春の国の話終章1

朝のシダレカ悪魔協会…代表室にデュラハンがいた

今日はネット通信で画面共有をしていた。相手は…

デュラハン「やあ、ラファエル。元気かい?」

その相手はヒダンゲ天使協会代表ラファエルであった。そう言われるとラファエルは笑顔で答えた

ラファエル「はい。デュラハン様もおかわりなく」

実は悪魔協会と天使協会はお互い画面共有をできる。総本山でも同じようなことができる

今日はたまたまヒダンゲ天使協会を繋いだが、悪魔協会総本山でも可能なため、アークデーモンともたまに会話をする

デュラハン「僕は元気だよ。そっちはどうだい?最近ラファエルがヒダンゲ天使協会代表になったって聞いて驚いてるよ」

デュラハンとラファエルは前からの知り合いである

ラファエル「私はミカエル様の命令で代表になりました。総本山を離れるのは寂しかったですが、なんとかやれてます」

そう言うとラファエルは笑顔だった。笑顔を絶やさない、良い性格してるなあとはデュラハンは思った

デュラハン「ヒダンゲには天使協会多いからね。悪魔協会が肩身が狭いよ」

ラファエル「あら、そちらも天使協会は少ないと思いますよ。私が行ったら肩身が狭いのは同じですよ」

そう言われるとデュラハンはうーんという顔になった

デュラハン「そうだね…。でも、支援会社のおかげで金の問題はないけどね。ただアークデーモン様と比べるとまだまだだよ」

ラファエル「いえいえ、私だってミカエル様と比べるほど全然大したことありません」

結局一緒か。2人とも総本山代表とは月とスッポンみたいなものか。2人は笑いあった

ラファエルはふと、思い出したことがあった。お尋ね者のことだった

ラファエル「デュラハン様、私…今探してる人がいるんですよ。これはミカエル様と共有して探してるんですが…」

デュラハン「探してる人?いいよ、協力するよ」

ラファエル「ありがとうございます!…実は人見轢沙子さんって人を探してるのですが、知ってます?」

轢沙子?前から会ってる。おまけについ最近話したばかりだ

デュラハン「僕の知り合いだよ?なぜその名前を?」

そう言われるとラファエルは驚いた表情を見せる

ラファエル「あ…!やはりシダレカにいたんですね!よかった。その人探してたんですよ」

デュラハン「ん?どういうことだい?」

ラファエルは説明しようと息を整えて発言する

ラファエル「はい…実は人見轢沙子さん、天界に居た人で、なおかつ天界にいるダークロード戦争で活躍した巫女さんがいて

巫女さんと神が戻ってこいって言われてるんです。巫女さん達、轢沙子さんの夢に何度も介入して記憶を呼び戻そうとしたんですが、

なかなか記憶が戻らないとのことでした…。シダレカにいるのなら、デュラハン様が今の説明を言ってくれれば記憶が…ってことです」

そこまで聞くとデュラハンは驚きの表情を見せる。あの轢沙子が?実は天界の人?さすがのデュラハンですら動揺を隠せない

デュラハン「な、なんてこったい…確かに初めてあったときから轢沙子は今までの人物とは違うとは感じていたが…」

ラファエル「そうなんです。下界にいる人ではないんです。だからミカエル様とこの話を共有してデュラハン様にお話しようかと思いました」

そこまで聞くとデュラハンは決心をする

デュラハン「話はわかった!今日、ちょっと連絡してみる!そしてラファエルが言ったことを轢沙子に聞いてみるよ!」

ラファエル「ありがとうございます!よろしくおねがいします!」

デュラハン「しかし…記憶が蘇るだろうか…」

ラファエル「大丈夫だと思います。…え?ニケどうしました?すいませんそろそろ落ちますね!」

デュラハン「ああ、いいよ。じゃあねラファエル」

ネット通信を切った。しかしデュラハンはまだ驚いていた

デュラハン「…轢沙子…君は…天界の人だったんだね…嘘では無さそうだ…タイミングをとって連絡してみよう…」

夕方…轢沙子はいつもどおりに会社の仕事を終え、家に帰ろうとしてた

今日の夕飯は何にしようか。また商店街へ行き肉たくさんの弁当を買いに行こう。そう決めた

轢沙子「だんだん暖かくなってきたわ。桜も咲きそう。ほんと良い季節になったわね…」

しかしここで携帯電話から着信音が鳴る

轢沙子は誰かなと思い携帯電話を取り出す。デュラハンからだった

轢沙子「デュラハン…今度は何かしら…」

どうもタイミングが良すぎる。いや、悪いタイミングかもしれない。無表情で携帯電話のボタンを押す

