもうこれ以上探す気にはならなかった。ただ、無事を祈るのみだった。そしてミカエルのことも…
クリスタルウィンターシティの大きい公園…
そこに、冬美とアルエルはいた。ベンチに座っている
今日の天候は晴れ。先日雪が降っていたため白い雪が積もっていた。雪があるせいか寒かった
ただ、今は寒いなどと言った気温のことは関係なかった。2人は黙ってベンチに座っている
アルエルはまだ泣いている。冬美はその涙をすくうように、アルエルの肩を抱いていた
そして、冬美は言葉を言う
冬美「ほら…アルエル。ここ、久しぶりじゃない?貴女が私を慰めてくれた場所よ」
それでもアルエルは涙を流し続けた…
冬美「私ね、アルエルは最初私が泣いてたのに近寄ってきて、天使なんかに慰めてくれるの!?って発言したけど
あの時アルエルがいたからこそ立ち直ったし、そして貴女が大学にいてくれた。これって運命よね?貴女が言ってくれたわよね?
そして、貴女を愛するようになったから。私、その気持ちいつまでも忘れないと思うの。だから…涙を拭いて愛しい人」
そこまで言うとアルエルは口を開く
アルエル「う、うん…」
ただ一言だったが、それでも冬美の肩を抱くことは止めなかった
冬美「ねえ、今日はもう大学なんてすっぽかして私の家に行きましょう。そしたらきっと、安心すると思うわ」
アルエル「わかったわ…」
冬美「立ち直れた?」
アルエル「少しよ…」
冬美「それでいいわ。さ、行きましょう」
2人はベンチから立ち、冬美の家に向かった
冬美の家に辿り着く。冬美の家…というよりマンションの一室である
女性が安心して暮らせるようにセキュリティも完備されており、なかなか良いマンションである
家に着くと、冬美は早速飲み物を用意した。テーブルに置き、アルエルは少しずつだが、飲んでいた
冬美「…しばらくの間はここで2人で住みましょう。あんなとこなんか戻らなくていいわ」
アルエル「でも…お母様が…」
冬美「わかってくれないなら、離れるしかないじゃない。大丈夫よ、同じ大学だし」
アルエル「う、うん…わかった…」
そろそろ夕方。これは腕を奮って料理しようとしようとする
アルエル「ねえ、冬美…」
冬美「何?」
アルエル「…今までありがとう。そしてこれからもよろしくね。愛してるわ」
冬美「…そのセリフ。同じように言うわ。愛してる」
少しだが、アルエルに笑みがこぼれた
一方天使協会は大変なことになっていた
ミカエルが発狂してしまい、戻っても全然涙が止まらず、結局病院へと向かうことになってしまった
心のダムが決壊したような精神…ミカエルは精神科室で入院することになってしまう
ガブリエルはその姿を見て、恐怖も感じた。大天使ですら、こんな風になるとは…
面会時間の終わりまでガブリエルはミカエルの側にいた。ミカエルは今はぐっすり寝ている
ガブリエル「…ミカエル様…私は…どうしたらいいのでしょうか。そして娘様も…。私は…わかりません…
…ううう、ミカエル様…。どうか…治ってください…ううう…」
ガブリエルが泣いた。泣くことなんて無かった人が、泣いた
冬のユキノウエ。今日は晴れていたが寒い環境にあった
冬美…アルエル…ミカエル…果たしてどうなるのだろうか?
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