轢沙子「もしもしデュラハン?」

デュラハン「轢沙子、仕事を終えて悪いが一人で悪魔協会に来てくれないか?話があるんだ」

その声はどこか真剣な声で断れそうも無い言葉だった。しかし轢沙子はどうしようか考えることもなかった

轢沙子「ええ。いいわよ。じゃあそっちに向かうわね」

デュラハン「ああ。頼む」

返事を軽くして電話を切った。ここまで真剣な声で話すデュラハンは初めてだ。何があったのだろうか

轢沙子「やけに真面目な…私なにかやったかしら…」

本当なら商店街に行きたかったが仕方ない。轢沙子は1人でシダレカ悪魔協会へと向かうことになった


シダレカ悪魔協会に着いた。インターホンを鳴らし、玄関で待ってみる

するとデュラハンとバフォメットが迎えてくれた。その表情は2人ともどこか険しい

轢沙子「…どうしたの?」

デュラハン「…とりあえず、談話室へ行こうか」

3人は談話室へ向かう。着いて轢沙子は室内のソファに座る。そして対面でデュラハンが座る。バフォメットは立ったままだ

何かしたのだろうか?少し間が空いた。そして、デュラハンが声を出す

デュラハン「直球で言おう…轢沙子…君は…本当は、天界の人だって?」

そう言われると轢沙子は疑問の表情をした

轢沙子「天界?私もともとここの国で…」

轢沙子が言うと次にバフォメットが言う。ふざけてない、真面目な口調で

バフォメット「デュラハンくんから聞いたよ。あのね、さっきデュラハンくんと天使協会の人と喋っててその人轢沙子ちゃんのこと知ってるのよ。

天界から降ろされ…ここの国に来て…そして今でも下界にいたまま生きている…。そんなこと言われたの

轢沙子ちゃん…記憶喪失なんだね?だから巫女の夢も、全部本当だったって…。轢沙子ちゃん、思い出せる?」

ここまで言われると轢沙子は否定の表情を見せる

轢沙子「わ、私、巫女の夢とかどうにも思ってないし!それに…そ、それ…」

轢沙子は急に頭を抱える。頭が急に痛くなった。そして何かを思い出せそう

バフォメット「ひ、轢沙子ちゃん!」

彼女が轢沙子へ近寄ろうとするとデュラハンが手を出した

デュラハン「バフォメット!今は手を出すな!轢沙子がなにか思い出せそうだ!」

バフォメット「何かを…一体何を…」

2人は少しの間、轢沙子の様子を見ていた

轢沙子の頭を抱えることをやめた。そして無表情で、2人を見た。口を開く

轢沙子「…ようやく思い出した。そう、私の、全てのことを…」

バフォメット「轢沙子ちゃん…?」

デュラハンとバフォメットが真剣な表情で轢沙子を見ていた

轢沙子「…私は大妖怪なのよ。ダークロード戦争のとき、巫女たちと一緒にダークロード率いる軍団と戦ってたの。

軍団は大したこと無かったわ。ただ、ダークロード自体が強くてね。私は奇跡の術を使って、ようやくダークロードを討ち取ったの。

でも、もうその時は力が尽きてしまって、私は一応その時点で命を落とした…そして天界へと行ったのよ」

デュラハン「轢沙子…」

そうつぶやくと轢沙子は更に思い出す

轢沙子「そして、巫女たちも色んな理由で天界へようやく来たんだけど…一人地獄へ落とされてしまった巫女がいたの。サヤカ…かしら。

そのコトで私は神に不満を言った。私は言ったの。『サヤカが天界に行かせないなら私は下界へ降りる!!』って。

それでも一切何も変化が無かったから私は憤怒の気持ちで生身で下界へ降りたのよ。何故か魂だけでなく肉体も保持したままで」

バフォメット「轢沙子ちゃん…」

轢沙子「…いつの間にか私は、この国の海岸にいた。何も知らない状態で、なおかつ記憶喪失したままで。

何もわからない状態で、海岸で遊んでたけど…いつしか飽きてしまったし、何も食べてないからお腹が空いてきた。

都市部へ向かって、1人うずまっていたら、声かけられてね。リリよ。彼女はまだ独身のときにね。私はリリの家へ連れられた」

デュラハン「…」

バフォメット「…」

2人は黙って轢沙子の言葉を聞いていた

轢沙子「私とリリは、最初から相性が良かったのか、いつしか親友同士になった。そして、私も気がついたら今の会社で働いてたの。

ある日ね、リリは今の旦那と結婚するからという話聞いてね。私も一人暮らしできるお金持ってたからお礼を言いつつ、出たわ。

そして…今へとつながるの…これが、私よ」

ここまでしゃべると轢沙子はあまりしたことがないため息をついた。ようやく思い出して、全ての記憶が蘇った

しばらく、時が止まったかのように3人から言葉が出なかった。沈黙が辛い

轢沙子はうつむいたままだ。しかし、その沈黙の空気を断ち切ったのはデュラハンだった

デュラハン「轢沙子…ここまで記憶が蘇ったけど、君は…天界へ戻りたいのかい?」

そう言うと轢沙子はゆっくりとデュラハンに顔を向ける

轢沙子「…それは、わからない。天界へ戻りたい気持ちはあるけど現世にいる気持ちもあるわ。どちらでもない。

私は巫女の1人に結婚申し込んだからそれをしたい気持ちはあるし、けど…ここへ居たい気持ちもある

巫女達の絆も大切だけど、リリ、ネネ、カイ、由美子…そして色々な人…その人達を残して天界へも行けないかもしれない…」

バフォメット「轢沙子ちゃん…」

もうバフォメットはただ、ただ、名前を言うしかないほど衝撃を受けていた

轢沙子「…記憶が蘇ってよかったわ。あとは、巫女達に伝えるだけよ」

バフォメット「…轢沙子ちゃん…駄目よ。天界に戻っちゃ駄目だよ…!せっかくお友達になれそうなのに…」

轢沙子「バフォメット…」

バフォメットは目に涙を浮かべていた

デュラハン「轢沙子…どうか、この世界に居てほしい。だって、僕もそうだしバフォメットだってまだ知り合ったばかりじゃないか?

それに、轢沙子の友人達…彼女らを取り残したまま、天界へ戻ってしまうのかい?残酷だよ…」

そう言うと轢沙子は答える

轢沙子「…今日、巫女達の夢を見るでしょう。その時にはっきり伝えておくわ」

轢沙子は帰り支度をしていた。彼女が談話室のドアへと無言で向かった

デュラハン「轢沙子!」

轢沙子「…明日はどっちでしょうね。デュラハン…バフォメット…」

轢沙子は立ち去った

デュラハンもバフォメットも、彼女を追いかけようとはしなかった。ただ、2人で黙ったままだった

バフォメット「ねえ、デュラハンくん…こんなとき…どうしたらよかったんだろ…」

デュラハン「…僕にも、わからない」


夜、轢沙子は自宅へ辿り着くとすぐにベッドで横になっていた

記憶が蘇ったこと、2人に自分の本当の姿を言ったこと。これでよかったのだろうか?

わからない。ただ、突然蘇ったという感じに近かったため言っただけだった

お腹も空いていない。今日は早めに寝ることにした

轢沙子「巫女達…」


夢の中…轢沙子はまた雲の上にいるような感覚があった。間違いない。彼女達が現れる

そして、巫女達が現れた。巫女は相変わらず心配そうな顔をしてた

「轢沙子…」

巫女がそう言うと轢沙子は笑顔で言う

轢沙子「…大丈夫よトウコ。もう、記憶蘇ったから」

「轢沙子…!?」

轢沙子「ミホ、元気そうだわ」

「蘇ったんですか!?」

轢沙子「アユミ、私相手に敬語なんて使わなくていいのに」

「本当か!もう、諦めてた…!」

轢沙子「サヤカ、地獄より天界のほうが1番でしょ?」

「…轢沙子!嬉しいわ!」

轢沙子「アユ、ごめんね婚約、まだだったわね」

トウコ「や、やったー!!良かった~!これで安心してまた天界へ行けるな!」

アユ「…もう、おそすぎよ。でも記憶が蘇って何よりだわ」

巫女達が嬉しそうに発言してる。それを見た轢沙子はどこか安心したような感覚になった

轢沙子「ねえ、これからどうすればいいかしら。貴女達のもとへ向かうには?」

アユミ「実はですね、とある遺跡から私達を召喚してそこから迎えることができますよ!」

サヤカ「ああ。だがちょっとした準備が必要だが大丈夫。それもなんとかなるぞ」

巫女達が天界へ向かうために喜んで説明している

轢沙子「わかったわ。じゃあ、準備できたらお願いね。そっちに行くから」

ミホ「いや~よかった!」

トウコ「轢沙子が戻ってこれるとなるとウキウキしちゃうな!」

アユ「…今度こそ、貴女と婚約を天界でしましょう」

轢沙子「ええいいわよ。まだ大好きな気持ちは変わらないんだから」

サヤカ「おい、ずるいぞ勝手に2人の世界にしないでくれ」

アユ「…そうだったわね。うふふ」

巫女達と轢沙子は笑いあった。巫女達にとってこんな幸せになれることはない

なにかの準備。というのは轢沙子はちょっと気になったが、なんとかしてくれそうだ



轢沙子が天界へ戻るカウントダウン

もう、止めることはできないのだろうか…



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